地球の長い午後 (ハヤカワ文庫 SF 224)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150102241

感想・レビュー・書評

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  • SFを読む動機は様々だと思うのですが、自分の発想を一度リセットするという意味では、本著は良著なのではないかと思います。

    遥か先、終わりかけた地球では自転が止まり、昼と夜が固定化し、昼の側では植物が異常な繁栄を遂げて、鳥のように空を飛んだり、人間に命令したり養分を吸い上げたりとまぁやりたい放題。果ては月まで行く巨大植物なんてのもいたり。
    本著の肝は、この舞台装置に尽きるんじゃないかと。著者の想像力は尋常ではないなぁと、感嘆させられます。
    直近の日本SF「コルヌトピア」なんかは、本著から着想を得たりしていたんでしょうか。(同著の方が綺麗に仕上がっている印象はありましたが。。)
    ただ、正直なところ、読み手である自分の想像力が著者に全く追い付かず、一部は情景がなかなか浮かばず。例えば、ソーダル・イーはパプワくんに出てくる魚(タンノくんじゃねーか!)に変換されて、頭の中ではなんだかマヌケなビジュアルになっておりました(笑

    ストーリーについては、あまり感動できず。ある意味では青い鳥のような展開なのだと思うのですが、それには特に共感できないという。。
    主人公の振る舞いも、その他のキャラの個性的すぎる設定も、あまり明るさを感じない描写も、どうにも共感できないのですが、とにかくこの世界の設定については通常の想像力の枠を超えてきている感じで、感心させられます。

    結構勿体なく設定を消費した印象があるのですが、実は全て何らかの伏線で、展開上の役に立っていたりするんでしょうか。。舞台設定が素晴らしいだけに、色々穿った見方をしてしまう1冊です。

  • ──老いた世界にふさわしく、地球にはクモの巣がはりめぐらされたのだ。

    はるか未来。
    太陽が大きく赤く膨らみ、地球は熱く熱せられている世界。
    地上に生きる動物はたったの5種類となってしまい、地を支配するのは植物たちだった。
    という「地球の長い午後」。1961年の作品です。

    図書館の本ですが、とっても年季が入ってます。ボロボロの一歩手前。往年の名作感たっぷり(?)

    遠未来の終末的世界設定はマンアフターマンっぽくて楽しいです。
    自転が太陽に対して完全に止まってしまっているので地球の半分は永遠の夜、半分は永遠の昼。
    その昼部分の大陸はひとつの大木、ベンガルボダイジュが覆っています。
    植物たちは消えた動物たちの生活圏を肩代わりして動けるようになり、弱肉強食の争いをしています。
    人間はというと、生き残った5種類の動物にかろうじて入っていて、捕食植物から隠れ生きる生活をしている。
    そして月は地球ー太陽間のラグランジュ点に固定されていて、地球との間に宇宙を渡る植物ツナワタリによる糸が張り渡されている。

    そんな世界です。
    実際には自転が止まると昼と夜の温度差で、特に黄昏地域は常に暴風域になって暴風グレンたちは吹き飛ばされてしまうと思いますが、その辺は古い本なので…。

    ストーリーよりは世界の説明がメインな感はありますけれど、一読の価値はあり。

  • 遠未来。老いゆく太陽の膨張に比例して猖獗を極める植物王国。その陰で、文明を喪い、権勢を失くした人類の後裔はいかなる「終わり」を、そして「救済」をその最期に求めるのか。その答えが聞けて、安心した。
    我が世を謳歌する新種の生物群を思い描く逞しい想像力、そしてその人類に対する脅威的なありさまを活写する筆致には陶然とした。

  • おもしろい。本当に、ただほとばしる想像力を中心にぶるんぶるんと振り回されるような快感。ちょっと酔ったもの。
    火山のなかで歌う謎の生物なんて、まるで映像のように浮かんでくるしその恐怖ったらなかったな。
    アミガサダケも本当にきもい。

  • 秋の夜長にぴったりの、トンデモ設定満載のSF小説。

    ブライアン・W・オールディスの名作「地球の長い午後」(1961)

    中学の頃読んだと思っていたが、最後までは読んでなかったようです。
    それとも誰かの書評を読んで、読んだつもりになっていたのか。たしか椎名誠がこの本について語っていたような気がします。

    _人類の文明が滅んで久しい地球は、太陽の活動が高まった影響で獰猛な肉食植物が支配していた。
    地球の自転は止まり、沈まない太陽を獲得したその反面は永劫の闇を抱えていた。
    月と地球の間に糸を張り行き来する蜘蛛型植物。人間に寄生しその意識を支配するキノコや植物たち。

    生きるすべてが生存と繁殖のシステムのバージョンアップを競い合っているが、同時にそれは混沌と混ざり合う宇宙の始まりへ向かっている。

    僕らが自我や意識と呼ぶものは、所詮種の保存のシステムなのか、それとも種を超えた自分自身の生命の所有のものなのか。

    最後に主人公のグレンが選んだ道は、いかにも人間らしい非合理で幸せな道であった。
    作者のオールディスの主張はここにあると思いますが、あなたはどう思いますか?

  • 1962年の作品。椎名誠のSF「アド・バード」は本書へのオマージュとのことなので、読んでみた。この後、「アド・バード」も読むつもり。

    太陽が燃え尽きる寸前の超未来のお話。太陽からの放射線がとても強くなり、その影響で人類はすっかり退化し、外敵に怯えつつ樹上で細々と暮らす弱小種族に成り下がってしまった。一方、植物は進化を重ねて勢力範囲を拡大。巨大化し、移動し、空を飛び、動物を補食し、植物王国の様相を呈するに至った。主人公グレンは、グループからはみ出してしまい、一人危険な世界を彷徨うことに。

    この物語の世界観は結構好き。ただ、グレンがアミガサダケという高度な知能を持つキノコに寄生されてひたすらこの世界を彷徨うというストーリーはイマイチ。月に行って地球に戻った仲間たちがもっと色々絡んでくると思いきや、忘れかけた頃に、やっとラスト付近でオマケ的に登場するだけ。何だか肩透かしを食ったみたいだ。

  • SFの王道。遠い未来の生態系の変わった地球。イマジネーションの産物。面白かった。「サンドウィッチ姉さん」がエロくって笑えて忘れられない。

  • 驚くほど現在の世界とはかけ離れた地球の状況
    そして自身にも想像がつかないほどの変化が現れ
    過酷な環境を生きる人類の驚異の冒険を描いている
    のだけど、設定と世界が印象的で
    登場人物の印象が薄いのが残念。
    でも離し自体はおもしろい。というか
    すごい想像力で作り上げられているなぁ。

  • これは面白かった。小人になった人類と植物人間との壮絶な戦いに引き込まれていった。ラストの展開もすごく良かった。

  • 翻訳のワザマエが光る一冊。各架空の植物の名前の翻訳がセンスに溢れてて素晴らしい。「dumbler」→「ダンマリ」、「trarverser」→「ツナワタリ」初めとした意訳の数々が、作品の雰囲気を作り上げています。翻訳者曰く、「「イソギンチャク」や「サルスベリ」などの日本語として定着してる言葉を参考に訳した」とのことで、確かに植物感ある!と脱帽です。
    それにしても読んでると、思わず風の谷のナウシカの漫画をもっかい読みたくなりました。作品の雰囲気も、『アマゾネス版風の谷のナウシカ(菌じゃなくて植物が強いver)』って感じだし……(出版時期を考えると、正確にはナウシカこそ『ミリタリ版地球の長い午後』なわけですが)。地球の長い午後の世界ってなんだかムシゴヤシやヒソクサリがひょっこり居そうだし、逆にナウシカ世界にはツナワタリやダンマリが居ても似合いそうだもんな。 そんなわけで、ナウシカが好きな人にはお勧めできる作品です。

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