宇宙船ビーグル号 (ハヤカワ文庫SF)

  • 早川書房 (1978年5月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784150102913

みんなの感想まとめ

宇宙を舞台にしたこの物語は、宇宙生命との接触や船内の権力闘争を描きながら、独自の視点で進行します。特に、物語の主人公グローヴナーの職業や、宇宙船内のリアルな社会構造に対する描写が、読者に強い印象を与え...

感想・レビュー・書評

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  •  ダーティー・ペア(クァール)、歌の降る星(ネクシャリスト)、コブラ(反加速装置)、エイリアン(全体的なプロット)の元ネタ。こうして並べてみるとすごい影響力だな、こりゃ。無能な専門科学者対情報総合学者という対立の構図は、はっきり言って古くさいんだけど、厳密には全然科学的じゃないくせに、SF者のツボを突きまくるプロットは今の時点でもさすが。
     リイム人とのところでは、異なる文明の接触におけるコミュニケーションの不可逆性という「ソラリスの陽のもとに」的なテーマもすでに見られるし(レムってなんか気難しそうなんだけど、そのくせ実はメチャヴォクトのファンだったりしたら笑うなあ)、人間の体に卵を産みつけたりするところからしてイクストルの部分は完全に「エイリアン」。それもこっちの方がずっと手強い。なんせ壁もすり抜けちゃうし、真空でも生きていられるってんだから。そのわりにクァールもイクストルも間抜けな方法でやられちゃうんだけど。アナビスなんて完全にケントとグローブナーの対立の方がメインになってるもんな。怪物を空間転移させられるようなガス生物なんて設定おいしいと思うんだけど。もっと引っ張ってもいいのになあ。それとあの2人の対立が、「エイリアン」ではアンドロイドのアッシュに象徴されているという気もするな。
     しかし、SF的な意匠をはずすと、最初は他の科学者から相手にされなかったグローブナーが、段々と他の科学者に認められていくっていう話だから、一種の出世ものと言えるのかな?さしずめケントは主人公の邪魔をする意地悪な副社長ってところか(ケントになぜ人気があるのかという分析がちゃんとあって、ヴォクトは冷静)。グローブナーが船内で原子力を使ったり、乗員全員に催眠術をかけて船を接収したりと、何かというと過激な手段を提示するのがなんかおかしいけど、でもSFに限らずこういうヒーローの描き方ってよくあるよな。そこがみんな面白いと思うのかも子れないけど、俺個人としては、こういう方法論をSFに持ってくるのはあんまり好きじゃないんだけど。ブリンの作品みたいにエンタテインメントだと思って単純に楽しめばいいのかもしれないけど、それにしては出てくるアイディアが魅力的過ぎる。
     解説で訳者の浅倉さんがベスターやディレイニーにも影響を与えた、ワイドスクリーン・バロックの父みたいに書いてるけど、このできならそれもうなずける。ベイリーのとっちらかった雰囲気もいいけど、一般性という意味も含めて完成度はこっちのほうが上。ただ、中学生ぐらいのもっと若いときに読みたかった。なんかあら探しをするような読み方をしちゃって、素直に楽しめない自分がちょっと悲しい。
     イクストルの卵が6個であることを人間側が知ってるのは、どう考えても変。作者のミスでしょう。

  • 本作品から見えた幻覚はリドリー・スコットの映画『エイリアン』、『伝説巨神イデオン』、『ジョジョの奇妙な冒険』の柱の男と大統領、『マップス』、『魔宮バビロン』。

    『魔宮バビロン』が見えているあたり、オチはアレである。
    しかしクァールとイクストルを創造したことは筆舌に尽くしがたい人類への貢献であろう。

  • SFの定番。読んでると、宇宙生命より船内抗争の方が気になってしまいましたが、最初に登場する黒い猫型獣のクァールが私のお気に入りです。

  • 中学生の頃、初めて読んだSF小説。この小説の主人公グローヴナーの総合情報科学者という職業に憧れました。登場する宇宙怪物のスケールも違うし、宇宙船の社会構造も細かく描かれていて、とてもリアルな感じだったのを覚えている。再読したい一冊です。

  • マスターピースかと思い手に取った、初ヴァン・ヴォークト。ヴァン・ヴォークトという名前からして小難しそうなイメージを持っていたが間違っていた。面白かったです。

  • 乗員1000人の巨大探査船という設定にクラクラする。宇宙怪物との4番勝負も趣向に富んで面白いし、軍人と科学者で構成されているクルー間の確執のドラマもいい。古き良き時代のSF小説!

  • ヴォクトの怪物視点の物語   
    表紙   6点野中 昇
    展開   6点1950年著作
    文章   5点
    内容 590点
    合計 607点

  •  ウェルズの「宇宙戦争」から見れば新時代のモンスターを描写したSFだったのだろうが、今や古典と言っていいほど後続の作品からパクられている(特にクァールとイクストル)ので新鮮味は薄い。
    だがモンスターSFを語る上で避けては通れない作品だろう。
    単純に出現するモンスターの種類も多いし。

     しかし描写が凡人の想像力を超えていてなかなかモンスターの姿が掴みにくい。
    以前「SFモンスター画集」でイクストルを見たら想像していたものとかなり違っていて戸惑った。
    表紙絵に一体でも登場していたらなあ。

  • 原著は1950年発表の連作SF。恒星間飛行を行う宇宙船を舞台に、共通の外敵と戦う科学者たちの姿を描いたもの。

    主人公グローヴナーは、船内唯一の情報総合学者として、化学者、天文学者、物理学者、数学者、考古学者など各種専門家の持つ知識の統合を図る。しかし、新興の学問であるためにその発言力は低く、グローヴナーの献策が受け入れられないまま危機は拡大する。

    循環史観、原子力兵器など当時の空気を思わせるタームがてんこ盛り。ハードSFの雰囲気を持ちながらも、スペースオペラの情緒的な書きぶりでサラリと読める。

    未知の情報伝達手段を持つ生物を前にしたグローヴナーの思考。
    ⚪︎どうすれば、ひとの心に影響を与えられるか?相手の物の認識を変えればいい。どうすれば、ひとの行為をあらためさせられるか?相手の基本的信念と情緒的信仰をくつがえしてやればいい。

  • 異星生物がユニークでカッコいい。
    ただそれだけヽ( ´ー`)ノ

    異星生物の描写は本当に独創的で、後のSFのネタ元になったという評価もうなずけるんですけど、それ以外に面白いと感じられるポイントがありませんでした。
    乗組員同士の確執が物語のもう一つのポイントになっていますが、展開が単純過ぎてご都合主義全開(^_^;わかりやすいのはいいんですけどね・・・。
    たぶん、10代男子なら面白く読めると思います。

  • 1000名もの科学者が上船するスペース・ビーグル号は、宇宙探検を目的とした恒星間宇宙船。宇宙船唯一の情報総合学者エリオット・グローヴナーは、比較的歴史の浅い情報総合学を専門としていることから他の専門家から軽視されていた。
    そんな中、ビーグル号は人類に危害を加えんとする異種生物に遭遇する。
    殺戮される乗員。生物の枠組みを超えた超生物を前に成す術がない科学者は、しかし頭脳を結集させ状況を打破しようと試みる。
    大宇宙に潜む怖るべき知性を備えた超生物と科学者との死闘が幕を開ける。

    これは傑作!
    超生物の奇抜な設定、科学者たちの多様な知見の集中(時に考古学や心理学まで!)、船内の政治的な駆け引き…などなど、素晴らしいエンターテインメントに仕上がっている。
    物語では、クァール、リイム人、イクストル、アナビスの4種の超生物と遭遇する。なかでもイクストル編は、緊迫感と勢いのある展開で物語に吸い込まれていった。
    …ヴォークト恐るべし。

    「循環理論は─(中略)どの周期も、土に根をおろした初期農民から始まります。初期農民は市場へとおもむく。そして、じょじょに市場は、大地との”内的”な結びつきを失いながら、町に変わる。さらに都市ができ、国家ができ、そして最後に魂のない世界都市へと権力への破壊的闘争が生まれ、一連のおそろしい戦争で人々は終末期農民へと転落し、さらに原始状態を経て、新しい初期農民期を迎える。」

  • 4 つの中編を長篇に仕立てた作品なので、
    4 つのエピソードを読めるのだが、
    未知の生命体との戦いはどれも面白かった。
    結構ハラハラさせられる。
    情報総合学という学問も魅力的だし、
    宇宙船内社会の権力闘争的なドラマもあって、
    昔ながらの SF(?) を楽しめる。

  • 思うところあり、思い出の本を読み直しました。

    ストーリーは、平たく言うと、『突出した専門家が揃う閉鎖空間の中で、最も役に立つ学問は全てを薄く知り繋がりを作れる者だった』という話。
    実は、僕が子供の頃に抱いたリーダー像のようです。

    よく『社会人としてスペシフィックな得意分野が必要だ』と言われますが、本当にそうかな〜?と感じる事があり、最近、その原因がこの本にある事に最近気づいたので、読み返してみたのです。

    薄く知り繋がりを作れる者、というのは誤解でしたが(かなり深く理解していた)学問同士の繋がりを作れる、というのはやはり思い出の通りでした。

    視野を狭くせず、繋がりを作れる人間に僕もなりたい、と思っているのかも知れません。原体験に近づいた数時間でした。

  • 宇宙こええ。
    宇宙船がいろんな生命体と出会う。私は生命体というと、個体で組織的、社会性を持つものを思い浮かべてしまうけど、これは違った。
    生命体は、価値についての考え方が著しく違うものやコミュニケーションの取り方が不可思議なもの、個体と全体がイコールなものなど切り口が読めなくて面白い。
    また学際的な人がヒーローになっていてびっくりする。こういうのはだいたい専門家が解決するのが定石なのに!
    また人間同士の社会組織の種類の貧弱さ(太古から繰り返している!) もテーマになっている。
    欲望を満たそうとすると更なる欲望を生むし、他者と完全に意志疎通がとれると個が意識できなくてつまらなく思える。
    かといって自分に完全な確信をもって他者に働きかけるのはもっとムリだし、宇宙こええ、と思ってしまう。
    自分と全く異なるなにか(考え方とかも含む)と歩み寄ったり対処したりするのは、ワクワクする人もいるかもしれないけど、私にはちょっと難しいなあ。

  • ・謎の惑星で出会った怪物クァールとの戦い。

    ・催眠術によりビーグル号を操ろうとする異星人。

    ・宇宙空間に現れた怪物。壁を抜け人間に卵をうみつける。

    ・外宇宙からの侵略。

     2010年7月21日読了

  • 小説家を目指す人のバイブル。小説とはこういう風に展開していくものなのだと肌で感じられる作品。

  • 4つの短編に加筆して1つの長編にまとめたという代物らしいのだが、そのうちの2編は怪物視点での語りが多い。そこが興味深い点。
    もう一つは、そういった難関に遭遇するたびに科学者達が会議を開き対策を練るのだが、生物学や化学、物理学のみならず、社会学や考古学などの学問も大層重要な役を担っている点。なかでも人間側の主人公であるグローヴナーは情報総合学という新領域の学問を専攻しており、初めは他の科学者達からの扱いもぞんざいなのが、困難のたびに自分の地位を確立していく過程も面白い。科学者といえども政治と無関係ではいられないのだ。

  • 超有名なスペースオペラの傑作。
    登場する怪物(異性人)クァール、リイム、イクストル、アナビスの内、イクストルが映画エイリアンと酷似しているとして裁判沙汰になり、ヴォクトが勝訴しています。
    傑作と言われるだけあり、怪物達の描写が深くて最高!
    知性ある異性人と地球で生まれたばかりの情報総合学(ネクシャリズム)の若き雄、エリオット・グローヴナーとの対決が知的興奮を誘う。

  • いかに怪物を馴化するか。

  • 物語を怪物側から描いたのも珍しい。リイム人との接触や宇宙船内の政権争いも面白い。

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著者プロフィール

1930年生。英米文学翻訳家。大阪外国語大学卒。主訳書にヴォネガット『タイタンの妖女』、ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』、ラファティ『九百人のお祖母さん』、ティプトリー・ジュニア『たったひとつの冴えたやりかた』(以上ハヤカワ文庫SF)、著書に『ぼくがカンガルーに出会ったころ』(国書刊行会)。2010年没。

「2022年 『SFの気恥ずかしさ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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