世界の中心で愛を叫んだけもの (ハヤカワ文庫 SF エ 4-1)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (511ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150103309

感想・レビュー・書評

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  • 「世界の中心で愛を叫んだけもの」「101号線の決闘」「不死鳥」「眠れ、安らかに」「サンタ・クロース対スパイダー」「鈍いナイフで」「ピトル・ポーウォブ課」「名前のない土地」「雪よりも白く」「星ぼしへの脱出」「聞いていますか?」「満員御礼」「殺戮すべき多くの世界」「ガラスの小鬼が砕けるように」「少年と犬」の15篇収録。1950年代~1960年代の作品。

    暴力的で退廃的な話、世界観が見えずわけの分からないまま終わる話など、ハチャメチャ作品が多い中で、「101号線の決闘」「星ぼしへの脱出」「聞いていますか?」の4篇は面白かったな。

    「101号線の決闘」
    武装した車同士の決闘が公認される世界で暴走するおっさん。年寄りの冷や水。

    「星ぼしへの脱出」
    異星人から逃れ地球へと脱出を試みるレジスタンスは、時間稼ぎのため、ヤク中の男の腹に時限爆弾を仕込んで星に残した。

    「聞いていますか?」
    誰からも認知されなくなった、孤独な男の話。

    「満員御礼」
    ニューヨーク上空に突如現れた宇宙船。異星人達は、夜な夜な感動を呼ぶ素晴らしいパフォーマンスを披露した。

  • SFの必読書として挙げられることがある本書。購入してみるとまさかの短編集。

    「世界の中心で愛を叫んだけもの」は表題作。他には14作ものストーリーが収録されている。

    クオリティの平均値は高い。多種多様なSF的エッセンスが散りばめられているし、ストーリーテリングはそれなりにOKだと思う。

    ただ、説明不足なところがある。説明過多よりは良いけど、いきなり筆者の世界に投入される感じがあり、唐突感はある。そういうのを楽しめる読者向けかな。

    特に表題作はもっとも理解不能だった…。これが必読書なのか…?

    それと、時代ゆえか差別的な言葉や表現が含まれており、良くも悪くもそこは昔の本といった感じ。

    (書評ブログもよろしくお願いします)
    https://www.everyday-book-reviews.com/entry/2021/05/02/%E3%80%90%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%AFSF%E7%9F%AD%E7%B7%A8%E9%9B%86%E3%80%91%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E4%B8%AD%E5%BF%83%E3%81%A7%E6%84%9B%E3%82%92%E5%8F%AB%E3%82%93%E3%81%A0%E3%81%91%E3%82%82

  • あまりにもタイトルが有名なのに実は読んだことがなかった1冊をようやく。個人的にはいわゆるセカチューよりも、エヴァのテレビシリーズ最終話タイトルのイメージがあり、あの頃結構本屋さんで平積みされてた記憶。とはいえ、このタイトルからどんな内容なのかは全く想像つかず。しかもなぜか長編だと思い込んでいたので短編集だったことにびっくり。SFだから、少々私には難解でもありました。

    まず表題作。理由もなく数百人の大量殺人をおこない死刑となったウィリアム・スタログは、死刑宣告の直前こう叫んだ「おれは世界中のみんなを愛してる。ほんとうだ、神様に誓ってもいい。おれはみんなを愛してる、おまえたちみんなを!」むろんこの言葉が直接的にはタイトルの意味ですが、ではぜ彼がそのような殺人をおこなったかというと…。ここからはSFですね、どこか別次元のある世界では、暴力や狂気を別の世界に「排出」することで平和を保っている。その排出された物質を受け取ってしまった世界のほうでは当然…という。

    以下、印象に残ったものをいくつか。

    比較的わかりやすいエンタメ的内容だったのは「サンタ・クロース対スパイダー」サンタ・クロースがまるで007のように悪の組織(?)スパイダーと戦う。ちなみに赤い服にはさまざまな装備が施されているため、着ると太って見えてしまうが、中身はスレンダーな男性。

    「101号線の決闘」は、作中の時代は未来だし、書かれたのは1968年の作品だけれど、まるで現代日本の「あおり運転」と通じるものがあり。高速道路であおられたら、手続きを踏んで決闘を申し込み、予め車にはさまざまな装備が搭載されているのでそれを使って戦闘することになる。

    個人的にオチが一番怖かったのが「名前のない土地」ジャンキーのポン引きが、偶然迷い込んだ店で悪魔的な何かによって別人の体と入れ替わってしまう。その別人は見知らぬジャングルを探検中、ついに目当てのものを発見する。それは太古の昔に人類に火を与えたことで永遠の罰を受けているプロメテウスだった…。プロメテウスの異様な姿が、なんだかエヴァのリリスを彷彿とさせる。

    <睡眠者>と呼ばれる者が、人類から悪意や敵意を取り除き戦争がなくなった世界、平和に飽きたものたちが、再び戦争を起こすために<睡眠者>を殺そうとする「眠れ、安らかに」は、表題作にもあった、戦争や暴力のない世界、あるいはそれらはどこから来るのか、という共通のテーマを感じる。

    ラストの「少年と犬」は収録作ではやや長く読み応えあり。何度も戦争が起こり荒廃した未来、富裕層は地下の安全圏に住んでいるが、主人公の少年はぐれん隊が跋扈する地上で、相棒の犬(戦時中の改良により微量なテレパシーがあり会話できる)と生きぬいてきたが、地下からきた少女をみつける。女性の少ない世界で彼女をめぐる争奪戦、さらに実はある目的のために地上にやってきた彼女の策略で地下の平和な世界へ行くことになってしまった少年を待ち受けていたのは…。これはある意味ハッピーエンドなのだろうか。なんともシニカル。

    ※収録
    世界の中心で愛を叫んだけもの/101号線の決闘/不死鳥/眠れ、安らかに/サンタ・クロース対スパイダー/鈍いナイフで/ピトル・ポーウォブ課/名前のない土地/雪よりも白く/星ぼしへの脱出/聞いていますか?/満員御礼/殺戮すべき多くの世界/ガラスの小鬼が砕けるように/少年と犬

  • 初エリスン。TV版エヴァの最終話のタイトルでお馴染みの(?)本作。抽象的すぎて一回読んだだけでは理解できないもの多し…。その中でも「星ぼしへの脱出」と「聞いていますか?」はわかりやすく、特に好みの作品でした!

  • 控えめに言っても最高すぎる、エリスン唯一の日本翻訳(だった)短編集。タイトルはアニメや恋愛小説(映画)でパクられあまりにも有名になったけれども、内容はまったく関係ない…みたい。
    みなさんおっしゃっているように、エリスンの重要なテーマに暴力がある。人間の中に必ずある残虐性はどうしたって封印できないし、しかもそれこそが人間が人間たらしめる要素なのだ…という絶望感、しかしそれゆえに「愛」も存在するという皮肉めいた主張。そこに読者であるわたしはものすごく浪漫を感じるのです。まあ、つまり最高。
    いっちゃんはじめに表題作がくるので、読者はラッキーと思うだろうけど、これが一番難解かつわけわからない。しかし、ああこんな感じかーってわかっていれば大丈夫。短編集全部読んだあとにもう一度読むと、また感想変わってくる。
    特に「眠れ、安らかに」はエリスンの思想がダイレクトに伝わってくる佳作。人が聖人(ガンジーみたいな?)によって平和を得て600年。しかし、賢い人たちが「平和になって人間は堕落した。戦争こそ人間が進化する要因」といって争いを起こそうとする。戦争がない世界、それは理想ではあるが、戦争によってカップラーメンもインターネットも生まれた。多くの文学作品、映画も戦争というテーマは傑作を生んだ。人の宿命を考えさせられる。
    最後を飾る「少年と犬」。第三次世界大戦後(こういう設定も前世紀っぽい)の荒廃した世界で、少年と犬は生きている。しかしそこに美しい女が現れる。この女性の描写がキョーレツすぎる。美しさの描写もいいけど、男と関係を持ったあと、だんだんと男を支配するようになる…というのがリアルすぎるー。オチは驚愕。というか、エリスン結構女性不信なんでは…と思いました。ググったら映画化しててびびった。こんなの映像化して欲しくない。
    というわけで、エリスンの短編集は現在2冊しか出てないなんて悲しすぎ。若島正先生様がまた翻訳してくれるそうなんで、楽しみに待っていたいものです。

  • 再読。「おれは世界中のみんなを愛している!」324人を理由なく殺した男は死刑執行の直前にそう叫んだ。…時空間的に超越した世界の中心、交叉時間(クロスホエン)。そこは外部の世界に向けて狂気を排出することで永遠の安寧が約束され、外部では排出された狂気のため殺逆が絶えない。住人である竜はその浄化システムに反撥し、結果その身ごと外部へと排出される。世界の中心で叫ばれた竜の愛は排出される狂気と混ざりながらあらゆる時代や場所へと伝播する…愛は自明の存在ではなく、暴力という暗闇の中でのみ儚く光る一つ星。それは他作品にも通底するエリスンのテーゼである。

  • ハーラン・エリスンは疾走感あふれる暴力的な文章を書く。
    たとえるなら、村上龍の『コインロッカーベイビーズ』をSFにしたような感覚。二人は全く違う文脈の作家だけれども、なにか似たような血のつながりを感じる。

  • 近頃、このタイトルをパクった本が評判のようです。うちはおたくの夫婦なんで、二人で「とんでもないパクリの題名」といっていました。でも、世間は素直に感動しているみたい。

    <p> 『華氏911』のマイケル・ムーアはレイ・ブラッドベリにごめんといったというのに、日本ではSFはマイナーだから、しかとで済むのですね。</p>

  • 表題作には感銘を受けたが、『少年と犬』など他の作品が数作気に入らず、全体としては普通の評価になってしまった。
    人類の源にあるもの、どうしようもない悪意と根源的な愛について、奇抜でありながらなんともいえない美しさをもって語った表題作の他には、『眠れ、安らかに』がとても印象的だった。この作品もやはり人類の抱える本能的な愚かさ暴力と、一人の人間から発されやがて高次元に達した愛と平和への祈りを描いている。高次元における「救済」と人間の自己決定権との対立ーとまとめてしまうと陳腐にすぎるかもしれないが、人というのものの本質と在り方について考えさせられ、好きだった。

  • 「世界の中心で愛を叫んだけもの」★★★
    「101号線の決闘」★★★
    「不死鳥」★★★
    「眠れ、安らかに」★★★
    「サンタ・クロース対スパイダー」★★
    「鈍いナイフで」★★
    「ピトル・ポーウォブ課」★★★
    「名前のない土地」★★
    「雪よりも白く」★★★
    「星ぼしへの脱出」★★★
    「聞いていますか?」★★★
    「満員御礼」★★★
    「殺戮すべき多くの世界」★★★
    「ガラスの小鬼が砕けるように」★★★
    「少年と犬」★★★

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著者プロフィール

1934年オハイオ生まれ。56年にデビュー。鮮烈な暴力描写、華麗な文体に熱狂的なファンを持つSF界のカリスマ。シナリオライター、批評家としても活躍。67年、アンソロジー『危険なヴィジョン』を編纂、アメリカにおけるニュー・ウェーヴ運動を牽引した。代表作に『世界の中心で愛を叫んだけもの』(71)、Deathbird Stories(75)など。

「2019年 『愛なんてセックスの書き間違い』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ハーラン・エリスンの作品

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