言の葉の樹 (ハヤカワ文庫SF)

  • 早川書房
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レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150114039

感想・レビュー・書評

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  • 外交使節でもある文化人類学者が、とある異国で失われつつある前近代の文化風習を再発見するための旅をする物語。

    と、まとめてしまうと物語の骨格はSFでもなんでもないのですが、その「SFらしくなさ」が正にル・グィンらしさでもあります。

    彼女が紡ぎだす「ハイニッシュ・ユニバース」の一端を成す作品。高度の発展を遂げた「ハイン人」が銀河規模で潘種し、地球人類もその一環として生まれた世界。その後、潘種された種族は衰退して星間の交流がなくなり、各惑星上で独自の進化・発展を遂げていく。やがて星間交流が復活し、星間連合「エクーメン」となって、未だ宇宙への再進出を果たしていないかつての同胞を教化・指導する立場となっていく。
    そんな舞台設定を背景としているため、この作品をはじめとする「ハイニッシュ・ユニバース」シリーズに登場する異星人は全て地球人類と基本的に同種の生き物です。似たような文明を築き、似たような政治体制を変遷し、初対面でも最低限のコミュニケーションが取れますし同衾すらも可能です。
    それは即ち、人間の現実社会をそのまま描いている、ということに他なりません。ル・グィンの作品は、SFというフォーマットを借りた「社会的寓話」とも言えるでしょう。
    この作品は、特に、近代化の波に突如曝された前近代的文明(「前近代的」という言葉自体が非常に相対的な価値観を孕むため、鴨はあまり使いたくないのですが、他に適当なワーディングを思いつかなかったためこう表現させてもらいます)が自己の胎内に抱え込む相克を詩情豊かに描き出して余りあり、様々な観点から読み込むことが可能な作品だと鴨は思います。

    ただし、これもル・グィン作品の特徴ではあるのですが、あたかも社会学のレポートと古代の叙事詩を足して2で割ったような独特のゆったりとした筆致で物語が進むため、一般的なSFにありがちな爽快感や驚き、手に汗握る面白さと入ったものはまず感じられません。特に物語の中盤は読み進めるのにかなりの忍耐力を要するレベル。読む人を相当選ぶ作品だと思います。

  • 時期的に炊事洗濯掃除担当者として忙しく、読書に時間が割けなかったせいか、話が把握しづらく没頭できなかった。平時に戻って落ち着いたら改めて読み直したい。

  • 読みにくいが、最後にはホロリとさせられる
    表紙   6点小阪 淳  小尾 芙佐訳
    展開   6点2000年著作
    文章   5点
    内容 750点
    合計 767点

  • 「闇の左手」と同じく<ハイニッシュ・ユニバース>シリーズのこの作品。
    今度の主人公はテラ(地球)出身の女性、サティ。宗教を初めとした文化を一元化しようとした「ユニシス」が支配していたテラでは、キリスト教以外の宗教・考え・芸術全てが弾圧の対象になっていた時代があった。そんな時代に生まれたサティが、エクーメンの観察者として同じようなことが行われているアカという惑星にいるところから始まる。

    ル・グインはその舞台となる惑星を見てきたかのように、風景や人物や文化を鮮やかに描き出す。
    今回のテーマは「異文化との接触」。どうやってその異文化を受け入れ、拒否し、解釈するか。そんなことが丁寧な文体で書かれていく。
    サティが旅をする山「シロング」の景色は厳しくも暖かい。旅の友となっているアカの人たちも弾圧されて隠されていた「語り」をサティに教えつつ、自分達の存在をまとめようとしているように思える。

    「闇の左手」が男性ふたりの強烈な友情を軸に、激しくまとめられたものだとしたら、この作品は出てくる人物みんなが優しい視線で相手を見ているためか、非常に穏やかな作風になっている。
    個人的には「闇の左手」ほどの感動はなかったが、さすがとうなる筆のうまさの作品。

  • ル・グィンの小説は、その試みが興味深いがあまりにも真面目過ぎてまるで社会学の教科書を読んでいるようだ。
    本書で書かれている社会は、まるで、文化大革命の時の中国と鎖国時代の日本を足したようだ。

  • 極端に抑制を効かせた文章が、最後の3行で恐ろしく詩的になって、言いようのない高揚感に包まれたところでストンと終わるという、半ば途絶したような印象さえ与える結末も、このドラマが「ハイニッシュ・ユニバース」という大きな枠組み、その中でおそらくは無数に形成されている社会の、ごく一端でしかないことを示唆していて、他の社会で生み出されるドラマへの興味をそそられずにはいられない。

  • ハイニッシュもの。文化革命後の中国みたいな国に行くオブザバーの話
    …なんだろ。物足りなかった。

  • 最後の3行がすごくいい。

    愛すべきタキエキの、豆の粉の話が心に残った。
    最初は何この話???って思った。
    わらしべ長者を連想したけど、「愛すべき」タキエキが「だまされないぞ」なんて警戒心むき出しで交換しないし・・・
    物語が進むにつれて、長者になることだけがハッピーエンドってわけじゃないんだなあと思った。
    よさそうに見えるものでも、一度立ち止まってその代償を考えること。

    オクザト=オズカトの古いものを守りつつも、新しいものも拒まない生き方が印象的だった。

    ヘリコプターの操縦士が何も描写されないで死んでしまうのは、何だかなー・・・・
    サティ目線でのストーリー進行だから仕方ないのはわかるんだけど。
    作中テロや何かでいっぱい人はなくなっているのに、ここだけ嫌って言うのは自分でもおかしいと思うんだけど。
    こういう、人を人生ゲームのコマみたいにあっさり殺してしまうような展開は好きじゃない。
    そこを除けば、星5つ。
    (10.05.27)


    遠いほうの図書館。
    励まし合って読書会の課題図書。
    (10.05.20)

  • 惑星アカの象形文字のように、この地球上にもたくさんの忘れられた文字、失われた文明があることを思いました。
    一神教と多神教について。
    「ローマ人の物語」を読んだばかりということもあって、キリスト教とローマ帝国の滅亡の歴史が、ユニストらによるテラの歴史と重なるような気がしました。
    サティたちのシロングへの旅は、「指輪物語」の映画の雪山を思い浮かべて読みました。

    ヤラとサティは表裏の関係。
    ヤラはもう一人のサティであるということ。

    某読書会課題本。

  •  大好きなル・グィンなのに中身憶えてない・・・・。年だな。もっかい読も。

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著者プロフィール

アーシュラ・クローバー・ル=グウィン(Ursula K. Le Guin)
1929年10月21日-2018年1月22日
ル=グウィン、ル=グインとも表記される。1929年、アメリカのカリフォルニア州バークレー生まれ。1958年頃から著作活動を始め、1962年短編「四月は巴里」で作家としてデビュー。1969年の長編『闇の左手』でヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。1974年『所有せざる人々』でもヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。通算で、ヒューゴー賞は5度、ネビュラ賞は6度受賞している。またローカス賞も19回受賞。ほか、ボストン・グローブ=ホーン・ブック賞、ニューベリー・オナー・ブック賞、全米図書賞児童文学部門、Lewis Carroll Shelf Awardフェニックス賞・オナー賞、世界幻想文学大賞なども受賞。
代表作『ゲド戦記』シリーズは、スタジオジブリによって日本で映画化された。
(2018年5月10日最終更新)

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