猫のゆりかご (ハヤカワ文庫 SF 353)

  • 早川書房
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本棚登録 : 2034
感想 : 171
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  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150103538

感想・レビュー・書評

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  • ごくまともな小説

     題は「あやとり」の意味。

     世の中楽に生きようと思えば、嘘で周りを固めればよい。本の表紙にある「猫のゆりかご」を見ても、そこには「猫」も「ゆりかご」もないんだ。

     皮肉家であるヴォネガットの口調は、本作ではまだ丸い。(後半の作品に見られるように)ストーリーにも狂気が含まれていない。

     きわめて読みやすく、シンプルに現在社会への憎しみと人間への愛が伝わる作品だ。 ここにはキルゴ・トラウトも出てこないし、作者自らが登場することもない。原爆を発明した狂気の科学者が新たに作った「すべてを氷にして固まらせてしまう秘薬」により世界が終わってしまうまでを描いている。

     キーワードは嘘で固めた「ボコノン教」。この虚構の宗教はなかなか信者が多いみたいだ。

     経典の冒頭に「これはすべて嘘である」と断っているにもかかわらず、現実逃避願望からボコノン教徒になっていく主人公とそれを取り巻く狂気の原爆博士の息子/娘たち他がストーリーの大きな流れを作り、エンディングである「始祖との出会い→人間をあざ笑うボコノン教の真実」を形作る。

     この作品の前に「タイタンの妖女」(既出)があり、後に「ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを」(既出)と続くのだが、この3作品が私にとってヴォネガットのベスト・ショットかな。

  • 冗談のようで、でも真実も隠されているようなボコノン教が楽しい。
    でも、アイス9沸かして飲んだら、氷らないのかな?

  • 村上春樹が影響を受けた作家さんと聞いて読まずにはいられなかった作品。序盤〜中盤のシニカルさと終盤のシリアスさのギャップにやられました。他のヴォネガット作品も読んでみたくなりました。

  • 途中まで

  • ヴォネガット・ジュニアは好きな作家さんなので、ひいき目の評価かも。

    ボコノン教とかよくわかんないとこもあるんですが、何故か引き込まれちゃいます。飄々とした感じの語り手(主人公)もいい。

    面白いけど切ない。けど面白い。
    大好きな小説です。

  • 短い章の連続なので読みやすいかと思います。スケールの大きなSF作品。

  • ヴォネガットがこの話で何か伝えようとしていたとするなら、それはこんなことだと思う:

    人間はちっぽけで愚かだけど、そして沢山の間違いを犯すけど、でも人間てそんなに悪くないよ、ぼくは人間のことが好きだよ、たとえ結末がどんなに寂しいものになっても。

    そして、もうひとつあげるなら、見方を変えなよ、ということ。
    真面目すぎる視線を流して、斜めから受け取る方法をこの本は教えてくれるはずだ。ボコノン教という名前の、新しい宗教と一緒に。

    正直なところ、書き手のシニカルな視線にはげっぷがでそう。でも、科学者の好奇心が世界を終わらせる物語は、今のこのタイミングで読むと、ぞっとする。

    ただ、真摯な科学者って狂信者ではなく、むしろヴォネガットのように、真実を斜めから見ることができる人たちじゃないかな、ということは付記しておく。

    その意味では、このお話の中で、科学は宗教だし、宗教は科学なんだ。

  • アイス・ナインというクールなアイテム、
    形而上学やそれに支えられた近代的社会へのまさに妙薬であるボコノン教。
    このような独特な場面設定が、この作品にカルト的な魅力を与えていることはまちがいないだろう。
    しかし、敢えてもう一つこの作品の核を挙げるならば、
    それは「孤独」である。
    アンジェラ、フランク、ニュートそれぞれの孤独。
    巨大な破壊力が孤独な人の手に渡ったとき、
    何かが起こるのはもはや必然ではないだろうか。

    ありふれた孤独を前に、理性は、あまりにも頼りない。

  • 2007/05/18 読了 ★★★
    2011/04/20 読了

  • ボコノン教的な意味において、私はボコノン教徒となった。ヴォネガットの素晴らしい作品に見られるアイデアがふんだんに散りばめられた、素晴らしい小説。ただ、これほどせっぱ詰まった後半になってしまうのは、時代なのだろうが、今読むと辛い。確かに状況が好転しているわけではないのだけれども。

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