アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150102296

感想・レビュー・書評

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  • 夏休み課題図書風第二弾。再読だがほとんど何も覚えておらず、10代で読んだ時はアンドロイドハンターの苦悩の物語に感じたが、今読むと救いのある前向きな結末に驚いた。この前読んだ『華氏451度』とは15年位書かれた時期が違うが情緒安定の装置が必需品などと近未来の描き方が似てて面白い。

  • 舞台は最終世界大戦が起こった後のサンフランシスコ。街は荒廃し、死の灰が降り注いでいる。動物もほとんど死滅してしまい、生きた動物を飼うことがステータスになっている。生きた動物の代わりに機械の動物を飼うことが主流になっている。機械の動物だけでなく、アンドロイドもいる。最新のものはアンドロイド自身がアンドロイドかどうかもわからなくなってしまうくらい精巧にできている。

    主人公のリック・デッカードは違法に地球に逃亡してきたアンドロイドを処分することで生計を立てる賞金稼ぎだ。

    人間とほとんど見分けがつかないアンドロイドと人間を区別するためのキーワードが「感情移入」だ。「生」に対して感情を持つことができるのが人間だ。しかし、リックはアンドロイドに対しても感情移入してしまっている自分に気づき、悩むようになる。

    人間にもアンドロイド的な要素があり、アンドロイドにも人間的な要素がある。完全に区別することはできなくなるかもしれない。

    人間とは何かということを考えさせられる小説だった。

  • 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』

    まさにタイトルそのものを考える。
    SFに欠かせない「アンドロイドと人間との違い」とは。



    SF小説は、近未来に宇宙規模で特殊映像を施したアクションというイメージがあり、小説で読んで分かるの?…という印象がある。

    それは大きな勘違い。

    SFのどんな作品を読んでも、ドラマがあり、歴史があり、愛があります。

    映画の中では見せどころが限られており、特殊技術が全面に出てしまいがち。
    人物の心の中まではなかなか表現しにくいものと思います。

    この作品は基本のキ、アンドロイドに人間のような感情は生まれるのか。をテーマにしたSF作品。

    人間が夢を見るように、アンドロイドも夢を見るのでしょうか?

    第三次世界大戦後、生きている動物が貴重となった時代。
    『本物の生きた動物を飼う』というのが人々のステータスなんですね。

    主人公のデッカードは電気羊しか飼えません。
    本物はとても希少で高価なのです。

    彼は、不法移民アンドロイドを始末するバウンティ・ハンターと呼ばれる警察組織の一員。

    人間に紛れているネクサス6型アンドロイドは、とても精巧に作られており、アンドロイドかを確認するには特殊なテストが必要となる。

    もはや、人間と変わらないのではないかと思われる彼らに対するデッカードの心境の変化が、この作品の見どころのひとつだと思う。

    そして『人間』とは。
    彼らがすがる宗教も重要です。
    彼らの使用する『感情移入装置』も。
    このような装置を必要とする未来なんですね。

    SFは他ジャンルより『愛』が強めだと勝手に思っています。

    様々な角度から人類を描いている所がSFの好きな所のひとつ。
    ミステリもホラーもバイオレンスも哲学もすべて含めてしまえるのも魅力。

    すごい想像力ですよね♡⁝(ᵒ̴̶̷᷄⌑ ᵒ̴̶̷᷅   )⁝

    安定の面白さです!
    おすすめします!!(〃´-`〃)



    あ、映画『ブレードランナー』も観ました。

    1982年のリドリー・スコット監督ハリソン・フォード主演の映画です。

    こちらはやはりアクションメインなのかなと思いました。

    基本設定がこの小説ですが、古さもありイメージは違いましたね。

    なので、映画は映画!と切り離して観た方が楽しめると思います。

    ハリソン・フォード若い!!

    やっぱかっこいいです♡(º﹃º )

  • "アンドロイドも夢を見るのだろうか、とリックは自問した。見るらしい。だからこそ、彼らはときどき雇い主を殺して、地球へ逃亡してくるのだ。(p.241)"

     SFランキングには必ず名前が挙がる、あまりにも有名な本作。何となく敬遠してきたが、もっと早く読めば良かった! 荒廃したカリフォルニアで繰り広げられる緊迫感のあるアクション。「人間を人間たらしめるものは何か」という魅力的なテーマ。そして、余韻を残す味わい深いラスト。多少の古臭さを感じるのは否めないが、その素晴らしさは今でも全く色褪せない。

     舞台は、第三次大戦後の核の灰に侵された地球。賞金稼ぎを生業とするリック・デッカードは、莫大な懸賞金を目当てに、火星から逃亡してきた奴隷アンドロイド8人の行方を追う…

     訳者の後書きで紹介されていた後藤将之氏の解説(「フィリップ・K・ディックの社会思想」、『銀星倶楽部』12収録)が本書の核心をうまくまとめてくれているように思った。以下、孫引きになるが、
    “ディックの世界では、そもそも人間と機械、自然と人工といった単純な二分律は棄却されている。(略)ディックが描こうとしたのは、すべての存在における人間性とアンドロイド性の相剋であって、それ以外のなにものでもない。”
    この「人間性」と「アンドロイド性」とは何のことか。

     まず人間性とは、共感能力のことであると言っておそらく間違いない。アンドロイドを見分ける"フォークト=カンプフ検査"は感情移入能力を測るものであるし、崩壊しつつある地球にしがみつき続ける人々は"マーサー教"を通じた"融合"体験に半ば依存している。人間性の条件は実体のないものを信じられるかどうかだ、とも言えるかもしれない。

     一方のアンドロイド性は、人間性と対比されるのだから単に「共感能力を持たないこと」としても良いのだろうけれど、例えば次の記述が気になった。
    "全世界をゆるがすほどの重大問題─それが、いとも軽薄に語られている。たぶん、これもアンドロイドの特異点なんだ、と彼は思った。自分の言葉が現実に意味していることについて、なんの感情も、なんの思いやりもない。ただ、ばらばらな用語を並べた、空虚で型どおりの知的な定義があるだけだ。 (p.249)"
    つまり、アンドロイド性とは、概念と現実との繋がりの欠如を指すのである。だから、「アンドロイド」は他者に感情移入できないし、蜘蛛を平気で虐待することができる。そして、"マーサー教"はトリック映像なのだと人間たちに暴露しても何一つ変わらないことが理解できない。また、作中でアンドロイドが分裂病患者と比較されているのも見逃せない(p.50)。

     人間は、アンドロイドが共感能力を手にすることを恐れているが、それは共感能力の有無が人間とアンドロイドを区別する“最後の砦”だからである。だがその共感能力も、漸進的な改良によって最後には乗り越えられかねないものだと、繰り返し述べられる(とはいえ、作中でネクサス6型は結局テストをパスできなかったという点は重要だろうが)。
    "「(略)協会ではそれをもとにして接合子槽のDNA因子に修正を加える。そして、ネクサス7型が完成するわけ。もしそれでも見破られるようなら、また修正をくりかえして、最後には絶対に識別不能のタイプを完成するわ」(p.249)"
     実際、後藤氏も指摘している通り、本書において「人間」と「アンドロイド」の差は明確に表現されているのに対して、人間とアンドロイドの違いはとても曖昧であるように思う。中でも終盤で、レイチェルが屋上から山羊を突き落としたことは特筆に値するだろう。

     人間が「人間らしさ」にこだわるとすれば、それは彼・彼女が人間だからに過ぎないのだろうな、ということを思った(アンドロイドがこだわるのは、勿論人間がこだわるからに他ならない)。考えてみれば当たり前だけど。浮遊感というのか、本を読んでいて久しぶりにそういう不思議な感覚を覚えた。

  • 核による第三次世界大戦後の世界が舞台。地球は死の灰に覆われ、人類の多くは他の星に移住する。
    主人公のリックは地球に残る警察官であり、また、バウンティ・ハンターと呼ばれる賞金稼ぎでもある。非合法のアンドロイドを1体狩れば1000ドルがもらえる。火星から8体の逃亡アンドロイドが地球に潜り込む。警察は、また、バウンティ・ハンターがそれを追う。仲間のバウンティ・ハンターが2体をやっつけたところで、逆にアンドロイドにやられ入院することになる。リックは、残りの6体のアンドロイドの退治を命じられ、引き継ぐ。
    リックと6体のアンドロイドの戦いは、心理戦でもあり、だまし合いでもあり、アクション的なものでもある。その戦いがテンポよく描かれており、それが本書の面白さの1つ。
    この時代のアンドロイドは、人型のものであり、外見上は人間と区別がつかない。人間とアンドロイドの違いは、「感情移入できるかどうか」であり、それを、動物や他の人間に対しての感情移入の程度を測る、フォークト=カンプフ検査という方法で検査をして見分ける。人間とは何か、とか、感情移入とはどういうことか、ということを読者は考えざるを得ないストーリー展開になっており、これが本書の面白さの2番目だと感じた。
    また、アンドロイドの中には、若い魅力的な女性の外見をしたものもあり、主人公のリックは、それがアンドロイドだと分かっていながら、ベッドを共にする。リックは、その女性型アンドロイドに「感情移入してしまう」こととなるが、それは、その女性型アンドロイドの狙いでもある。上記した、心理戦・だまし合いの一部だ。

    大戦後の地球は、死の灰に覆われたため、人間以外の動物も多くが絶滅するか、個体数を大きく減らすこととなった。そのため、逆に、人間は生きた動物を何とか飼おうとする。それは希少であるために、非常に高額。そのため、裕福でない人間はロボット型の動物をペットで飼うことで満足せざるを得ないということが起きる。本書の題名にある「電気羊」は、そういった人工のペットであり、主人公のリックが飼っているもの。題名に対しての答えは「NO」である。アンドロイドは、感情移入できないので、ペットである電気羊の夢は見ないのである。
    リックにはイーランという妻がいる。物語のラストの場面でイーランが、リックに対して、また、動物に対して、さらには、人工の生き物に対して「感情移入」を示す。それは、人間の優しさであり、思わず感動してしまうものでもあった。人間とは、他を思いやることが出来る、他を愛することが出来る存在であるということ。
    いや、面白い本だった。

  • ちょっと思い出して映画を見直すことにしたので、原作も読み直し。

    映画の感想はこちら。
    http://booklog.jp/item/1/B016PLAAQQ



    世界大戦による核汚染で人類は地球から他の惑星に移住している。
    動物たちは次々絶滅し、野生の動物はほぼ存在しない。
    地球に残った人類のステータスは、生きた動物を飼うこと。
    高額な動物が買えない庶民は電気動物で代用するしかない。
    閑散とした地球で、人々は互いの共感のために精神共存機械を使っている。装置のチャンネルを変えて気分を変え、人類共感宗教のマーサー教で他者と共感を得る。

    そして人間の代わりにアンドロイド、通称”アンディ”たちが作られ、働いている。
    そんなアンドロイドのなかには人間に反抗し、脱走するものも出てくる。
    主人公リック・デッカードは逃亡アンドロイドを狩る賞金稼ぎ。妻とは諍いが多く、生きた動物を飼うために仕事に励む。
    アンドロイドは巧妙に作られ、専門のテストを行わないと人間との区別がつかない。
    人間としての記憶を植え付けられたアンドロイドは自分を人間と思い込み、そんなアンドロイドを狩るうちに自分が本当はアンドロイドではないかと思う人間たち。
    そして逃亡アンドロイドたちは、知的障害で人間社会からははじかれた青年のイジドアの元に隠れていた。
    イジドアは初めて自分が付き合える相手に会えたと喜ぶが…

    リックは心身疲労と人間のあり方に悩みつつもアンドロイドたちとの最終対決に向かう。

    ===
    人間とアンドロイドの違いとして、アンドロイドは共感ということが理解できないとしている。そこが「どこか人間と違う」と分かってしまう。それは他者への憐憫も持ちえないし、関心もないので人間たちの区別もつかない。
    リックは自分の存在の基礎に疑惑を覚えたこともあったが結局はいがみ合うことも多い妻の所に戻り、
    イジドアも最後は自分がはじかれた人間の社会へ加わろうとする。

    発表年が1968年で、物語の舞台が1992年1月3日というので、近未来と言うにも近すぎるほどの未来。
    作者にとっては「架空の未来」でもただ「パラレル」でもなく、自分たちが生きられる平行社会なのか。

    作者のフィリップ・ディックが語った自分の創作根本。(以下あやふやな記憶ですが)、
    「私は、この世ではうまく生きられない私の愛する人たちのために、彼らが生きられる世界を描く。
    本来なら現実に自分を合わせるべきだろうが自分はそれができない。
    それがSFを書くということだ」

  • 想像より登場人物が多く横文字の名前であったため相関図を頭の中で作り上げるのに苦労しました。

    おそらく私は本作の真髄の部分を理解できていません。しかし、そんな状態でも本作は「ヒト」が生きることの意味を考えさせてくれる一冊であると感じました。

    これまで読んできた小説の多くは面白い娯楽であるものがほとんどでしたが、本作は教養を得るための自己啓発本のような役割も果たしてくれると感じます。

  • 名前が素敵過ぎる作品。
    表紙もオシャレで、いよいよ手に入ったので読んでみた。
    核兵器を使った世界大戦以降の世界という設定の雰囲気がどんよりと重くてびっくりした。
    自然の動物(機械でない)を買うことが社会的ステータスとなっていたり、火星移住のためにアンドロイドが働かされていたり、設定一つ一つがそれいいのか??と考えされるものだった。
    自然とは?人工物とは?
    誰が人間で誰がアンドロイドなのか?
    今自分が見えている世界は本当に現実なのか?
    ハードボイルドではないが、それくらいの緊迫感がありながら、重いテーマを扱っているので読み応えが凄かった。


    主人公と共に終始考えながら読んだ

  • 海外SF小説を初めて読んだ。面白かった!
    映画を見てるようだった。考えれば考えるほど深いし、考えれば考えるほど分からなくなっちゃう。
    読後に映画版も観たが、そっちも良かった。

  • ハヤカワ文庫で持ってるはずなんですが。今はこんなになってるんですね。(ブックオフに、売っちゃったかも)りま でした。

    • りまのさん
      図書館あきよしうたさん、今 マルチビタミンゼリー 飲んでたとこ。ありがとうございました。おやすみなさい。 りま
      図書館あきよしうたさん、今 マルチビタミンゼリー 飲んでたとこ。ありがとうございました。おやすみなさい。 りま
      2020/08/09
    • りまのさん
      ありがとうございます
      ありがとうございます
      2020/08/19
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