楽園の泉 (ハヤカワ文庫 SF ク 1-40)

  • 早川書房
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本棚登録 : 510
感想 : 51
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  • Amazon.co.jp ・本 (415ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150115463

作品紹介・あらすじ

赤道上の同期衛星から超繊維でできたケーブルを地上におろし、地球と宇宙空間を結ぶエレベーターを建造できないだろうか?全長四万キロの"宇宙エレベーター"建設を実現しようと、地球建設公社の技術部長モーガンは、赤道上の美しい島国タプロバニーへやってきた。だが、建設予定地の霊山スリカンダの山頂には三千年もの歴史をもつ寺院が建っていたのだ…みずからの夢の実現をめざす科学者の奮闘を描く巨匠の代表作。

感想・レビュー・書評

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  • 宇宙エレベーター建設をめぐるハードSFでありながらも、宗教や異星人とのファーストコンタクト、架空歴史ものの要素も盛り込まれた作品。

    宇宙エレベーターの建設への理想的な場所が、3000年の歴史を持つ寺院が建つ霊山の山頂。ここで描かれる宗教と科学の対立。思索的な部分や抽象的な話が多くて、前半はかなり苦戦しました。なんとなく読み進めていたらいつの間にか、具体的な建設の話に移ってしまっていた印象で、自分の読み込みが追い付けなかったのがもったいない……

    一方で宇宙エレベーターの描写や、異星人とのファーストコンタクトの歴史が語られる場面の壮大さがよかった。人間の技術では測れない異星人との出会いが人類にもたらした、宇宙への夢や憧れ、そして野望。また超技術を持った異星人が存在するとわかった時、人は宗教を、そして神をどうとらえ直すのか。壮大な思考実験を小説という形で、読者である自分にも突きつけられるような気がします。

    そして徐々に実現が近づいてくる宇宙エレベーター。しかし、完成直前に大きなトラブルが起こり……
    科学が進んだ世界での宗教の立ち位置や在り方が前半のテーマなら、後半は打って変わって極限の困難に挑む、科学とそして人間の可能性を信じるドラマの部分がより強く打ち出されます。ここも理論がしっかりとしていたり、宇宙エレベーターを頭に描くSF的な想像力は必要とされますが、老齢の技術者がたった一人で困難に挑む姿と、宇宙の描写は分からないながらも壮大かつ、心躍らせ胸熱くするものがありました。

    そしてエピローグで物語はさらなる時代を、宇宙を超えて紡がれる。科学と宗教、そして宇宙エレベーターという壮大なテーマを締めくくる、しみじみと残るものでした。

    自分の理解が足りず読み逃しているポイントも多々あるとは思うのですが、それを補ってあまりある魅力のある作品だったと思います。

  • ハードSF長編。いわゆる「軌道エレベーター」の建造がメインのお話で、それに宗教的世界観と科学との対比が入ります。
    現代になってようやく可能性が囁かれはじめた軌道エレベーターだけど、1970年代にこんなに緻密に描かれてたなんてびっくり。さすがの巨匠です。
    読んでる時の感覚は技術系/歴史系ドキュメンタリーに近いんだけど、エピローグまで読み終えたらやっぱり見事なSF長編でした。素敵!

  • ロマンの塊

  • ずっと読みたかった一冊。
    現代の宇宙エレベーター構想の礎である小説。

  • 宇宙エレベーター(軌道エレベーター)建設の実現を目指す技術者の壮大なSFロマン。
    21世紀に入って実現の可能性が高まっているらしい、軌道エレベーター建設を1979年に描いた小説。全体の構成としては「プロジェクトX」風とどなたかが書いていた通りの感じ。不可能を可能にしていく建設への積み重ねと、現地スリランカの架空歴史ロマンや、地球外知的生命体との接触もからめて物語は進んでいく。ハードSFとして技術的な話も多く、中盤まで起伏がやや緩やかな展開に感じたが、未知の事象に向かっていくセンス・オブ・ワンダーは健在。アクシデントが続く終盤のスリルと緊張感には映画のような迫力があってのめり込んだ。圧巻の結末にクラークの偉大さを再度思い知らされた。やっぱすげえ。

  • 地上と宇宙を結ぶ巨大な軌道エレベーターをめぐって描かれる壮大な物語。アーサー・C・クラーク作品の中でも最も好きな本です。クラークの作品でも特にしっとりと読ませる本だと思うので、落ち着いて読書を楽しみたい方はぜひに。

  • 大林組が宇宙エレベーター構想なんてものを掲示したりしているけど,実際に宇宙エレベーターが建設されるのはあとどのくらいかかるのだろうか。


  • アーサーCクラーク 「楽園の泉」

    地球と宇宙空間を結ぶエレベーター建設をめぐるハードSF。一人称だが2千年を行ったり来たりするので、意外と読みにくい

    テーマは 政治と宗教の時代から、科学と精神の時代への変化であり

    タイトル 楽園の泉は 精神的な慰め、永遠の生命 を意味しており、精神性の象徴なのだと思う

    宇宙エレベーターは 科学の象徴であり、物語の中で 科学と宗教、科学と自然の共生を描くことで、時代の変化を明らかにしているのでは?


  • 「ユーリ・ガガーリンが、もっと100キロも高いところで感じたほどには、寂しくないわ。ヴァン、あなたはいままでにない新しいものを世界に持ちこんだのね。空はそれでも無慈悲かもしれない――でも、あなたはそれを服従させたのよ。こういう旅をする勇気のない人たちが、少し入るかもしれないわね。その人たちを心からお気の毒に思うわ」(p.248)

  • 軌道エレベータの完成を目指すエンジニアの奮闘記。
    宗教と科学の対決、というハインライン先生お得意の重厚なテーマが一貫するのかと思いきや、中盤であっさり決着がついてしまう。
    後半はハリウッド映画ばりの緊張感あるレスキュー劇。急に軽い話。
    2,000年前の古代のエピソードに始まり、エンディングでは遥か遠い未来に飛ぶスケールの大きさはさすがです。

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