闇の左手 (ハヤカワ文庫 SF (252))

制作 : Ursula K. Le Guin  小尾 芙佐 
  • 早川書房
3.88
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本棚登録 : 1208
レビュー : 140
  • Amazon.co.jp ・本 (379ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150102524

感想・レビュー・書評

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  • 久々に辞書を引き引き読み進める。重厚なSFを読むこの幸せ……!
    『どうして人は国家を憎んだり愛したりするのですか?(中略)わたしはその国の人間を知っている、その国の町や農場や丘や川や岩を知っている、山あいの斜面に秋の夕日がどんなふうにおちていくか知っている、しかしそうしたものに境をつけ、名前をつけ、名前をつけないところは愛さないとはいったいどういうことだろう?国を愛するとはいったいどういうことだろうか?国でないものを憎むということだろうか?そうだとしたら、いいことではない。では単なる自己愛だろうか?それならいい、しかしそれを美徳とするべきではない、公言するべきではない……わたしは人生を愛する限りエストレ領の山々を愛するが、こうした愛に憎悪という境界線はない。その向こうについて、わたしは無知なのだと願っている』P.262
    その向こうについて、わたしは無知なのだと願っている。

  • 全く異なる生物学的要素を持つ惑星の人々の生活などの描かれ方が、とにかく圧巻。文化の違いの中で育まれる関係性の描き方も巧み。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「文化の違いの中で育まれる関係性」
      ル・グィン の凄さって、それですよね。
      「文化の違いの中で育まれる関係性」
      ル・グィン の凄さって、それですよね。
      2012/09/12
  • ヒューゴー賞、ネビュラ賞受賞作品。言わずと知れたSFの名作。
    これが続き物(ストーリーがではなくて同じ世界設定の別の小説がこれの前にあるという意味)であることをあとがきで知った。そちらを最初に読んでいれば、もっと最初から入り込みやすかったかもしれない。
    訳もすごくよかった。章ごとに書き方が変わっていて、良い訳者さんだなと思った。

    全編通してとにかく寒かった!笑 冬に読めば雰囲気出て良いかな。
    これが名作だっていう前情報がなければ序盤で読むの挫折してしまっていたかも。なぜならこの小説は報告書とか伝承とかいう形をとって進むから、世界観や用語説明が一切ないのだ。
    しかし完璧に構築された世界設定や文化は、読み進めるうちにだんだん理解できるようになってくる。手探り状態で異星に来てなんとか適応しようとする使者ゲンリー・アイと同じ目線でこの世界を体験しているような気分になれるのだ。
    たとえば何度となく出てくる「シフグレソル」、読むうちになんとなく意味がわかってくるのだけれど、日本語に訳すとなるとなんだろう? 体面? 面子? 儀礼? 形式? 礼? うーん。わからないけれども、わかる。他言語を体得する時の気分そのものだ。

    それにしてもいやほんと、完璧な異世界構築には脱帽する。これがほんとの「異世界もの」だよ。ここまで徹底するのにはどれだけの知識と調査と細かな想像力が必要だったのだろう。そこに住む人間の性質に極寒の環境や動植物の存在が大きく影響しているとか。世界構築がいちいち論理的。戦争という概念がないなんて我々には信じられない国々のことも、ただのifの夢物語なんかじゃなくて「こういう文化、環境、歴史だからこそないんですよ」という説明をちゃんと与えてくれる。素晴らしいね。

    さてこの小説を特徴づけている両性具有、ジェンダーの話。ケメル期とか、動物の発情期みたいなものだよね。そう考えると確かに年がら年中ケメル状態の我々の方が異常だよなあ。実際の動物にも両性っているわけだし、突拍子のない空想と言う風には思えなくなってくる。我々の常識で言えば一見ありえない体の構造をした人々なのだけれど、読了する頃にはゲンリー・アイと同じようにこっちの方が変な人間という風に思えてくるものだから不思議だ。

    本書の所々で「男性的」または「女性的」な特徴について言及されているわけだけれど、性が固定されていない世界で唯一性が固定された「男性」のゲンリー・アイが男性性や女性性に考えを巡らせる様は面白い。目の前の人間をつい男性っぽいとか女性っぽいとか考えてしまったり、この人のこういう部分は酷く女性っぽい、とか思ったり。その視点はその星の人にはないもので、本人たちは今自分男寄りだわー女よりだわーとか微塵も考えていない。ゲンリーに染みついた思い込みからつい考えてしまうこと。それで、特に初期のゲンリーは男/女という二元論で人を捉えようとしがちだということがわかる。でも終盤ではその二元論的思考からも脱却しようとしている。
    ジェンダー問題を考える画期的な素材の小説にもなり得るけれど、一方で男性的な性質女性的な性質もはっきり書かれているわけで、はてさてジェンダー論者はこの小説をどう評価しているのやら。気になるところ。

    気になると言えばもう一つ、所謂「腐女子」の方々はこの小説を腐女子的な目線でどう楽しむんだろう? 終盤のゲンリーとエストラーベンに芽生えた友愛、あれは感動的だ。しかしBL?ではありえないし。ケメルに入れば自動的に男役女役に一時的に性別が固定されてしまう世界で腐女子的な楽しみ方はどのようにするのか、気になるところ。

    そしてジェンダー関連で最後に。ル・グィンって女性だったんですね……。読み終わった後知って、物凄くびっくりした。だって文章が感傷的じゃなくてすごく緻密で論理的でSFだから勿論科学の視点もあって……なんといえばいいのか、とにかく女性作家独特のあの感じが一切感じられなかったのだ(勿論良い悪いの話はしていない。ただ文章の傾向の話)
    というところに自分の中のジェンダー規範に気づかされ二重にしてやられたという感じ。

  •  思いつきで借りるにしてはボリュームのある本でした。ゲド戦記は読み始めたら大変だろうと思ってこっちにしたのですが……こっちもなかなか。

     技術とか科学とかサイエンスな方向のSFではなくて、社会学とか、民族学とか、心理学関係の要素が強い、文系SF。刺激を受けたこと、じっくり考たいこと、読み返して堪能したい部分、要素盛りだくさんで、とても楽しかったです。こういう、いろいろ考えたくなるSFは好きー。
     男性、女性という区別がない異性側が、最初は変わった設定だなぁと思ったけれど、社会の仕組みやメンタリティへの理解が深まるにつけ、納得できてしまう。とても合理的で、皆の納得する仕組みになっているんじゃないかと思っていまう。その過程が楽しかったです。

     あと、ル・グィン名物なのかな、旅。
     到着すること自体が目的の旅なので、もう、めっちゃ消耗しながら旅をする。これが、着いた先で何かと戦わなきゃいけないような話だったら、こんなにキャラを消耗させるわけにはいかないもんなぁ。
     旅自体がとにかく過酷で、体力減らしながらの極限状態が鬼気迫っておりました。こういう状況だからこそ、さらけだせるものがある……っていうことなんだろうけど、それでも容赦ない。

     見た目に騙されちゃうのか、どうしても、私は男性と男性の……のように見えてどきどきするのですが。そういう見方はすべきじゃないんだろうなと思いつつ……やっぱりどきどきするのです。まあ、これは仕方がないこと、うん。多分。

  • The story follows an envoy of the Ekumen, Genly Ai, a male protagonist from Terra. His mission is to persuade the nation of Gethen to join the Ekumen, though cultural barriers prevent him from doing so.

    For one, the people of Gethen are completely gender-less; they are neither "male" or "female". The concept of sex is an integral part of this novel, as seen through the interactions between Genly and Estraven. Despite fixed gender identity, Genly and Estraven form a strong, loving relationship through many obstacles they face together, but one that does not necessarily equal to romance. What's a relationship without a particular categorization or a purpose? It leaves the reader questioning about our existence - how do we define ourselves as a human being?

    I found this idea extremely relevant to today's society as "feminism" and "sexism" are becoming hot topics in our day to day conversations. But what do we essentially want to accomplish? And where do we draw the lines between gender equality vs gender absence? The question remain unclear and uncertain, but it gives a slight preview on what the world could look like if we removed gender roles out of our system.

  • 裏表紙のあらすじを書き写しますと

    遥かなる過去に放棄された人類の植民地、雪と氷に閉ざされた惑星ゲセン。「冬」と呼ばれているこの惑星では、人類の末裔が全銀河に類をみない特異な両性具有の社会を形成していた。この星と外交関係をひらくべくやってきた人類の同盟エクーメンの使節ゲンリー・アイは、まずカルハイド王国を訪れる。だが、異世界での交渉は遅々として進まない。やがて彼は奇怪な陰謀の渦中へと……

    ゲセン人は、人生の大半は男でも女でもないけれども、月に一度のケメルと呼ばれる発情期のときにどちらかになる。男になるか女になるかは選べないので、ある年には父親になって、次の年には子供を産むこともあり得る。当然性別による差別はない。作者はフェミニストなので、こういう設定があるんですけど、これは何より他者との相互理解がテーマですね。ゲセン人から見ると、男性のアイは、四六時中発情している変質者になる。一方アイからすると、男女どちらとも言えない相手にどう接していいか分からない。後半はアイとカルハイドの宰相エストラーベンが、何もない大氷原を二人で旅するんですけど、この旅でお互いに心を通わせていく過程が素晴らしいんです。特にエストラーベンがケメルに入ったときなんか、ドキドキです。想像するようなことは起こりませんので安心してください、ですが。
    特に最後が美しいし、なんとも言えない余韻にひたります。

    これは、ハイニッシュ・ユニバースという同じ世界観を共有したシリーズの一つで、他に「ロカノンの世界」「所有せざる人々」などがありますが、これが一番手にはいりやすいかと。ル・グインのSFは哲学的で、ドキドキの冒険物ではないですが、好きな人は絶対ハマると思います。

  • 両性の人々しかいない社会の思考や性質に驚くことしきり。
    これまで両性の存在そのものに神話性を見ていたが、ここで語られる人々は生々しく、冬の冷たい重さに耐えるだけの存在感があった。
    異星からの来訪者と彼を迎えたゲセンの者とそれぞれの視点から語られ、星や国の神話・伝承を挟むことで前半は短編集のようだったが、後半の旅路はすべてをまとめあげて重厚。

  • 入り込みすぎて、読後こころが…持て余すほど重い…

    ル=グインの描く未来世界、もうひとつ(?)の宇宙での話。
    極寒の常冬の星に住む、両性具有(?)の人々と、そこに降り立った大使の物語。

    ル=グインの作品の魅力は、何と言ってもその世界観の広さと重厚さだと思います。
    ひとつの連続した宇宙の話を書きつつ、そこに存在する星々は多様で、われわれとは全く違う世界、文化、宗教、生態系で生きている。そんな世界を次々と描き出す作者に、畏れすら抱くほどです。

    今回の作品も、ゲセンの世界が目前に迫るようでした。
    当初は大使ゲンリーと共に、未知の世界に戸惑い、好奇心を感じ、緊張感を持って受け止めました。そしてクライマックス、男と女である「異星人」(ゲセンの人々から見て)に再会するときには、顔をあげればそこにいる人々であるにも関わらず、再度ゲンリーと共に驚き、当惑します。
    あの長い作品を読むうち、私も彼とともにゲセンに暮らしていたような感覚がありました。

    前半部、何もかも異なる星での暮らし、交渉、結末…そして、壮大な後半部に描かれる、文化や背景をすべて超えたふたりだけの真っ白な向き合いと、私の思うどの形とも違う「愛」

    苦しくて愛おしくて、言葉になりません。

    それでも、人のこころから生まれるのは、未知への好奇心、未来への希望。
    ラストシーンに、彼の子に救われました。

  • 『ゲド戦記』原作者、SFの女王ル・グィンによる超大作。

    ――惑星ゲセンの人々は、みな男であり女でもある。雌雄同体で、月に数日だけ「女」または「男」に変容する人間たち。
    そして地球人の男性であるゲンリー・アイは、「宇宙連合」の使節として惑星ゲセンに降り立つが――

    (↓ここからネタバレというか、愚痴?)

    読了後すごく引き摺りますね……
    うん、フラグは立ってたんだよ……うん……
    アイが「《彼》の日記の中身」について「このときはまだ知らなかったのだが」とか言うシーンでああ死亡フラグ……と思ったけど!!でも!!!
    セレム―――(愛称)!!!orz

    セレム(愛称)は最初から誠実な人だったのに、主人公があまりにも靡かないから逆に、「ああ、そういう仲になるんだろうな、この二人。」と思っておりました。SFの異「星」間交流ではよくある、男女が反駁しあった末に恋に落ちる展開かと。
    結局はプラトニックだったことにビックリしたくらいで……(そこで押し倒さないのかいゲンリー・アイ? と思ってしまったよ。俗物と呼ぶがいい。)

    あああああああああ泣いて良いですか!?
    うっかりフラグ立ってたせいで泣けなかったんだけど!心の準備しない方が良かった!怒涛のように泣きたかったわ!!
    うわーん好きキャラが死ぬ展開にはそろそろ慣れてきたと思ったのにー思ったのにー

    ……さて、気を取り直して語ると、ル・グィンの、物の見方の鋭利さには脱帽しました。女の手で「強姦したいと思う男性的欲求」とは書けても、「強姦されたいという女性的欲求」とはなかなか書けない。冷静でいて鋭利な目で、人の心理・風俗を眺めてきた人間の筆だなと。
    こういう方に両性具有を書かせると説得力がありますね。変にいやらしく偏らず、かといって性的な魅力を欠いている訳ではない。リアルな「個人」として美しく醜くある両性の人。

    「私もゲセンに行きたい」と感じた人は私だけではあるまい。
    まあ、極寒ですがね。

    • ダイコン読者さん
      コメントありがとうございます!!
      引き摺りますよね(^^;)いやもう凹んだのなんのって。
      ファクスは私も好きです。《彼》には及ばないにしても...
      コメントありがとうございます!!
      引き摺りますよね(^^;)いやもう凹んだのなんのって。
      ファクスは私も好きです。《彼》には及ばないにしても。名台詞も多い賢人ですよね。

      ラスト良かったですよね!あの子が出てこなきゃー立ち直れなかったと思うんですよ。読者が。

      kumakuma10さん最寄のブックオフ素晴らしいですね!!ふあ~愛蔵版がそのお値段で!格安じゃありませんか。
      ネットのブックオフより、店舗の方が安いパターンってありますよね。何を基準に決めてるんだろう?店員さんの御心のままに、ってやつなんでしょうかねw
      2012/10/23
  • 69年に発表された、傑作SF。発表から40年以上を経た今でも色あせない。
    ストーリーを単純にあらすじとして抽出するのなら、ほんの数行で終わってしまうだろう。だが、ル・グィンは物語ではなく、世界を書いている。我々の知る地球とは違う惑星を書き、そこに暮らす人々を書き、その精神性、文化、宗教を書いている。
    「一気読み」できるような作品ではない。咀嚼し、反芻し、ようやっと少しずつ飲み込んでいくような作品。言い換えれば、その咀嚼・反芻に耐えるだけの豊かさと緻密さを持った作品。

    最初は少しじれったくも感じるが、少し飲み込めてくると、まさに腑に落ちる。

  • 今改めて見れば、表紙が絶妙。たった一人の使節としてやってくる主人公と雪の星に棲む両性具有の人類たちの交流。その特殊性から築かれた文化は主人公に戸惑いをもたらしながらもゆっくりと受け入れていく。物語の本筋に関わらないながらも挿入された逸話も異質な世界を更に引き立ててくれていました。

  • 性別のない惑星ゲセンという舞台設定がとにかく素晴らしい。詳細なゲセン人の生態や文化の描写にただただ圧倒される。
    権謀術数渦巻く国家内外の争い、極寒の地での逃走劇、アイとエストラーベンの友情などツボを抑えた物語にもグイグイ引き込まれる。
    セクシャリティーやジェンダーなどについて深く考えさせられる一冊。

  •  まだ人類が宇宙へ出るすべを持たない惑星・ゲゼン。主人公は、極寒の惑星であるその地に、広大な宇宙を結ぶ人類の同盟・エクーメンの使節として、ひとり滞在している。ゲゼンに存在する国々の代表者に、同盟への門戸を開かせるための説得役として、彼らを刺激しないようにと、何の武装ももたず、たったひとりで。
     その地に住む人々の体は、外見は主人公たちの種族とそれほど極端な違いはなかったが、ひとつ、大きな差異があった。彼らにはきまった性別がないのだ。およそひと月に一度、彼らはケメル期と呼ばれる時期を迎え、パートナーをそのつど獲得し、その期間だけ性別を得る。
     ゲセン人は閉鎖的で、なかなか主人公の説得を容れようとしない。どうにかして彼らを説得しようと苦闘する中で、やがて主人公は彼らの政治的陰謀に利用され……

     アーシュラ・K・ル・グウィン。(※この本ではグィンと表記してあります)ゲド戦記の作者さんです。
     もともとはSF界で有名な方で、そのことは前から聞き知ってはいたのですけども、ようやく買って読んでみたのでした。もっと早く読めばよかった! むしろゲド戦記よりもこっちのほうが、個人的にはツボだったなあ。ゲド戦記もよかったですけども。

     序盤には少しとっつきにくいような箇所もありましたが、読み進めていくうちにぐいぐい引き込まれました。両性具有の人類が、それゆえの独自の文化を持ち、習慣を持ち、神話を持っている。現実離れした異空間なんだけど、そこに感じられるたしかなリアリティー、異世界の手触り! こーいうの大好きだー!

     本の後半は、主人公がゲセン人の青年・エストラーベンと二人、生き残る道を探るために、氷に閉ざされた地を決死の思いで行く道行。飢えと寒さにさいなまれる過酷な道程と、その中で生まれる異種族間の友情。序盤はどちらかというと淡々と進むんですが、一転してドラマチックな展開に。

     人間ドラマもよかったんですけども、氷雪に閉ざされたその星には大型動物がいなくて、高カロリーな食料がないので、頻繁に食事を取るのだとか、雪の種類や状態を表す語が六十通り以上もあるだとか、そういう設定に猛烈にときめきます……

    • HAL.Aさん
      >kumakuma10さま
       コメントありがとうございます。
       いいですよねー! このレビューを書いたあとでル=グウィンを追いかけ始めたので...
      >kumakuma10さま
       コメントありがとうございます。
       いいですよねー! このレビューを書いたあとでル=グウィンを追いかけ始めたのですが、いま読んだ範囲では、SFで「言の葉の樹」、ファンタジーで「西のはての年代記」が、グウィン女史の最高峰であると感じました。(一度ハマると同じ作家さんの本を読みあさる傾向があるのです……)いつかお気が向かれましたら、そちらもぜひぜひ。
      2012/06/30
  • アーシュラ・ル・グイン氏描く、極めてハイブロウなSF小説。

    両性具有となった人類(本質的に大規模な戦いを行わなくなっている)と、彼らと通商を再開しようとする使者との間の軋轢、愛情、友情を描くんだけど、つまりは、文化習慣どころかそれだけ身体感覚の違う相手と果たして理解し合えるのか、心を通わすことができるのか、な辺りを問うものであるらしい。

    「闇の左手」とは「光の右手」に対応する言葉で、影と光、陰と陽、夜と昼、女と男・・・など対立する2つのもののかたわれをあらわす比喩。著者独特の、非常に深い人間観察、社会観察の結晶のような小説である。

    異世界の用語が説明なく出て来るのと(解説が巻末にある)、登場人物に感情移入ができず、読書はかなり難航した。

  • 難解で理解できたとは言えないが、過酷な旅路、登場人物の不可解な突然の行動、地球とはかけ離れた文化と生態が、読んだ後も残る。
    楽しい読書ではないけど、印象的。

  • 小松左京のような思想がないSFに比べれば、本書は極めて示唆に富む内容であるが、これがフェミニズムSFというのは全く理解できない。まだ自信の考えをまとめ切れていないが、本書は、自分の祖先が送り込んで入植した異星人との接触に関する、親密・離反という二項対立を示すものと考える。なぜなら、氷原を旅する際に明らかになる心話と、話し手がゲンリーアイ、エストラーベンと変化することは、全く異なる文化を持つ異星人の接触の過程を描いているからである。両性具有という設定は、地球人との二項対立を過激的に示す道具でしかない。加えて、闇の左手という民謡からとられた表題と、たびたび挟まる過去の伝説についての記載は、過去に地球人が惑星冬に対しておこなった仕打ちを示唆している。地球人の作戦によって全く異なる文化・習慣を持つようになった異星人への接触の過程が本書には記されている。幸いなことに、本書が示すのは危険・警鐘ではないというのがありがたい。

  • 冬の惑星舞台の冒険ものかつファ―ストコンタクトSF
    というのが筋書きだが
    書かれて40年も経てば西の良き魔女による古典SFの一言で済むか
    今から見ても「生まれてまず尋ねるのは男か女か」のかわらなさが光る

  •  作家の仁木稔先生のファンになってわりとたちます。
     こちらがおくったファンレターがキッカケで、ぼちぼちメールや手紙のやり取りがつづいています。
     相手が流石の作家先生なので、気楽に書き散らすというのができにくいので、自然ペースは細々としたものに…それはともかく。

     いちど、「先生の作品は、両性具有のキャラクターが多いですね」と書いて送ったら、「アーシュラ・K・ル・グィンの『闇の左手』以降、両性具有はSFの一ジャンルです」と返事をもらい、読んだことなかったので読んでみました。

     グィンはゲド戦記が有名で、日本でジブリでアニメ化もされましたが、原作は読んだ当時の私(多分、20前くらい?)には難しかったし、アニメのできは(以下略)だったので…最後まで読み切れるかどうかちょっと自信なかったのですが、結局、早々に読み切ってしまいました。

    <あらすじ>
     宇宙連合エクーメンは、かつて植民地であった辺境の星との外交関係の復活を目指し、惑星「冬」に使節・ゲンリー・アイを送り込む。惑星「冬」の住人は両性具有であり、特異な社会を形成していた。
     しかし、使節・ゲンリー・アイは現地の陰謀に巻き込まれ・・・、

     
     使節・ゲンリー・アイと追放された宰相・エストラーベンの関係が主軸です。
     交互に惑星「冬」の神話が挿入されています。
     ・・・名作です。
    ================

    友人か。どんな友人も新月になれば愛人に変わってしまう世界で、友人とはいったいなんだろう?私は男性という性に閉じ込められているから、友人ではない。セレム・ハルスの友人でもないし、この種族の誰の友人でもない。男でも女でもない、そして男であり女である彼ら、月のめぐりによって手を触れ合うだけで変態を遂げる人間の変種である彼らは私の肉親でもなく友人でもない。われわれのあいだに愛は存在しない。

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    【要約】


    【ノート】
    ・かなり昔に読んだのだが、いかにディテールをすっ飛ばして読んでいたかということを強く認識した。また、ストーリーについても、全く忘れていた。

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著者プロフィール

アーシュラ・クローバー・ル=グウィン(Ursula K. Le Guin)
1929年10月21日-2018年1月22日
ル=グウィン、ル=グインとも表記される。1929年、アメリカのカリフォルニア州バークレー生まれ。1958年頃から著作活動を始め、1962年短編「四月は巴里」で作家としてデビュー。1969年の長編『闇の左手』でヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。1974年『所有せざる人々』でもヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。通算で、ヒューゴー賞は5度、ネビュラ賞は6度受賞している。またローカス賞も19回受賞。ほか、ボストン・グローブ=ホーン・ブック賞、ニューベリー・オナー・ブック賞、全米図書賞児童文学部門、Lewis Carroll Shelf Awardフェニックス賞・オナー賞、世界幻想文学大賞なども受賞。
代表作『ゲド戦記』シリーズは、スタジオジブリによって日本で映画化された。
(2018年5月10日最終更新)

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