エンディミオンの覚醒 下 (ハヤカワ文庫 SF シ 12-8)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (717ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150114244

作品紹介・あらすじ

エンディミオンとアイネイアーたちが地球をあとにしていた頃、新教皇ウルバヌス16世率いるパクスは、さらなる勢力拡大のため、非キリスト教徒であるアウスター討伐の十字軍遠征を開始しつつあった。これを裏で操るAI群"テクノコア"は、パクスを脅かす存在であるアイネイアーを捕らえるべく、恐るべき追手を送りだした!はたしてアイネイアーの、そして人類の運命は…?ハイペリオン・シリーズ四部作、ここに完結。

感想・レビュー・書評

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  • 『ハイペリオン』シリーズ四部作完結編。多くの脅威が迫る中、ついに明かされる謎。果たして人類の運命は……?

    文庫本で全8冊になるシリーズの最終巻である。あらゆる要素がてんこ盛りな本巻については、多くは語るまい。作者が書きたいことをすべて詰め込んだかのような、総決算のラストだった。

    パクス、テクノコアの動きを描きつつ、やはりエンディミオンとアイネイアーを主軸として物語は進んでいく。情報を小出しにするアイネイアーの老獪さがもどかしいが、そうせざるを得ない理由もやがて明らかに。知能や精神担当でカリスマになっていくアイネイアーに対し、肉体派、冒険担当のエンディミオン。しかし、「覚醒」とタイトルにあるのは伊達じゃない。あれ……ド◯ゴ◯◯ール?さらに、ここにきてハイペリオンの7人の巡礼たちとのつながりが明かされ、彼らの物語の謎も解明されていく。

    結末について、これでいいのかとモヤモヤしてしまったが、巻末の解説にあるとおりに当該箇所を読み直してみると、おっしゃるとおり、確かに納得いくものがあった。なるほどそう考えると、この結末と、アイネイアーの言動のすべても、ストンと腑に落ちる。そして壮大なこの物語が自分の中で見事に完結するのだ。読み切るまで時間がかかったけれど、本当に出会えてよかったシリーズ。いずれ再読したい。

  • 「ハイペリオン」「ハイペリオンの没落」「エンディミオン」と続いたダン・シモンズの長大なSFサーガは、この作品で大団円となります。前3作と共通する世界設定、登場人物、ガジェットが説明なしでガンガン登場するので、前3作を読了していることが必須。まぁ、このとんでもなく分厚い2冊組を一から手に取って読もうとする人はいないと思いますがヽ( ´ー`)ノ

    前作「エンディミオン」は、エンディミオン&アイネイアーとデ・ソヤ神父大佐の追いかけっこがメインのシンプルな作品でしたが、本作は主要な登場人物がぐっと増え、パクス内部の不協和音や権謀術数、そこにつけ込む<コア>の暗躍、アイネイアーを支持し守る者たちの増加と活躍・・・といった前作にない要素が加味され、複数の惑星上または宇宙空間上で複数の主要キャラがそれぞれ繰り広げるドラマを同時並行的に描き出しつつ、怒濤のクライマックス<共感の刻>へと猛スピードで突っ込んでいくという、例によってものすごい情報量とスピード感の作品です。各惑星の情景描写も、本作で特に重要になる登場人物同士の宗教的な論争/問答も、戦闘シーンや残虐なシーンの濃密な描写も、いっさい手抜きなし!少しぐらい手を抜いても良いのよダン・シモンズ!と言いたくなるぐらいの圧倒的な濃さ。生賴範義氏のアートワークがあっさりと感じられるほどですヽ( ´ー`)ノ

    【以下、ネタバレ注意!】
    本作のヒロインであり物語のドライバーでもあるアイネイアーは、下巻の途中でパクスの拷問を受け、イエス・キリストの如く磔刑にされて命を落としてしまいます。
    その時点で、彼女を守ることが使命だったはずのエンディミオンはパクスに捉えられ幽閉されたまま。牢獄の中でアイネイアーとの思い出をうじうじ振り返りながら、死ぬに死ねない日々を悶々と送っています。この結末は前作「エンディミオン」の冒頭から既に読者には薄々明かされており、こんな情けない主人公のどこが「覚醒」なの?と頭を捻りつつ、もう少し残された紙幅を読み進めていくことになるわけですが、最後の最後、真のラストシーンで、「あぁ、そういうことだったのか・・・!」と膝を打ちました。

    一応ハッピーエンドといって差し支えない終わり方ではあるのでしょう。が、鴨的には、正直なところご都合主義的な印象が拭えず(時間を自由に移動できるなら、もっとみんながハッピーになる展開だって理屈では可能なわけですし・・・)、☆5つには残念ながら行かない感じ。情けなさ過ぎる&彼女の男遍歴が気になってそれしか頭にないヒーローと、理由はあるものの上から目線過ぎるヒロインに感情移入できなかったのが一番の要因かとは思います。

    が、面白くないわけでは全くないので、そこは誤解のなきよう!エンタテインメント職人ダン・シモンズの面目躍如、巻を置くあたわざる圧倒的なストーリーテリングとリーダビリティの高さは、本作でもハイレベルに展開。前述の通り、濃密な描写が続き過ぎてだれて来るぐらいヽ( ´ー`)ノ気力・体力ともに充実している時の読破をおススメします。

  • 「面白い小説」にはそれなりの頻度で出会うのですが、「読んで良かった小説」については、これまで数える位にしかめぐり合ったことがございません。そして、そんな小説は「読みはじめたら止まらない」性質を兼ね備えているものです。

    400字詰め原稿用紙にして7000枚。全8巻約4500頁におよぶ大叙述詩《ハイペリオン・シリーズ》は、「ハイペリオン」、「ハイペリオンの没落」、「エンディミオン」、「エンディミオンの覚醒」の全4部で構成されます。
    前半のハイペリオン2部作が濃密な設定と緻密な構成で楽しませてくれる一方で、後半のエンディミオン2部作は前半で残された謎を回収しつつ、情熱と愛嬌に満ち満ちた冒険譚です。とりわけ後半2部作には、終始釘付け状態。理由は簡単。こういったハートフルな王道物語が好みのど真ん中だからです。

    この1ヶ月間、一刻も早く先を知りたい衝動と一節一々を噛み砕いて読みたい欲望とのジレンマの中で(結局は前者に譲りましたが)、読み進めた甲斐がありました。作中のいくつもの場面で、感動と驚きを覚えましたが、本書の後半からは、ずっと涙を浮かべながら読む始末。天衣無縫の結末に至っては(そして下巻表紙の真意を理解したときは)、ここまで7人の巡礼者とアイネイアー、そしてロールと苦難を共感した読者への最大のご褒美でしょう。
    実は、このラストシーンは随分前から感づいていました。だからといって、それが陳腐になる訳ではありませんし、作中の言葉を拝借するならば、ロールは「あわれなのろまなロール・エンディミオン。なにかを知るのは、いつでもいちばん最後と決まっている」のです。
    振り返ると、この《ハイペリオン・シリーズ》は、総じてキャラクターに魅力がありますね。前半2部作では、連邦の領事やマイナ・グラッドストーン、フィドマーン・カッサード大佐にマーティン・サイリーナス、そしてシュライク…等々。でも、やっぱり後半2部作のロールとアイネイアーでしょう。彼らの冒険に喜怒哀楽を委ねることが、実のところ、ここまでの感動を呼び起こしたのですから。
    一方で、明らかにならなかった点や読んでいて辻褄が合わなかった点もちらほら。辻褄が合わない点は、まあ些細な事だと目を瞑りますが、領事と宇宙船の顛末だけは詳しく解説して欲しかったです。

    さて、そんな読みはじめたら止まらない《ハイペリオン・シリーズ》を、時を経た後にあらためて読み直してみよう。新たな発見と感動が待ち構えていることだから。

  • 長かった…アイネイアが追い詰められてからの展開が染みる。ロールはヒーローにしては抜けてるなと思っていたら、最後の方トロいとか鈍いとか散々言われててなるほどと思った。

  • 今日一日を人生最後の日のような気持ちで過ごせたら、きっと毎日が最良の日になるだろう。アイネイアーのように生きたい、彼女のような勇気を持って死ぬまで全力で過ごしたい、そんなことをこの本を読んで感じた。

    誰しもあのような最期を迎えるわけではないが、未来において必ず死ぬという点では同じだ。いずれ訪れるその日まで、どのように過ごすかは自分で選ぶことができる。そういうアイネイアーからのメッセージを多くの人が共有して世界が変わっていったのだろう。

    幼年期の終わりでは個が消えて全てが共有された形として人類は進化するが、彼らの世界もいずれそうなるのかもしれない…続きがあるとすればだが。

  • ふぅ〜っ。やっと読了。達成感はあるね。

  • エンディミオンの覚醒〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

  • 壮大な、ただ壮大なLove-Storyでした。
    他の要素は全部おいといて、これだけで成立しちゃいそうです。
    繊細な仕掛けも、複雑な人間模様も、精緻な状況描写も。
    その全てを脇に退けておけるくらい、Love-Storyでした。

    そこまで真っ直ぐにLove-Storyです。
    なので、前作のハイペリオンと比べると、だいぶ趣は変わっています。
    話の流れも、物語の主軸も、全然違っています。
    目まぐるしい視点変更は控えられますが、舞台はどんどん変化します。
    全体的なまとまりも、前作に比べれば散漫で、どことなく冗長。
    けれど、「先」が知りたくて、頁を繰る手はなかなか止まってくれません・
    ほぼ全編に渡って、延々と逃亡劇が続き、危機一髪は日常茶飯事。
    そういった感じの物語。
    全体的なtasteは変われども、SFとしての質は変わらずに高いままです。
    素材はそのままに、調理法をガラッと変えたように。
    そして調理法はガラッと変わっても、味付けそのものは変わっていないのです。

    <教える者>であり、それでいて、どこまでも「女の子」なアイネイアー。
    彼女の謎めいた行動や言動に、読者はロールと同じように翻弄されます。
    同時に、その活き活きとした行動や愛らしい言動に、魅了されるのです。
    「床屋に行くヒーロー」ロールが主人公である、ということが重要なのでしょう。
    あまりにも強大な敵を向こうに回し、正面から立ち向かうことなんて出来ません。
    <教える者>であることは二の次で、ただ、自分の愛する人を守ろうとするロール。
    そこにあるのは崇高な使命ではなく、身近すぎるほど有り触れた想いなのです。
    それが、この壮大な物語を成立させる原動力といっても過言ではないと思います。

    ご都合主義な展開も散見されます。
    構成としてグダグダな部分もあります。
    全体的なまとまりに欠けている部分もあります。
    読み進むのがしんどくなってくる部分もあります。
    けれど、それらの欠点も、読み進むうちに気にならなくなってきます。
    縦軸には<教える者>対<パクス>、横軸にはロールとアイネイアーのromance。
    この横軸部が、本書の中心に据えられている強固な軸です。
    そう考えれば、上に挙げた欠点は、恋愛描写そのものと言えそうです。
    時には停滞し、かと思えば飛躍し、端から見ていると不合理極まりない。
    そんな恋愛模様を、物語そのもので表現していると言えるのかもしれません。

    そして、迎えるLastscene。
    うん、そうだよね。そうならなきゃおかしいよね。本当に良かった、と。
    見方によっては救いがないかもしれません。
    けど、この終わり方は、Happy Endingだと思います。

  • 新刊の単行本でも買いたくなる面白さ 完結
    表紙   7点生籟 範義   酒井 昭伸訳
    展開   8点1997年著作
    文章   8点
    内容 811点
    合計 834点

  • 何度再読しても、やっぱりこのシリーズが生涯の小説3本のひとつだ。内田樹さんがおっしゃった「読む前と後では人生が変わる」やつだ。

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