闇の左手 (ハヤカワ文庫 SF 252)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (379ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150102524

感想・レビュー・書評

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  • 図書館で借りた昭和52年版の文庫なので表紙がこれじゃなくておじさんのやつです。おじさん、いかつい。なんというかイメージが…。あと、よくこんな小さい字の本読んでたな…。
    ええと、ゲド戦記しか読んでないんですが、ル・グウィンの凄さにひれ伏した。トールキンと同じく世界の作りこみが緻密すぎて、言語から歴史、神話までが背景にあるもんで、読んでるとこれが架空の世界だってことを忘れるんですよね。へんな感じだ。まるで淡々としたノンフィクション旅行記を読んでるみたいな感覚になるときあるもん。

    物語は、使節としてある惑星に降り立った主人公が、そこで政治闘争に巻き込まれて、逃避行をする羽目に、っていうのがおおまかな筋。
    大きな特徴なのが、この惑星の住人が両性具有ってところ。フェミニズム的な角度からも考察できそうなんだけど、とりあえず女である自分からすればこれは純粋にちょっと羨ましかった。地球では性別によって人生の多くのことが決まるけど、この世界ではそれがない。
    最後の最後に迎えに来た母船から女性が出てきたときに主人公が違和感を感じるんだけど、読んでるこっちも同じ感覚になった。
    この惑星自体が植民地で、この両性具有の人類は実験で作られたっぽい、って途中でわかるんだけど、その仕掛けにもふおお、ってなった。
    後半は主人公が惑星で出会った友人と寒い寒い氷原をひたすら強行軍する。二人で81日間、お互い以外なにもない世界。そこから浮かび上がってくるさまざま。

    作品自体は架空の固有名詞とか架空の単語とかが容赦なくばんばん出てくるのでそれに引っかかっちゃうと結構大変…。でもそこをあんまり気にせず先を読んでいくと、単語の概念とかもちゃんとわかるようになってるのでいける。
    物語全体の流れと、挿入される神話や伝説も面白いので意外にぐいぐい読めてしまった。さすが。
    でも一度読んだだけじゃこの壮大なテーマの全部は理解できてないんだろうなあ。
    巻末についてる惑星ゲセンの設定資料集みたいなの見てびびった。作家の想像力って偉大だ。

    …ヌスス(言いたかっただけ)。

  • 凍える度に思い出してしまう。

  • 初ルグィン、と言っておこうか。『ゲド戦記』は僅か数頁で投げ出したから——。いや〜やっと読み終わったわ…。造語が多過ぎて、最後まで物語に入り込めず、難儀でした。SFってよりかはファンタジィでしょ、これ。(“一応”違う訳者の作品を二つかじったので)訳者の問題ではなく、著者の世界観がわたしに全く合わず…もう二度とこの著者の作品を読むことはないでしょう。星一つ。
    p.s.こんなつまらない作品を最後まで読んだワタシ偉いw 口直しに桃色でも読もうかな(^^*

  • アーシュラ・ル・グイン氏描く、極めてハイブロウなSF小説。

    両性具有となった人類(本質的に大規模な戦いを行わなくなっている)と、彼らと通商を再開しようとする使者との間の軋轢、愛情、友情を描くんだけど、つまりは、文化習慣どころかそれだけ身体感覚の違う相手と果たして理解し合えるのか、心を通わすことができるのか、な辺りを問うものであるらしい。

    「闇の左手」とは「光の右手」に対応する言葉で、影と光、陰と陽、夜と昼、女と男・・・など対立する2つのもののかたわれをあらわす比喩。著者独特の、非常に深い人間観察、社会観察の結晶のような小説である。

    異世界の用語が説明なく出て来るのと(解説が巻末にある)、登場人物に感情移入ができず、読書はかなり難航した。

  • すごい。

    語られていないことが、多くを語っている。
    想像力を要す。

  • 難解で理解できたとは言えないが、過酷な旅路、登場人物の不可解な突然の行動、地球とはかけ離れた文化と生態が、読んだ後も残る。
    楽しい読書ではないけど、印象的。

  • 小松左京のような思想がないSFに比べれば、本書は極めて示唆に富む内容であるが、これがフェミニズムSFというのは全く理解できない。まだ自信の考えをまとめ切れていないが、本書は、自分の祖先が送り込んで入植した異星人との接触に関する、親密・離反という二項対立を示すものと考える。なぜなら、氷原を旅する際に明らかになる心話と、話し手がゲンリーアイ、エストラーベンと変化することは、全く異なる文化を持つ異星人の接触の過程を描いているからである。両性具有という設定は、地球人との二項対立を過激的に示す道具でしかない。加えて、闇の左手という民謡からとられた表題と、たびたび挟まる過去の伝説についての記載は、過去に地球人が惑星冬に対しておこなった仕打ちを示唆している。地球人の作戦によって全く異なる文化・習慣を持つようになった異星人への接触の過程が本書には記されている。幸いなことに、本書が示すのは危険・警鐘ではないというのがありがたい。

  • 冬の惑星舞台の冒険ものかつファ―ストコンタクトSF
    というのが筋書きだが
    書かれて40年も経てば西の良き魔女による古典SFの一言で済むか
    今から見ても「生まれてまず尋ねるのは男か女か」のかわらなさが光る

  •  作家の仁木稔先生のファンになってわりとたちます。
     こちらがおくったファンレターがキッカケで、ぼちぼちメールや手紙のやり取りがつづいています。
     相手が流石の作家先生なので、気楽に書き散らすというのができにくいので、自然ペースは細々としたものに…それはともかく。

     いちど、「先生の作品は、両性具有のキャラクターが多いですね」と書いて送ったら、「アーシュラ・K・ル・グィンの『闇の左手』以降、両性具有はSFの一ジャンルです」と返事をもらい、読んだことなかったので読んでみました。

     グィンはゲド戦記が有名で、日本でジブリでアニメ化もされましたが、原作は読んだ当時の私(多分、20前くらい?)には難しかったし、アニメのできは(以下略)だったので…最後まで読み切れるかどうかちょっと自信なかったのですが、結局、早々に読み切ってしまいました。

    <あらすじ>
     宇宙連合エクーメンは、かつて植民地であった辺境の星との外交関係の復活を目指し、惑星「冬」に使節・ゲンリー・アイを送り込む。惑星「冬」の住人は両性具有であり、特異な社会を形成していた。
     しかし、使節・ゲンリー・アイは現地の陰謀に巻き込まれ・・・、

     
     使節・ゲンリー・アイと追放された宰相・エストラーベンの関係が主軸です。
     交互に惑星「冬」の神話が挿入されています。
     ・・・名作です。
    ================

    友人か。どんな友人も新月になれば愛人に変わってしまう世界で、友人とはいったいなんだろう?私は男性という性に閉じ込められているから、友人ではない。セレム・ハルスの友人でもないし、この種族の誰の友人でもない。男でも女でもない、そして男であり女である彼ら、月のめぐりによって手を触れ合うだけで変態を遂げる人間の変種である彼らは私の肉親でもなく友人でもない。われわれのあいだに愛は存在しない。

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著者プロフィール

アーシュラ・クローバー・ル=グウィン(Ursula K. Le Guin)
1929年10月21日-2018年1月22日
ル=グウィン、ル=グインとも表記される。1929年、アメリカのカリフォルニア州バークレー生まれ。1958年頃から著作活動を始め、1962年短編「四月は巴里」で作家としてデビュー。1969年の長編『闇の左手』でヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。1974年『所有せざる人々』でもヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。通算で、ヒューゴー賞は5度、ネビュラ賞は6度受賞している。またローカス賞も19回受賞。ほか、ボストン・グローブ=ホーン・ブック賞、ニューベリー・オナー・ブック賞、全米図書賞児童文学部門、Lewis Carroll Shelf Awardフェニックス賞・オナー賞、世界幻想文学大賞なども受賞。
代表作『ゲド戦記』シリーズは、スタジオジブリによって日本で映画化された。
(2018年5月10日最終更新)

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