テラ・アルタの憎悪 (ハヤカワ・ミステリ)

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  • 早川書房 (2024年1月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (376ページ) / ISBN・EAN: 9784150019990

作品紹介・あらすじ

獄中でユゴーの『レ・ミゼラブル』と出会い、犯罪をやめ警察官となったメルチョールは、カタルーニャ州郊外の町テラ・アルタで、富豪夫妻殺人事件の捜査に当たる。夫妻は拷問の末に惨殺されていた。メルチョールは夫妻の事業には裏があることを直感するが……

みんなの感想まとめ

物語は、スペインの田舎町テラ・アルタで発生した富豪夫妻の凄惨な殺人事件を中心に展開します。主人公のメルチョールは、かつての犯罪歴を持ちながらも、獄中で『レ・ミゼラブル』と出会い、警察官として新たな人生...

感想・レビュー・書評

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  • スペインの田舎町、レ・ミゼラブルを愛する刑事が富豪夫婦の殺害事件に挑むが… #テラ・アルタの憎悪

    ■あらすじ
    スペインのテラアルタで発生した事件、村一番の富豪夫婦が拷問して殺害された。かつての投獄され、書籍『レ・ミゼラブル』と出会いによって刑事になった経緯があるメルチョールが捜査にあたる。
    しかし決め手となる証拠がでず、捜査が打ち切られようとしてた。彼は独断で捜査を進めようとするも、政治力によって試みが困難となっていき…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    不思議な魅力がある主人公と、スペインにある田舎町の暗部が見え隠れするミステリーです。

    物語の筋としては大きく二つで、富豪夫婦の殺害事件の捜査と刑事メルチョールの過去を巡る回想。もちろん本筋は前者ではあるんですが、作品としての重心はむしろ後者にある感じですね。

    過去犯罪に手を染めるも、『レ・ミゼラブル』と出会いから今まで持っていなかった価値観が芽生え、人生を切り開いていく。ただ人間としての気質は変わることはないのが魅力のポイント。心情描写もセリフも荒ぶることなく淡々と書かれているのがまた良くて、静かだけど強い存在感を残していくんです。

    また警察の同僚たちや、友人や家族たちの描写もいかにも居そうな人たちばかりだし、じっくりと物語に浸ることができました。

    事件の謎解き自体は想像したほど展開はしませんでしたが、終盤に語られる事件の真相や背景にはなかなかの戦慄が走る。昔にどこかの映画で見たようなシーンが目に浮かんできて、人間の「憎悪」が伝わってきました。

    ■ぜっさん推しポイント
    人間がいかに自分中心の価値観で生きており、他人の都合を考えていないかを示唆してくれる。絶対の正義は存在せず、正義と悪には相対性があることを理解しないといけないですね。汲汲として疲弊している人ばかりの現代、色んな人に伝わってほしいと思いました。

  • 惨劇から始まるスペイン産ミステリ。
    スペイン、珍しいな。
    あんまり思い浮かばないな。
    『風の影』とか?

    ならず者あがりの刑事メルチョールが”何も起きない町”、”旅の途中で通りすぎるだけの場所”テラ・アルタで出くわした凄惨な事件。
    この町きっての富豪で町の産業を一手に握る「アデル美術印刷」の夫婦が屋敷内で拷問を受け、無惨な姿で殺されているのが発見された。
    誰が、何のために?金品目当てか、怨恨なのか?

    おどろおどろしい事件を巡る調査の日を追う物語が続くのかと思いきや、かなりのページを割いて主人公の過去に飛ぶ。
    かたや事件究明の方はするすると手の中を溢れ落ちて行き、進展らしい進展は起きないまま過去の話へと成り下がっていく。。。

    凄惨な事件を呼び水にする物語は、その事件の裏に潜むきな臭さだったり、犯人のサイコ性だったりがメインになるのが常なところ。
    タイトルや装丁の雰囲気からもまさにそんなイメージを想起するところだが、意外にもその辺はあっさり目なところが新鮮。
    むしろ、メルチョールの過去との決着を目指す物語や、服役中に出会った『レ・ミゼラブル』への賛美を中心に展開する人生観が興味深い。

    「小説の半分は著者が書いているが、残りの半分は読み手が埋めるんだ」
    中盤以降、カミュ『異邦人』、ボリス・パステルナーク『ドクトル・ジバゴ』、ギュンター・グラス『ブリキの太鼓』、ジョルジュ・ペレック『人生使用法』なんかも言及され始め、警察小説×文学の様相を呈してきて乙。

    メルチョールのジャベール(『レ・ミゼラブル』に出てくる悪徳警官)評。
    「彼は偽りの悪人なんだ。そのことに気づかないか?そして偽りの悪人は、真の善人なんだ」
    「そう考えると、偽りの善人もいるってことね」
    「もちろんだとも。それが真の悪人だ」

    そうした人生観や辿ってきた道のりがあってこその喪失の重さ、正義とは何か、復讐とは何かを問う最終盤。
    「憎む相手を殺すために、自分も毒を飲むようなもの」の言葉が胸を刺す。

    色々詰め込んだ割にはとっ散らからず、それぞれのカケラがそれぞれの厚み色味を帯びてうまく纏まっていた印象を受けた。
    とにかく、ことあるごとに読みたいなーと思っていた『レ・ミゼラブル』、絶対読まなきゃという気に改めてさせてくれた。

    続編もあるようなので、是非に邦訳してもらいたいもの。

  • スペイン発の警察小説でスペインの歴史を絡めつつ、「レ・ミゼラブル」を主に文学的側面も強いミステリー作品。

    スペインの田舎町、テラ・アルタでアデル美術印刷の社長夫妻が拷問の末に殺されるという凄惨な殺人事件から幕を開ける。アデルはテラ・アルタの経済発展と雇用創出の功労者されていたが、なぜ拷問という残虐な方法で殺されたのか。

    この殺人事件が一つの軸で、事件を追うテラ・アルタ署の警察官であり主人公のメルチョールの過去がもう一つの軸となってストーリーが編まれていく。

    メルチョールは過去に犯罪に手を染めて刑務所に入っていた。その獄中でフランス人囚人との出会いから「レ・ミゼラブル」を知り、この作品に登場するジャベール警部を英雄として尊敬するようになる。そして同じく獄中にいる間に唯一の家族である母が何者かに殺されるという事件が起きる。この2つを契機にメルチョールは警察官になることを決意する。

    アデル夫妻の事件を深く追うメルチョールはやがて自身も悲劇に巻き込まれていく。彼が信奉するジャベールの人物像の揺らぎや正義とは何か、悪とは何かという問いが葛藤を克明に描き出している。
    事件は一度暗礁に乗り上げかけたが、その後の展開は最後まで読み切れないスリルがあって気が抜けない面白さがあった。

    極端な善は悪に転じてしまう。
    絶対的な正義は、絶対的な非正義にもなり得る。

    善と悪の極端な形は実は根底で通じているのかもしれない。

  • スペインの中央とも揉めている曰く付きの街が舞台。レミゼラブルを読む事で更生した刑事が主人公。その地の富豪夫婦の惨殺死の謎を解明すると言うミステリだが、その要素は低い。むしろ主人公の過去や思いを描いてる。濃いイメージの作品だった。

  • スペインの作家ハビエル・セルカスの作品。初めて知った作家であり、予備知識なく読み始める。
    主人公のメルチョールは娼婦の母に育てられ、犯罪に手を染めることで刑務所に入るが、そこでユゴー作の'レ・ミゼラブル'を知り、母が殺されたことを契機として警察官として生きる道を模索する。風変わりな弁護士の助けもあり、希望が叶い、警察官として働き始めるが、テロリストの犯罪に直面し、全員射殺で未然に防ぐが、復讐から保護されるため、田舎町テラ・アルト勤務へと移される。犯罪とは無縁と思われたこの町で、資産家夫婦が惨殺死されるという事件が発生、母殺害の犯人を見つけ出すこともできず、資産家殺人の犯人探しも行き詰まっていく。主人公の過去の出来事と、現在進行中の捜査と交互にストーリーが展開していくが、'レ・ミゼラブル'から受けた正義に対する思いと、次々と判明していく意外な事実との葛藤が本書のテーマとなって結実していく。
    謎解きと直接関係なさそうな話が現れてくるので、まだるっこしく感じるが、ストーリーに深みを与えている。最後まで何が起きるか予断できない内容であり、読み応えがあった。

  • 獄中でユゴーの『レ・ミゼラブル』と出会い、犯罪をやめ警察官となったメルチョールは、カタルーニャ州郊外の町テラ・アルタで、富豪夫妻殺人事件の捜査に当たる。夫妻は拷問の末に惨殺されていた。メルチョールは夫妻の事業には裏があることを直感するが……。

    極めて猟奇的な場面で幕を開けるこの作品、単なる警察小説ではありませんでした。読書が人生を変える力のある営みであることを改めて実感しました。残りの二作も期待しています。

  • メルチョールが警察官になった特殊な過去が細やかに描かれてるのがほかのミステリーとは違う
    きっかけが母を殺されたことと
    「レ・ミゼラブル」
    ただメルチョールの人生を描きすぎてアデル夫妻の殺人事件がぼんやりしてる
    やや冗長に思いながら後半は読んだ


  • 主役の描写はいいが筋が弱い。

  • 初めて読んだスペインのミステリー。
    ミステリーというよりは主人公の生き様がメインで、事件も捜査していく様子も特に斬新さがあるわけではないが、読みやすく主人公も魅力的だった。続編も読んでみたい。

  • 2024年の3冊目は、スペイン産ミステリーです。
    スペインのミステリーを読むのは、もしかしたら初めてだったかもしれません。かなり良いです。
    主人公は、「レ・ミゼラブル」によって、人生が変わった男メルチョール。獄中で「レ・ミゼラブル」を読んだ事で、ジャベールに心酔し、母親を殺した犯人を捕まえる為に警察官になります。4人のテロリストを射殺した事で一躍、ヒーローとなりますが、テロリストからの報復を恐れた警察上層部が、カタルーニャのテラ・アルタへの移動を決めます。メルチョールは、テラ・アルタで最愛の人にめぐり逢い、娘も生まれます。
    そのテラ・アルタで、美術印刷会社の社長夫妻が、拷問され殺されているのが発見されます。この事件の犯人は、想定の範囲内ですが、真相部分にスペインの歴史の暗部を加えている点が、重厚感を加えています。
    そして何よりも、メルチョールと「レ・ミゼラブル」のジャン・バルジャンの人生が重なっている所が、素晴らしいと思います。メルチョールが、ジャベール的生き方から、ジャン・バルジャン的な生き方に変わるラストが、心に染みわたります。
    ☆4.7

  • トリックだのアリバイだの、あるいはアクションだの、よくある警察小説とは一線を引いている。

    レ・ミゼラブルを織り交ぜながら、主人公の半生と黒幕の心理を深く描く。
    絶対的な正義は絶対的な非正義になり得る。そこはよくわかったが、集中してスポットをあてたので、一転ほかの登場人物が薄くなりがちなのが残念。

    続編があるそうだけど、妻も友人もいなくなって、どう展開させるのか気になるところ。

  • ストーリー自体は好き。ただ最後の黒幕の話は、黒幕自体にそうするメリットがなく、話の説明のためにそうした感がある。

  • 面白かった!レミゼの折り込みがそこそこにあってレミゼを知っている人間としての面白さもあったのだけど、それ以外にも主人公メルチョールの生い立ちが事件の合間合間に挟まれていて、そこが一人の孤独な男が愛を知るようになる迄の道のりとしてまた面白い。事件そのものは謎もありつつ比較的大きく動かないのだが、主人公の回想を挟みながら進むので事件そのものが回想と重なり合うことで重層感が出る。
    レミゼ知らなくても映画一本見た様な満足感のある本なんだけど、レミゼ知ってたら主人公のバルとジャベのハイブリッド感とか素晴らしいのだよ。キャラとしてはジャベが一番好きな主人公だけどその生い立ちにはバルを踏襲している描写もあったりね。レミゼ読み返したい。
    主人公は妻と本を通じて知り合ったのだが、本好きの二人が本の話をしているシーンとかじんわり暖かくてそういう意味でもこの本は好きでした

  • あらすじに惹かれて読み始めたのだが、思ったより事件の深掘りがなくてその点は期待と違った。
    ただ思いの外、レ・ミゼラブルを絡めて主人公が居場所を見つける展開の後半はじんわりと温かい気持ちになった。

  • 次だな

  • SL 2024.7.16-2024.7.20
    事件の捜査が雑。

  • 日本、USA、イングランド、スウェーデン、フランス、インド、そしてこのスペインと各国の推理小説を読みました、どの国の警察官もブラックな職場です。

  • 売春をしていた母。父親は誰だか分からない。貧困のなかでグレていく自分。とうとう捕まり刑務所に入れられてしまったある日、フランス人の受刑者と会う。その人に勧められた『レ・ミゼラブル』そこから彼の人生は変わった。
    警察官となってある田舎町で勤務中、田舎では起こり得ないほどの大きな事件が勃発する。それはこの町のなかでかなりの富豪である夫妻と家政婦が惨殺されるというもの。ただの物取りにしてはかなり惨く、一種の儀式にも感じるような有り様。彼のこれまでの人生と殺人事件が交互に進行し、全貌が見えたときに譲れないもの、善悪を突きつけられる。
    ものすごくチープな物言いになってしまうけれど、復讐というものの持つ恐ろしい力と、巡り巡って自身に降りかかるということを田舎の閉塞的な空気のなかでじわじわと感じさせる。捜査のき行き詰まり感、人生の行き詰まり感、完全に分けられない善悪という概念。最後まである意味ではすっきりとはしないけれど、様々なものを失ってきた主人公がその人生も含めて決断してきたことに幸あれと願わずにはいられない。

  • スペインの田舎町テラ・アルタで富豪の夫婦が惨殺される。元犯罪者の経歴を持つ刑事メルチョールは捜査グループに任命され捜査するが、手がかりは何も見つからない。
    所々でメルチョールの過去も語られるのだが、彼は刑務所で読書に目覚め『レ・ミゼラブル』に感銘を受け警察官を志すのだ。
    一方、テラ・アルタの事件は解決されず捜査は終わってしまうが、メルチョールは納得がいかずに周囲から反対されながら密かに調べ続ける。そこで思いもよらない悲劇が起きる。
    メルチョールの生い立ちがたっぷり描かれるが、それは事件とは関わりはなく、アンバランスな印象を受ける。また最後に犯人が動機を語るシーンがあるが、正直事件の残虐さに比して軽く感じてしまった。
    モヤモヤが残る読後感だけど、それが新鮮に思えた。

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