闇の左手 (ハヤカワ文庫 SF (252))

制作 : Ursula K. Le Guin  小尾 芙佐 
  • 早川書房
3.88
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本棚登録 : 1208
レビュー : 140
  • Amazon.co.jp ・本 (379ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150102524

感想・レビュー・書評

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  • 光は闇の左手(ゆんで)
    暗闇は光の右手(めて)。
    二つはひとつ、生と死と、
    ともに横たわり、
    さながらにケメルの伴侶、
    さながらに合わせし双手、
    さならがに因ー果のごと。


    さ、寒かったーー!!
    とても寒い世界の物語でした。
    ゲド戦記大ファンの私としては、★5つをつけたかったのですが、
    いかんせんちょっと読みにくい。
    同著者のエッセイ「ファンタジーと言葉」を読んでから読むと、だいぶ読みやすいです。

    あらすじとしては、地球を含む83の星からなる連合国家(?)エクーメンからの使節、
    ゲンリー・アイが、両性具有の人類が住む惑星<冬>ゲセンにて、
    いろいろな国を巡りながら、エクーメンと交易を持ってくれるよう、
    様々な人物と話をします。
    しかし、男でも女でもなく、「戦争」という言葉も持たず、
    空を飛ぶ発想もない=異星人の存在が信じられないゲセンの住人は、
    アイの話、アイの存在になかなか心を開くことができません。
    唯一、アイの話を信じ、できる限りの支援をしてくれたのは
    「王の耳」エストラーベン。
    彼が、アイを自分の食卓に招き「王はあなたの話を聞き入れないだろう」と忠告するところから
    物語は動き出します。

    とにかく世界観がすごい。
    ゲセンの人間も、もちろんただの両性具有ではありません。
    1ヶ月のうち20日間は、男でも女でもなく、性欲も全くない状態。
    2〜3日の間にパートナーに触れることにより、男か女のいずれかになって、
    残りの日は性行為のことしか考えられなくなるというものです。
    たったこれだけのことで、世界は全く違うものになります。
    考え方、感情の起伏から仕事の内容、家庭内における役割・・・
    その全てに隔たりはなく、この惑星の大自然のように、雪に覆われて起伏がありません。

    物語そのものも、大きな起伏はないです。
    自分と他人、男と女、国家と個人・・・
    なくてはならないけれども、けして交わることのない2つのあいだを
    吹きすさぶ風と雪の中、自分が生きるための荷物を引きずりながら歩いていく。
    そんなお話です。

    印象深いのは、ハンダラ教の”とりで”をアイが訪れるシーン。
    ハンダラ教とは、ゲセンの人々にそこそこ普及している宗教で、
    階級や寺院、教義、神などといった、普通ならば宗教に必ずあるものが全くない宗教です。
    彼らが重んじるのは無知、不活動、不干渉といった、
    かなり閉鎖的な行動や心理状態で、「ヌスス<我関せず>」という言葉で表されます。
    ”とりで”では予言が行われており、アイもそれに興味がありました。
    予言の場では、アイを入れて9人が闇の中で輪になって座ります。
    そのうち2人は「うすのろ(精神分裂症)」、
    1人はケメラー(男か女のうちどちらかになっている)、
    もう1人は変態性欲者(ホルモンを注射して人為的に興奮状態になっている)という
    なんとも混沌とした面々。
    そこでアイが見る光景は、この世界、この物語、そしてアイ自身(または読者自身)の「闇」を
    まざまざと見せつけられるものだったのです。


    ゲド戦記とはまた違った切り口での、「光と闇」の物語。
    たぶん読むたびに新たな発見があることでしょう。
    アイの物語も終わっていません。
    ル・グウィンの世界は、これまでも私にとって特別な存在でしたが、
    新しい作品を読むたびに新しい「特別」が追加、更新されていきます。
    今後も積極的に読んでいきたい。

  •  ゲンリー・アイとエストラーベンの心の交流を描くのであれば、遠い惑星<冬>まで行かなくても、アラスカとか北極が舞台でも十分、成り立つ小説ではないかと思った。
     ゲセン人の生殖のあり方には驚いたが、それ以外にには、地球人とすごく違うところがあるようには、感じられなかった。
    今の地球に、いろいろな人がいすぎるのかもしれませんが・・・。
     
     

  • ヨーロッパのキリスト教使節の、
    中世日本訪問時の記録物語を読んでいるかの如く気分になった。
    あくまで気分だけど。
    アイとエストラーベンの、
    二元論的思考を超える関係への昇華に立ち会った時、
    深い深い所で感動が芽生える。
    文化人類学的、民俗学的な言及も、
    物語に厚みを持たせている。
    読み手を選ぶとは思うが、
    選ばれた読者は至福の読書体験を得られる名作である。

    1970 年 ヒューゴー賞長編小説部門受賞作品。
    1969 年 ネビュラ賞長篇小説部門受賞作品。

  • 作者はゲド戦記を書いた方らしいです。(こないだ気づいた)
    この本を読むのは何度目かわからないけれど、何度読んでも面白い(?)
    話は暗め。異世界もの。異世界の神話なども出てきますが、概してわかりづらいです。(苦笑)

    ◆以下はネタバレですよ。
    惑星「冬」に使節としてやってきた、ゲンリー・アイ。
    人々の生態に戸惑いながらも2年。
    なかなか宇宙連合(?)エクーメンに参加の意思を出さないカルハイド国からオルゴレイン国へやってきたが、捕らえられてしまう。

    …続きは読んでのお楽しみ!

  • 人間は「ちがい」を超えられる気がします。

  • ヒューゴー/ネビュラ ダブルクラウン

     1969年発表。女流SF作家による作品。

     おもしろくなかった。

     以前は宇宙連合の植民地だった酷寒の星に降り立ち国交を復活させようとする宇宙連合の使者と星の大使との交流を描いているのだが・・・。

     確かにある環境を想定して、そこで生き続けている人類の末裔を描く力はあるんだろうが、どうもピンとこない。この手のSFはあまり好きではない。

  • 文章がとにかく硬くて読みづらかったです。
    元々の原作がそうなのか、翻訳の文体がそうなのか判断はつかないですが、読み易さという点でかなり損をしているように思いました。
    ただ、雪原での旅の厳しさと同時にその情景の美しさは素晴らしかったし、ジェンダーの捉え方など細かな内容の点では良かったです。

  • アーシュラ・K・ル・グインのSFではこの小説が一番好きです。世界観がきっちり作られているので語られている物語がすんなりと読めます。アースシーの世界と言われる他の作品群とあわせて読むとこの作品の面白さが増すかもしれません。

  • £1.50

  • (後で書きます)

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著者プロフィール

アーシュラ・クローバー・ル=グウィン(Ursula K. Le Guin)
1929年10月21日-2018年1月22日
ル=グウィン、ル=グインとも表記される。1929年、アメリカのカリフォルニア州バークレー生まれ。1958年頃から著作活動を始め、1962年短編「四月は巴里」で作家としてデビュー。1969年の長編『闇の左手』でヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。1974年『所有せざる人々』でもヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。通算で、ヒューゴー賞は5度、ネビュラ賞は6度受賞している。またローカス賞も19回受賞。ほか、ボストン・グローブ=ホーン・ブック賞、ニューベリー・オナー・ブック賞、全米図書賞児童文学部門、Lewis Carroll Shelf Awardフェニックス賞・オナー賞、世界幻想文学大賞なども受賞。
代表作『ゲド戦記』シリーズは、スタジオジブリによって日本で映画化された。
(2018年5月10日最終更新)

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