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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784150019501
作品紹介・あらすじ
身に覚えのない罪を着せられて、ニューヨーク市警を馘になった刑事。十年後、私立探偵となった彼は、かつての自分と同じように冤罪で苦しむジャーナリストの事件を引き受ける。一方、自身の事件についても新たな事実が浮上し……エドガー賞受賞の傑作ミステリ
感想・レビュー・書評
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今のこの国のように、役人や警察が民衆のために働くのでなく、自分たちの利権を守るために働くのが当たり前になってくると、頭の切れる警官なら自分が正規のルールに従って動くことが自分の所属する集団の中にいる他の者の目にどう映るか、だいたい分かるだろう。法や正義を盾にとって、いつか自分に害を及ぼすことになるだろう相手に、本心を明かすことはなくなり、遠巻きにして眺め、警戒するに決まっている。
独善的でなく、周囲に気を配れるだけの器量さえあれば、腐った林檎でいっぱいの箱の中に入っていたら、自分だけいい匂いをさせているのがどれだけ危ういことか気づけるはずだ。ところが、自分の腕に自信があり、周囲の助けを借りることなどちらりとでも考えたことのない男には、それが分からない。張り切って仕事をすればするほど、お偉方の足元をすくうことになっていることに。
ジョー・キング・オリヴァーは十年以上前に、罠にかかった。その頃は自分の性衝動を抑制することができず、逮捕に向かった相手の色香に負けて、情を交わしてしまったのだ。強姦罪で訴えられた夫に、妻は怒りのあまり保釈金を払うことを拒否。檻の中で刑事がどんな目に遭うかはよく知っている。殴られ、顔を切られ、小便をかけられても、看守は何もしてくれない。親友の刑事が手を回し、隔離棟に移されたが、八十日余りそこで過ごすうちに元刑事は犯罪者へと変貌した。
一度失ってしまった誇りや気概はなかなか戻ってこなかった。十年余りを無気力に過ごしたある日、探偵事務所に手紙が届き、その翌日若い女が捜査の依頼をするために訪れるまでは。手紙の差し出し主はかつて自分を陥れたあの女で、過去を悔い、いつでも証言台に立つと告げていた。電話すると麻薬所持で逮捕され、釈放する代わりにジョーをハニー・トラップにかけるようにコルテスという刑事に指示されたと語った。
ウィラという女は弁護士だった。刑事殺しの罪で死刑囚となった活動家のフリー・マンの弁護をする弁護士ブラウンのもとで働いていた。彼女はブラウンが急に態度を翻し、熱が冷めたことにいら立ち、調査を依頼しに来たのだ。マンは少年少女が性奴隷として働かされている組織の壊滅を目指して活動していた。ウィラはそういうマンに心惹かれていた。ジョーは、警察が一枚噛んでいることに、自分の事件との共通点を認め、事件を引きうける。
自分を陥れた刑事を突き止め、復讐し、名誉を回復して復職するための行動と、マンの刑事殺しの事実を暴くための行動が、同時進行で綴られる。話は錯綜し、次から次へと芋づる式に新しい登場人物や手がかりが現れる。十年前とちがうのは、一人で行動しようとしなくなったことだ。警察内部に敵がいるので、親友のグラッドストーンの手を借りるわけにはいかない。しかし、探りを入れたら、敵はすでに動き出していた。独りで立ち向かうには危険すぎる。
ジョーが頼ることにしたのは元凶悪犯で、今は時計の修理屋をやっているメルカルトだった。以前、銀行強盗の従犯で逮捕した際、メルが仲間を売ったと偽証するよう検事に促されたが、ジョーは肯んじなかった。その結果何年か冷や飯を食わされた。メルカルトは、そのことを恩義に感じていて、何かあったらいつでも声をかけてくれ、と事務所に来たことがあった。今は足を洗ってはいるが、裏の世界に顔が利き、荒っぽい仕事も平気でやってのける頼りになる男だ。
メルカルトの登場により、謎解き主体かと思っていた物語は少し趣きを変え、ノワール色が濃くなる。私立探偵の調査は関係者の話を聞いて、事実を明るみに出してゆくことだが、元凶悪犯のやり方はかなり荒っぽい、自分のアジトである南北戦争当時、逃亡奴隷を逃がすために作られた地下鉄道の駅舎に拉致し、拷問によって吐かせる。片脚を撃たれて、次は左手を撃つと脅されたら、大抵の者はしゃべるに決まっている。
ジョーがはめられたのは埠頭でヘロインの売買をやっていた男とコルテスという刑事が組んでいたからだ。ジョーはその男を逮捕する寸前だった。それで罠にかけられたのだ。しかし、当時の証拠はすべて破棄され、関係者は今ではニューヨーク市や警察の幹部級だ。私立探偵一人を闇に葬ることなど簡単にやってのける。自分の復職は叶わない。マンは相手に狙われ撃ち返しただけだったが、それを裏付ける証拠はなく、判決を覆すことはできない。
八方塞がりの局面を転回するのは、やはりメルカルトだった。あっと驚く方法で一件は幕を引くことになるのだが、通常のノワールやクライム・ノヴェルの解決手段ではない。ここまで読んできた者としては快哉を叫ぶ気持ちにはなれない。主人公はこれで溜飲が下がるのだろうか。いくら社会が腐っているからといって、自分の生き方をそれに合わせる必要はない。何かもっと別の方法はなかったのだろうか。ああ、もやもやする。ただ、読み物としては面白く、リーダビリティの高さは保証する。チャンドラリアンには向かないだけだ。 -
久しぶりの一人称の探偵小説。
場面場面が気持ちいい。
ハードボイルドのテンプレを押さえているように思える。
それにしても登場人物多すぎ。翻訳物ばかり読んでいるけれど今回は難渋した。
巻頭の登場人物欄をもっと充実してください。 -
勢い続かず
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登場人物が多すぎて混乱。それぞれの人物の描写は少なく、愛称も出てわかりにくい。
一般的評価は高めのようだが、私には合わなかった。 -
びっくりするほどハードボイルドだ。
読んでいると、80年代が舞台かと思うようなハードボイルドものだが、i-padなんかが出てきて現代に引き戻される。
複数の事件が主人公を軸に複雑に交差するため、ストーリーを見失うこともあったが、少し前のページに帰りながらも面白く読めた。現代ニューヨークの人種間の感度や、暴力の匂い、組織犯罪の影がうまく書かれており、また、ハードボイルド小説の魅力である、主人公の骨太な矜持が魅力的な小説だ。 -
身に覚えのない罪で警察をクビになり現在は探偵として生きるジョー。ある事件を追うなかで自分の過去とのつながりを見つける。ハードボイルドの王道のような、でもそれだけではなく今の空気もあって面白い。とても読み心地がよくてずっと読んでいたかった。
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身に覚えのない罪を着せられてニューヨーク市警を追われたジョー・オリヴァー。十数年後、私立探偵となった彼は、警察官を射殺した罪で死刑を宣告された黒人ジャーナリストの無実を証明してほしいと依頼される。時を同じくして、彼自身の冤罪について、真相を告白する手紙が届いた。ふたつの事件を調べはじめたオリヴァーは、奇矯な元凶悪犯メルカルトを相棒としてニューヨークの暗部へとわけいっていくが。心身ともに傷を負った彼は、正義をもって闘いつづける―。
「ブルー・ドレスの女」という題名は記憶があるが、残念ながら未読。確か映画化されたはず。
題名も、表紙も、そして帯の惹句もいい感じだったのだが。登場人物の出入りが激しくて、よくわからなくなってしまったのは、読み手の責任ですね。この手の私立探偵小説が普通に読めた時代が懐かしいです。 -
主人公のオリヴァーは元警察官。
ある事件ではめられて警察を追われ、妻にも離縁され、生活をすべてを失った。
今は探偵として冴えない日々を送っている。
唯一の救いは娘が味方であること。
まだ高校生だが、探偵事務所の秘書としてオリヴァーを支えている。
原寮が「これが、人生を描くということだ」 と推薦文を書いていたので、チャンドラーばりのガチなハードボイルド小説かと思っていたが、オリヴァーは自分の失敗を忘れられず、娘に支えてもらいながら生きている等身大の、どちらかと言うと駄目な人生を歩んでいる主人公として描かれる。
だが、過去を精算できるチャンスを掴み、腹を括って命をかけて向き合っていく。一緒に立ち向かってくれる悪人メルカルトや祖母のキャラクターがいい。
オリヴァー自身にはあまり自覚が無さそうだが、周りの人たちが応援したくなるような生き方をしている。真摯に生きているのだ。正しいことは正しい、自分が信じた真実にブレない行動をする。そこに共感するさまざまな人たちが惜しみない協力をしてくれ、オリヴァーは自分の人生を取り戻していく。
まさしく、「これが、人生を描くということだ」なのだろう。
人生、いい時もあれば悪い時もある。一度の失敗で人生をあきらめるな。一人ではない、一緒に乗り越えてくれる仲間がいる。ハードボイルド風なある男の成長物語だ。 -
ザ・ハードボイルドという体裁の探偵小説。
10年前、何者かにはめられ、無実の罪で警察を追われた主人公が、一人の黒人ジャーナリストの冤罪を晴らすための依頼を受ける。その流れのなかで、自分の冤罪事件の黒幕を追う流れに繋がっていく…というストーリー。
ハードボイルドらしく、最後は全てスッキリ解決、といかないリアリティのある終わり方ながら、
どこか希望を感じさせる所が良かった。 -
ハードボイルドの 思考行動 と文体
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どうしようもなく頑固で不器用な男が、どんどん自分を追い詰めて、自分でしんどくなっていく「カッコいい」物語。
原尞さんが薦めているのだから、読まないわけにはいかないでしょう。 -
2019年度エドガー賞最優秀長篇賞に輝いたハードボイルド探偵小説。ハニートラップに嵌り、警察を追われた主人公(現私立探偵)が自身の濡れ衣を晴らすべく奔走する本筋に、黒人活動家の冤罪事件の調査依頼が絡み合う錯綜したプロット(お家芸的)だが、最後は上手い具合に着地する。何より厄介なのは登場人物が多過ぎる上に、その内数名が偽名を用いているという白目を剥きそうな煩雑さ。ハードボイルドにおける所謂【ご都合主義的展開】に関して採点が甘めになる私にとっては、些か不満に思う部分はあれど、最後まで存分に楽しめる作品でした。
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2019年エドガー賞最優秀長編賞(アメリカ探偵クラブ賞)受賞作です。
13年前ニューヨーク市警の刑事だった頃に自動車窃盗容疑の女宅へ逮捕に向かったが、根っからの女好きのジョーは逮捕せずに男女の関係を持ってしまった。その事が隠し撮りされ告発されて刑務所に送られた。
出所後、私立探偵を始めた。
ナタリ・マルコム、ジョーを色仕掛けで陥れた女から謝罪の手紙が来た。警察官に脅されてジョーを嵌めたと、
警察官を2人殺を殺害した容疑者マンの弁護士のインターン弁護士がマンの冤罪を晴らす様依頼が入る。ジョーは刑事時代に逮捕した銀行強盗のメルカルトと組んで調査に当たる事となった。
マンの冤罪を晴らす事と自分を刑務所へと陥れた者を探し出す過程が様々な関係者を当たり情報を整理し、使える手は犯罪であろうと躊躇なく実行し、やがて黒幕が見えて来た。
ストーリーは軽快で舞台のニューヨークの雰囲気も感じられ面白いですが、如何せん登場者が多すぎる上に、その殆どがチョイ役なので直ぐに場面が代わりまた、新たな輩が出てくる。巻頭の''登場人物一覧''には殆どが記載も無く、ストーリーの理解が浅いままで項が進み真相やマンの最後の行動もアレッみたいな感じで終わります。。。何だか消化不良です。 -
「濡れ衣への復讐のために耐え忍ぶ」という主人公の境遇から、デュマのモンテクリスト伯を彷彿とさせられる本書。作者のウォルター・モズリーは、本作に限らずギャング、ヘロイン中毒者、傷ついた魂、そして不屈の精神など、大都市ニューヨークのサバイバルをテーマとした作品をリリースしています。一連の作品でモチーフとなるのは、不正や腐敗の歴史を認めようとしない警察の暗部で、いずれも説得力のある物語は期待を裏切らない出来でした。今回も主人公のオリバーが自身に仕組まれた陰謀に翻弄されつつ、並行して発生した別の事件も交錯するという風に、いい話が展開されます。ですが、今作で私が一番興味を持ったのはストーリーそのものではありません。それはオリバーの世界観と作者の描写の仕方にあります。例えば、主人公のジョー・オリバーが新しい人に会うときには、肌の色だけでなく、その人が何を着ているのか?など、かなり細かい説明をするんですよね。このようにして、大都市ニューヨークの暗部を露にするような世界観の描写のディテールも本作の大きな魅力です。
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あの「ブルードレスの女」作者の久々の邦訳ということで、書評家の評価も高く期待して読み始める。主人公がニューヨーク市警を追われた経緯や刑務所での悪夢のような経験など、導入は魅力的。登場人物が個性的に描かれてはいるものの、次から次へと現れては一旦消える(もちろん後で再登場)ので、冒頭の登場人物一覧に戻ること数度、しかしそれでも思い出せずに本文から登場箇所を探すことも幾度…。途中でやめなかったのは、気の利いたラストに期待したから。それには応えてくれたかな。
最近わかりやすい筋立てのミステリーや、ドラマTHE Wireとかの見過ぎで、複雑な物語を楽しめなくなっているのか?と自分が心配になる。 -
敵がいったい誰なのか?この手の小説を読むとき普通はそこを意識していると思う。ただ、その謎の敵がわからないまま次から次へと登場人物がふえるため、私には少し読みにくかった。端役が多すぎるというか、名前がなくてもいい登場人物が多かったという感じかな。
アメリカの探偵小説を読み慣れている人向きかもしれない。
後、エンディングは、好みではなかった。Sキングに似たような結末があるが、読後感は、キングの方がぜったい良い。
著者プロフィール
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