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Amazon.co.jp ・本 (480ページ) / ISBN・EAN: 9784150113377
みんなの感想まとめ
アイデンティティをテーマにした短編集は、グレッグ・イーガンの独自の視点から人間の存在を問い直す作品群です。多彩な物語が展開される中で、特に印象的なのは、未来社会における脳の移植や、未来の自分の記録を知...
感想・レビュー・書評
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ハードSFの大家グレッグ・イーガンの11の短編を収録した本書は、文中の言葉を借りるならば、「きみがきみであること」「自分が何者であるか」、すなわちアイデンティティを共通したテーマに据えている。
SFの手法でアイデンティティを語る作品としては、個人的にはロボットを題材にした作品が多い印象を受けるのだけど、本書においてはそれに依存することなく、多彩な視点からアイデンティティを捉えている。
ヒューゴー賞/ローカス賞を受賞した表題作もさることながら、次の2作品が特に素晴らしかった。
・『ぼくになることを』
衰退する脳を排出し、その代わりに衰えることを知らない"宝石”を移植することが一般化した未来社会。"宝石”を移植しても、その人物の思考は従前までと何も変わらない(移植するまでの間、脳と"宝石”は常にシンクロナイズされているからだ)。だけど、脳のない人間は、果たして"人間"と呼べるのだろうか…
"宝石”の移植を頑なに拒む主人公の顛末。それが、とにかく割りきれなくて、心に刻まれるほど気色悪い。
・『百光年ダイアリー』
未来には行けないが、知ることはできる社会。主人公をはじめとした一般市民は、"未来の自分が記した日記"により、将来を理解していた。"自分という存在"は、過去と未来の自分によって形作られる。そんな社会を甘受していた主人公だが、ある日、歯車が狂い始め…
アイデアとなにより展開が秀逸!これは面白かったなぁ。
全作品を通じて、とにかく後味は良くない。
心を覆い尽くすのは、不安。だけど一抹の希望が潜んでいることを否定できない。
そんな不透明な心境に陥るのだけど、でもアイデンティティを認識した時って確かにそんな気持ちかもね。決して爽快な気分じゃないと思うんだ。
そう考えると、微妙なセンチメントを表現してくるグレッグ・イーガンは、流石と言わざるを得ない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
時間がなかったので最初の3作と祈りの海だけ読んだ
祈りの海オチが好き まあまあ面白い -
11作品収録。
グレッグ・イーガンの発想の豊かさには舌をまく。よくこんなに様々な世界が思いつくものだと感心する。頭いいんだろうなー。しかもいずれも秀作(正直に言うと、『繭』は自分的に微妙であった)。
分類すればSFなのだが、描かれるものは、”宇宙”や”テクノロジー”というよりは、”異なる世界”といった感じ。
収録一作目の『貸金庫』は同地域・同年代の身体を毎日移動する意識だけの主人公の物語。読んでいく途中で謎が溶けていき、わかった瞬間思わず、そういうことか…、と少し居心地が悪くなる。
続く『キューティ』『ぼくになること』は、倫理観がテクノロジー(医療ではないと思う)を制御出来なかった時の物語とでも言うべきか。私にはグロテスクに感じられる人間のエゴのストーリーだった。少し背中に寒気を感じるような、そんなグロテスクさ。
文庫本の表題である『祈りの海』はどうやら地球ではない場所が舞台で、登場人物も我々地球人とはやや異なる。どうも雌雄同体のようだ。私たちはある世界を主に支配する(言葉選びが難しいが)ある程度の知性をもった生き物を描く時、自分たち地球人のように描くことが多いが(肌の色や目の数が多少違っていても、地球人と交配が可能な姿)、この作品に登場する人は生殖器官が地球人とは異なるという点で、珍しい作品かな、と思う。同じイーガンの(私には難しすぎた)『クロックワーク・ロケット』の世界を思い出させる。
本短編集を通して感じたことは、SFの形を取りながら人間が描かれているということ。物語である以上、登場人物がいる以上、そこに人は描かれるのは当然なのだが、ある特殊な状況下での振る舞いや思考、成長、ずるさなどは考えさせられるものがある。主人公だからといって彼ら全員に感情移入できるわけではない。
まるでSFは人間を描くための方便のような、そんな印象。 -
ちょうど星新一を読んだばかりだったので、星新一の短編集を思い出しながら読み進めた。物語の設定を理解するのに若干の時間と労力はかかる。
SF界隈では名の知れたイーガンの作品を読めてよかった。 -
イーガンは初めて読んだのが『ディアスポラ』で、めちゃくちゃ面白かったけど、難解さにイーガンへのハードルが上がりすぎてその後手を伸ばせずにいたのだけど、読みやすいものも多いよと何人にもおすすめされてようやく手を伸ばしたのがこちら。
本当に読みやすくてびっくりした。単純に難解さの程度の高い低いという話だけでなく、なんというかその設定における思考実験の方向性やそこで積み上げる論理が個人的に肌に合う感じがする。そこが自分と合わないというか発想が違うからこそ面白さを感じるSFも少なくないけど、そういうものはハード・ソフトを問わずついていくのにパワーは使ってしまう。その点イーガンの本作は設定としては斬新なものも多いけれど、論理の積み上げに違和感なく読めたのが何より楽しかったというかイーガン好き!ってなった。
どれも面白かったけど印象が強かったのは冒頭の「貸金庫」。『君の名は。』のインスピレーション元になっているという作品ですが、短いながらもイーガンの「この境遇に置かれた人ははたしてどのようにそのことに気づいていくのか」を丁寧に思考していった感じが出ていて怖くも面白かったし、本作に近い設定を残した『君の名は。』もちょっと見てみたくなった。 -
「貸金庫」「ぼくになることを」を読む。
前者はしっととしっぽで福尾匠さんが紹介しており、後者はsf短編の講座での課題図書だったので。
自我の所在をめぐり、おもしろかった。
乗っ取られる機械をjewelという美しい表現でえがいているのがおもしろい -
科学的なことが難しかった。「ぼくになることを」が好み。「繭」は今の御時世的にハラハラした。
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イーガン二冊目、引き続き読みやすいと評判の短編集を手に取りました。読めば読むほど、イーガン好きだなあと思いました笑。とりあえず次は『宇宙消失』を読もう。
イーガンを調べている中で、最近「文藝」で特集が組まれたとのことで、その刊読みたいな~と思っていたところ、あれこの表紙は…と家にあることが判明笑。特集の一つにアニメ平家物語があって、それで買っていたんですね。今年一年ハマった平家物語から、イーガンにバトンが渡されたような、そんな気がしました。2023年はイーガンイヤーになるのかな?
イーガンは日本で謎に人気が高いということで、え~こんなに面白いのに、、と思いつつ、英語でおすすめSF記事を探すと、イーガンがあげられてるところほぼ見たことがなく、そういうことかあと少し納得。
さて『祈りの海』ですが、「キューティ」、「繭」、「放浪者の軌道」あたりは特に好きでした。その他の「貸金庫」、「ミトコンドリア・イヴ」、「イェユーカ」、「祈りの海」あたりも面白かった(基本全部じゃんという)
今回収録されているものは、特にどの作品も、アイデンティティとは何か?を様々な角度から取り扱ったもので、こんなにいろんな角度で考えられるのか…と驚きながらどんどんハマるイーガン…。とはいえ短編集としては、『しあわせの理由』の方が好きだったかな?
「繭」の、「…大衆はそこまで想像力を欠いちゃいけない。だれだって記号論は幼稚園で学んでるんだ、メッセージの解読法くらい知ってるさ」にしびれた笑 -
プロットにリアリティを持たせるために、どんな舞台装置を選び、それについての詳細な説明を加えようとしているのは、ある意味で読者に対する良心的な姿勢だとも言えるが、それも程度問題ではなかろうか。
全部で11の中・短編集であるが、いくつかの作品は読んでいてひたすら眠気を誘われるだけのものもあった。 -
難しかったし、SFすぎるのがあまり好きではないので少し飽きてしまった。でも短編集なので手軽に読める。複雑すぎて…
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ハヤカワ文庫
グレッグイーガン
祈りの海
科学とアイデンティティの対立を描くハードSF短編傑作集。共通テーマは「科学の時代に自分のアイデンティティを確立できるか」
各短編 SFでしか描けない状況のアイデンティティを描いている
*霊のアイデンティティ
*DNA操作により生まれた赤ちゃんのアイデンティティ
*自身のバックアップがいる人間のアイデンティティ
*母胎システム管理により消滅させられる同性愛者のアイデンティティ
*決められた未来を生きる人間のアイデンティティ
*医師不要の時代における医師のアイデンティティなど
感動したのは 同性愛者のアイデンティティ「生まれつきのものであり、それを 誇りに思うことも 恥に思うこともない」
終盤2編「イェユーカ」「祈りの海」は読みとりにくい。職業倫理や宗教観が アイデンティティという捉え方でいいのだろうか?
貸金庫=自分の意識を保存する肉体
*意識(精神)と肉体 は別
*意識が 転々と人間(宿主)の肉体に憑依して 記憶を形成していく
キューティー
*親の愛は 子どもが人間として存在することを前提としている
*人間として存在する=赤ちゃんが親へ意思表示(パパと言うなど)
*DNA操作により生まれ、4歳で死がセットされた赤ちゃんに 親の無償の愛は存在するのか
ぼくになることを
*人間は バックアップ用の能に経験を同期し、30歳くらいにバックアップ用の能にスイッチし、永遠に生きられる世界
*同期により自我と意識は1つになる→一人の人間しか存在していない
繭
*母体子宮を管理し同性愛者を発生させない細胞(繭)の研究
*分離主義〜同性愛が病気の一種にされる→一つの人種が地球から姿を消す
百光年ダイアリー
*決められた未来を生きる人間にアイデンティティはあるのか
*不変の未来〜歴史は過去も未来も決定済
*歴史はつねに勝者が書いてきた〜歴史の作者の干渉〜誰もが操られている
誘拐
*自分のスキャンファイルにより、自分の死後、仮想現実に コピーを復元できる
*私たちはお互いのことをコピーとしてしか知ることができない。私たちに知ることができるのは、自分の脳の中にいる、お互いの一部分でしかない
放浪者の軌道
*放浪者=倫理的単一文化の居住者の道徳律から外れた自分
*一つの思想体系は 信奉者から周辺の人へ広まり、無秩序な集団を取り込んでいく
ミトコンドリアイブ
*アイデンティティを確立するために 人間のルーツを規定しようとする誤り
*男性も女性も、民族主義も〜捨てるべき。そのとき「幼年期の終わり」がくる。先祖を冒涜せよ
無限の暗殺者
*無限とアイデンティティの対立
*主人公のわたし=無限=無限の数のバージョンのわたし〜死ぬことなど気にする必要はない→わたしは 無にすぎない、測度零の集合
*アイデンティティ=わたしが死ぬときに わたしが引き返さないことで 恥辱に まみれずにすむ
イェユーカ
*医師が不要となるヘルスガードという装置。主人公である医師がヘルスガードを付けること自体、医師が病気に負けている世界
*理解できれば どんな病も癒せる医師としてのアイデンティティが生まれたラストシーン
祈りの海
人生を価値あるものにしているものが〜無意味である可能性に面と向かう気構えがあれば〜その奴隷になることはない
最後のやりとりが印象に残る
「神ってのは なかなかいい思いつきだが、まるで意味をなさん」
「でも生きることがつらすぎませんか?」
男は笑って「四六時中って わけじゃないさ」
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SF小説はいくつか読んできたが、難しいことを抜きにして楽しめるものと、専門的記述が多く理解し難いために楽しめないものとがあった。
本書は後者の方で、作者が物語をとおして伝えたいことはSF的な技術進歩等だけではなく人間そのものや自由についてなのだろうが、とても話が解りづらい。人間についてというテーマを語る上で、高度な技術的解説が必要なのか疑問に思った。物語冒頭はまだいいが、だいたい中盤くらいでとても難しい科学技術的な話が出てきて、その後はもうついていけないため、話のオチもよくわからないまま終わったと感じてしまう。
SFの父、ジュールベルヌも難しい技術的な話が出てくることもあるが、それ以上に物語の展開や登場人物達が魅力的で楽しめる。 -
「祈りの海」「貸金庫」「キューティ」SF的でいて愛とは人間とは何かをわかりやすく問うものが多かった。科学的には分かっていても、解明されてしまっても人間は動かせない何かがあるのだ。
貸金庫の、特殊な設定で、それを法則を見つけ慣れていく主人公が面白かった。
繭、繭の中で、赤ん坊は何から守られているのか。すべてがホルモンやDNAで調節できるとしたら、ジェンダーは左利きは、「正常」以外はどうなってしまうのか。
誘拐、僕になることを、人格を全くコピーできる世界は、「自分」の認識とは何か。逆に、何を他人と判断するのだろう。スクリーンの妻が毎日苦しんでいたら、病みそう…
100年ダイアリー無限の暗殺者、ミトコンドリアイブ、サスペンスドラマのようで、別世界のAを殺し、Bがたたかい、難しい…でも世界観があんまり好きではなかった。
誰かの感想で、イーガンは世界観や枠組みがしっかりしてるのに、最後は個人の感想や主観に落とし込まれてしまうのが矮小化というか物足りなさがある、とありその通りだなと思った。ディアスポラのようなバリバリのSFを読みたいのだ。 -
《目次》
・「貸金庫」
・「キューティ」
・「ぼくになることを」
・「繭」
・「百光年ダイヤリ―」
・「誘拐」
・「放浪者の軌道」
・「ミトコンドリア・イヴ」
・「無限の暗殺者」
・「イェユーカ」
・「祈りの海」 -
どの話も完成度が高く素晴らしい短編集。SF的アイデアは『ディアスポラ』以降のような難解さもなく、読みやすい。表題作以外の短編は文量も約30ページで統一。テンポよく読める。最後の『祈りの海』も感動的で、まさに海に浸かってきたかのような読了感。イーガンの素晴らしさを再認識した。
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祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)
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短編集。完成度の高い、そして衝撃を受ける作品が多かった。自分の持っている思考は本当に自分のものなのか、考えさせられた。個人的に衝撃度の高かった作品は「繭」。好きなセリフがあったのは「ミトコンドリア・イヴ」と「祈りの海」。
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『幸せの理由』と比べるとより科学的であるという点でわかりやすい展開にはなっていると思う。基本的にアイディアだけで書いてると思えるものが前半に多い気がしたが、最後の2つ「イェユーカ」「祈りの海」についてはよく練られていると思った。そしてもう一つ「貸金庫」は、意識が特定の体にあるのではなく、ランダムに雇い主を変える。この不可思議な設定は、これまで想像することすらなく、興味深かった。
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グレッグ・イーガンの作品
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