アンドロメダ病原体 (ハヤカワ文庫 SF (208))

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (436ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150102081

感想・レビュー・書評

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  • マイケル・クライトンが小松左京による名著『復活の日』の第一章で描かれた細菌が蔓延することで人類が絶滅の危機に直面するというエピソードからインスパイアされて書き起こした有名SF映画のノベライズ作品。
    一晩で二人の生存者を残しただけで、小さな村の住人が全滅した原因究明から宇宙から飛来した未知の菌株発見と対処にわたるSF医療ミステリーから一転して施設内に繁殖が確認され、自己診断する保安コンピューターによる蔓延防止の為の自爆が決定されるが、この毒性の強い菌株は核爆発による放射線によって猛烈に繁殖が促進される事を知った主人公が爆破阻止に赴くパニックサスペンスへと展開するストーリーは見事。
    原題の「ストレイン=菌株」はキノコやカビの分類で「病原菌」ではない。多分に邦題命名の際に「アンドロメダ“カビ”の恐怖」では、絶対ウケないであろう危惧から、日本人にはニュアンス的に「病原体」の方が怖いイメージを導き出しやすかったところを狙ったか。原題と邦題の難しさよ。

  • アリゾナ州の小さな村で一瞬にして起こった謎の住民の大量死という冒頭からワクワクする。中盤以降は、地球外生命を研究するネバダ砂漠の地下にある秘密の研究所での、その「アンドロメダ菌体」と名付けられた謎の病原体の真相にせまる科学者チームの緊迫の5日間の話になるが、その研究過程のドキュンメタリタッチの描写が渋い。いささか渋すぎて地味だが、著者が「ジュラシック・パーク」でもテーマにしていた、精緻に組み立てられた筈のシステムが、偶然や人為的なミスなど、ちょっとしたことから連鎖的に破綻していくサスペンスな展開があってまったく飽きない。本の感想ではないが、映画は本作の学術的なエッセンスを絞って、かつ見事な研究所のセットを作り出していて非常に出来がいい。自分で映画監督もやってしまう作者だけに、もともと映像化に映える場面を作り出すのが巧いのだろう。

  • 墜落した人工衛星を回収するため、アリゾナの人口50人ほどの
    小さな町の近くへ向かった軍人がみつけたものは、一夜にして
    全滅していた町の姿。
    そして、回収車の中にいるふたりの軍人もまた犠牲となる。
    原因は?地球外生命体?病原体?
    4人の科学者が集められ、回収した人工衛星と、生き残った胃潰瘍もちの老人と
    生後2カ月あまりの赤ちゃんを、特殊な施設のなかで調査研究する5日間を描く。
    1969年発表の作品・・・そんなに前なの??
    古臭いなんてことはなく、最後までたのしめました。

  • 映画も観た筈だが全く覚えていない。タイトルから勝手にアンドロメダ星雲生まれの未知の病原体が地球を襲い人類が滅亡の危機に瀕するというパニックモノかと思ったが全然違っていた。事件は冒頭でいきなり起こるが物語の大半は研究施設での地味な仮説と検証の繰り返し。主人公はあくまでも病原体であり人間を描いたものではない。ちょっとホーガンの「星を継ぐもの」に似たタッチである。ポピュラー・サイエンス好きには堪りません。読むけど好きとは言えなかった著者が今更ながら大好きになりました^^この後、病原体について少し考えてみる予定。

  • 地上に着陸した人工衛星を回収しにアリゾナ州ピードモントへ向かった兵士たちからの連絡が途絶えた。最後の音声記録によると、町の人びともみな死んでいるようだ。この知らせを受け、陸軍とNASAは国内最高峰の研究者たちによる〈ワイルドファイア計画〉を実行する。細菌学者のストーンをはじめとする4人の科学者たちは、地球外からやってきたと思われる菌株の正体を探るため秘密裡に建設された研究所に集まった。その研究所は微生物に汚染された際に備えて核自爆装置が設置されているのだが……。ノンフィクションの手法で書かれたエポックメイキングなSF。


    "すでに起こってしまった事件"に関する機密文書という体裁で書かれ、この本自体がアメリカ政府によって隠蔽されているという冒頭の設定がまず楽しい。人工衛星の真の目的だったり、研究所に張り巡らされた偽装工作だったり、前半は陰謀論的なワクワクがある(笑)。
    発表当時は「人間的興味が薄い」と批判されたりもしたらしいけど、私はあまりそう思わなかった。ワイルドファイアのメンバーは5人なのに1人は虫垂炎で来れなかったり、みんなが若手のホールをうっすらバカにしていたり、レヴィットが大変な事故につながりかねない発作を保身のために隠していたり、最高の頭脳を持つはずの人たちの欠陥が書かれているのは好もしいと思う。
    とはいえ、通信記録や検査結果の図表などを挿入して科学ノンフィクションのように見せるという、ケレン味たっぷりな仕掛けが一番の見せどころだろう。巻末の参考文献にはストーンやマンチェックの論文まで記載されている。クドいほど細かく描写される検疫システムの"注文の多い料理店"感も笑えるが、当時NASAのおざなりな検疫隔離手順が批判されてもいたそうで、その見識をエンタメに全振りするのがすごい。
    人類が一番最初にコンタクトする地球外生物は微生物になるという仮説を広げながら、実はまだまだ地球に未知の生物がいるというオチも好き。最後の最後はアクションが繰り広げられるのでSFとしてちょっと肩透かしではあったけど、エンタメのサービス精神特盛りの面白さを堪能させていただきました。

  • 図書館で。マイケルクライトンの初期の作品。
    宇宙病原菌により一つの村の住民がほぼ死滅する。
    生き残った老人と赤ん坊はなぜ生き残ったのか?
    科学者たちによる地下での実験が進む。一方で、村の付近を飛行していた飛行機の原因不明の墜落。
    果たして宇宙病原菌 アンドロメダ病原体とはなんなのか?

    最初の方は結構ダラダラ進んで退屈だったけどクライマックスの方はドキドキで面白かった。

  • 『-変異体-』を読み始めたら???
    そして気付いた。オバサンの記憶の中ではこれと『遊星からの物体X』がごっちゃになっていたのでした…

  • 出版当時ならワクワクして読んだと思う。

  • 続編「変異」を読む前の復習として。
    50年前の当時、医学部に在学中だった26歳の新人作家が書いた傑作はまったく色褪せてない。

  • ジュラシック・パークを書いたマイケル・クライトンの初期の作品

    2月から読み始め、通勤電車の友だった。
    徐々に新型コロナウィルスの感染が広がり始めたのと相まって、アンドロメダ病原体との攻防はスリリングで面白いと感じた。だけど2月末頃から予定されていたイベントがことごとく中止になり、今や緊急事態宣言発令中。世の中が小説を超える最中、改めて読書再開。

    科学者が空気感染する宇宙病原体の解明に取り組む様子がドキュメンタリータッチで描かれる。さすがに50年前に書かれた作品とあって、コンピュータに関する記述はレトロに感じる。電話回線しかなかった時代ですもの。それでも当時の科学技術を織り交ぜた内容は色褪せず今に通じていて、とても面白かった。

    アンドロメダ病原体ほど致死率は高くないけど、コロナウィルスは突然変異して人体に影響がなくなることはない。きっと緩やかに共存していくのだと思う。

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