スローターハウス5 (ハヤカワ文庫SF ウ 4-3) (ハヤカワ文庫 SF 302)

制作 : 和田 誠  伊藤典夫 
  • 早川書房
3.92
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本棚登録 : 1808
レビュー : 195
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150103026

感想・レビュー・書評

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  • 今の今までなんでこんないい本を
    読まなかったのか!と後悔しました

    今年に入って
    国のない男とこの本を読んで
    ヴォネガットがますます好きになりました

    上手く説明できないけれど

    「そういうものだ」

    ありがとう!ヴォネガット!

  • この少し奇妙な物語を一体どう説明したものだろう。
    これは、著者が第二次大戦時、ドレスデンで経験したことを描いた半自伝的作品であり、登場人物が宇宙人(トラルファマドール星人)に掠われ、時間旅行者となるSF小説であり、そしてまた、強烈なアイロニーと悲哀をたたえたアメリカン・ユーモア小説とも言える。
    3つのある種、非常に異質なものが作り上げた、風変わりな、しかし「真実」の物語である。

    著者・カート・ヴォネガット・ジュニアは、少年といってもよいほどの若さで召集され、ドイツ戦線に派兵される。独軍の最後の反撃ともいえるバルジの戦いで捕虜となり、ドレスデンに移送される。彼が移送された直後の1945年2月、米軍によるドレスデン爆撃が行われる。歴史のある美しい街、ドレスデンは、壊滅的な被害を受ける。
    まるで月面のようになってしまった廃墟で、捕虜たちは事後処理(つまりは遺体の処理)に従事する。
    ヴォネガットは、自身を主人公には据えず、著者の分身のようなビリー・ピルグリムという若者を作り出している。戦功とはほど遠い、不格好で、碌な武器も持たされず、右往左往する若者である。

    ビリーはあるとき、緑の身体のトラルファマドール星人に捉えられ、彼らの動物園で展示されることになる。そのときから彼は、「痙攣的」時間旅行者となる。いつ時間旅行するか、どこへ時間旅行するか、自分自身では決められない。未来へ飛び、過去へ遡り、地球へ行ってはまたトラルファマドール星の動物園に戻る。
    何度も時間旅行をしたため、彼は自分の地上の人生で何が起こるかを知っている。
    トラルファマドール星人は時間を流れとは捉えておらず、過去から未来、すべての時間を俯瞰することが出来る。
    トラルファマドール星人に感化されたビリーは、生き続け、死に続け、時を渡る。ドレスデンの「そのとき」を軸に。

    スローターハウス5とは、ビリー(ヴォネガット)が収容された建物で、食肉処理場第5棟を意味する。実際にはそこで「処理」されるべき肉は軍の胃袋に収まり、もはや名ばかりだったのだけれども。

    本書には戦時の多くの挿話が描かれる。誰よりも頑強な身体を持っていたのに、爆撃後のドレスデンでティーポットを盗んだがために処刑されてしまう元高校教師。意気地なしなのに、屈強な2人の兵士の仲間と思い込み、自らを加えて三銃士になぞらえるチンピラ。故郷を焼け出され、難民としてドレスデンに逃れてきた美しい十代の少女たち。
    彼らの辿る運命は残酷で、はかない。
    ヴォネガットはユーモアをたたえつつ、不条理な現実を辛辣に描く。「そういうものだ(So it goes)」と。

    ヴォネガットはこの本を書き上げる前に、5000ページを費やしたが気に入らず、すべて破り捨ててしまった、と作中で言う。この本自体も失敗作だ、と、最初の章で断言している。
    田舎出の若者が、突然外国に行かされ、武器を持たない大勢の人が瞬時に殺されるのを目撃し、さらには遺体の処理にも当たるのだ。それは、宇宙人に掠われることが大して異常とも思えなくなるほど、そして我々と違う時間の概念を持つ存在がいることを奇妙とも思えなくなるほど、異常な、奇妙な、怖ろしい体験ではなかったか。
    どれほどの言葉を費やしても、どれだけ正確に描写しようとしても、到底現しきれない「地獄」。
    いささか変わった手法で描かれたこの物語は、惨状を逆説的に見事に捉えているとも言える。

    作中で、1人の人物がビリーに言う。人生について知るべきことはドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』の中にある、と。「だけどもう、それだけじゃ足りないんだ」と。

    小鳥のさえずりとともに、物語は幕を閉じる。
    けれども物語は続く。生き続け、死に続けるビリーとともに、物語も読まれ続け、終わり続ける。

  • 著者の戦争体験を時間旅行の中に組み込むことによってより戦争の悲劇が浮き彫りになる。繰り返される「そういうものだ」という言葉はこの世の悲劇をなきことにしてはならないというメッセージなのか。

  • ドレスデン爆撃に居合わせた、ビリーピルグリム、けいれん的時間旅行者、トラルファマドール星的時間と生。


    難しいけれど意味不明ではない。テーマは身近で独創的。読んで、出会ってよかった一冊。

  • カート・ヴォネガット・ジュニア。
    高校生のころから名前は知っていたけど、実は読んだことなかった。こんなシュールでナンセンスでハイブリッドでイカれた作品を書く人だとは。
    きっと、高校生のころに読んでいたら、ずっぽり嵌まっていたと思う。でも、人生42年も過ぎると、現実の方が小説より奇だったりして、大抵のことには驚かなくなってしまう。感受性が鈍りきっている証拠だ。
    そういう自分を自覚するためだけにも、定期的にカート・ヴォネガット・ジュニアの作品を読むのはいいかもしれない。

  • ああ、カート・ヴォネガット・ジュニアはこういうことが書きたいんだな、ということがようやく腑に落ちました。

    「そういうものだ(So it goes)」について。
    私は病気をして「そういうものだ」と思いました。
    ヴォネガットは、"So it goes."と書いています。
    そういうものなんだと思います。

  • こんなことを言っては元も子もないのですが、とても面白い作品です。
    構成や着想は当然ながらヴォネガット的で、ブレがありません。そして他の作品にも登場するあの人やこの人もいます。
    途中、この作品のリズムに乗り切れず、ちょっと放棄しかけたのですが、「写真がトラルファマドール的である」ということを理解できたとき、すんなり読めるようになりました。

    ドレスデン爆撃に関する記述を読んでいると、心が内側から削られるようでした。東京大空襲みたいな感じだったのでしょうか。ヴォネガットにとって人生を左右するほど重要なファクターだと思いますが、他の部分と同様、非常にドライに描かれています。ただ少し、感傷的にはなっていますが。こういう、消そうとしても匂い立ってくるもののある作品が、個人的には好きです。

  • カート・ヴォネガットの半自伝的反戦小説で、戦争の悲惨さがユーモアとSF的展開で描かれている。生々しい表現は使われていないけど、ユーモラスな語り口だからこそ余計にその裏にあるやるせなさとか哀しみが際立っている。
    この小説の中では悲惨なことが起こる度に"そういうものだ"という台詞が出てくる。人はあまりに残酷な現実をつきつけられると、なんでこんなことが?とかなんで私が?とかって考えてしまうけれどそこには理由なんてひとつもないということだと思う。過去は勿論現在も未来も変えられない。物事を受け入れる落ち着きというよりもはや諦め。人生の良い時だけを眺めて生きよという言葉は、本当の不条理に遭遇したヴォネガットがそれでも生きるためにたどり着いた境地なのかもしれない。

  • ポップなフィリップ・K・ディックなような気もする感慨深い作品。
    そういうものだと言わざるを得ない苦悩。
    広島については、日本人には少ししっくりこない感じが。
    逆にドレスデンについて、
    日本人がどれだけ知っているのかということだが。

  • フィクションで間違いないが、ビリー・ピルグリムは間違いなくドレスデン空襲を経験した作者。KVらしいSF劇場と戦争描写の交錯は面白かった。

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