そして夜は甦る (ハヤカワ・ミステリ 1930)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 102
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150019303

作品紹介・あらすじ

私立探偵の沢崎はひょんなことから行方不明となったルポライターの調査に乗り出すことに。やがて事件は東京都知事狙撃事件の全貌へと繋がっていく。伝説のデビュー作が遂にポケミスで登場。書下ろし「著者あとがき」を付記し、装画を山野辺進が手がける特別版

感想・レビュー・書評

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  • 私がハードボイルドに夢中になるきっかけとなった作家がこの御方。そのデビュー作をハヤカワ・ポケットミステリ版で再読。一行目から否応なしに読み手を作品世界へと引き込む硬質な文体、エスプリを効かせながら腹を探り合う会話の応酬、徐々に緊迫感を増していくストーリーラインなど、読後の満足感は初読時以上。こねくり回したプロットや人間関係は本家のチャンドラー以上に錯綜しており、気負い過ぎの印象は否めないが、この作風はやはり唯一無二。もう二度と澤崎に会えないのが只々残念だ。原先生、どうぞ安らかにお眠りください。★600冊目

  • JRは国鉄で、東京都庁1号館はは丸の内にある8階建ての時代の話。
    主人公は隙あらば煙草を吸い、ナビなんてないから土地勘があるかないかが大きな分かれ目。
    スマホどころか携帯もポケベルもないから、留守番電話サービスっていうところに登録して、伝言があるかないかを一日に何度も確認する探偵。
    スマホさえあれば、最後の大事件は防げたね。

    さて、巷でよく聞く、「翻訳物は人物の名前が覚えられないから難しい」というやつ、これを読んでわかる気がしました。
    登場人物は99%日本人ですが、関係者の中に○○の弟ってのが多すぎる!
    しかも名字が違う…。
    何度も登場人物表を見直しては、その関係を確認しました。

    事件の依頼としては、「ルポ・ライターの佐伯の居場所を教えろ」という、身に覚えのない問いを同じ一日のうちに2回聞いたことから、佐伯の行方を捜すものだったはずが、あれよあれよという間に大きな事件に。
    展開が早いのに流れが自然だから、気がつくと「なぜこんなことに?」となって、また戻って読みなおす。
    デビュー作とは思えない手練れ。

    基本ハードボイルドなので、もちろん突っ込みどころもあるのですが、読後の満足感は久々のもの。
    探偵の澤崎よりも、最後の最後でキーパーソンの方がハードボイルドでしたね。
    *ハードボイルドってやせ我慢の自己満足だと思っています

    ところで今の読者はきっと理解できないと思うのですが、結婚前に妊娠してしまうこと。
    今だったら「授かり婚」などと前向きに受け止められることも、当時は「できちゃった婚」なんて、世間に顔向けできないはずかしいこと、と親に罵られることも多かったのです。
    そして、本人がそう思ってしまうことも。
    お互いに愛していたから本当のことを話せずにいるうちに、どこかにひずみができてしまったのでしょうね。
    本当だったら離婚する必要のない二人が、巻き込まれた結果とはいえそうなってしまったのは残念な気がします。
    「逃げるな!」と男の方(ほう)には言いたい。

  • ハードボイルドとミステリを融合させた日本版マーロウこと澤崎シリーズの第一作。チャンドラーも認めてくれるであろうハードボイルドな会話・展開で、実に味わい深い。

  • 自動車評論家竹岡圭氏の推薦図書。竹岡さんには悪いが、全く読む気になれなかった。ハードボイルドは俺に合わない。

  • 別の本は持ってるんですけど…
    やはり特別版も買わないと!

  • 都内で私立探偵を営む澤崎の事務所に謎の男が訪ねてくる。彼は佐伯というルポ・ライターの男について知らないかと訊く。心当たりがない沢崎に男は「もし佐伯から連絡があったら自分のことを伝えて欲しい」と言い残し、現金20万円が入った封筒を押しつけていく。

    続けて沢崎の事務所に韮塚と名乗る弁護士から電話が入る。とある資産家に雇われている彼は、沢崎に「佐伯というルポ・ライターを知っているか」と尋ねる。

    同時期に二方向から行方を捜されることになった佐伯とは何者なのか。弁護士を通じて佐伯の妻に雇われた沢崎は彼の足取りを追いかけ、やがて都知事狙撃事件の真相にまで迫っていく。

    寡作なことで知られる原尞の長編デビュー作。レイモンド・チャンドラーの『さらば愛しき女よ』を手本に書いたという正統派の和製ハード・ボイルド。

    いま読むと時代がかったところはあるが、小気味よいプロットとキレキレともキメキメとも言える文章で先へ、先へと読み進めさせられる。

    兄が有名な作家で都知事、弟がヨット趣味の映画俳優で自身のプロダクションを持っている設定は石原兄弟を連想させるが、実際に石原慎太郎が都知事に当選したのは本書発売の約10年後。

    https://yowatarikun.com/and-the-night-falls-again/

  • 「東京都知事とその弟の映画俳優」という設定が出て来て、今の我々はあの兄弟を思い浮かべるが、この小説が刊行されたのは1988年。現実を10年以上先取りした設定であったことに驚く。主人公の皮肉と自虐と奇妙なユーモアにあふれた「これぞハードボイルド」なセリフはお好きな方にはたまらない。パロディが山ほどある現在では何となく笑ってしまうところもあるのだが。

  • ハードボイルドが嫌いで、古い文体の小説も毛嫌いしているのだが、これは序盤からむちゃくちゃ面白い/ 天才かと思う/ 色メガネで読み始めたのに、すぐにファンになってしまった/ 得体の知れない刑事の死体や小さなとっかかりからヒントを掴んでいく様など、ずっと興味を残したまま最後まで書かれる/ 偶然を排除した解決は好感が持てる/ そんな商業作品も多いのにね/ 素晴らしい/

  • 原尞のデビュー作。
    レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説の教科書的な探偵フィリップ・マーロウを彷彿とさせる文体と探偵澤崎が活躍する人気シリーズと発展していく。
    探偵事務所に正体不明の男が訪れ、行方不明のルポ・ライターの行方を調査するように依頼を受けるところから物語は始まる。
    元々のチャンドラーがそうである通り少し言葉足らずな面はあるものの、物語の展開は速く、めまぐるしく謎が謎を呼び、意外なところへ澤崎と読者を運んでいく。
    都庁が移転する前の時代なのだが、後の石原東京都知事を彷彿とさせる人物が登場したり、なかなか感慨深いものがある。
    元々は「沢崎」という表記だったが、この版では「澤崎」となっていた。原尞のこだわりらしい。

  • 学生時代、懐かしの芳林堂とビッグボックスが登場。

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