プレイヤー・ピアノ (ハヤカワ文庫 SF ウ 4-17)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (603ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150115012

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  • いちばん印象的だったのは、訳者あとがきの中に出てくる『屠殺場5号』からの引用で(p.482)、
    『わたしはそこで、人間各人のあいだにはいかなる差異も存在しないということを教えられた。いまでも大学では同じことを教えているかもしれない。
    もうひとつ、人類学科で学んだのは、この世に、奇矯とか、性悪とか、低劣といわれる人間はひとりもいないということである。わたしの父が、亡くなるすこし前、わたしにこういった、「おまえは小説の中で、一度も悪人を書いたことがなかったな」
    それも戦後、大学で教わったことの一つだ、とわたしは答えた。』
    というところかもしれない。

    プレイヤー・ピアノ。
    読んでいる間、苦しくて切ない理由は、登場人物の誰にも、どの立場の人にも、この機械化が進みすぎた管理社会にも、「あいつが悪い」「こいつはダメだ」「どれこれのせいだ」なんて言えないことだった。
    こんな管理社会になればいいのにって思う私も、頭が悪い奴と性格が悪い奴は消えてくれって思う私も。
    どんな人間にも、自由とそれに見合った責任を持つ権利があるって思う私も、誰しも1人の人間として尊重しあえるべきだって考える私も。
    どっちも本当だ。どっちも嘘じゃない。
    だから苦しいのだ、生きていくのは苦しいし、切ないのだ。
    ただ、その愚かな人間ってものについて、悪いとも良いともいわず、ヴォネガットは書いている。
    いや、皮肉的な目線なのに、でもしょうがないよねっていうちょっと温かい視線で、人間が人間の中で生きるっていう苦しみも切なさも悲しみも苛立ちも、ぶった切ったり裁いたり殺したりしてくれないで、ただ「ブラフーナ!」(生きよ!)と。

    あぁ、それしかないんだ。
    そうなんだ、わかっている。
    勝ち負けの問題じゃないんだ。
    勝ち負けの問題にしたら、簡単だ。
    でもそれじゃダメなんだ。
    私は、何をしたい?私が一己の人間として、したいことは何なんだ?
    いつでも考えていなきゃいけない。
    ブラフーナ!生きよ!

    また読もう。

  • あらゆる仕事が機械化された時代が背景の小説。(もはやそんなに遠い未来のことでもなさそうだ。)バーもすべてが機械化されて回転寿し屋のように酒が回ってたりする。オープンしたての頃はその目新しさで話題を呼び、大盛況となったのだが、すぐにつぶれてしまう。その数ブロック先に、生身の人間がカウンター内に立ち、ジュークボックスが置かれているバーがあったのだ。結局はみんなそこへ帰っていった。
    そしてここから革命が生まれることになる。この酒場の描写箇所だけはこれがいつの時代だといっても通じる。外へ出れば、未来世紀ブラジルなんですけれど。人間が集まる場は人間を求める。酒場は永遠なんじゃないかと希望を持てた。ただ嬉しかった。

  • ある種のディストピア小説ではある。だがこの著者の手にかかると、どうもシリアスな感じにはならないようだ。ほとんど全てを手に入れることができる立場でありながら、ここではない場所の暮らしに憧れるポール・プロデュース博士の選択は果たして。皮肉ともいえるラストが印象を残す作品。

  • ヴォネガットの処女長編。
    機械を壊す革命が成功したイメージでいたけれども、読み直してみて、そうではないことを知った。

    ページ数は多いけれども、長さは感じさせない。
    以降の作品に比べれば、時間も場所も、オーソドックスに展開するけれども、読み手をつかまえてはなさないストーリテーラーとしての手腕は、最初のこの作品からもある程度うかがえると思う。

  • 久々に再読
    こんなにま正直なディストピア小説だったのだね
    処女長編ということで、皮肉とユーモアは控えめだけど、そのぶんもっともリアルにガチンコ勝負を挑んでると思うんです、はい。

  • 古書購入

  • すべての人間のデータが機械によって、一人につき一枚のカードで管理される。そのカードで人間の運命が左右される。カードの内容評価が下がると、そのカードの人間はたちまち職を失ってしまう。機械が人間の職を奪いつつある時代のお話。よくある話と思ってしまうが、1950年代に書かれているのに驚く。
    ラストちょっとかっこいい…

  • 舞台は第三次世界大戦後のアメリカ。大半の人々はテクノロジーに仕事を奪われ、少数のengineers & managersが富を得る形へと変わっていっていた。そんな物語の主人公は、東海岸に位置する架空の都市、Iliumの大企業Ilium Worksのマネージャー、 Paul Proteus。妻、Anitaと何1つ不自由のない暮らしを送っていた。しかし橋を渡ればそこに住むのは仕事もなく、社会から見放された大勢の人々。明らかな格差と人間の存在意義を問う姿勢が皮肉にも今の世界と通用する。

    Vonnegutのデビュー作でもあり、のちの作品の原点とも言える。物語は定番のディストピアを題材としていて割と単調。しかし共感できる部分はたくさんある。SF好きには読んで欲しい一冊。

  • 1952年に書かれた近未来小説。現代を言い当てているようなところだとか、現代からつながっていく近未来を感じさせるところもあります。全体としてはレトロな未来ですけどね。たとえば、個人のもつIDカードがパンチカードだったりする古さがあるし、半導体はでてこなくて、真空管がでてきます。駒を動かす盤ゲーム(チェスみたいなものかな?)で人間を負かすための機械がつくられたり、機械に仕事をとってかわられてリストラされたり、格差のある階級社会になっていたり、21世紀を予見している(洞察している)ところがでてくる。内容そのものもとてもおもしろいです。また、AとBという対立があって、たとえば作者はAの意見に同調しているとすればAの意見をいうひとの描写やセリフはかきやすいのだろうけど、ヴォネガットくらいになるとBの描写やセリフも卓越している。敏腕弁護士以上に、いろいろな立場や主張を理解してくみあげて表現する力があるよなあ、と思いました。

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