アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))

  • 早川書房
3.80
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本棚登録 : 9625
レビュー : 865
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150102296

感想・レビュー・書評

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  • ちょっと思い出して映画を見直すことにしたので、原作も読み直し。

    映画の感想はこちら。
    http://booklog.jp/item/1/B016PLAAQQ

    ★★★

    世界大戦による核汚染で人類は地球から他の惑星に移住している。
    動物たちは次々絶滅し、野生の動物はほぼ存在しない。
    地球に残った人類のステータスは、生きた動物を飼うこと。
    高額な動物が買えない庶民は電気動物で代用するしかない。
    閑散とした地球で、人々は互いの共感のために精神共存機械を使っている。装置のチャンネルを変えて気分を変え、人類共感宗教のマーサー教で他者と共感を得る。

    そして人間の代わりにアンドロイド、通称”アンディ”たちが作られ、働いている。
    そんなアンドロイドのなかには人間に反抗し、脱走するものも出てくる。
    主人公リック・デッカードは逃亡アンドロイドを狩る賞金稼ぎ。妻とは諍いが多く、生きた動物を飼うために仕事に励む。
    アンドロイドは巧妙に作られ、専門のテストを行わないと人間との区別がつかない。
    人間としての記憶を植え付けられたアンドロイドは自分を人間と思い込み、そんなアンドロイドを狩るうちに自分が本当はアンドロイドではないかと思う人間たち。
    そして逃亡アンドロイドたちは、知的障害で人間社会からははじかれた青年のイジドアの元に隠れていた。
    イジドアは初めて自分が付き合える相手に会えたと喜ぶが…

    リックは心身疲労と人間のあり方に悩みつつもアンドロイドたちとの最終対決に向かう。

    ★★★

    人間とアンドロイドの違いとして、アンドロイドは共感ということが理解できないとしている。そこが「どこか人間と違う」と分かってしまう。それは他者への憐憫も持ちえないし、関心もないので人間たちの区別もつかない。
    リックは自分の存在の基礎に疑惑を覚えたこともあったが結局はいがみ合うことも多い妻の所に戻り、
    イジドアも最後は自分がはじかれた人間の社会へ加わろうとする。

    発表年が1968年で、物語の舞台が1992年1月3日というので、近未来と言うにも近すぎるほどの未来。
    作者にとっては「架空の未来」でもただ「パラレル」でもなく、自分たちが生きられる平行社会なのか。

    作者のフィリップ・ディックが語った自分の創作根本。(以下あやふやな記憶ですが)、
    「私は、この世ではうまく生きられない私の愛する人たちのために、彼らが生きられる世界を描く。
    本来なら現実に自分を合わせるべきだろうが自分はそれができない。
    それがSFを書くということだ」

  • 想像より登場人物が多く横文字の名前であったため相関図を頭の中で作り上げるのに苦労しました。

    おそらく私は本作の真髄の部分を理解できていません。しかし、そんな状態でも本作は「ヒト」が生きることの意味を考えさせてくれる一冊であると感じました。

    これまで読んできた小説の多くは面白い娯楽であるものがほとんどでしたが、本作は教養を得るための自己啓発本のような役割も果たしてくれると感じます。

  • ハヤカワ文庫で持ってるはずなんですが。今はこんなになってるんですね。(ブックオフに、売っちゃったかも)りま でした。

    • りまのさん
      図書館あきよしうたさん、今 マルチビタミンゼリー 飲んでたとこ。ありがとうございました。おやすみなさい。 りま
      図書館あきよしうたさん、今 マルチビタミンゼリー 飲んでたとこ。ありがとうございました。おやすみなさい。 りま
      2020/08/09
    • りまのさん
      ありがとうございます
      ありがとうございます
      2020/08/19
  • 第三次世界大戦後、放射能灰に汚染された地球。その世界は生きている動物を飼育することがステータスの社会だった。人工の電気羊しか持たないリックが本物の動物を手に入れるため、逃亡した奴隷アンドロイドの懸賞金を狙い、彼らを追い詰めていく。
    序盤は登場人物の多さと横文字、マーサー教の現実と非現実が交わるような独特の世界観に戸惑ったけど、スリリングなアクション描写が読みやすさになっていてそこがよかった。

    そして、人間と見分けがつかないほどのアンドロイドと関わっていく中で、リックが狩るべきアンドロイドへと感情移入していく描写が生々しい。自分自身が本当に人間なのかと疑問を抱くシーンも印象深い。

    人間とアンドロイドの違いを何かへ感情移入できるかどうかで測っているのが興味深かった。そして、あとがきにもある通り、単純な対立の構図ではないところも考えさせられる。狩るべきアンドロイドに感情移入していくのも人間、知性のあるアンドロイドを火星で奴隷のように扱っていたのもまた人間。アンドロイドという存在によって、人間性への問いが生まれているのが面白い。

    現実と非現実、人間とアンドロイドの境界を夢のように行き交いながら、その本質に迫っていく作品。

  • フィリップ・K・ディックの著書は初めて読みます。

    タイトル自体は知っていたけれど、じっくりと読む機会がなかなかなく、今回やっと読了することが出来ました。

    【あらすじ】
    舞台は第三次世界大戦後、放射能の灰が一面に撒き散らされ、多くの生物が死に絶えた後の地球。放射能の影響で子孫を残せない人間は特殊(スペシャル)の烙印を押され、多くの人間が叶えた火星への移住は制限される。
    地球に残った人々の間で絶対的な価値でありステータスとされているのは「生きている動物を飼うこと」であり、人工羊しか持たない主人公・リックは火星から逃亡してきた8人のアンドロイドを“処理”し、その賞金で本物の動物を手に入れようと奔走する……

    1ページ目を開いた瞬間、その時からSFの世界観が本当に緻密に広がっており、人口動物の動きやリックたちの生活はもちろん、共感ボックスやマーサー教、電話ならぬ映話やキップル、ホバーカーといったありとあらゆる物体、宗教、道具が真実味を帯びてわらわらと押し寄せてくる感じがしました。
    物語の本筋はもちろんのこと、それらの道具類を眺めていくだけでも十二分に面白く、本題を忘れそうになってしまいますが、(あとがきにわかりやすく示されているように)命題は「どこがアンドロイドと人間の境目なのか?」という点です。
    他のSFでも良く示されているSF永遠のテーマとも呼べるものですが、「人間とアンドロイドの対立」という単純な構造ではなく、もっと情動的に語られるのが本著者の作品であり、持ち味なのだそう。

    逆に、上記の単純対立構造の映画や小説ばかり見てきた私にとっては新鮮で楽しく、また考えさせられる作品でした。

    個人的にはこの世界観の奥にある、火星へ移住した人たちの物語も覗いてみたいと感じました。

  • ・SFは読みづらいので毛嫌いしていたが、やはり、名作と言われている作品は面白いものが多いと最近気づいたため、本書もなんとなしに読み始めたが、非常に面白かった
    ・最終世界大戦後、放射能の灰に侵された地球で、火星から逃亡してきたアンドロイドに莫大な懸賞金がかけられ、そのアンドロイドの狩りをしようとするハンター。それらの攻防をアンドロイドとハンター両面から描きつつ、アンドロイド(機械)と人間の差異とは何かという問題を、アンドロイドかどうかの判定装置やアンドロイドの狩り等を用いながら問いかけられる。
    ・その他の、映話装置(テレビ電話みたいなもの)、情調オルガン(気分をコントロールするもの)、共感ボックス(誰かの意識に自分の意識を飛ばすもの)、アンドロイドとのセックス、電気動物等の小道具?も面白かった
    ・本書の映画『ブレードランナー』も観ていないのでこれから観てみる(そのために読んだという面もある)

  •  紙の本を読みなよ。……ということで読みました。たった一日の出来事を取り扱っているのに、何日も経っているように感じる。あと、人間とアンドロイドだと、アンドロイドのほうが遥かに強く、人間のほうがやられる方というイメージがあるが、主人公が強すぎて、かなりあっさり賞金首らを倒している。そのあっさり感が良い。生き物と機械。その違いについての哲学がはっきり示されていて、最後は半分機械のヒキガエルを育てていこう……というところで終わるのだが、その哀しさと、でもなんとなく希望があるのが良かった。
     脳が足りないとひどい扱いを受けている男。アンドロイドの抽象的で合理的な感情。人間の生命尊重と、生命をなんとも思わない矛盾。共感する装置や、機械を使ってストレス解消していく社会。イヴの世界のような問題提起を含め、SFの全部を詰め込んだような古典名作。
     共感を得る機械(キリスト?みたいなの)とか、書き割りをあかすテレビメディア(明かしたところでキリストは死なないのが良い)の、ひたすらバラエティやってるところとか、現代文明の慣れの果てを書いてあるのだけれども、最後の蛙の場面で、人造蛙を育てていこう……というところに収束していくのはとても文学的だ。読みやすく、美女アンドロイドとエロいことしたり、ぶっ殺したりするのは、エンターテイメントだなぁ、おもしれえと血湧き肉躍ったぜ。

  • 読み始めは今どきのSFと比べると古い感じや設定の甘さが目立ったけど、読んでいくとどんどん主人公の葛藤に巻き込まれていって目が離せなくなる
    人間性を共感、アンドロイド性を合理性としてその対立を描くが、それをまがい物の宗教もどきと、永延と続くバラエティーで対比するセンスは素晴らしい
    ある意味最近の(特にアメリカの)リベラルの限界を暗示していると思う
    共感力は理屈を超えるし、だれも宗教の背景が書割かどうかなんて聞きたくはないのだろう
    またサピエンス全史より半世紀も前に人間性を共感や集団幻想にあると喝破して先見性も見事

    タイトルについていえば、ラストシーンから考えると電気動物に共感(夢をみる)のはアンドロイドではなく人間ということだろう

    あと本筋とはあまり関係ないけどジョン・ダンの引用はちょっと笑えた

  • 核戦争が終わった後、人間のほとんどは、召使のアンドロイドを伴って火星に移住した。地球に残った僅かな人間は「本物の生」なるものに執着し、一方で火星から逃げてくるアンドロイドを取り締まっていた。

    ほっぺたをつねって痛かったら、夢じゃない。つまり、夢じゃないことにしたいなら「ほっぺたをつねったら痛かった」ということにしてしまえばいい。世界は見えるところまでしかない。なら、どこまで見えたことにする?どこまで見えなかったことにする?なにを見たことにする?なにを見なかったことにする?
    おなかのフタさえ開かなければ本物と全く同じ電気羊なら、おなかのフタに気づかなかったことにすればいい。あのとき草むらに放したクモにフタがついてたかどうかなんてもう確かめようがない。
    マーサーに向かって飛んできた石は私にも当たった。私の頭から血が出た。痛かった。マーサーの苦しみは確かに私の苦しみだ。
    それは誰にも否定できない。「事実」でさえも。

  • 本物と偽物の違いは?
    人間とそれ以外を分かつものは?
    人間らしさとは?

    「人間」とは生物学的、法律的に定義されるものなのか?
    そうであるなら、人間が人間以外に感じる人間らしさとは何なのか。
    それは他者に共感することだろうか?
    自分という肉体の壁の中の私たちは、物質的に他者とつがなることはできない。
    それでも自分を他者の中に見出すことによって、相手の気持ちを感じとり、主観的に、精神的につがなる。

    本書のアンドロイドと人間の違いとはそこなのではないか。
    アンドロイドの多くが自分という肉体の壁の外を客観的に、単なる事象としてしか認識できない。
    だが人間は自分以外の他者、時には生命なきものに対しても主観的になることが、共感することができる。

    ただしそうあることが「人」であり、そう生きていこうとしたときには自分の意に反する道を進まなければならないことも明らかになる。
    自分として生きていくためには必ずいつか他者の中に見出した自分を殺さねばならないからだ。
    例えば親しい部下をクビにしなければならないときや、彼氏彼女に別れを切り出すときだ。
    共感することが人間たらしめ、それ故に他者のなかの自分を殺すという本質にもとる行為をさせられる。
    それこそが究極の影、呪われた運命なのではないか。

    と、長くなったがこれが私のとらえた本書のメッセージである。
    それにしてもまあ、作者はよくもまあこんな世界を、作品を思いついたものである。

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