神々自身 (ハヤカワ文庫 SF 665)

  • 早川書房
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本棚登録 : 384
感想 : 33
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150106652

作品紹介・あらすじ

西暦2070年。研究室の試薬ビンを手にした化学者フレデリック・ハラムは驚愕した。タングステンが入っているはずのそのビンには、我々の宇宙には存在しないプルトニウム186が入っていたのだ! それはからタングステンとの交換に送られてきたらしい-ではタングステン186が、我々の宇宙ではプルトニウム186が無公害でコストゼロのエネルギー源となる。かくてとのエネルギー源の交換がエレクトロン・ポンプを通して行なわれることとなった。だが、この取引きには恐るべき罠が隠されていた!米SF界の巨匠が満を持して放つ最高傑作

感想・レビュー・書評

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  • 小遣いが無くて買えなかった海外SFノヴェルズの一冊。当時巨匠アシモフの15年ぶりの長編SFということで話題になりました。ヒューゴー賞とネビュラ賞を受賞したとの事ですが、内容的には復活ご祝儀の名目が大きかったのでは?と勘繰らせるくらいです。特に第2部いる?!と思うくらいつまらない。やっぱりアシモフのSF とは相性悪いのかな。これを読んでも何か自分の中で変わるとか衝撃を受けるとかは特にないアイデア・ストーリー。純粋なミステリーは面白いのになぁ。残念。

    無限のエネルギーがただで手に入ったら働かなくてよくなるのか?とか月を自由に動かして地球は無事でいられるのか?とか詰めの甘い部分へ突っ込みながら読んだから逆にそうゆうテーマの本を読みたくなった。こういう隙だらけの本を読むと今の自分がどんなところに関心を持っているかはっきりしてきておもしろい。アシモフありがとう。

  • パラレルワールドの科学技術からもたらされたエネルギー革命。その危険性を訴える物理学者ラモントだったが……。

    1972年刊、ヒューゴー賞・ネビュラ賞を受賞した、アイザック・アシモフのSF小説。三部構成で、もともとは『プルトニウム186』という中編だった第一部に、それぞれ独立した中編として発表された第二部と第三部を加えて長編化されたタイトル。したがって、話はつながってはいるものの、それぞれがかなり毛色の違う物語となっている。

    まず物語の発端となる第一部は、パラレルワールドからもたらされた科学技術によって膨大なエネルギー源を得た人類だったが、これにより地球が消滅してしまう危機を迎える可能性に気づいた若き物理学者がその危険性を訴えるものの、科学者の偏見や経済上の利権などにより、無視され爪弾きにされてしまうという話。サイエンス・フィクションとして優れているのはもちろんだが、対立する科学者たちの人間関係、そこに渦巻く感情の描き方がリアルで面白い。“愚昧を敵としては、神々自身の闘いもむなしい”というシラーの戯曲からの引用がなんとも秀逸。

    そして第二部では、パラレルワールド側の異星人たちが描かれるのだが、これが脳の使っていない新しい部分を開拓されるような独特の魅力に満ちていて仰天した。性が3つあり、3人で一つの組合せを成し、3人で性交する。彼らの形態も人型ではないようで、性交といっても、スキマだらけの気体状になって混ざり合うというような……なんだこりゃ?という奇妙な感覚に陥る。この頭をやわらかくして読まねばならないSFならではの斬新さがすごい!

    第三部では、移民者の増えた月において、冒頭の科学技術に縁のある男女が解決策に迫っていく。月世界の描写もなかなか読みごたえがあるが、個人的にここで気に入ったのは主人公となる男女の穏やかなラブロマンス。年齢設定が絶妙で、オジさんの有能なのに頼りなさげにみえる感じや、一筋縄ではいかないヒロインの性格も魅力的だ。ラストの1ページはまるまるメモに残した(笑)。最後の1行も最高に好きだ。

    高度なSF設定の中でみせてくれたのは“愚昧”な人間たちの実像。神には遠く届きそうにないが、とりあえずは人間を頑張ろうと思えた読後感に満足。

  • 西暦2070年、地球上には存在しないはずの「プルトニウム186」がとある科学者により発見された。この物質は、タングステンと交換に<平行宇宙>からもたらされたものらしい。プルトニウム186の発見により、無尽蔵のエネルギー源が確保された人類は、過去に例を見ない発展の恩恵を受ける。しかし、この夢のような状況には、とんでもない陥穽が隠されていた。それに気付いた別の科学者は警告を発するが、まともに相手にしてもらえない。放置しておけば地球が壊滅的状況を迎えることが確実な中、人類はこの危機を如何に脱出するのか?

    ・・・と、地球人類目線であらすじをまとめてみましたが、この作品の真骨頂はおそらく第二部、<平行宇宙>に生を受けた全く異質な生物の描写です。リアルに生化学者であったアシモフらしい、異質にして地に足のついた、素晴らしい想像力と感服します。異形のヒロイン・デュアの凛とした美しさが印象的(不定形生物なんですけどねヽ( ´ー`)ノ)。この第二部だけでも、読む価値はあると思います。

    逆に言うと、鴨的には第二部以外の読みどころは正直言ってイマイチでした。判りやす過ぎる人物造形とご都合主義な展開が興を削ぐと言いますか。ラストシーンのオチは「えっ、これで終わり!?」ってな感じでしたしヽ( ´ー`)ノ
    この作品、もとはSF大会でのロバート・シルヴァーバーグの言い間違いに端を発する典型的なワン・アイディア・ストーリーで、普通だったら短編で充分モトが取れると思うんですけど、それなりに長編にまとめてしまったアシモフ、さすがです。

  • 科学がなぜ発展するかといえば、人類のためになるからであり、人類のためとは、暮らしやすくなって住みやすくなり、より生きやすくなりより死ににくくなるという生存のためと言えるのだと思う。

    つまり、科学が発展することで副産物として人類の危機が訪れるとなっても、生存のためだった科学の発展を止めるという選択肢はあり得ないとなってしまう。このまま科学が発展すれば人類の生存が脅かされるとしても、だからといって今すぐ自発的に生存のための科学を捨てるのがいいのかと考えると、誰もそうしたくはないと思うはずだと思う。

    では人類の危機をどうするかとなると、人類の危機などやってこないと考え続ける方法がある。これが一番簡単な解決法だと言えてしまうと思う。

    しかし危機が訪れないと考えてしまうことすらできないほどに、危機が間違いなく訪れると理解してしまった者はどうすればいいのかについて、やはり原因の科学を止めるのが次の方法と考えられそうなのだが、その科学はもともとは人類の生存のためだったのであるから、みんなで生存を諦めましょうとなるはずはない。

    物語を読んでいる分には、それは分かるのだが、今現実の世界で私が見て見ぬふりをしていることはたくさんある。それも分かるのだが、今私がしていることは、この物語を読んで、悪いことは悪いのだからたとえ良く見えようがちゃんと止めるべきものは止める方がいいのではないかと、ただ考えただけである。フィクションを読んでる場合ではないのかもしれないが、読んだだけで済ませている。

    その思考で第二章を読み、硬属は人類を滅亡させてもいいどころか滅亡した後のエネルギーを望んでさえいると分かると、途端にけしからんと思い始め、硬属と闘おうとした軟属に共感もするのだが、いざその軟属が生まれ変わって最も優れた硬属になり、硬属のためを思い行動し始めた時、科学の発展は結局自分たちのためだけのものであって、自分たちが助かるのなら他の何かに何かが起きても仕方ないで済ませられるのだなと察した。そう第一章で思ったのだったなと気づいた。

    科学を発達させることで現在の危機から救われれば、救った者のことを英雄とか救世主などと呼ぶかもしれないが、神とは呼ばないのではないかと思う。神とは、人間を超えたものであって、信仰つまり信じるべきものの対象となったり、逆に人間に危害を加えるもののことを言ったりするもので、従わせることなどできないものとされてはいるが、大切に接することで日々の生活のあちこちで守ってもらえていると感じたりもする存在だと思う。

    よって、この物語での神々自身とは、プルトニウム、タングステン、水素などのエネルギーのことではないかと思う次第である。

  • 挫折挫折最後に可能性、エレクトロン・ポンプやポジトロン・ポンプを止められなくてもバイオナイザーがあれば希望が残るということなのかな、理論が難解だった。
    この宇宙で起こったビッグバンはこういう事情があったかもしれないという驚き。発送が豊か、それを支える相当錬られた理論が読ませる。アシモフワールドはどこまでが本当なのか、あるいは可能性があるのかわからなくなってくる。
    地球人が神だと思っていた三位一体星人(勝手に命名)も、普通に悩み喜ぶ生命体だった。まるで人間味あふれるヤオロヨズの神のよう。

  • 並行宇宙(パラ宇宙)では地球上では存在しえない原子構造が存在し、そのパラ宇宙と物質の交換を行うと核の構造が変異し、莫大なエネルギーが発生するという原理を利用した「エレクトリックポンプ」というシステムで人類は無尽蔵のエネルギーを手に入れる、というワンアイデアで書かれた意欲的な作品。しかしそのシステムの功罪の説明が勝ちすぎてストーリーに起伏がなくほとんどワクワクすることはなかった。白眉は第2章のパラ宇宙側の人生命体たちの描写。情景を思い浮かべることがほとんど困難でしかも紙幅が多いこの部分を割と読ませてしまうあたりが凄い。

  • アシモフ特有の心理描写、ミステリ仕掛けは健在だが、SF的には消化不良。視点の違う3部作だけど、総合すると少し未決感があるのが残念。""

  • 神々自身 (ハヤカワ文庫SF)

  • アシモフの渾身のヒューゴー賞狙いの作。気負い過ぎの感もあるが、しっかりとしたどんでん返しで、ある程度納得させてくれる。ある意味固い。

  • 私の理解力が悪いのか、結局どういうことなのかよくわからい。雰囲気重視話。
    特に第3部とか、中身がスカスカ・・・
    第2部は面白いけれど尻切れトンボな印象を受けた。

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著者プロフィール

Isaac Asimov (1920―1992 )。アメリカの作家、生化学者。著書に『われはロボット』『ファウンデーション』『黒後家蜘蛛の会』等のSF,ミステリーのほか、『化学の歴史』『宇宙の測り方』等の科学啓蒙書やエッセイが多数ある。

「2014年 『生物学の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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