スローターハウス5 (ハヤカワ文庫SF ウ 4-3) (ハヤカワ文庫 SF 302)

制作 : 和田 誠  伊藤典夫 
  • 早川書房
3.92
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本棚登録 : 1817
レビュー : 197
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150103026

感想・レビュー・書評

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  •  ヴォネガット初体験に購入した「タイタンの妖女」を一時中断して読み始めた本作(「タイタン~」は序盤で何故かなかなか波に乗れなかった。電子書籍で買ったけどそれが慣れなかったからなのか)。
     本作をヴォネガット再挑戦に選んだきっかけは有名な「ニーバーの祈りの言葉」の引用に感銘を受けて。その初出のシーンは想像していたのとはだいぶ違って何故か吹き出した。(ちなみに二度目に出てくるシーンは、そう、祈りたくなる)
     
     しかし読んでいる途中からだんだん離人感に襲われてどう読んでいいものか、お話の着地点が全く予想できないのが不安なまま読み進めた。ただ大事な人から手渡された本なので、どうしても読みきりたかった。
     正直よくこんな……風変わりな反戦小説(と言っていいものか。私はいまだに何がSFで何がSFじゃないのか線引きが苦手である)を書けたものだと頭がクラクラしている。グロくて下品でナンセンスな描写もある。笑うとまではいかないけれども、馬鹿だな、と思う。馬鹿だな。
     ビリーになにか声をかけたくなるけれど、一体彼に何を言ってあげることができるかというと、何も無い。何も言えることは無い。
    「何も言えることは無い」ということを言葉で表現した稀な作品。

    読み終わった今、なぜか胃が痛い。関係無いかもしれないが。

  • SF。戦争。
    タイムトラベルや異星人やらが出てくるSF作品であることは間違いないが、非常にリアルで生々しい。
    残酷な描写も多いが、なぜか感動的。
    なんとも不思議な魅力に溢れた名作。

  • けいれん的に起きる時間旅行のせいで最初のうちはとても読みにくく感じたが「そういうものだ」と思ってからは引き込まれた。捕虜生活、ドレスデン爆撃の、渦中にいながらもどこか達観した、俯瞰するような視点は『夜と霧』やら『If This Is A Man』など多くの死に触れ生き延びたもの独特の何かを感じさせる。幸せな時から地獄へとたびたび行きつ戻りつする時の流れは死しても抜け出せない牢獄(作中の表現を借りれば琥珀に閉じ込められた虫)に閉じ込められた意識であり感情であると思うと、非常に壮絶で、苦しい。そういうものか?

  • 著者の戦争体験を時間旅行の中に組み込むことによってより戦争の悲劇が浮き彫りになる。繰り返される「そういうものだ」という言葉はこの世の悲劇をなきことにしてはならないというメッセージなのか。

  • カート・ヴォネガット・ジュニア。
    高校生のころから名前は知っていたけど、実は読んだことなかった。こんなシュールでナンセンスでハイブリッドでイカれた作品を書く人だとは。
    きっと、高校生のころに読んでいたら、ずっぽり嵌まっていたと思う。でも、人生42年も過ぎると、現実の方が小説より奇だったりして、大抵のことには驚かなくなってしまう。感受性が鈍りきっている証拠だ。
    そういう自分を自覚するためだけにも、定期的にカート・ヴォネガット・ジュニアの作品を読むのはいいかもしれない。

  • ああ、カート・ヴォネガット・ジュニアはこういうことが書きたいんだな、ということがようやく腑に落ちました。

    「そういうものだ(So it goes)」について。
    私は病気をして「そういうものだ」と思いました。
    ヴォネガットは、"So it goes."と書いています。
    そういうものなんだと思います。

  • こんなことを言っては元も子もないのですが、とても面白い作品です。
    構成や着想は当然ながらヴォネガット的で、ブレがありません。そして他の作品にも登場するあの人やこの人もいます。
    途中、この作品のリズムに乗り切れず、ちょっと放棄しかけたのですが、「写真がトラルファマドール的である」ということを理解できたとき、すんなり読めるようになりました。

    ドレスデン爆撃に関する記述を読んでいると、心が内側から削られるようでした。東京大空襲みたいな感じだったのでしょうか。ヴォネガットにとって人生を左右するほど重要なファクターだと思いますが、他の部分と同様、非常にドライに描かれています。ただ少し、感傷的にはなっていますが。こういう、消そうとしても匂い立ってくるもののある作品が、個人的には好きです。

  • カート・ヴォネガットの半自伝的反戦小説で、戦争の悲惨さがユーモアとSF的展開で描かれている。生々しい表現は使われていないけど、ユーモラスな語り口だからこそ余計にその裏にあるやるせなさとか哀しみが際立っている。
    この小説の中では悲惨なことが起こる度に"そういうものだ"という台詞が出てくる。人はあまりに残酷な現実をつきつけられると、なんでこんなことが?とかなんで私が?とかって考えてしまうけれどそこには理由なんてひとつもないということだと思う。過去は勿論現在も未来も変えられない。物事を受け入れる落ち着きというよりもはや諦め。人生の良い時だけを眺めて生きよという言葉は、本当の不条理に遭遇したヴォネガットがそれでも生きるためにたどり着いた境地なのかもしれない。

  • ポップなフィリップ・K・ディックなような気もする感慨深い作品。
    そういうものだと言わざるを得ない苦悩。
    広島については、日本人には少ししっくりこない感じが。
    逆にドレスデンについて、
    日本人がどれだけ知っているのかということだが。

  • 時空を縦横無尽に駆けめぐる
    不思議なストーリー。
    小説というメディアならではの仕掛け。
    悲惨な現実へのシニカルな視線も印象的。

    戦争映画の逆回しのシーンが
    有名だが、やはり独創的だった。

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