順列都市 (下) (ハヤカワ文庫 SF イ 2-2)

  • 早川書房
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感想 : 43
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150112905

感想・レビュー・書評

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  • 宇宙や生物を取り扱いつつ、話の軸はあくまで電脳であり、その大風呂敷の上で命を説くような文句なしのSF超大作だった。

    物語の終盤は夢中になって一気読みできた。
    マリアが長い眠りから目覚めてからの没入感がすごかった。エシュリオン vs ランバートの構図はさながらアクションサスペンス映画のようだった。
    人間である自分にとって、ランバート人の理解できないほどの合理性はかなりエイリアン感があって良かった。

    でも、やっぱりすごく難解だった…。
    塵理論って結局なんだったんだろう。ハードSFを読むと数学や物理学をきちんと勉強したくなるw
    トマスやビーとケイトのパートはよく分からないままさらりと読んでしまったな。。。
    それでも白熱して楽しめてしまうのがグレッグ・イーガンの凄いところと言えば凄いところなんだけど。

    もし再読することがあるなら、解説サイト?等を参照しながら読みたい。

  • 上下巻あるうちの「下巻」。こちらに入ると俄然話が進んで一気に面白くなる・・・のだが、最後の半分は「順列都市」内の話になって、いきなり数千年ほど時間がたったりしてしまい、そこにいくともうSFと言うよりはファンタジーになってしまう。

    最初読んだ時にはエリュシオンと塵理論の話がさっぱりわからず(というか最初からわかる人は皆無だろう・・・)解説しているサイトを色々読んで、二回目をようやく理解。わからなかったのは、エリュシオンを動かしているハードウェアを停止しているのに「なんで数千年もエリュシオンは動き続けるのか?」ということ。。

    で、これを理解する・・というか解釈するためには塵理論が必要なんだけど、これって物理で言うところの素粒子論に近い処がある。たぶん大学で物理を学んだ人にはイメージがわくんだろうけど、塵理論というのはようするに「ある一瞬を切り出しても因果律を無視したあらゆる世界の可能性が含まれている」ということを言っていて、エリュシオンの中で数千年がたってていても、私たちが感じることのできる実時間では数秒もたっていないということなのだ(というかそもそも時間がたつ必要がない。因果律がないので)。

    こういった可能性に考えが至ると、結局この話で書かれている不死性というのは時間の近くの仕方による・・という結論が導かれるのだけど、そこまで書くと話が長くなるし、自分でもなにを言ってるかわからなくなりそう。

    とにかくほっぽり出した感がある最後と言い、難解さが半端ない作品ではあるが、まるで今のコンピューターの状況をかなり正確に予想していて、一読の価値ありである。

  • 2022-08-08
    読んでいたと思ってたけど、なぜか読み逃してた。23年積んでた(笑)
    ソフトウェア知性について「ディアスポラ」に比べると否定的な文脈が強い感じ。そこは「ゼンデギ」に近いか。ファーストコンタクトの相手の描写は非常に限定的。エイリアンの側を描くとどうしても擬人化せざるを得ないからか。
    そして、結局はアイデンティティの物語。ほぼ全編その、思弁に費やされていると言ってもいいくらい。
    なんだかすぐに再読したくなる。

  • 現実世界から独立したTVC宇宙で不死を得た人格の<コピー>。彼らがシミュレートする人工知的生命体がTVC宇宙の存在そのものを揺るがす。
    シミュレーション仮説が都市伝説のような曖昧な話ではなく、物理学的に「ありうる」かもしれないという説得力を感じてしまう展開。はっきりいって細かい部分は理解できないことも多かったけれど、難解ながらも脳が拡張していくような驚きと面白さを味わえた。自己とは何なのか、神とは……ちょっと考え込んじゃうね。

  • 現在の統計的な手法で物事を類推していくAIではなくて、完全に自律思考ができるAIが生まれたらどうなるのか、想像するのが恐ろしくなる作品。特にラストの辺りは…。読んだのは5年くらい前でしたが、今読み直すとまた別の感想を持つだろうなと思います。この本の初版が1994年というのにも、とてもびっくりです。
    コピーの話を見ていると自己とは何だろうかとも思いました。

  • オートヴァースをはじめ、話が難解で理解しきれない部分も多かったが、塵理論などはわからないなりに(解釈が間違ってそうだが)面白かった。塵のように散らばる要素を認識したものが世界であり、時間というものも、人間の勝手な認識の仕方に過ぎない、という感じ...?
    終盤の、ランバート人が独自に納得のいく歴史を作りそれが真実になる、というあたりが特に面白かった。人類が今正しいと信じている歴史も、捏造かもしれないと仄めかすようでもある。

    同じイーガンだと、「宇宙消失」のほうがとっつきやすく熱中して読めたので、その意味で⭐️3にした。

    読みながら、デッド・チャンの「あなたの人生の物語」やリングシリーズの「ループ」を連想した。

  • 単純セルで形成された秩序と法則が、仮想世界の生き物によって乱され崩壊していく。
    正直23回失敗したとか失敗と分かっている世界だの、言っている意味と理屈がよく理解できなかった。

    ピーとケイトの数千年に1回の計算、外界から切り離され保たれる主観と流れていく「実世界時間」。圧倒的なスケールでこの中で1番好きなカップル。

  • 順列都市〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

  • 1994年に書かれた作品
    この作者の作品は多くがそうなのだけれど
    なかでもまっすぐに題材が大掛かりなものであるだけに
    既に古典殿堂の趣き
    あるいはクラシックという日本語であらわされるようなそれは
    サイエンスでファンタジーなフィクション
    カガクで想像豊かな物語として奥深い

  • よくわからない部分もあったけど、設定の奔流に圧倒された
    無限の世界=不死の世界は存在するのか

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著者プロフィール

1961年、オーストラリア西海岸パース生まれ。SF作家。西オーストラリア大学で数学理学士号を取得。「祈りの海」でヒューゴー賞受賞。著書に、『宇宙消失』『順列都市』『万物理論』『ディアスポラ』他。「現役最高のSF作家」と評価されている。

「2016年 『TAP』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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