ハイペリオン (上) (ハヤカワ文庫 SF シ 12-1)

  • 早川書房
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感想 : 110
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  • Amazon.co.jp ・本 (442ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150113339

作品紹介・あらすじ

28世紀、宇宙に進出した人類を統べる連邦政府を震撼させる事態が発生した!時を超越する殺戮者シュライクを封じこめた謎の遺跡-古来より辺境の惑星ハイペリオンに存在し、人々の畏怖と信仰を集める"時間の墓標"が開きはじめたというのだ。時を同じくして、宇宙の蛮族アウスターがハイペリオンへ大挙侵攻を開始。連邦は敵よりも早く"時間の墓標"の謎を解明すべく、七人の男女をハイペリオンへと送りだしたが…。ヒューゴー賞・ローカス賞・星雲賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 今まで生きてきてSFというジャンルを全く読んだ事がありませんでした。唯一ジャケ買いしたウィリアム・ギブスンのニューロマンサーという本を昔々読んだことがあるくらい。そしてダン・シモンズと言われても拙者デュフフフォカヌポォのコピペくらいでしか知らなかったのですが、このコロナ禍で夜遊びも出来ずクラブでDJしたり踊ったりできなくなったせいで、夜はネトフリやアマプラを観る時間が増え、そして今までほとんど観たことなかったアニメ作品を観るようになりました。免疫が無かった分、夢中になりました。中でも涼宮ハルヒの憂鬱というアニメにハマって恥ずかしながら今さらながらヲタ化、推しの長門有希というキャラクターが作中で読んでいたのを観て興味を持ち手に取った一冊でした。

    SFもアニメも全く通ってこなかったので、流行りも定番やテンプレも解らないのですが、その代わり古い作品でもオールディーズだと感じずに新鮮に感じることが出来る、という新たな発見がありました。昔のアニメの絵柄に違和感とか古さを感じない、みたいな。これは他の文芸ジャンルや実写映画などではもう感じられない新しい体験でした。

    ラノベやヤングアダルトが文芸ジャンルの入り口にしっかりと根を下ろした現代では、わかりやすくそして全てを解説説明的に書かれた作品がほとんどだと思います。しかしSFの説明されない空想の世界やアイテムや理論などを並べられて置いていかれそうになり、自分の想像力を働かせて解らない事を補完する、この行為こそが文学的な体験だと思わされる一冊でした。書いてある文章だけで完結しているのならわかりやすく映像でも良いわけですよね、そして映像は決して活字を超えられない。自分はそこにこの本とSFというジャンルの魅力を感じました。

    顔色の悪い神父、脳筋女探偵、猥雑な詩人、伝説的な英雄、赤ん坊と学者、そして名前すら明らかにならない領事…登場人物も実はとても純文学的ではないでしょうか。

    個人的に長文の自然の描写を読むのが得意ではないのですが、SFというジャンル上、自然や情景が空想である以上、描写が長くなって当たり前だと思うのですが、その点だけがちょっと辛かったです、ましてかなりの長編のシリーズ4冊なので…あと故生頼範義氏の表紙が素晴らしいのですが若干のネタバレありました。

    しかし翻訳はとても素晴らしかったです。言い回しなどに全く古さを感じなかったし違和感も感じませんでした。こんなことあるんですね、SF翻訳者のレベルは昔から高かったのか…現代アメリカ文学の翻訳者にも見習って欲しいです。ただ後書きでアツくネタバレ書くのやめてもらっていいですか…

    SFっていいですね。
    説明して欲しくないんすよ解ります?
    See you later, alligator. After a while, crocodile.

  • 稀有壮大な銀河叙事詩が今始まる!

    宇宙の辺境にある惑星ハイぺリオン。
    その地にある不可思議な遺跡<時間の墓標>、そして不死身の怪物<シュライク>。
    その謎を解明すべく様々な経歴を持つ七人の男女がかの惑星へ旅立った。

    このハイぺリオンだけでも十分過ぎるほどボリュームがあるのだが、物語としては「ハイぺリオン」と「ハイぺリオンの没落」のセットで一つの物語を成しており圧倒的なボリュームの物語である。
    しかし、物語のテンポと読者を惹きつけて放さないストーリーの魅力により全然長く感じない。

    ハイぺリオンでは七人の男女がなぜこの探索行に加わることになったのかその経緯が各人の口から語られる。
    この巻では、司祭、兵士そして詩人の物語が語られる。

    なんか中世に書かれたカンタベリー物語のSF版ぽくってすごく面白いです!

  • 長門有希が読んでたやつ。枠物語の古典『カンタベリー物語』風の体裁をとっているが、中身は極めて濃厚なSF。

    28世紀の宇宙時代、巡礼という名目で7人の男女が旅をしながらそれぞれの物語を語っていく。この説明だけ見ると未来版もしくはSF版『カンタベリー物語』的なものを想像してしまう。そういった趣きもあるにはあるが、中世の多様なドラマが収録されていたかの古典に比べると、本作はガッツリとした一つの大きな物語が設定されていて、やや面食らった。枠物語の「枠」の部分――世界観のキーとなるシュライクの謎――が思いのほか濃厚で、長大なSF巨編ともいえる展開を広げるのだ。そのあたり、実質的には短篇集だった『デカメロン』や『カンタベリー物語』とは大きく異なる性質を持つ。

    とはいえ、7人がそれぞれに語る自分語りはそれ単体でも魅力のある話である上、それらが全体のSF世界における物語と絶妙なハーモニーをなして味わい深いものとなっている。旅の舞台となるハイペリオンの風景、背景の歴史、そしてシュライクの謎に引っ張られて先が気になる。SFにありがちな用語の読みにくさはありつつも、最後まで読まないと収まらない系の小説。

  • 物語は終わりません。
    本書は、続く「ハイペリオンの没落」、さらには「エンディミオン」、「エンディミオンの覚醒」と全4部に連なる大叙述詩の幕開の巻です。従って、1000ページにおよぶ頁をめくっても返ってくる答えはありません。物語は謎ばかりを残して、終わらないのです。
    …が、それでもこの興奮は暫く抑えられそうにありません。読んでいる途中から、続編を買いに走りましたよ。直ぐに続きを読めるようにと。

    舞台は、辺境の惑星「ハイペリオン」。殺戮者シュライクを封じ込めた<時間の墓標>が開き始め、宇宙の蛮族アウスターがハイペリオンへの侵攻を開始。そして宇宙連邦は、<時間の墓標>へ7人の巡礼者を派遣する。<時間の墓標>に赴く途上で開陳される巡礼者の数奇な運命は、宇宙世界の骨格を形成し、宇宙連邦やアウスターに幾つかの説明を加え、そしてハイペリオンを廻る数々の謎を残す。物語が紡がれたとき、巡礼者ら一行は、<時間の墓標>に到達するが…

    巡礼者の各々の語りが、いわゆる群像劇となって物語は進んでいきます。司教の物語終盤に感じる不条理、戦士の物語における手に汗握る脈動感、学者の物語の涙隠せぬ喪失感など、幅広い展開に多才だなぁと思うところ、しばしば。このあたりは、訳者あとがきで存分に述べられていますが、とにかく色んなネタをこれでもかと言わんばかりに詰め込んでいるみたいですね。いわゆるオマージュ的な描写もチラホラ。探偵の物語に登場する「ギブスン」は、やっぱりそうなんだろう。
    多才なだけでなく、物語に惹きつける筆力は、最近読んだ小説のなかでも随一でした。真実の片鱗が見え隠れしつつも、肝心なところが良く解らないところも、続きを読ませる仕掛けでしょうか。まんまと掛かっています。
    個人的に大長編ってのは、飽きを感じさせて、苦手な方なのですが、久方ぶりにそれを感じさせない、パワー溢れる作品に出会えました。
    さて、続きを読もう。

  • 未来を舞台にカンタベリー物語

  • 「カンタベリー物語」みたいな感じ。
    巡礼の旅だし。
    ただどうも読んでて眠くなる。SF的設定とか想像力を働かせるのが大好きな人はいいと思うけど。

  • 「28世紀、宇宙に進出した人類を統べる連邦政府を震撼させる事態が発生した!時を超越する殺戮者シュライクを封じこめた謎の遺跡―古来より辺境の惑星ハイペリオンに存在し、人々の畏怖と信仰を集める“時間の墓標”が開きはじめたというのだ。時を同じくして、宇宙の蛮族アウスターがハイペリオンへ大挙侵攻を開始。連邦は敵よりも早く“時間の墓標”の謎を解明すべく、七人の男女をハイペリオンへと送りだしたが…。ヒューゴー賞・ローカス賞・星雲賞受賞作。」

    「ダン・シモンズはSF作家以外にミステリーやホラー作家としての顔も持つが、現在最も脂の乗ったストーリー・テラー。博覧強記な知識を背景に、人々をとことんたのしませてくれる。そんな中でも『ハイペリオン』とそれに続く四部作は呼び声が高く、ファンにとるオールタイムSFの投票でもトップがほぼ指定席という世界。
    『ハイペリオン』は、巡礼の宇宙船に乗り合わせた7人の乗客が、目的地に着くまでの時間を利用して、順に話をするという形式。ボッカチオの『デカメロン』のような設定。」(『SFはこれを読め!』谷岡一郎著 より) 

  • 名作と聞くので読んでみる。表紙を見た印象からスペースオペラだと思い込んでいたため読み始めて若干戸惑ったが、複数人の語りが一つに収束していく構成は好みなので、これはこれで続きが気になる。

  • 面白い。

  • 読み始め、もうなんだか意味がわからない世界の話で面くらい、一体どういう世界なのか想像することすら出来ずにひたすら読み進めていくと、ああ、なるほど、とだんだんこの世界が理解できるような気になってくる。
    後半からは、なんとか世界観に頭が追いついてくると、俄然ストーリーに面白みがでてくる。
    続きが楽しみ。

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