砂漠の惑星 (ハヤカワ文庫 SF1566)

制作 : Stanislaw Lem  飯田 規和 
  • 早川書房
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本棚登録 : 234
レビュー : 23
  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150115661

感想・レビュー・書評

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  • 未知の存在とのコンタクトを描いてはいるが
    多分に観念的で、コンタクトに至る過程や
    コンタクトシーンのドラマ性や派手さを
    期待すると、肩透かしを食らうと思う。

    全体的に会話と思考、行動の記述がメインで
    ハラハラドキドキとかはあまりない。

    ただ、無駄な記述も少ないので
    淡々と読んでいく味わいで
    地味さが気にならなければ。

  • 消息を絶った宇宙船に何が起こったのかを確かめるために、砂漠の惑星へと向かった「無敵号」が、その惑星の無生物圏の脅威に晒され挫折しながらも、生還するという勝利を収める小説。
    機械同士の激しい戦闘描写や深い学問知識に基づいたSF描写、宇宙船内の隊員たちの組織の描写が非常に面白かった。砂漠の惑星でサバイバル。
    知識のあるレムだからこそ、科学の力を人間が完全に御することができなくなる日がくるという実感を強く持ってこの小説を書いたのかもしれない。その科学の力とは他ならぬ核の力なのだが。この小説が書かれたのは1964年なので、その頃の世界情勢も加味するとそのように考えられる。
    人間の力では御しきれない科学の力の前に、人は敬虔であらねばならないし、何としても生き延びるということこそが真の勝利なのだろう。

  • 沼野充義訳の『ソラリス』が文庫化される前に……というこで購入した既刊の中の1冊。
    ジャンルとしてはファーストコンタクトものか。
    冒険SFのような体裁ではあるが、登場人物が延々と議論しているところは、東欧文化圏の作家らしいと感じた(偏見かもしれないが、ロシア文学を筆頭に、登場人物は大抵が議論やお喋りが好きで、延々と話合うシーンがけっこう多い気がする……)。
    『無機物が如何に進化するか?』というテーマが面白かったので、『無敵号』の面々にはもう少し掘り下げて語り合って欲しかったw なんやかんや言ってロシア文学の議論やとりとめのないお喋りが大好きなのだ。

  • 琴座系のはずれにあるレギス第三惑星。そこは砂に覆われた無機物の惑星。宇宙船無敵号は、かつてこの惑星の調査のために訪れるも消息を絶った宇宙船コンドル号の捜索を目的に、不毛の大地に着陸する。主人公ロハンを含む調査隊は、早速捜索を開始。やがてコンドル号とその乗組員の遺体を発見するが…

    本書は単なる未開惑星での冒険活劇ではありません。登場人物は(無駄に)多いのですが、その内面については、主人公のロハンや無敵号の隊長ホルパフでさえ、中途半端な描写があるぐらいで、個々に焦点があたることはありません。いわゆるドラマが見あたらず、時には冗長な説明が続くところもあり、退屈に感じる場面もちらほら。しかし、それでも本書に魅力を感じるのは、レム自身も評するように、本書が「文学作品」であるためです。その片鱗が見え隠れする中盤以降は、思いを巡らせながら読み進めることに。最後の章では、レム自身が込めた思いを超えて、深く考えさせられることになりました。

    さて、レムが本書で表現した思想は、訳者あとがきにて、レム自身の言葉で読むことができますが、ここでは割愛。
    個人的には、砂漠と機械の世界では人間のいわゆる理性が異質であり、最後の章で表現されたその理性がなぜか滑稽で無駄なものに思えてしまいました。これはレムの考えとは逆行するんだよなぁ…
    もうひとつ。終盤、砂漠の惑星の脅威に対抗しようとする無敵号の科学者を横目に、ロハンは思案に耽ります。このロハンの思い(下記にて引用)は、レムの思想を深く反映していますが、それと同時に、執筆当時(1962~1963年)のいわゆる冷戦下、核武装による軍備拡張の世相を痛烈に批判しているように感じて止まないのです。

    「われわれの行く手に立ちはだかっているのは、誰かの目論見でも、誰かの敵意でもない。単に生命のない自己組織の動きにすぎないではないか……そんなものを抹殺するために、ありったけの武器やエネルギーを消費する必要がどこにあるのだろう?」
    「宇宙には、このように、人間の理解を超えた気味悪い現象が、どれほど多く秘められているのかわかったものではない。しかし、だからといって、われわれは、われわれの知識の尺度では計れないすべてのものを撃破しつくすことを目的にして、どこへいくにも強力な破壊兵器を積んでいかなければならないのだろうか?」
    「われわれはわれわれの武器や機械をあまりにも過信していた。だからこそ、取り返しのつかない過ちをおかしてしまって、いまその報いを受けているのだ。悪いのはわれわれだ。悪いのはわれわれだけだ。」

  • レムの代表作といえば『ソラリス』だが,その次はと尋ねられれば間違いなく本作を挙げる.華やかさはないものの,環境(砂漠の惑星)もキャラクター(調査隊員)も素晴らしく,ラストの描写は圧巻.あと,『ソラリス』よりも読み易いと思われるので,レム一冊目として向いているかもしれない.オススメ.

  • 原題「無敵号」。
    作に敬意をこめて、最高に満足したとだけ記録しておく。

  • これは長い。冗長。

    最後の一章のためにそれまでの章がある。本当に。

    途中で主人公も言っているが、もはやこの惑星にいる意味が分かっているのか?と思う。探索に行くとほぼ壊滅して、すでに搭乗員の半数もやられている状況で、惑星に居続けるのは相当な理由が必要。
    結局最後に探索に行くのは、生きていないと分かっていながらの人命救助のためと書かれるが、これはもはや弱い。

    隊長の急に見せる弱気さも相まって、ストーリー的には駄作。


    が、ストーリーでも最後の一章は魅せてくれる。疲労感の中で次々と死体を発見していくところはさすがに悲しい。これがレムか。どうしようもない現象に遭遇すると、どうしようもない。そのどうしようもなさを受け入れて、この場合回避するのみ。
    主人公が開き直るところは、星新一の処刑を思い出す。


    生存競争で生き残る最強の無機生物?とは、について大風呂敷を広げていているようだが、さほど新規性があるとは思えない。

    大風呂敷広げるだけあって肝心のアイディア周辺の科学的記述はしっかりしてる印象。便利なバリヤー(なぜか磁場はバリヤーしない)とかは出てくるけれども。

  •  異色のSF作家スタニスワフ・レムが描く、「未知との遭遇」もののひとつ。
     本作では、進化における知性の位置づけもテーマのひとつになっている。

     かつてリチャード・ドーキンスが「知性の増大は生物進化に必ず付随するものではない」という旨の発言をしていたが、本作に登場する未知の種族も、まさにそうした進化の道を歩んできていた。そのさまは、ある種の社会性昆虫を想起させる。

     だが作中終盤で、主人公は彼らにじかに認識される事態に遭遇する。主人公はこのとき彼らに対して得体の知れない知性と意思とを感じたはずだし、読者である私も鳥肌の立つような思いをした。
     予想外の知性と、それに認識されていると実感することによる居心地の悪さ。不意打ちのようにもたらされたこの感覚は、レムの仕掛けたセンスオブワンダーだったのだろう。
     このシーンによって本書は私にとって、同作者の傑作『ソラリスの陽のもとに』よりも印象深い作品となった。

  • さすがにソラリスには及ばないが十分楽しめる作品。ただ、50年前のSFにしては、という前置きはせざるを得ないかも。

  • 題名から想像する映画のエイリアン2のような孤立した惑星で繰り広げられるエイリアン遭遇物語かなと思い読み始めましたが、なかなか予想を裏切られる筋立てでした。最初に遭難した宇宙船を調査しに無人の惑星に宇宙船が来るところまでは、予想通りの展開でどんなエイリアンが相手かと楽しみに読んでいました。ところが、読み進めるうちに相手であるエイリアンが見えないどころか、実は生き物であるエイリアンよりもっと手強く厄介な相手であるということが分かります。説明では数百万年の進化を遂げた異星人のロボット達の子孫という種明かしなのですが、それらを相手に戦う船長や仲間を失いつつも惑星に残り続けることに疑問を抱く主人公の副長などの人物描写が丁寧で、単なるSF小説に終わっていないところが読みごたえがあります。

    特に明確な意思を持たず本能で探検隊である人類を攻撃する無機質なロボットは、通常のエイリアンより恐ろしいものがあります。一番印象に残ったのは、このロボットの慣れの果と不毛な戦いを続けることに疑問を持ち始めた主人公が、広大な宇宙の中で人類がまだまだ理解を超えるものがあるという謙虚さを持つべきだという認識に至る過程と、不毛ないち無人惑星の調査(征服)にこだわり続ける人類の固定観念に気付くところでしょうか。現代の地球における人類と自然との対峙に置き換えても十分に通じる警笛です。作者であるスタニスワフ・レムが一番言いたかったところだろうと思います。同じ著者の作品である「ソラリスの陽のもとに」も買ってあるので、今から読むのが楽しみです。

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著者プロフィール

1921年、旧ポーランド領ルヴフ(現在ウクライナ領)に生まれる。クラクフのヤギェウォ大学で医学を学び、在学中から雑誌に詩や小説を発表し始め、1950年に長篇『失われざる時』三部作を完成。地球外生命体とのコンタクトを描いた三大長篇『エデン』『ソラリス』『砂漠の惑星』のほか、『金星応答なし』『泰平ヨンの航星日記』『宇宙創世記ロボットの旅』など、多くのSF作品を発表し、SF作家として高い評価を得る。同時に、サイバネティクスをテーマとした『対話』や、人類の科学技術の未来を論じた『技術大全』、自然科学の理論を適用した経験論的文学論『偶然の哲学』といった理論的大著を発表し、70年には現代SFの全2冊の研究書『SFと未来学』を完成。70年代以降は『完全な真空』『虚数』『挑発』といったメタフィクショナルな作品や文学評論のほか、『泰平ヨンの未来学会議』『泰平ヨンの現場検証』『大失敗』などを発表。小説から離れた最晩年も、独自の視点から科学・文明を分析する批評で健筆をふるい、中欧の小都市からめったに外に出ることなく人類と宇宙の未来を考察し続ける「クラクフの賢人」として知られた。2006年に死去。

「2017年 『主の変容病院・挑発』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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