銀色の恋人 (ハヤカワ文庫 SF リ 1-2)

  • 早川書房
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感想 : 52
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  • Amazon.co.jp ・本 (446ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150116064

感想・レビュー・書評

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  • SF。恋愛。
    少女とアンドロイドの恋愛小説。
    ストーリー的には特筆することもないような、王道の展開。
    だからこそ安心して楽しめる。
    主人公の心理描写や、主人公とアンドロイドの甘々な描写は、とても丁寧で、著者の表現力を堪能できるかも。
    恋愛小説は苦手で、突飛なストーリーを好む自分にとっては、苦手なジャンルではあるが、それでも十分に楽しめた良作。

  • ロボットと少女の恋物語であるが、解説にもあるように、わたしは主人公と母の関係に惹かれた。完璧である母と無垢な娘である主人公ジェーン。ジェーンも自分の世界であった母を恐れているし、デーメータもだんだんと自分の手に負えなくなっていった無垢な娘を恐れる。(「デーメータもあなたを恐れている。デーメータはあなたを、型紙の本から型紙を切りぬくように切りとろうとしていた。ただあなたがそれにぴったりしなかった」)電話ボックス越しで話す母娘の会話は愛と憎しみとでかき乱されました。
    デーメータは娘を愛しているのか?という絡み合った支配関係が強調されましたが歪だっただけで彼女なりに愛していたのだとは解釈しました。(家出した娘の友達に片っ端から電話をかけ勝手に売っぱらわれた家具を新調しなおして金が無いからと電話してきた娘に訳は聞かないから帰っておいでといい自殺未遂した娘が身を寄せてる友達の家に1時間おきに電話してその後金も月額二倍与えて。)
    「母がほんとうにわたしを好きであったかどうか。」と、デーメータはジェーンの愛し方とは違っただけで行動から愛していることを感じたし、デーメータという一人の、ある種完成された人間の生活も心情も「娘」であるというだけでしっちゃかめっちゃかにしたのに「ほんとうにわたしを好きであったかどうか」計ろうとしている様がジェーンが好きです。
    なんだかんだあってもシルヴァーと幸せに暮らすと思っていたので、今後残された母娘がどういう関係を築いていくのか気になる終わり方でした。母から始まり母で終わった印象。

  • 初めて出来た彼氏が読んでいた本。
    でもちっとも興味なくて読まなかった。
    彼の感想も聞かないまま別れて、すっかり忘れていた。
    その後、とある劇団にハマり、その劇団関連の雑誌の読者のページで
    その劇団のトップスターに演じてほしいとこの本が紹介されていた。
    「あ、あの本だ!」と瞬く間に思い出した。
    そして読んだら、少女の頃から「こういうのが見たかった」と思う恋愛が描かれていて驚いた。
    読み終えて、自分が泣いていることに気付いて驚いた体験も初めてだった。
    泣いてるなんてもんじゃなかった。号泣。おうおう泣いた。
    私と感性の似ている友人にすぐに勧めた友人たちもおうおう泣いたみたいだ。
    もっと若い時に読んだらどうなっていたのか、しばらく抜け殻になってしまったと思う。
    万人向けではないけど、今も心に残る一冊で、きっとずっとそうなのだと思う。

    ちなみに、読者のページで勧められていたように、私もあのトップスターに演じて欲しいと願ったけど、それは叶わなかった。


  • しばらく前から再読熱が上昇していたところに、『辺境図書館』でタニス・リーの名前が見えたおかげで火がついた。引用されていたのはたぶん「平たい地球」シリーズだと思うけど、そこは気にしない。
    読めば今度は原書も気になってきた。電子書籍で買おうかな? 洋書は書影がわりと残念だけど……。

    久しぶりに読んだら、ジェーンの周りの人々についてやけにあれこれ考えてしまうのに驚いた。特にデーメータ。パートナーなしに娘ジェーンを産んだこと(男性についてどう思っているのか?)、ジェーンが本当に幼い頃はあちこち連れまわしていたこと(デーメータもまたジェーンを恐れていた、それは母娘が一番密だったここから?)、ジェーンの友達付き合いに期待することや、人形に対して暴力性を発揮してほしかったのだろうというジェーンの推測(娘もまた自分のごとき支配者になると考えていた?)。
    人とロボットの恋という主旋律の陰で、それと同じテーマがずっと通奏低音のように物語全体を貫いているんだなと、目の覚める思い。支配と被支配の関係、人形愛。たぶんデーメータだけでなく、クローヴィスもその変奏の一種。そしてこの先何度読み返しても、そのたびにはっとさせられるのは間違いない。それだけの名作だと思う。
    多感で繊細な少女ジェーンの甘さと不安定性が窺える語り口が何より好き。想像力豊かで、詩的なイメージとの親和性が高くて、そういう描写にタニス・リーの筆力が存分に揮われていると思う。SFよりは幻想小説の読み方がしっくりくるのかもしれない。そこに魅力的な登場人物を配して、台詞の引用や物語上の役割で他の物語のイメージをも重ねていくのがまた、古典的ながら効果的で素敵。エジプティアゆえに死んだシルヴァーなんて、自身の優秀さで神の怒りを買って破滅する人間のイメージそのものじゃなかろうか。逆説的にこれこそが、ジェーンとの愛を経てシルヴァーが人間になったことの証左なんだと思う。美しい。

  • 恋愛小説だが、壮絶な母娘の物語でもある。
    この母に対抗していくジェーンも実は芯が強いような。

  • ラストはなんだかんだ泣いた

  • 人間だけどロボットだった私が惹かれたロボットは、ロボットとは思えないロボットだった。

    確かにジェーンは短絡的で賢いとは言えないけれど、彼女の行動を幼稚なものであると決めつけ、自らを良き母であると思い込んでいるお母さんがとても悲しい。

  • 魅惑的なロボット、シルヴァーに一目ぼれした少女が、自分の置かれていた状況全てを棄ててロボットとの愛に生き抜いた物語。

    それまでは偉大な母親の庇護の下、何不自由ない裕福な暮らしをしていました彼女が、なにもかもを棄てて母親の支配から抜け出し、スラム街でシルヴァーとの暮らしを始めるという展開。

    女手一つでジェーンを育て上げた母親はかなりのグレートマザー。母親に従順だったジェーンが初めて逆らったきっかけが、シルヴァーでした。
    支配する母と自立しゆく娘という難しい関係をベースに、思春期の少女が恋に目覚めて親の庇護から抜け出すという流れがダイナミックに描かれます。

    十代の頃に読んだら、かなり心引きずられる恋人たちの純愛物語だったと思いますが、実際読んでみると、ヒロインの一目ぼれからのロボットへの入れ込みっぷりと、自分の意志を通すためにエキセントリックに大人をかき回す劇画調の大立ち回りが気になりました。

    未成年でありながら、シルヴァーの正式な所有者から半ば強引に自分のものにした経緯もあり、周りに迷惑をかけまくっています。お嬢のわがままをかなり発動しているといったところ。
    また、シルヴァーを愛するあまりですが、彼の機械であるという本質は尊重せずに、人間としてのふるまいを求める彼女は、言い直せば自己満足の愛を押し付けているようにも思えます。

    それでも、そうした彼女の一途な願いが不思議な作用を及ぼし、シルバーも次第に真実の愛を知っていくという流れ。また大きすぎる母親の影響力から必死に逃れて自立の道を選んだヒロインの行動力がなければ、そもそもこの物語は起こりませんでした。

    多分に人間らしいシルヴァーですが、製造されて3年しかたっていない経験の浅いマニュアル頼りのロボット。そしてヒロインは母親の巨額なお小遣いでやりくりしていた世間知らずの16歳のお嬢様。二人きりでひっそりと生きていこうとしても、どうしても社会の影響を受けずにいられません。

    そもそもロボットはメンテナンスに莫大な費用が掛かるのではないでしょうか。動力は電力でも原子力でもなさそうですが、なにも摂取しなくても駆動するわけではないと思いますが。気になるところです。

    交霊実験のシーンがありましたが、どんなものがよくわかりませんでした。黒魔術的なこっくりさんのようなものでしょうか?
    ロボットとのやり取りは恋人同士の甘いものですが、それ以外の人間同士の交流は逆にギスギスしており、落ち着きません。あえて対照的な書き方をしているのかもしれません。

    ジェーンはかなりひっかきまわしヒロインで、共感するのは難しかったのですが、彼女の友人クローヴィスの描写が魅力的。
    辛口の感想になってしまいましたが、泣ける甘い恋愛ものを探している人にはお勧め。
    この作品発刊後、長い年月を経て続編が出たようなので、そちらも読んでみようと思います。

  • あらすじと表紙に惹かれて購入したも、ずいぶん積読していた…やっと読了しました。最高。名作。沁み渡るようだった。泣き虫の甘やかされて育って自分の意見もほとんどない女の子ジェーン。彼女が恋に落ちたのは、銀色の肌をした美しい顔と歌声をもつロボットでした。
    恋を通してジェーンが成長する様や、自分で考えて行動するようになるのがいい。それに母から作られた姿じゃない、ありのままの自分の姿になっていくのが。シルヴァーはもうほんとに神秘的で魅力的だった…。彼とジェーンが貧乏暮らしする描写はすごくうっとりできるわ…。ラスト付近は気がついたら泣いていました。

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