種の起源 (ハヤカワ・ミステリ)

  • 早川書房 (2019年2月6日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (376ページ) / ISBN・EAN: 9784150019402

作品紹介・あらすじ

26歳のユ・ジンは目覚めると、自宅で母の死体を発見した。時々記
憶障害が起こる彼は前夜のことを何も覚えていない。事件、そして
自分と家族の間の真実を明らかにするため、3日間の激しい捜索が
始まる。心と記憶の謎、母子の関係を探求するサイコ・スリラー!

感想・レビュー・書評

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  • ある朝血まみれの状態で目覚め、さらに母親の死体を発見したユジン。しかし彼には前夜の記憶がなく、とりあえず事態を隠蔽し何が起こったのかを思い起こすことにする。読むほどに不安感が募っていくサイコサスペンス。
    状況から考えるとユジンの犯行であるということは間違いがないのだけれど。しかしなぜそんなことになってしまったのか。病を抱え服薬治療を受け、母親には束縛され、そのせいで自分の好きな道に進めなかったユジンの抑圧された感情。過去に起こったとある事件。最初はユジンの境遇が気の毒と思えていたのだけれど、読み進むごとにユジンに対する共感が薄れていきます。というより、彼に共感してしまうのが怖くなりました。
    しかし思えば、ユジンが気の毒だというのは間違いがないです。彼の意志にそぐわなかったとはいえ、彼を愛し守ろうとした人たちが確かにいたのに、それに気づかず応えられもしなかったということが悲劇的。そしてそのことは、きっと彼には理解できないのだろうということも。

  • 作品自体は、残念ながら私にはぴったり合うものではなかったのだけど、今作を読んでふと、近年の韓国文学には自己の加害性を描くという共通点があるものが少なくないように感じた。
    (断言できるほど読めているわけではないのだけど…)
    今作は境界を超えた人物を描いているのだけど、彼が完全に未知の何かではないのではということもちらちら感じた。
    自分の加害性は、できれば見ないふりをしておきたい、でもそれを見つめるのは必要なこと。
    小説を通して、私もまた自己を振り返ることになる。
    そういった点では、読んで良かった作品だった。

  • サイコパスの内面を主観で描くというやり方は、貴志祐介さんの『悪の教典』に近い感じですね。
    しかし、こちらの方が、なぜこんな「怪物」が生まれたのか、という部分を掘り下げて描いているので、読んだ後の後味の悪さは少ないかもしれません。
    ヘジンは可哀そうだけど。

  • ハン・ユジンの悪の種はこうして育っていった。よく練られた、サイコミステリ。
    重い軽いはあっても心に善と悪のふたつを持っているのが人間だろう。物心ついた時にはそれが混然一体になった人間性が出来上がっている。生きるために。
    それは一面、他人を理解し人生の深みを感じ取る大きな要素になっていると思う。
    その二つがよりよく折り合っているなら人としてなんの不具合もない。

    主人公のハン・ユジンの中では病的に偏った悪の芽が育っていった、残虐に。自分に都合が悪い人間を消していく。本来なら愛情に包まれ暖かい暮らしを作り上げるつながりが、冷めたまま、自己保身の殺人に向かう。

    仲のいい聡明な兄弟のいる家庭。だがストーリーの始まりですでに父と兄は事故死している。

    弟のユジンは寡黙で伯母の心理医師が処方した薬を服用している。持病があり常に激しい頭痛や幻覚に悩まされている。
    母は残ったユジンを見守り世話を焼く。ユジンはそれを締め付けだと感じ解放されたいと思っている。

    試しに薬をやめてみると、新しい幻覚を見るが、一方で解放された自由な時間を生きていることを発見する。
    母から薬から、宿業からの解放は、ユジンに新しい世界を見せた。
    ただ副作用でその時間の記憶が無くなる時がある。

    物語はそういったユジンの開放感が悪の泥沼に沈んでいく様子が生々しく、それにかかわる母や叔母や兄の代わりに養子になったヘジンを邪魔にして消していく様子が緊迫感を増す、ユジンの病的な心はどこに行くのか。
    作者の組み立てたストーリーの流れが徐々に危険をはらんで進んでいく。



    なにか雰囲気の違う朝、ドアを開けた途端、血だまりを見て目を覚ます、残酷極まりない幕開けから、ユジンの消えた記憶を徐々に掘り起こしていく。母を殺したのは自分なのか。

    かすかに震える母の声が聞こえてきた。
    (おまえは……)
    (ユジン、おまえは……)
    (この世に生きていてはならない人間よ)

    途方に暮れた。何に、どこから手を付けていいのかさっぱりだった。何かをすること自体、とてつもなく恐ろしかった。
    この世には、目をそらしたり拒んだりしてもどうしようもないものがある。この世に生まれたことがそれであり、誰かの子であることがそれであり、すでに起きてしまったことがそれだ。
    そうかといって、自分の最後の主権だけは取り戻したい。このふざけた状況がどんな終わり方になろうと、自分の人生は自分で決定したい。そのためには、どんな手を使ってでも、闇の中に閉じ込められた二時間半をぼくの前にひっぱりだすのだ。


    彼は自分を肯定する。恵まれた家庭だったはずが自分を監視する母の檻だったと。

    時間と共に明らかになるユジンの病的な精神は、母の日記から過去の出来事を知り、真実の自分の心に踏み込んでいく。


    物語の構成が面白い。恵まれた暖かい家庭が崩壊し、残った母子の関係が緊迫度を増していく。ユジンが過去を知る手掛かりになる母のノートが効果的に挿入され、冷たく縛り付けていた母の愛も、既に手遅れの形で少しずつ過去が拓けていくのも興味深い。

    まだ事件も事故も起こらない長閑な家庭の風景の中で、悪と罪が芽ぐみつつあった出来事も効果的で、そう来たかとただのミステリでない種明かしもよくできていた。
    韓国女性作家、素晴らしい、恐るべし。

  • 血の臭いで目覚めるとそこには母の死体があり…というサイコサスペンス。

    舞台はほぼずっと家とその周辺だけで、登場人物も身内だけ。
    目覚めたとき前夜の記憶がなく、なぜこんなことになってしまったのか過去を振り返りながら徐々に真相が明らかになっていく…というような展開。

    もっとアッといわせる展開かと思っていたけど、序盤からこうなるのでは?と想定していた展開とラストだったのでちょっと肩透かしをくらったような気にはなった。
    部分部分で手に汗握る展開にはなるけどすこし薄かったように思う。

    派手なハラハラドキドキを求めるている人より、サイコパスの思考に添って淡々と読み進めるのが好きな人に向いてる話かも。
    最後のあたりは『太陽がいっぱい』をなんとなく思い出した。

  •  朝、目を覚ますと、母親が首を切られ死んでいた。ユジンはその夜、癲癇の抗発作薬を服用していない所為で記憶が曖昧で自分が母親を殺したのでは無いかと思い誰にも助けを求めず思案していたが、ひとまず死体を屋上に隠し母親は旅行で不在という事にする。

     ユジンの母親と叔母は、ユジンの父親や長兄が亡くなった事も有り異常な過干渉でユジンはストレスを抱えている上に抗発作薬を服用していない事で気分が高揚し昨晩は、海岸まで散歩に出掛け、帰宅して母親と揉めて剃刀で首を切って殺した様な気がする…

     更に今朝のニュースでは、海岸で女性が刃物で殺されたらしいが、ユジンの手には見知らぬピアスが有った。

     項を追う毎に、次第に明らかになってゆく殺人者の姿とユジンの苦悩、恐らく大半の読者が想像するであろう犯人像にストーリーはその動機の肉付けをしながら進む。凶悪なのか精神異常なのか何とも言えないが、犯人の生立ちに憐れみと僅かな共感を覚えてしまった。

  • ミステリーの中にサスペンス要素が入った感じの内容かな…?最初は冤罪をはらす内容かと思いきや、主人公のサイコパスなところが現れていって怖かった。ページをめくるたびにゾクゾクする感じ。本で体験できる醍醐味!ただ表現がまわりくどいから前半で心折れそうになった…笑 

  • 茂木健一郎さんがどこかの本でオススメしていたこの作品。
    随分と時間がかかってしまいましたが、「種の起源」読み終わりました。

    ダーウィンの種の起源ではなく、韓国の作家「チョン・ユジュン」さんのミステリー作品です。

    ミステリー作品というか、サイコスリラー的な内容。
    主人公の心情やその行為の内容が克明に描かれており、、ドキドキしながら読みました。結構グロテクスな表現の部分が多く、読みすすめるのが辛かった。。。

    どうしてダーウィンの進化論が述べられている種の起源と同じ題名なんだろうかと思ったけど、著者のあとがきで理解しました。

    人の中に潜む悪の種、それを克服する事が進化につながると言うこと。

    ストリー的には「やっぱりそうなってしまうのか」という、ある意味納得の行く内容でスッキリはしたけど、ラストシーンにて、主人公は悪の心を超越できたのだろうか?それとも。

  • 一人の人間の中に芽生える悪。それが育ったあとの狂気。人を殺しながらもどこか現実感の薄いこと。淡々と実行しているような感情の動き。静けさの中にある意識と無意識を行ったり来たりするような心。誰にでも悪の種はあるのか。記憶の奥深くに沈んでいた本当のこと。日常の中に存在して身近にあるような怖さを感じた。韓国ミステリーがこれからもどんどん読めるようになると嬉しい。

  • めちゃめちゃ怖かった。読み進めるごとに増す恐怖感に怯えながらページめくってた。

  • この手の本は読んでて飽きない。過去の回想が多くて少し飛ばしながら読んだが、後半から面白くて一気読みした。最大の敵は自分。

  • 純粋な悪だった。
    「人間が常に「正解」を選ばないのは、それが不都合だからだろう。」

  • 韓国ミステリーを初読了
    次は『あの子はもういない』に進むかな

  • うむむ

  • ハン・ユミンは血の匂いで目が覚めた。ベッド・カバーからなにからなにまで、べっとりと血痕がついていた。床にはドアからベッドまで足跡がついている。そして電話が鳴りだすr。ヘジンからの電話だ。お母さんはどこだという。なんでも夜中に着信があったという。家で何かあったわけじゃないよな?と問う。ユミンは状況が分からずに、ヘジンからの電話を切った。何が起きたのか?自分で探りながら、記憶を取り戻す過程で自分がサイコパスだったということを思い出す。悪人とはなんであるかを問う。

  • 世界が分断されたせいか話題になっても意味がない

  • 原題の英語は「the good sun」いい息子。25歳の元水泳選手ユジンが、母とおばを殺し、最後には友人であり義兄であるヘジンまで殺してしまう。そもそも子どもの頃には兄のユミンを殺しているし、母の前には道すがら面識のない女性も殺している。
    自分がその人を殺した事実とは別に、たとえば兄を懐かしんだり、兄をおもう母のことを考えたりしている。かといって自分がやったことを忘れたわけではない。
    ヘミンまでは殺さないんじゃ?と思っていたらふつうに殺した。ヘミンか自分かを選ばないといけなくなったから。
    極限状態の時の体の描写がうまかった。痛みや熱や、目にうつるものも、分かりやすく、激しく書かれていた。特におばを殺した後から、ヘジンにばれる前後くらいの描写がすごくよかった。

  • ある朝、ユジンは血の匂いで目覚める。また発作が起きたのか。気がつけば、血塗れの自分と母の遺体。昨晩、一体なにがあったのか。発作により記憶をなくすことがあるユジンは、真実にたどり着けるのか。

    いつだかの七福神で紹介されていたもの。目覚めしサイコパスといいますか、なんと言いますか。
    ちょっとメメント風でもあり、なかなか映像向きな感じもしました。と思ったら、漫画化されているみたいです。

    全体としては、記憶が甦るにつれ、自分の異常性に自覚的になって行く感じが面白くもあり、残酷でもあり。
    ヘジンに対する特別な感情を随所にのぞかせつつも、どっちをとるかって言ったら当然自分だよね!ってためらいないとことか、完全にサイコパスとして覚醒してて、うーん、恐るべし、てなりました。

    なお、伯母さんに「ユミン」て言われたところだけがよくわからなかったんですが、「ユミンを殺したのもあんただったのね」ですかね。

  • サスペンスとしては面白い。どんどん読める。ただ表現が回りくどくてかったるい。あとサイコパスの内面を主人公視点で描く発想は面白いのだけど、ちょっと表面的に感じた。

  • 2019年8月21日図書館から借り出し。まあまあかな。

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著者プロフィール

長編小説『私の人生のスプリングキャンプ』で第一回世界青少年文学賞、『私の心臓を撃て』で第五回世界文学賞を受賞して文壇デビュー。
長編小説に『七年の夜』(カン・バンファ訳、書肆侃侃房)、『28』、『種の起源』(カン・バンファ訳、ハヤカワ・ポケット・ミステリ)『ジニ、ジニ』、エッセーに『チョン・ユジョンのヒマラヤ幻想彷徨』などがある。

「2021年 『韓国の小説家たちⅡ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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