鋼鉄都市 (ハヤカワ文庫 SF 336)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150103361

感想・レビュー・書評

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  • 大原まり子のイルクラ・シリーズから、人間とアンドロイドがタッグを組んで何かをする、と言う作品が読みたくて読み始めたが、序盤から、文体が非常にカクカクしている、と言うか、文字情報としか読めなくてかなり違和感感じつつ読んでたのだが、「ロボット3原則」に基づく、人間社会の中でのロボットのあり様や、ほぼ人間にしか見えないロボットと人間との対比が浮き彫りになる事で、人間の思考回路や気微はロボットには理解できまい、と言うより、ロボットのようにシンプルに合理的にものを捉えられたら、逆に人間とう言うもののシンプルさが美徳である、と言う事にも気付く作品だった。宇宙市で宇宙人の博士が殺害され、その犯人捜しを人間が話の警察総監から内密に捜査に当たる様に指名されたベイリと、宇宙市側から派遣されてきた人間型ロボットのR.ダニールが、全く相容れないまま捜査に当たる、と言うミステリ中の捜査ものでもあり、ロボットに懐疑的で憎んでいると言ってもいいくらい毛嫌いしてベイリが、捜査に当たっているうちにロボットであるダニールの決して感情には振り回されない論理的な思考に触れて行くうちに、深意な心持になって行く様を描く相棒ものでもある。
    なんせ、大原まり子作品とは違い、会話が硬い。会話と言うより業務連絡みたいで、ベイリの感情の揺らぎなども、伝わるんだけど、言葉以上に感情が爆発している様な印象を覚える。平常時の会話に感情が余りにも垣間見えない為、ちょっと感情が動くと極端に感じてしまう、と言う感じが強くて、ひたすら、なんだか読みにくい、堅苦しい、と言う感覚を拭うのがキツかったのだが、最後の、時間にリミットが決められた後の、ベイリとR.ダニールの捜査の終焉に向かう総監との対話で、一瞬にして解消されるカタルシス的な何かが湧いてきた。
    早く『はだかの太陽』が読みたくてタマラン!!!現在小説の文体に慣れきった頭で読んだので、古臭いと言うより回りくどい言い回しに感じてしまって「よ…読みにくい…」だったんだが、最後まで読んでこの爽快感…。人間とロボットの相棒ものとしては、奇跡的に…とか、そう言う偶然の産物に頼らず、徹底して科学的にロボットと人間を対比させているのが、物凄く面白かった。

  • 独創的な世界観の構築が求められるSFと、現実の緻密な描写が求められる推理物とを、同時に描いた傑作。SFとは決して絵空事めいたファンタジーではなく、血肉のある人間像とその背景である社会と歴史がきちんと想定されてこそ「SF」となりうるのだと証明している。地に足の着いていない設定ばかりの昨今のSF映画にこの姿勢を見習って欲しい。
    人間とロボットの関係を描いたもので、イライジャとダニールの信頼関係以上に説得力のあるものを私はまだ見たことが無い。

  • 「警視総監に呼びだされた刑事ベイリが知らされたのは、宇宙人惨殺という前代未聞の事件だった。地球人の子孫でありながら今や支配者となった宇宙人に対する反感、人間から職を奪ったロボットへの憎悪が渦まく鋼鉄都市へ、ベイリは乗り出すが……〈ロボット工学の三原則〉の盲点に挑んだSFミステリの金字塔!」

    「人間の刑事とロボットのダニール・オリヴォーが犯人を追う、ミステリー仕立てのSF。人間とロボットの会話が楽しく、そして考えさせられる作品。」

  • いいものを薦めれば薦めるほど過去にこだわって意固地になってしまう。であれば撤退し、少数の賛成派を励ますことによって内から盛り上げ、自分たちで作り上げたと思わせるように仕向ける。政治の大切さ。

  • SFの古典的な作品
    それだけに当時の人が思い描いていた未来像というのが見れて面白い
    メインテーマはロボットと人間の共存や遺伝子選択、アンチエイジング、ロボットとの共存を実現した「宇宙人」と、鋼鉄の都市に閉じこもって懐古的な思考の「地球人」と、その間で起こるロボット関連の事件が主となる
    AIや自動運転などが実用化しようとしている今見てもなかなか色あせないテーマと感じる
    また手塚治虫をはじめとした人たちが、どういう発想をもとに物語をアレンジしていたかの元が垣間見れる気がする
    一方で通信技術などは当時の人の発想を完全に超えたところまですでに発達しているなど、古く見える部分に着目するのも面白かった

  • SFミステリである。元祖かはわからないけどこの時代では珍しかったんではないだろうか。有名なロボット3原則が絡んでいてSFならではのロジックになっているのが見事。ストーリーがすっきりしていて読みやすい分容疑者が少なく、犯人は大体想像ついてしまうのが残念。

  • 推理小説としても面白い!ちょっと読むつもりが夜通し読んでしまった。大きな目的達成のためには感情は邪魔だとばかり、裏切り者が持ち駒になるドライさは清々しささえ…。「宇宙帝国における我々宇宙人の生命は、危険を賭すには長過ぎ、なげうってしまうには、あまりに快すぎる」人口過密の地球は脳天気で危機的、人口過疎の宇宙は安定しすぎて頽廃、退化する、だからお互いこうしようという意見のぶつかりあいが印象に残った。地球的人口抑制制限(出生数の制限)が野蛮だという宇宙人の意見は、誰かが言い出しそうだなぁ。

  • 舞台は未来の地球。宇宙人(他の惑星に移住していった人々の子孫)が殺されるという事件が起きます。主人公の警察官がこの事件の担当することになりますが、彼のところに相棒として、宇宙人が派遣したロボットがやってくるのでした。

    宇宙人と地球人の対立、職を奪うロボットへの地球人たちの不満…などなどあるなかで、捜査は進みます。
    対立をどう解消するのかというのが面白い。また、犯行が不可能と思われていた人がどうやってそれをなしえたかというのも面白かったです。これ、こう使うのか、という。

  • 人間とロボットのバディ物。

    SFミステリーで読みやすいものの、なかなか主人公が本気を出さなくてもどかしかった。

    アシモフのロボット三原則は有名だから流石に知ってるけど、フランケンシュタイン症候群は初耳、面白い。

    現代ならAIに対する恐怖をターミネーター症候群と呼んでも良いかもしれない。

  • 初めてのアシモフ。AIやシンギュラリティなどの文脈では小説に限らず引き合いに出されることも多い「ロボット三原則」を軸に作られたSFミステリ。未来の地球を舞台に、人間の刑事とロボットの助手ペアのキャラ、ガッツリした読み応え、ミステリとしての作りも申し分のない名作。

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著者プロフィール

Isaac Asimov (1920―1992 )。アメリカの作家、生化学者。著書に『われはロボット』『ファウンデーション』『黒後家蜘蛛の会』等のSF,ミステリーのほか、『化学の歴史』『宇宙の測り方』等の科学啓蒙書やエッセイが多数ある。

「2014年 『生物学の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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