ありふれた祈り (ハヤカワ・ミステリ)

  • 早川書房 (2014年12月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784150018900

作品紹介・あらすじ

〈アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作〉あの夏は、ある子供の死で始まった──四十年を経て、わたしは十三歳の夏を回想する。大人の入口に立つ少年たちの成長を描く切ない傑作ミステリ

みんなの感想まとめ

成長と悲劇をテーマにした物語は、1961年のミネソタの田舎町を舞台に、13歳のフランクと弟ジェイクの兄弟の絆と成長を描いています。愛する人々の喪失を通じて、彼らは自らの行動に責任を持ち、大人への一歩を...

感想・レビュー・書評

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  • 原題は『Ordinary Grace』Ordinaryはありふれたという意、そしてGraceは祈りと言うよりは神の恵み、恩寵と言った意で正しく訳すなら「ありふれた恩寵」といったところか
    そして恩寵とは罪深い人間を救うために神がもたらす奇跡のことだ

    それではこの悲しい物語のどこに神の恵みがあったのか?

    少年が愛する人々の存在に気付くために、少年が自らの行いに責任を持つために、そして少年が大人になるために、その悲劇が必要だったと神が判断したのだとしたら、それは恵みではなく呪いだったのではないだろうか

    そして悲劇から人生を取り戻した人々の変化を奇跡と呼ぶのなら、それは神の恵みではなく人の持つ強さなのだと思いたい

    • ひまわりめろんさん
      ミユッキー

      ( ̄ー ̄)ニヤリ
      ミユッキー

      ( ̄ー ̄)ニヤリ
      2026/02/08
    • 1Q84O1さん
      カンチョウするならアテントもくださいな
      漏れちゃう〜(;´Д`)ハァハァ
      カンチョウするならアテントもくださいな
      漏れちゃう〜(;´Д`)ハァハァ
      2026/02/08
    • ultraman719さん
      ひま師匠のアテントなくなる〜!
      ひま師匠のアテントなくなる〜!
      2026/02/09
  • 1961年ミネソタの田舎町ひと夏の物語。13歳の負けん気強い少年フランクと聡明だが吃音に悩む弟ジェイクを襲う悲劇。親しい者達の死をめぐる絶望や苛立ちや後悔が暑さと共に描かれる。謎解きより人間ドラマの濃厚さに引き込まれ一気読み。

  • 1961年、ミネソタに住む13歳のフランクと弟ジェイクとその家族の物語。
    その街に住むひとりの少年の死から物語は始まるものの、ミステリーというより、
    少年の成長や人間ドラマにポイントが置かれていて、じっくりとその世界を楽しめた。

    やんちゃでちょっと短絡的、だけど兄弟思いの兄と、
    吃音というハンデをかかえつつ、慎重で思慮深い弟の対比が良かった。
    最初は冒険を嫌い、前に出ない弟にヤキモキハラハラし、中盤からは「お兄ちゃんもいいとこあるやん!」と兄の印象も変化し、二人のことが大好きになった。
    ラスト付近で起こる奇跡にも胸が熱くなった。

    牧師であるこの兄弟の父親にも好感が持てた。
    信仰心を持たない自分にも、彼が場面場面で放つ言葉にうなづいたり、考えさせられた。
    怒りを抑えることや冷静に行動するためのヒントをもらえた。

    登場する他の大人たち、特に牧師と兄弟を精神的に支える男と
    犯人の嫌疑をかけられるインデアンの男も良かった。

    ※フォローしている方の読書記録は
    次に読んでみたいと思う本の参考になり、たいへんありがたく思ってます。

  • 読書備忘録696号。
    ★★★★★。

    翻訳される海外文学作品は、評価が高いから翻訳されている訳であり、やはりアタリが多い。
    アメリカの中北部州ミネソタ州を舞台に少年が大人になっていく様を描いた秀作。
    ミネソタ州はミシシッピ川があり、トム・ソーヤやハックルベリー・フィンが大冒険を繰り広げたり、大草原の小さな家でインガルス一家が住むウォールナットグローブがある。笑
    すなわち、豊かな自然に恵まれた牧歌的な風景がすごく似合う舞台。

    そんなミネソタ州のミネソタ・リバーのほとりの町ニューブレーメンで13歳の少年フランク・ドラムが初めて人の死、しかも最愛の家族の死に直面する残酷なひと夏の物語。そしてミステリでもある。
    その年の夏、死の連鎖は知り合いの少年ボビー・コールがミネソタ・リバーに掛かるユニオンパシフィック鉄道の構脚橋で列車に轢かれるところから始まる。
    そして、その事故死は、見知らぬ旅人の自然死を経て、最愛の姉アリエルの殺人事件に繋がり、連鎖して自殺と広がっていく。

    物語は、主人公のフランクが当時の1961年夏を40年後の視点から回想する語り形式で進む。
    まだ第二次世界大戦の傷跡が人々の心に残っている時代。戦争から戻り牧師となった父、牧師となったことに不満を持つ母、吃音が激しく人前では一切喋らないが聡明な弟ジェイク、そして音楽の才能がありジュリアード音楽院に進学予定だった最愛の姉アリエル。
    教会で、父の手足となり働く戦友のガス、巡査のドイル、母の昔の恋人エミールとその家族たち。
    ニューブレーメンという小さな町に暮らす人々がフランクの目を通して、生き生きと、日々懸命に生きる。

    そして物語の大きな柱は中盤に突如訪れる。最愛の姉アリエルが家に帰らない。懸命に捜索する家族。そしてフランクはミネソタリバーに浮かぶアリエルの発見者となる。事故なのか事件なのか。悲嘆に暮れる家族の元に、検死の結果として殺されたことが伝えられる。
    誰が何の目的でアリエルを殺したのか。町のごろつきや差別に苦しむインディアンに容疑者として浮かび上がる。しかし、フランクがたどり着いた真相は驚くべきものであった・・・。
    少年であるが故、行動の不自由さ、それを巧みに潜り抜けて真相に近づいていくストーリーは、間違いなく珠玉のミステリー小説である。

    牧歌的な風景の中で起きた死の連鎖、そして少年が必死で背伸びして青年になっていく通過儀礼的残酷なひと夏の物語には引き込まれました。

    この作者の作品「このやさしき大地」も読む予定。そのうちに。舞台は当然ミネソタでしょう。笑

  •  アメリカには少年の冒険小説がよく似合う。トム・ソーヤーやハックルベリー・フィンに始まった少年が冒険する物語は、少年向けの小説であったとして、スティーブン・キングの『スタンド・バイ・ミー』やロバート・マッキャモンの『少年時代』などなぜかホラー作家の正統派少年小説として、かつて少年であった大人たちに読まれ、評価された名作として知られている。

     時を経て、リーガル・サスペンスの巨匠、兼売れっ子作家であるジョン・グリシャムですら、『ペインテッド・ハウス』というジャンル外の傑作をものにしている。そららの流れはミステリの世界にも受け継がれ、ジョー・R・ランズデールの『ボトムズ』や『ダークライン』などは少年冒険小説でありながら、一方でミステリの形を損なわないばかりかむしろミステリとして評価されている部分が注目される。

     同時に少年の冒険の舞台としてしばしば取り上げられたのが、アメリカ南部である。南北戦争の影、黒人差別の文化、そしていっぱいの手つかずの自然。少年の眼という純粋な感受性のフィルターを通して、驚きと発見に満ち満ちた世界で、様々な大人たちの生と死を見つめながら、人間生活の矛盾に満ちた世界の仕組みを理解してゆくには適した土地風土であったに違いない。

     だからこそ南部出身の作家はジャンル外であろうと少年時代の物語を書いてみないではいられないのかもしれない。

     さて、その少年冒険小説の系譜に、また一作の金字塔が登場した。本書は、ミネソタ・リバー沿いに広がる田舎町を舞台にしたの郷愁と抒情に満ちたミステリーである。作者はコーク・オコナー
    ・シリーズで知られる作家だが、シリーズ外作品を書いたことで、なんとこれがアメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)を受賞、さらにバリー賞・マカヴィティ賞・アンソニー賞と続けざまに受賞し四冠に輝くことになる。

     なんと言ってもこの作品の魅力は、1961年に生きる12歳の少年を主人公にした作品世界がとても魅力ある登場人物たちと時代背景によって構築されていることだろう。2歳年下の純粋な正義感に溢れた吃音の弟、音楽の才能に恵まれた年頃の美しい姉、大戦の傷を引きずる教会神父の父に、その父の戦友で放浪者のガス。『大草原の小さな家』と同じミネソタを舞台に、自然いっぱいのミズーリ川流域で、川にかかる鉄道線路を渡る二人の兄弟の姿があまりにもみずみずしい。

     それでいながら、これはしっかりとミステリである。死と向かい合い、やがて少しずつ成長をとげてゆく少年たちの物語でありながら、死の絶望的なほどの悲しさと、生き残った者が心に負う痛みは、抉られるようだ。それでも少年たちの生命力は泉のように途方もなく、彼らは真相に迫ってゆく。小さな名探偵たちが辿る冒険の道は、このひと夏にこめられている。

     いくつもの死と別れ、真相の残酷さ、癒しと成長をこめたこの素晴らしき世界にこそ、少年たちの夏があった。一ページ一ページに作家の品格が滲み出ていて、少年のどきどきするような好奇心に連れられ読者はこの本から眼が離せなくなるだろう。ぼくにとっても『ボトムズ』以来の傑作登場が嬉しい。アメリカならではの少年時代の郷愁小説である。この種の作品は希少ゆえにとても価値があり、なおかつ誰の心にもあるノルタルジーに共鳴するせいか、いつまでも心に残る。そんな作品に餓えている読者にお勧めの一冊である。

  • 評価はやや甘め。ジョン・ハートやトマス・クックを彷彿とさせる家族をテーマにした祈りと赦しの物語。死体は登場するが、謎解き目線で読むと失望する。

    ミネソタの田舎町を舞台に、主人公の家族と周囲の人々の生活を牧歌的に綴っているだけなのだが、序盤から引き込まれそのまま読了。中盤に大きく動き出すまでは普遍的なエピソードの繰り返し。でもどういうわけだかハマってしまい、このまま事件もなく終わってしまってもいいとさえ思ってしまった。主役の兄弟をはじめ、人物造形が巧い。あっさり描かれているのにそれぞれが活き活きとした印象で、登場人物の希望も苦悩もすんなり受け入れられる気持ちにさせられた。

    終盤ではちょっとしたサプライズもあるが、真相は予測可能。若干間延びした感じが残念だが、謎解きに対する肩透かしは想定内だったので、特に問題なし。

    タイトルの意味がわかる場面は秀逸。読み手の私が一番救われた気になった。全体を通して感じるのは浄化。年の瀬にのんびり読めたからかな、いろんなものが洗い流されたようで、気持ちのよい読書時間でした。つくづく、作品とタイミングの相性って大事よねー。

  • いくつもの死に向き合う中で成長する兄弟。
    とりわけひとつは最愛の姉の死。

    姉の死にまつわるフーダニットの目くらましも悪くない。
    また、そういったミステリ性をおいておいても、周囲の人々との繋がり、母の心身崩壊と再生を通じて過ぎて行く少年時代の特別時間の描き方がとても良いと感じた。

    時間の軸を進め、関係者達のそれぞれの死でこの物語を締めくくっていくところもふさわしいクロージングだった。

  • 少年の日の、ひと夏の事件を回顧する内容。
    初めて読んだ作家さんですが、切なく、確かな描写で、とてもよかったですよ。

    ミネソタ州の田舎町、1961年。
    13歳のフランクはやんちゃ盛りで、街中をすばしこく飛び回っていました。
    穏やかで博識な父親は牧師。
    母は、良家の出で、芸術家肌。
    二つ下の弟ジェイクは賢いが、緊張すると吃音になるため、からかわれることもあります。
    姉のアリエルは美しく、音楽の才能に恵まれていて、弟達にも優しい。
    一家の希望の星だった姉が行方不明となり、フランクの住む世界はとつぜん悲痛な色を帯び始めます‥

    豊かな自然に恵まれた町ですが、上流階級と庶民の住む区画は分かれています。
    人種差別もあり、普通の人々の中に、いろいろ癖の強い人間もいる。
    互いに許しあってほど良い加減で暮らしていた、ゆったりした描写が、しだいにテンポを速めていきます。
    複雑な出来事をただ目を見張って受け入れるうちに、男の子達は大人の世界に一歩、足を踏み入れていく‥

    卑小な人間のどうしようもなさ、悪気はなくとも個性がぶつかり合い、弱点がすれ違う哀しさ、苛立ち、切なさ。
    タイトルになっているシーンは感動的です。
    よく描ききってくれたな、と胸をうたれました。
    エドガー賞はじめ全米の主要なミステリの最優秀長編賞を独占した作品です☆

  • 悲しい物語

    でもミネソタ州の田舎町の風景と人々の情感がたっぷりで、荘厳な家族愛の映画を見終わったような、満足感と脱力感を感じる物語。

    1961年夏
    牧師の父と美しい母と姉に囲まれ、吃音障害を持つ弟と13歳の主人公フランクが経験した特別なこの夏の出来事。

    自身の心の底に住み着いた戦争の後遺症ゆえに、ひたすら“神”の道を進む父の言葉は、困難にあった町の人びとの心にいつも寄り添っていた。
    自分の家族に起こった困難のとき、母はそんな夫に「せめて今日だけは“ありふれた祈り”にして……」とつぶやく。

    キリスト教の赦しや救済について、疑い迷い罵るという感情が普通にあること、それでいて、それらをすべて俯瞰するように包み込み潜んでいる“神”の存在。

    信仰心ですべてを解決していたら、この本は「つまらない祈り」になっていただろう。

  • この作者の作品は以前読んだがさほど好みではなかったが…。
    この作品は少年が遭遇したひと夏の出来事が抒情的に、そしてすごく視覚的に描かれている。
    サスペンスという括りにするとさほどの事件も起きないし、犯人(真相)もあっさりと分かるのでは?
    でもこの作品は殺人事件を核にしながら、61年夏のアメリカの田舎町の生活や人間関係を少年の視線を通して濃密に描きこんで、文芸作品に近い。
    この時代を過ごした人々から見るとたまらなく懐かしく切ない物語であろう。
    またこの時代を共有しない我々でも、トマス・H・クック、ジョン・ハードの小説や、「スタンド・バイ・ミー」「グリーンマイル」のような映画、ホッパーの絵画に描きこまれたアメリカの古き良き日常の生活が見事に再現され、懐かしさを感じる。
    運命の糸のように絡んだ人々の人生と、兄弟の少年時代の終わりと卒業が切なく描きこまれて傑作となった。

    こんな文章が書ける作者だったとは!改めて他の作品を読んでみようと思う。訳も丁寧だしおそらく原作にあるリズムが大切にしてあってとても気持ち良く読めた。

    ・・・エピローグは心に沁みる。

  • アメリカの家族もの、とりわけ父子ものはちょっと苦手だけれど、これはおもしろく読めた。主人公の少年、父母、姉と弟、周囲の人々、それぞれの造型にリアリティがあって、しみじみ胸に迫る物語になっていると思う。

    ミステリとしての「真相」は、そういうのに鈍い私でも途中で見当がついたし、すごく派手な展開があるわけでもない。同じようなのをどこかで読んだような気もする。それでも最後までぐいぐい読まされた。あざとさのない語りがいい。欠点のない人などいないし、苦しみのない人生もないけれど、人は生きていくのだ。そんなことを思った。

  • 作中に幾度も出てくる死。誰しもが迎える出来事の一つとして描かれている死はどれもとても静かである。しかし死は確実に世界を変える。神は常にともにある、という感覚は私には馴染みのないものだけど祈りは神に届くと信じたいし、神がいてほしいと心から願う。赦しと祈りの物語。

  • 好きな小説やテレビドラマは決まって、登場する人物たちがたまらなくいとおしく思えてくるのだが、この作品も同じだった。
    読み終わってなお、ニューブレーメンという小さな町とそこに住む住民たちが身近に感じられ、とても作者が創造した架空の町だとは思えない。
    何度も家族(とりわけ兄弟がたまらなくいい)、町の人との何気ない会話のシーンで涙があふれそうになり、ページを繰る手が止まった。
    全米4大ミステリ賞で最優秀長編賞を独占した本書だが、失礼な話むしろそれが余計に思えてしまうほど、ジャンルに囚われない新鮮な読後感と深い余韻をもたらしてくれる傑作だった。

    とりわけ主人公たちがブラント家を訪問する最初のシーンは印象深い。
    ポーチでは父親で教区の司祭を務めるネイサンと隠遁した盲目の天才ピアニスのエミールが籐椅子に座り談笑しながらブラインド・チェスをしている。
    家の中では将来を嘱望された音楽家である姉のアリエルが、そのエミールの口述した回顧録をタイプしている。
    庭では耳が聞こえず情緒不安定なリーゼを吃音症の弟のジェイクとその兄で主人公のフランクが手伝っている。

    牧歌的で平穏な交流場面がやがて悲しみに変わるのだが、作者は単なる悲劇で終わらせず、最後には再生と許しを用意している。
    「ありきたりの祈り」というタイトルの付け方も見事で、家族を救う小さな奇跡という込められた意味は明かされてなお胸に迫るものがあった。

    気に入った箇所をいくつか。
    「幸せとはなんだ、ネイサン? ぼくの経験では、幸せは長く困難な道のあちこちにある一瞬の間にすぎない。ずっと幸福でいられる人間などいないんだ」

    「喪失は、いったん確実になれば、手につかんだ石と同じだ。重さがあり、大きさがあり、手触りがある」

    「彼らはおれたちの近くにいるんだよ」
    「彼らって?」
    「死者だよ。違いはひと息分もない。最後の息を吐けばまた一緒になれる」

  • 子どもの頃映画で観たアメリカってこんな感じだったなあ、と懐かしく思い出した。ダイアン・レーンやトーマス・ハウエルが出てきそうな感じ。わかりますか?
    タイトルの「ありふれた祈り」の意味が明かされる場面は感動的だったし、家族とかゆるしとか信仰のあり方とかいろいろ考えさせられたり、差別などの問題提起もあったり、読み応えはあったんだけど、いかんせん描写が丁寧すぎて中だるみがけっこうきつかった。で、人死ななきゃダメ?ミステリにしないとダメ?と問いかけながら(誰に?)がんばって読み進めたんだけど、結局、終盤には犯人誰かとかいっぱしに推理してちょっとドキドキしたりもしたので、それはそれでいいのかと納得。普通の小説がなかなか訳されない今、やはり定期的に面白そうな翻訳ミステリを探しては読んでみようと思った。

  • ミネソタ州の小さな町に暮らす牧師一家を襲った悲劇、渦中におかれた13歳の少年の視点で事件の顛末が語られていく。1961年という時代設定もあってか、時間がゆっくり流れるような前半の語り口が味わい深い。感情の起伏を制御し家族や友人を慈しむ牧師である父親の言動と思春期の入り口で家族に降りかかる災厄に胸を痛める兄弟の姿が琴線に触れる。翻訳ミステリを丹念に読むという久しくなかった行為を楽しめる秀作。

  • ありふれた祈り。タイトルがいい、そしてストーリーのポイントとして強烈な印象に。ちょっと子生意気な少年が主人公もの、憎めないところがかわいらしい。

  • 穏やかな牧師の父、芸術家肌の母、優しい音楽の才能あふれる姉、頭のいい弟、そして13歳の僕。一見平穏に見える幸せな家族が、ある事件を通してどういう姿を見せていくのか。舞台のミネソタの小さな田舎町の情景が、視覚的に味わい深く描かれている。夏の匂い、眩しい陽射し、川にかかる鉄道線路を渡る二人の兄弟の姿があまりにもみずみずしい。失われたもの、得たもの。死者への鎮魂や生への希求を祈りつつ、重い代償を経てはじめて近づくことのできる奇蹟。タイトルの意味がわかったとき、この祈りもひとつの諸人の叡智だったのかとしみじみと感じ入る。ミステリという枠に捉われない、叙情性に満ちた文芸作品といってもいい。

  • いろいろな事を考えさせられる深い本だった。ミステリーというよりも「祈り」と「赦し」の本。背景描写も登場人物の心理描写も 素晴らしく静かに落ち着いて心に訴えかけるのは 翻訳も良かったからだろう。ただ自然信仰と神道と仏教を足して割ったような考え方を持ってる私には どうしてもキリスト教の教えを骨にして書かれているこの本の作者が伝えたかったであろう事は 心の底からは やはり理解できない部分が残る。それでも 読んで良かったと思える 深い本だった。

  • コーク・オコナーのシリーズは未読のまま。ウィリアム・ケント・クルーガーの作品を初めて読む。

    あの夏のすべての死は、ひとりの子供の死ではじまった――。1961年、ミネソタ州の田舎町で穏やかな牧師の父と芸術家肌の母、音楽の才能がある姉、聡明な弟とともに暮らす13歳の少年フランク。だが、ごく平凡だった日々は、思いがけない悲劇によって一転する。家族それぞれが打ちのめされもがくうちに、フランクはそれまで知らずにいた秘密や後悔に満ちた大人の世界を垣間見るが……。少年の人生を変えた忘れがたいひと夏を描く、切なさと苦さに満ちた傑作ミステリ。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作!

    教会付属の幼稚園に通っていたので、食前のお祈りを必ずしていたことを思い出した。一貫して静かな、心に残る物語。ミステリとしては珍しい読後感であった。

  • ミステリーというより,家族の物語としての重みが先に来て,読み応えたっぷりの満足感がある.現在の私が40年前を振り返って書くという形式で,13歳の少年にすぎない私の考察も重厚になって,一夏の経験というにはあまりにも次々起こる出来事に崩壊していく家族と踏みとどまる人の強さがぎっしり詰まっている.ニューブレーメンという街の様子もそこにあるかのようで,川や草原や吹きゆく風など匂いなども確かに感じられた.吃音の弟ジェイクに訪れた奇跡に感動した.

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