ハイペリオン (下) (ハヤカワ文庫 SF シ 12-2)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (478ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150113346

作品紹介・あらすじ

迫りくるアウスターの脅威と、殺戮者シュライクの跳梁により惑星ハイペリオンは混乱をきわめていた。連邦政府より命令をうけ、この地に降りたった、神父、軍人ら経歴もさまざまな七人の男女は、一路"時間の墓標"をめざす。その旅の途上で明らかにされていく、数奇な宿命を背負う彼らの波瀾にみちた人生の物語とは…?あらゆるSFの魅力を結集し、卓越したストーリーテリングで描く壮大なる未来叙事詩、ここに開幕!ヒューゴー賞・ローカス賞・星雲賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 時は28世紀、転移システムとホーキング航法の確立により銀河系内に系図を拡大した人類は連邦政府を設立し、支配する宙域を<ウェブ>と名付け、巨大なAI複合体<テクノコア>との共生関係の下に繁栄を謳歌していた。しかし、<テクノコア>でさえも把握することのできない不確定要素とされる惑星ハイペリオンでは、謎の遺跡<時間の墓標>が開き時空を超えた破壊者シュライクが解き放たれたとの噂が流れ、大混乱に陥っていた。
    時は折しも、宇宙の蛮族アウスターがハイペリオン目指して侵攻を開始する。辺境の一惑星に過ぎないハイペリオンを狙うアウスターの目的は、<時間の墓標>と関係するらしい。アウスターよりも早く<時間の墓標>に到達して混乱を最小限に抑えるべく、連邦政府は7人の男女をハイペリオンへと送り出す。急速に崩壊していくハイペリオン社会を目の当たりにしつつ、様々な困難をくぐり抜けて<時間の墓標>に近づいていく7人の運命は・・・?

    この作品、分厚い文庫本2冊組に生頼範義画伯の気合い入りまくったカバーアートがバーン!といった感じで見るからに押し出しが強いんですが(笑)、構成は<時間の墓標>を目指す男女の巡礼7人が語る各々の身の上話が中心となっており、実質的に中編6本+インターリンクの連作集となっています。見た目から受けるイメージよりもサクサク読み進められます。

    読んでみて意外だったのは、作者ダン・シモンズのSFに対する理解と思い入れの強さ。ホラー作家だと思い込んで読み始めた点も影響してるんですが、予想以上に「ちゃんとSF」していて、かつ幅が広いことに驚きました。巡礼の身の上話6編は、それぞれにサブジャンルの異なるSFとして成立しており、「司祭の物語」はSFホラー、「戦士の物語」は戦争SF、「学者の物語」はちょっとセンチメンタルな時間SF、「探偵の物語」はサイバーパンク・・・と、SFショーケースの如き様相を呈しています。こなれたSF者なら「あぁ、これはあの作品当たりからインスパイアされてるな」とにやりとしながら読み進められますし、SF初心者なら正に万華鏡を覗くように様々なSFサブジャンルの「いいとこ取り」を体験できるはず。
    そしてなによりも、リーダビリティが高い!舞台となる未来社会の強固な構築ぶり、主要キャラの際立って個性的な造形、歴史から社会構成まで計算された各植民惑星の緻密な描写。愚直なSF作家なら、これらの舞台設定を描写するだけでいっぱいいっぱいで生硬な話になりそうですが、そんな「いっぱいいっぱい感」を微塵も感じさせない職人芸的筆運びが素晴らしい。ストーリー展開と平行して時折登場する、はっとするほど美しい情景描写も見ものです。冒頭の<聖樹船>の幻想的な描写を読んだだけで、「あぁ、このSFは面白いぞ!」と確信できましたもんね。絢爛華麗で外連味たっぷり、躍動感溢れる酒井氏の訳文の力も大きいですね。

  • 上巻より下巻の方が面白かった。ソルの物語が何とも切なく、引き込まれた(彼が赤ん坊を連れてきた理由がようやく分かった)。探偵レイミアの物語は一転してハードボイルドで、ソルの物語との雰囲気のギャップが楽しい。領事の正体に驚く。この後もさらに続くとはすごい分量だが、『没落』も読むしかないだろう。

  •  一体どんな終わり方するんだろう。ワクワクしてたら、なんと、お話はまだまだ続くらしい。最後まで読み切れるのか自信ないけど、引き続き『ハイペリオンの没落』、いくしかないっしょ!

  • 時は28世紀、辺境惑星ハイペリオンにて<時間の墓標>を目指す7人の男女が語る、SFの驚異に満ちた物語群。

    下巻を読み終えて誰もが「えっ、ここで終わり?」「早く先が読みたい」といった気持ちになるだろう。「ハイペリオンの没落」というタイトルに話は引き継がれるらしいのだが、実質的に第一部と第二部の関係なら何故続編みたいになっているのだろう?それはキーツの詩作になぞらえているからだそうで、巻末の訳者解説で納得した。なるほど、タイトルだけでなく、本作は物語全体においてキーツが中心的なキーモチーフになっている。

    下巻の冒頭は既視感のある泣ける話。タイトルは出さないがあの有名な本。似た話でもやっぱり泣ける。女探偵の話は最もSFらしさを感じる未来感のある話でこれが好きな人はきっと多い。そしてトリの領事もSFでよくみるパターンではあるものの印象深いトーンにしあげている。

    一つ一つの物語が面白いうえに、それぞれがパズルのピースとなっており、一人が語るごとに少しずつ全体の謎に近づいていくため、読み進めれば進めるほどますます引き込まれていく。気になる結末とその感想は、「ハイペリオンの没落」の方にゆだねるしかないだろう。

  • 宇宙の広がりのあちこちに人類が住んでいる28世紀。
    そんななか、連邦に属さない星にある謎の遺跡を巡る七人のグループが、それぞれに語るストーリー。
    なかなか壮大で、いろいろな物語が繰り広げられるが、個人的にはブローン・レイミアの「探偵の物語」が気に入った。
    本書の最後が、なんとなく尻切れ感で終わるのだが、続編「ハイペリオンの没落」があるとのこと。
    そのうち読むとしよう。

  • 基本的に上巻と同じ構成。
    『ハイペリオン巡礼』に加わることになったメンバーの過去と経緯が明らかにされていく。

    SFなのでなんでもありだが、そこには切ない事情が6人6様ににあり、それがハイペリオンでの”シュライク”との邂逅に繋がる…と思いきや、2巻かけてハイペリオンに到着したところで終わり!

    壮大なドラマであり奇想天外な物語展開なので全く飽きることはないが、オリジナル?のSF用語や、この世界の設定に戸惑いながらもじっくり虚構世界を堪能できた。

    果たしてここからどう展開する?

  • 思い切り続く。時間をめぐる話。女探偵とAI。
    時間差の恋愛。多彩な内容で飽きさせない。
    続編も続けて読む。

  • 噂に違わぬ良作。圧巻だったのは探偵の章でした。

    最後まで読み、後書きを見て、色々納得。私は、この本の面白さを理解できたとは到底言えず、周辺資料を読み込んで、原文で読んで、やっと隅々まで楽しめそうな重厚な作品っぽいですね。

  • 小説として非常にカロリーが高い。これでもかというてんこ盛り。

    辺境の惑星ハイペリオンへ「巡礼」の一団として集まった構成員たちが順番に自らの物語を語っていく。それぞれのまったく異なる目的で集まった彼らだが語りが一つずつ進んでいく中で、惑星ハイペリオンやその惑星の謎や秘密が少しずつ明らかになり、彼らの物語が複雑に絡まり合っていることが徐々に明らかになっていく…。

    司祭、軍人、詩人、学者、探偵、領事と職業がバラバラの各人の物語それぞれに代表的なSFテーマが織り込まれていたり、一人称もあれば三人称もあり、文化人類学的アプローチの物語も、ハードボイルドなラブストーリーも、ハードな戦闘描写も、もうなんでもあり。

    上下巻苦労しながら読み進めてきて、いやこれどう伏線回収するんだろと思っていたらまさかの回収はすべて続編だった。この作品はこの作品でそれなりの結末を用意するのかと思ってので若干肩透かしを食らった気分ではあるけど、その分すべてが明らかになった時の気持ちよさを楽しみにして続編にも進んでいきたい。

  • ー 人間の経験の本質は、華々しい経験、たとえば結婚式がそのいい例だが、カレンダーの日付につけた赤丸のように、記憶にくっきりと残る華やかなできごとにではなく、明確に意識されない瑣末事の連続のほうにあるのであり、一例をあげれば、家族のひとりひとりが各自の関心事に夢中になっている週末の午後の、さりげない接触や交流、すぐにわすれられてしまう他愛ない会話.…というよりも、そういう時間の集積が創りだす共同作用こそが重要であり、永遠のものなのだ。 ー

    まじか!こんないいところで終わってしまうのか!
    というのも、『ハイペリオン(上)(下)』はほんの序章に過ぎず、全体の四部の一でしかないのだからしょうがないのだが、それにしてもある程度この作品だけで完結してくれると思ったら、一番いいところで終わってしまうなんて…。

    とある事情でハイペリオン巡礼に参加した7人の男女。
    旅の道中、到着するまでに各自、自己紹介がてらこの巡礼の背景と目的を順番に語り合うのだが、まさに自己紹介が終わったところで物語終了だなんて(笑)

    とにかく各自の自己紹介エピソードが面白く、あらゆるSFの要素を盛り込んだ非常に贅沢な作品。
    こんな傑作を今まで知らなかったなんて!!
    とにかく面白い。早く続きが読みたいなぁ〜。

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