さいはてのスターウルフ (ハヤカワ文庫 SF ハ 4-2 スターウルフシリーズ 2)
- 早川書房 (1971年6月30日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150100292
感想・レビュー・書評
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ひさしぶりに『ハミルトン節』(いや『野田節』か?)を堪能。
しかしこのストーリー、インターネットが普及した後の
『ネトゲ廃人』の出現を預言しているようにも読み解けたのが
印象的だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
単純明快な宇宙活劇その2
表紙 7点横山 宏(改訂版)
展開 5点1968年著作
文章 6点
内容 530点
合計 548点 -
2010/7/1購入
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スターウルフ・シリーズの2巻。
ストーリーそのものに関しては特筆すべきものはないのだけれど、初期のスペースオペラとは毛色の違う、ハミルトンの晩年に書かれたこのシリーズは、「老い」が背景になっているのがあきらかに見て取れる。
主人公ケインが所属する外人部隊の隊長ジョンは、普段隊員の前では力強く衰えを見せない態度を取るが、一人になって細かい文字を見るときには、老眼鏡をかけたりする。恒星間飛行してる世界で、老眼治せないのかよとか言わないでねハート達(複数ハート)ここでは当然、著者であるハミルトン自身の衰えを重ねてみてしまうわけだが、このことはむしろ今までのスペースオペラ系作品にない深みを与えている。
一方では、若いケインのウェールズ系の祖先を持ち、宣教師の息子であり、生まれた土地からも育った土地からも忌避されるはぐれものという複雑な境遇にも、ハミルトン自身の抱えてきたアイデンティティの問題が投影されている。
この二人の視点を交互に往復しながらストーリーを展開するという多層的な構成は、キャプテン・フューチャーのようなまっさらなヒーロー者に比べて陰影を落としています。
ただ、メインのストーリーが「宇宙破壊者」と呼ばれた頃の作品群のような大風呂敷ではないために、ややこじんまりとした印象はいなめません。そこを味があると見るかどうか。終盤では異星人と闘争する根拠が消滅してるような気もして、これは適当に手打ちできるんじゃないかというような状況で、アクションシーンに踏み込むのもちょっと変。ハミルトンファンじゃないひとに勧めるかというと微妙かな。逆にハミルトンの作品の軌跡をこまかくたどりたいという人なら必読です。