猫のゆりかご (ハヤカワ文庫 SF 353)

  • 早川書房
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本棚登録 : 2035
感想 : 171
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  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150103538

感想・レビュー・書評

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  • 甚だ奇っ怪な小説。

    まえがき

    「本書には真実はいっさいない。」「〈フォーマ〉を生きるよるべとしなさい。それはあなたを (略) 幸福な人間にする。」(p4)
    ※フォーマ=無害な非真実

    これがこの物語を端的に表している。

    ジョークやユーモアが私たちを豊かにしてくれる。


    中身は荒唐無稽の極み。
    「世界が終末をむかえた日」について、謎の宗教・ボコノン教徒の男、自称ジョーナが語る。その述懐が人を食ったような、あまりにもヘン。

    原爆研究者、フォーニクス・ハニカー博士が開発した究極兵器‘アイス・ナイン’を巡り、カリブの小国サン・ロレンゾ共和国を舞台に破茶滅茶が巻き起こる。

    世の中に意味が無いものがあっても良いではないか。私はそんな風に捉えたが、無理して意味を求めなくても良いように思うのであまり考えないようにする。

    猛烈に好きな作品。


    23刷
    2021.2.8

  • ヴォネガットはいつも読み終わると唖然とする。
    
    スラプスティックとかブラックユーモアとかナンセンス・ギャグとか評されるけれど、つまりは「たわごと」であり、「たわごと」を語りながら人生とか神とか生きることの意味だとかを描いてみせる。
    
    そして読み終わると「いえいえ、これは何の意味もない、ただのたわごとですよ」と言われて唖然となる。そんな感じ。
    
    「猫のゆりかご(あやとり)ですよ、それ」
    「世界でいちばん古い遊びの一つですよ、猫のゆりかごは。エスキモーだって知ってる」
    「十万年もそれ以上もむかしから、おとなは子供たちの前でからめた紐をゆらゆらさせて見せている」
    「おとなになったときには、気が狂ってるのも無理ないや。猫のゆりかごなんて、両手のあいだにXがいくつもあるだけなんだから。小さな子供はそういうXを、いつまでもいつまでも見つめる……」
    「すると?」
    「猫なんていないし、ゆりかごもないんだ」
    
    「いったい、これには何の目的があるんですか?」と人はていねいにたずねた。
    「あらゆるものに目的がなければいけないのか?」と神はきかれた。
    「もちろん」と人は言った。
    「では、これの目的を考えだすことをあなたにまかせよう」と神は言われた。そして行ってしまわれた。
    

  • 平沢さんが好きな小説としてあげていたので、読んでみることに。
    SFは普段読まないので、馴染みがなく、時間がかかりました。
    架空の都市オセアニアを舞台に世界の終末までが描かれます。
    登場人物が多いせいか、独特なコマ割りのせいか、なかなか物語に集中出来ず。
    ただ、各方面に影響を与えたことはよく分かりました。

  • いやー、これは・・・
    面白かったぁ・・・
    読み終えるのが惜しいし、終わった直後に2回目を読みたくなりました。
    だからヴォネガット作品はクセになる。
    次は『母なる夜』が読みたい・・・。

    ヴォネガットはこれで3冊目。無理矢理に序列をつけるならば
    (一般的な)面白さだと『スローターハウス5』>『猫のゆりかご』>『タイタンの妖女』で、個人的好き度でいうと『猫のゆりかご』>『スローターハウス5』>『タイタンの妖女』です。
    タイタンは、なんか・・・そんな面白くなかった気がw

    評価の尺度、映画でも音楽でも小説でもアニメでも、
    なんでも一緒だと思うんですが
    「面白い!」というのと「好き!」は違うと思うんですよね。
    どっちもあればそれがベストなんだけど、
    「面白くないけど好き!」な作品もあれば
    「面白いけどあんまり好きじゃない・・・」作品もあるじゃないですか。

    『スローターハウス5』は、どっちものバランスが取れていて
    『猫のゆりかご』は個人的にすっごい好きなんだけど、
    読む人を選ぶかも、だからあんまり他人に薦める気にはなれないような作品。
    細かいディテールが大好き。
    ヴォネガットと出会えてほんとによかったです。
    読書を始めてよかった・・・。
    30過ぎて小学生みたいにワクワクできるとは・・・。


    おはなしの方は、色々書くとネタバレになっちゃいますけど
    この小説が書かれたのが1963年で、
    同年制作、翌1964年に某超有名監督の某超有名白黒映画、
    タイトルがすごく長いやつが公開されてて
    それと方向性が非常に近い。
    1962年のキューバ危機の直後ですので。

    あと、この小説は『ボコノンの書』、ボコノン教の話でして
    人工言語・人工宗教
    ピジン語・クレオール語とかそんなのも入っている。
    厳密に言うと作中ではただの訛りなんで違うんですけど。

    小説なのでフィクション、大概のお話は全て人工的なものなんだけども
    一応現代劇でここまでの世界観を作り上げるとは・・・。
    (あ、だからSFっていうのかw)
    人工宗教と科学、というのは
    ヴォネガット本人が最初科学を専攻してたり
    お兄さんも科学者だったり・・・
    あと無神論者だからでしょうね。

    ブラックユーモアとアイロニー、逆説的なお話でした。

  • ヴォネガット好きになりました。
    ブローティガンと並んで好きです。
    読んだらきっとボコノン教徒になります。

  • カート・ヴォネガット・ジュニア。初めて読む作家。
    架空の宗教と世界の終わりの話。結局世界は終わったのかははっきりしないけど。
    面白い。これは一時期爆発的に流行ったというのも頷ける。荒唐無稽なようで実際荒唐無稽なんだけど、それとは裏腹に語り口は緻密で無駄がない。
    あんまりあっさり話が進んでいくので、根っから読み飛ばす性質の私は何度か肝心な部分を見落として読み直してしまった。「あれ、いつのまに死んだの?!」みたいな。

    誰かの作り出した想像の世界がこれだけすんなり飲み込めるのは何か不思議な感覚。じつは万人がそれぞれ勝手に膨らませる想像の世界って、並べてみたら驚くほど似てたりするんじゃないかしら。
    そんなことをふと考える。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「それとは裏腹に語り口は緻密」
      緻密だから、カッチリした荒唐無稽になるんでしょうね。。。
      「それとは裏腹に語り口は緻密」
      緻密だから、カッチリした荒唐無稽になるんでしょうね。。。
      2012/08/30
  • 人間の本質が詰まった一作。バカバカしさもありながら、あまりに鋭い政治と宗教への洞察もありながら、最終的には人間への愛しさで胸が一杯になった。

  • 8月上旬に読んだ。
    原爆の父であるとされるハニカー博士の投下当日の様子、こども達からの証言や関係者をめぐる旅から始まる前半
    “本書に真実はいっさいない”と目次の前に明言されていることを忘れて、この時期に「たまたまー”定められたとおり”とボコノンならいうだろう」手元にやってきたこの本を読み、
    原爆開発側の国の視点にも触れるつもりになりページをめくっていった。

    「もしあなたの人生が、それほど筋のとおった理由もないのに、どこかの誰かの人生とからみあってきたら、その人はおそらくあなたの〈カラース〉の一因だろう」などと、最もらしい教義を散りばめてボコノン教の世界、謎の島サン・ロレンゾに読みながら連れ去られて行く。
    「真っ赤な嘘」とされるボコノンなりの真実にまんまと目が離せなくなっていく。
    私は日本人で、英語圏の人がゲラゲラ笑うような部分は全くわからない。どちらかといえば、”壮大なズシーン”という展開をついにきたなと受け止めたり、真っ赤な嘘だ、笑ってくれといいたげなストーリーにも根底に流れる真実に考え込んだりする。
    真剣に読んでいるこちらからすると、
    猫なんていないし、ゆりかごもないんだ
    うそっぱちだー
    といわれ
    なんだか色々複雑なことを考えて心に留めておきたいんだけど、結局なんでもなかったのか?ただ奇天烈な展開におもしろかったなぁ!とスッキリしておけばいいのか、感想がまとまらない。
    ひとつ、シニカルとかユーモアって自分にはまだまだ掴みにくく理解しにくいものなんだと痛感した。

  • スローターハウス5は読んだことあったけど面白くなくて苦手意識を持ってたけどこれは普通に面白いし好きだった

  • 好きだ〜〜
    ボコノン教の宇宙からの視点が皮肉が効きまくってて最高だったな

    私が好きなのは戦闘機が墜落して宮殿が壊れてアイス・ナインで世界が凍結するシーンです

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