ひとりっ子 (ハヤカワ文庫 SF イ 2-6)

  • 早川書房
3.58
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本棚登録 : 622
感想 : 47
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150115944

作品紹介・あらすじ

「この子がわたしの娘なの。生まれるのがほんの何年か遅くなったけれど」-待望の第一子となるはずだった女の子を失った科学者夫婦が選択した行動とは!?子どもへの"無償の愛"を量子論と絡めて描く衝撃の表題作、星雲賞を受賞した数学SFの極北「ルミナス」、著者が追究しつづけるアイデンティティ・テーマSFのひとつの到達点「ふたりの距離」など、本邦初訳2篇を含む7篇を収録する、日本オリジナル短篇集第3弾。

感想・レビュー・書評

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  • あえて言うなら
    「ヘレン、かわいいよ、ヘレン」

  • 「「この子がわたしの娘なの。生まれるのがほんの何年か遅くなったけれど」―待望の第一子となるはずだった女の子を失った科学者夫婦が選択した行動とは!?子どもへの“無償の愛”を量子論と絡めて描く衝撃の表題作、星雲賞を受賞した数学SFの極北「ルミナス」、著者が追究しつづけるアイデンティティ・テーマSFのひとつの到達点「ふたりの距離」など、本邦初訳2篇を含む7篇を収録する、日本オリジナル短篇集第3弾。」

  • 「行動原理」★★★
    「真心」★★★
    「ルミナス」★
    「決断者」
    「ふたりの距離」★★
    「オラクル」
    「ひとりっ子」


  • 量子論が難しくて理解しきれてない部分もあるのだけど、とても面白い世界観だった。

    ひと、と、もの、の違いって何なんだろうなあ。

  • 《目次》
    ・「行動原理」
    ・「真心」
    ・「ルミナス」
    ・「決断者」
    ・「ふたりの距離」
    ・「オラクル」
    ・「ひとりっ子」

  • 「行動原理」★★
    動機付けを自己問答し続け、結局最初から衝動して制御できなかった目的を達する。その結果が何かを示唆するというのでもないように読めた。イーガンの作品としては肩すかしなのか、それとも読みが足りないのか…。
    「真心」★★★
    感情をコントロールするインプラントを使う物語という点では、「行動原理」の別バージョンとも言える。愛を永久のものにするため、自分たちの潜在力ではなく、インプラントの力を借りて行うという話。愛をそのような形で安定化させる(ロックする)というのは根本的に間違っていると思いつつも、二度と裏切られたくない(男も女も過去に2度離婚している)という強迫観念に抗えない。結果、彼らは長く一緒に暮らし、それなりの愛を育んできたが、心には決して消えない「なぜ」がある。
    「ルミナス」★★★
    「万物理論」の原型とも言える小品。数値的な不均衡は宇宙に存在する。それを均質化して悪用されないようにするという理屈は、実際の万物理論(Theory of Everything)でも提唱されている。イーガンは独自の展開を示すが、操作の結果については言及してない。しかし、何かが起こるかもしれないという収束のさせ方は悪くない。
    「決断者」★★
    パッチと呼ばれる眼帯のようなものには脳のシナプスに反応して意識をコントロールする能力があるらしい。犯罪者に身をやつした主人公は自我に悩みながら生きているが、パッチを強奪し、それを使用したときから、自我を司る意識のルーツを探ろうとする。このようにまとめると分かりやすいが、この作品は三段論法的な論理学の連続で、エンタテイメントとしての要素が稀薄な上に、その論法を消化しきれていない。結局、意識の奥深さに戦き逃亡するという形で話は終わるが、読者はひとり芝居を見せられたような不消化さが残るのみだ。
    「ふたりの距離」★★★★
    タイトルは忘れたが、その後の作品である「ぼくになること(『祈りの海』所蔵)」でも使われている「宝石」というキーワードが登場する。人間の臓器には寿命がある。生まれた子供は宝石と呼ばれる人工頭脳はインプラントされ、17歳まで脳と共生し、その子の思考パターンや記憶のすべてを入力する。既定の年齢に達すると脳を削除し、宝石が脳に代わる。その後の小品では宝石に身を委ねることが、自我の死であるという観念から逃れることができずに苦しむ人を描くのに対し、ここでは躊躇なく交換するところから物語ははじまる。本作では、ふたりが唯一無二の恋人であることを語る物語で、お互いにすべてを告白してより近しい関係になること、相手の体と入れ替わって当人の気持ちを知ること、一方の体を2つ用意して同じ感覚と感情を味わうことなど、自分たちが何事にも代えがたい、離れがたい存在であることを確かめていく。あるとき2つの意識を合体させることのできる新しいテクノロジーを体験することになる。それは自分であると同時に彼女でもあるというものだった。これが究極の一体感だったはずだが、一定時間を経て終了後、2人は別れることになった。もはや自分と彼女は精神的に同一だったから、相手がいてもいなくても2人は完結した「ひとり」だったからだ。しかし人間はひとりでは生きていけない。2人はそれぞれ「自分ではないだれか」と生きるために別離を選んだのだった。
    「オラクル」★★★
    20世紀中葉に量子力学の概念を持ち込んで並行世界を展開させる。その理屈を当時の文化的精神を超えて理解できる心の柔軟性がある男と、その文化性を超えないという選択をする男との物語だ。この物語は、前者が冒頭で拷問を受けるシーンから始まる。つまり時代に収まりきらない精神の描写から始まるのだから、彼が進化した社会を受け容れるのにほとんど障害はなかった。イーガンは必ずしもこの人物の側からもう一人を描いたのではないにせよ、彼はすでに伝統文化的な(保守的な)思想を完全に棄て去っているのは間違いない。
    「ひとりっ子」★★
    子供を持つことの意味、引いては人類が子孫を繁栄させる意味を問う物語だが、背景はともかく、当事者である人造人間と生身の人間の、ある1点を象徴的に引き出そうとする手法はあまりうまくいっていない。人造人間の「心」のありようをもっとリアルに表現してもらいたかった。

    ここからネタバレ

    オラクルのキーパーソンであるヘレンと、本編のヘレンは、とくに言及されていないが、同一人物という設定のはずだ。物語としての連続性はないが、時間と(並行)世界をまたいで繋がっている。

  • イーガン作品は初めて読んだ。短編集。それぞれのエピソードのテーマは、人の意識、脳の領域に記憶や感情をインストールする技術、多元宇宙論、人造人間など。

    登場人物の会話が完全に理解できないのが難点だが、ストーリーは面白い。この本で書かれている技術はいずれ実用化されそうなものが多いと感じた。

  • 『1984年』は2+2=5であることを証明するSFである
    と他の誰でもないこの作者が言うのだからそうに違いない
    それはともかく
    この作者の作品を久しぶりに読んだけれど
    SFとして最先端であるというより小説としての幅の広さが良くわからない感じ
    『ルミナス』のように小説らしいSF小説が書かれている一方で
    表題作のようにむりやり小説にしているようなお話もあり
    SFにおけるカガクテキな着想をお話にする手段に
    質の高低でなく種類の幅が迷走しているかのように見えて落ち着かない
    数理論文でないものを書きたいのだろうし
    SF作家として名声を獲得しているのに何かをいうこともないけれども
    小説としては合わないと合う作品の幅が大きくて困る作者作品也

  • ひとの人格や感情というものは、どこまでハードウェアに依存しているのか、どこまで置き換え可能なのか、という問いを様々な形で投げかける短編集。説明部分は難しくて頭がついていかないところも。
    どの話も主人公がとても冷静でロジカルな視点から語っているため、問いの対象となる感情はそもそも整理されてサンプルめいている。もっとどうしようもないぐだぐだな感情が登場したら、同じ設定でも違った展開になるだろうか。

  • 相変わらず読みにくい部分もあるが、表題作はよかった
    表紙   6点田中 光   山岸 真訳
    展開   6点2006年著作
    文章   5点
    内容 698点
    合計 715点

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著者プロフィール

1961年、オーストラリア西海岸パース生まれ。SF作家。西オーストラリア大学で数学理学士号を取得。「祈りの海」でヒューゴー賞受賞。著書に、『宇宙消失』『順列都市』『万物理論』『ディアスポラ』他。「現役最高のSF作家」と評価されている。

「2016年 『TAP』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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