鋼鉄都市 (ハヤカワ文庫 SF 336)

  • 早川書房
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レビュー : 129
  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150103361

感想・レビュー・書評

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  • 1954年刊行のSF名作。ロボット嫌いの人間の刑事ベイリとロボット探偵のR・ダニールが、宇宙市(スペース・タウン)で起こった「宇宙人殺人事件」の捜査にあたる。人間よりロボットの知能が遥かに高くなった近未来が舞台。人間は仕事をロボットに奪われ暇を持て余すこととなり、結果ロボットに対し激しい憎悪を向けるようになっていた。

    アシモフが練り上げたこの世界観が半世紀以上前に生まれたことにまず感動します。現代から見ても百年以上先であろう未来を舞台にしているにも関わらず、人間と宇宙人それぞれの居住地区の様子や高速の歩道など、物語を通してまだ見ぬ未来の情景が違和感なく浮かびます。
    そして何より、時に人間らしい感情を露わにするベイリと、見た目こそ人間と変わらないものの機械的に事に及ぶダニールのどこかちぐはぐな凸凹コンビの掛け合いは見所です。捜査の過程で、このコンビの関係性にも少しずつ変化が生じます。

    事件にあたるミステリ部分は思いのほかシンプルでしたが、それを取り巻く環境は現代を生きる私たちにも通ずるものがあります。移民政策を連想させる「人間対宇宙人」、人間の仕事を奪う「人間対ロボット」、近年の急速なIT化や発展目覚ましいAI分野を彷彿とさせる「未来志向対懐古主義」等々。異なる立場の意見が入り交じり考えさせられ、同時に先見の明を持つアシモフに改めて感心しました。

  • SF設定のミステリーということで、前々から読みたいと思っていた。ミステリー的な謎解き部分は正直、あっと驚くというほどのものではない。むしろ、自然に溶け込みすぎて「え?」となるという点で面白く感じた。やはり、この本の読みどころは、アシモフの描く近未来の世界観だと思う。

    50年以上前に書かれた作品なので、そのSF的世界観を「古臭いなー」と感じる場面も多々ある。しかし、現代的な記述も多くてびっくりする。たとえば、コンピューターにおける検索機能の充実性や、登場人物が普通にコンタクトレンズを使っていることなど(ウィキペディアで見てみると、コンタクトレンズが製品化されたのは1971年。この作品の18年後!)。
    でも、それより何よりすごいと思うのは、描かれる世界観での理論の身体性・感覚性だろう。××だから××なのだ、という説明が抜群にわかりやすい。普通、違和感を覚えるものを説明することはとても難しい。なんか気持ち悪い、なんか違う、というのを他人に伝えることは、前提として何らかの基準や一般的な知識を必要とする。その想像の近未来においての「基準」や「一般」を決しておろそかにせず、しかし「特例」や「例外」を書くところが、この作品世界のすごいところだと感じた。

    おそらく、論理が生きてるのだろう。で、今もそれが生き続けている……。こういうのを読むと、今自分たちが当たり前に持って共有している世界観が産声を上げた瞬間を垣間見ているようで、どきどきしてしまう。そして、そういう意味で、私達もこの世界の、この作者の子供なのだと思う。
    実は最近『インターステラ―』を観て、一番最初に思い出した作品がこれだった。食糧難、他星への移住など、50年後のSFでもこの作品と同じ問題を取り扱っていることに、やはりアシモフの先見の明はすごいなぁ、と感心した。

  •  宇宙人殺人事件の捜査をすることになったベイリと宇宙人側の捜査官でロボットのベイリの活躍を描いたSFミステリー。

     SF作家の描く未来都市はどれも魅力的なものが多いですが、この本の舞台となる鋼鉄都市”ニューヨークシティも面白いです。

     かっての地球からの移民であった宇宙人たちへの反感、人間から職を奪ったロボットへの反感、人口が増えすぎたため食料など生活上の制限は多くドーム状の都市の中で生活せざるを得ない、とかなりわけありの世界観です。

     そうした世界観だからこそ起こる事件や感情の機微などが読みどころです。ロボットに反感を抱きダニールに対し複雑な感情を抱くベイリ、
    そうした感情や人間の心理を理解はするものの共感はせず、そのためどこかちぐはぐな言動をするダニール、
    そうした二人のコンビのデコボコっぷりが読んでいて楽しかったです。

     ミステリとしては少しあっさりと言う感じもしましたが、この鋼鉄都市という世界観をより深く表現するためにミステリの手法が採られたSFだったのかな、と思います。

  • 過剰な人口増加と限られた資源のために鋼鉄で覆われた都市に押し込められて管理社会を生きる地球の人々には、宇宙市で閉鎖的に暮らす宇宙開拓民の末裔である宇宙人へ対する反感、そして職を奪ってゆくロボットへの憎悪が蔓延っていた。ニューヨークシティの刑事ベイリは宇宙市内で宇宙人が殺害された事件の担当を任されることになったが、宇宙人側から捜査のパートナーとしてあてがわれたのは宇宙人と見紛う程に人間を模して造られたロボットのダニールだった。
    ロボットに個人的な悪感情を抱くものの現実主義者で自身の仕事にも誇りを持っている主人公のベイリと、外見は人間とほぼ同じながら機械然として理論的にふるまうパートナーのダニールのやり取りがとにかくおもしろく、その過程を経て変化していく二人の姿も楽しめた、終盤での聖書の一説を題材にしたやり取りが特にツボだった。
    二転三転としていくベイリの組み立てた論理的な推理の展開もストーリー展開に起伏を与えておりテンポよく読み進めることができた、特にタイムリミットが迫る中での終盤の推理劇は爽快な印象を覚えた。
    舞台設定としてのSF的要素がミステリとしての事件の背景や状況設定とも上手くかみ合っており、話の筋自体はミステリ然としていながら世界観に深みを与えているので純粋にミステリ小説としても楽しめるものになっている。

  • 舞台は未来のニューヨーク。宇宙人の惨殺事件という前代未聞の事件の捜査を命じられた刑事イライジャ・ベイリは、宇宙人側からパートナーとして指名された人間そっくりのロボットR・ダニール・オリヴォーと共に困難な捜査に取りかかる。巨大な鋼鉄のドームの中、完全な管理社会で生きる地球人は皆生まれながらの広所恐怖症で、ドームを出て殺人を犯すことは不可能なはず。一方、ロボットはドームを出て殺人現場まで行くことが可能だが、「ロボット工学三原則」に縛られるため殺人行為をとることは絶対にできない。では、宇宙人を殺したのは一体誰か、そしてどのように殺人を実行したのか?

    忘れもしないこの作品、鴨が生まれて初めて読んだSFです。小学校の図書館でジュブナイル版を借りて読んだんですよ。あまりの面白さにビックリして、その図書館にあったジュブナイル版SFを片っ端から読み漁り、お小遣いをもらえるようになってからは本屋に行くたびに水色と紫色の背表紙の棚の前でうんうん唸るようになり、そして現在に至る。とヽ( ´ー`)ノイライジャ・ベイリとR・ダニール・オリヴォーの名コンビは、今でも大好きなキャラのひとつです。一つオリジナル版も読んでみようと、30年ぶりに手に取りました。SFマガジン初代編集長・福島正実氏が翻訳を手がけています。

    この作品、あらすじを読めばお分かりのとおり、ストーリー展開はミステリに他なりません。SFの世界観の中で論理的に謎を解いていく、いわゆる「SFミステリ」の傑作のひとつに数えられます。特に、アシモフのSFミステリは、彼が考案した「ロボット工学三原則」の縛りの中でロボットが絡む事件をどう解決していくか、という謎解きの視点がポイントで、鴨が最初に読んだジュブナイル版もこの「謎解きの面白さ」と「ベイリとダニールの友情物語」を強調して、子供にもわかりやすくスリリングな作品にまとめていました。だから、鴨がこの作品に対して抱いていたイメージはミステリの要素の方が濃いものでした。
    でも、この歳になって他のSFもさんざん読んだ上で改めて再読したら、ミステリとしての謎解きの面白さはもちろんのこと、SFとしての懐の深さにシビれましたね!物語はシンプルなミステリではありますが、その背後を構成し、謎解きにも密接に関係する世界観が深い。まぁ、ジュブナイル版ではそこまで書いてなかったんでしょうけどねヽ( ´ー`)ノ極端な人口過剰社会を維持するために閉塞的な管理社会の中で歯車のように生きる地球人と、現在の生活レベルを維持するために徹底的な人口統制で少人数社会を堅持する宇宙人(この作品中では、宇宙に移民した地球人の子孫を「宇宙人」と位置づけています)との確執・・・高性能なロボットに職を奪われ、過激な懐古主義へと突き進む地球人側の不穏な動き・・・双方の社会の停滞を打破するために、宇宙人側の一部が企てるブレイクスルーの目論み・・・こうした社会背景が、「SFっぽくしないとアレですから」というお飾り程度のものではなく、本筋の謎解きと一体不可分の関係として物語に強固な骨格を与えています。ミステリですからラストシーンは事件の解決なわけですが、そんなありがちなラストシーンの背後に、再び宇宙に挑む人類の壮大なビジョンが二重映しに広がります。SFミステリにしかできない離れ業です。

    すごい!やっぱりSF面白い!

    初心に返って懐かしの作品を読んで、そして改めてSFの面白さに目覚めたこの年末年始でございましたヽ( ´ー`)ノ

  • 1953年に書かれたSF推理小説。刑事である主人公の相棒となるロボットのある種のロボットらしさもあってか、主人公のへこたれなさや妻のいじらしさといった人間くささに際立った印象を受けた。ところで恐らくこの作品はあまりdeep learningが想定されていない。今現在を生きる我々の方がロボットへの脅威をより強く覚えているのではないだろうか。

  • 大原まり子のイルクラ・シリーズから、人間とアンドロイドがタッグを組んで何かをする、と言う作品が読みたくて読み始めたが、序盤から、文体が非常にカクカクしている、と言うか、文字情報としか読めなくてかなり違和感感じつつ読んでたのだが、「ロボット3原則」に基づく、人間社会の中でのロボットのあり様や、ほぼ人間にしか見えないロボットと人間との対比が浮き彫りになる事で、人間の思考回路や気微はロボットには理解できまい、と言うより、ロボットのようにシンプルに合理的にものを捉えられたら、逆に人間とう言うもののシンプルさが美徳である、と言う事にも気付く作品だった。宇宙市で宇宙人の博士が殺害され、その犯人捜しを人間が話の警察総監から内密に捜査に当たる様に指名されたベイリと、宇宙市側から派遣されてきた人間型ロボットのR.ダニールが、全く相容れないまま捜査に当たる、と言うミステリ中の捜査ものでもあり、ロボットに懐疑的で憎んでいると言ってもいいくらい毛嫌いしてベイリが、捜査に当たっているうちにロボットであるダニールの決して感情には振り回されない論理的な思考に触れて行くうちに、深意な心持になって行く様を描く相棒ものでもある。
    なんせ、大原まり子作品とは違い、会話が硬い。会話と言うより業務連絡みたいで、ベイリの感情の揺らぎなども、伝わるんだけど、言葉以上に感情が爆発している様な印象を覚える。平常時の会話に感情が余りにも垣間見えない為、ちょっと感情が動くと極端に感じてしまう、と言う感じが強くて、ひたすら、なんだか読みにくい、堅苦しい、と言う感覚を拭うのがキツかったのだが、最後の、時間にリミットが決められた後の、ベイリとR.ダニールの捜査の終焉に向かう総監との対話で、一瞬にして解消されるカタルシス的な何かが湧いてきた。
    早く『はだかの太陽』が読みたくてタマラン!!!現在小説の文体に慣れきった頭で読んだので、古臭いと言うより回りくどい言い回しに感じてしまって「よ…読みにくい…」だったんだが、最後まで読んでこの爽快感…。人間とロボットの相棒ものとしては、奇跡的に…とか、そう言う偶然の産物に頼らず、徹底して科学的にロボットと人間を対比させているのが、物凄く面白かった。

  • 独創的な世界観の構築が求められるSFと、現実の緻密な描写が求められる推理物とを、同時に描いた傑作。SFとは決して絵空事めいたファンタジーではなく、血肉のある人間像とその背景である社会と歴史がきちんと想定されてこそ「SF」となりうるのだと証明している。地に足の着いていない設定ばかりの昨今のSF映画にこの姿勢を見習って欲しい。
    人間とロボットの関係を描いたもので、イライジャとダニールの信頼関係以上に説得力のあるものを私はまだ見たことが無い。

  • ツンデレおじさんとイケメンロボットによるバディ物で、ミステリー要素よりもどちらかというとSFの世界観や設定が魅力的な作品。
    作中に出てくる高速自動走路は是非乗ってみたい。
    そしてやっぱり苦労するおっさんは良い。

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著者プロフィール

Isaac Asimov (1920―1992 )。アメリカの作家、生化学者。著書に『われはロボット』『ファウンデーション』『黒後家蜘蛛の会』等のSF,ミステリーのほか、『化学の歴史』『宇宙の測り方』等の科学啓蒙書やエッセイが多数ある。

「2014年 『生物学の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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