虎よ、虎よ! (ハヤカワ文庫 SF ヘ 1-2)

制作 : 寺田克也  中田 耕治 
  • 早川書房
3.68
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本棚登録 : 1158
レビュー : 139
  • Amazon.co.jp ・本 (446ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150116347

感想・レビュー・書評

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  • キレてる文体イカします。

  • おれたちのすることはいつも当然なんだよ、ただ、ときどきしてはいけないことをしてしまうんだ。

  • 雄々しいタイトルとカバー裏のスケールの大きなあらすじに惹かれて。

    結構古典的なSFですね。原書が上梓されたのが’50年代なので驚く話でもないのですが、現代では廃れてしまった道具がSFチックに進化して登場したりするのにはやはり時代を感じます。

    主人公フォイルは復讐しようとしてヴォーガに爆弾を投げつける等初めは見当違いな行動ばかりで、ジズベラに会うまでは正気じゃないのかとまで思ってました。見境がなくなるほど激怒していたということでしょうか。
    しかし復讐のためならなんだってやるという主人公のおかげか、ストーリーの展開は小気味良く感じました。中盤からは単純にフォイル自身も強くなりましたしね。強い主人公は好きです!

    クライマックス。復讐からはずいぶん違う方向に進みますが、どうなんでしょうこれ。怒涛のような終わり方を通して感動が呼び起こされるものではありましたが少し詰め込まれすぎている気もします…。とはいえ、ヴォーガに見捨てられて怒り狂っていたフォイルがああいう境地に至れたのは気持ちのいいものでした。

    復讐の物語かどうかはともかく、確かに絢爛たる物語、名作でした。

  •  一ヶ月くらい前にSFが読みたくなって前々から気になっていたので読んだ
     買ったのは確かAmazon

     一時間半くらいかけて書いたものが手違いで消えてしまったので手短に書くことにする

     泣ける。。



     さて、順を追ってあらすじと一緒に感想を書いていく
     がっつりネタバレしているのでそのつもりで読んで下さい



    ***

     本書は以下の様な制限付きのテレポーテーション(本書内ではジョウント)がができるようになった世界が舞台だ

    ・1600km以上はできない
    ・宇宙空間は越えられない
    ・正確に目的地を視覚化できなければいけない
    ・ジョウントできることを疑ってはいけない

     この制限が後々の展開に生きてくる

    (能力に制限を付けるのは常套だし、後の展開もこの時点では予想できるが、読んでいくうちにそんなことは忘れさせられてしまうのが、本書の凄いところだ)

     また、25世紀で人類が太陽系で活動している世界でもあり、ジョウントによって起きた戦争中の世界でもある
     主人公はその世界で事故にあい、本当なら救助できる船から見捨てられた経験からその船に復讐することになる

     そう本書は復讐譚なのだ

     無気力な怠け者であった主人公は復讐のための獣となる

     事故から助かる過程で化け物のような刺青を顔に彫られ、それこそ「虎」のようになった主人公は、復讐相手が大富豪のプレスタインであることを突き止め、獣のように復讐を仕掛け失敗する

     一方、プレスタインも彼、「ガリヴァー・フォイル」 を追っている
     目的は彼が居場所を知っている戦況を左右する物質「パイア」だ

     フォイルはプレスタインに捕まるが、獣の様な屈強な精神力で責めに耐えついに「パイア」の場所を吐かなかった
     刑務所に送られ、長期的な方法で居場所を吐かせようとするプレスタインたちであるが、そこからフォイルは仲間を見つけうまく脱走する

     ここまでが第一章だ

    (ここまでのフォイルの明確で強烈な意志は見ていて気持ちが良いし、プレスタインのどす黒さも随所に見られてその対比が素晴らしい)


     獣の部分を前面に出して復讐を果たそうとした第一章と比べ第二章ではフォイルは学習している
     自らの名前と立場を偽り、刺青も消して、プレスタインに近づこうとするのだ
     その方法はうまく行き、復讐はほぼ成功するかのように見えた

     そのときフォイルは恋をする
     憎き敵プレスタインの娘オリヴィアに

     だが、絶望的に叶わぬ恋だと知ったフォイルは文字通り絶望する

     そして、今までの行いを自省する
     自省して自らの行い、果ては存在までもに疑いを持ち、償いをしたいと思うようになる

     そう本書は単なる復讐譚では終わらない

     無気力人間→復讐の獣→挫折→より知的で狡猾な復讐者→悲惨な失恋→自省を経るフォイルの成長物語でもあるのだ

     さて、自らの行いを償おうと自首してようとするフォイルだが、既に状況はそれを許さない
     本来ならばできるはずのない宇宙ジョウンティングを彼はできるようになってしまったのだ

    (宇宙ジョウンティングで時間と空間を超えるようになったフォイルの五感がめちゃくちゃに混乱した時の描写がは本書の見どころの一つだ。こんな見せ方を小説でして良いのか、と驚かせてくれた)

     「パイア」どころではないこの革命的能力は、しかし、フォイルを追い詰めるものでしかなかった
     彼は償いたいのに周囲が、プレスタインが、刑務所に行くことなど許さないのだ

     一方で、戦況は悪化しており、「パイア」がなければフォイルやプレスタインの側は壊滅してしまうことは目に見えている
     こんな状況の中、「パイア」を持って宇宙ジョウンティングを持った、そう交渉において圧倒的に優位な立場にいるフォイルはプレスタインたちと話し合いをすることになる

     このときに同席していたバーテンダーロボットの言葉が素晴らしい

     フォイルの自省はここにおいて人生の真理とでもいうものに到達する

     長いが引用しよう

    ***

    ロボット「人間はまず社会の成員であって、つぎに個人であります。あなたは社会が破壊を選ぼうと否とにかかわらず、社会と行動をともにしなければなりません」

     フォイルは社会が愚劣であった場合は?と問う

    ロボット「~あなたは(宇宙ジョウンティングを このカッコは僕の補足です)教えるべきであって命令すべきではありません。あなたは社会に教授しなければなりません」

     フォイルはなぜ宇宙ジョウントをする必要があるのか?と問う

    ロボット「なぜならあなたは生きているからです。あなたはきっと反問なさるでしょう。なぜ生きるのか? それはおききになりませぬよう。ただ生きることです」

     フォイルはただ生きるよりも人生には何かあるはずじゃないか?と問う

    ロボット「それならご自分でそれをおさがしなさい。あなたが懐疑にとらわれえいるからといって、世界に停止を要求なさってはいけません」

     フォイル「なぜ我々は一致して前進できないのだろうか?」

    ロボット「なぜならあなたがたはそれぞれ異なっているからです。~ある人びとは指導する役を引き受けねばなりませんし、ほかの人びとはしたがうことをのぞんでいるのです」 

     フォイル「誰が指導するのだろう?」

    ロボット「指導しなければならない人びと~略」

     フォイル「奇形的人間だ」

    ロボット「あなたがたはみな奇形なのです。しかしいつでも奇形だったのです。人生は奇形です。だからこそ、それがその希望であり栄光なのです」

    ***


     (そう人間はだれしもが奇形であるし、人生はいつだって奇形なのだ。これは本当の意味で人間一人一人を尊重する意見だと思う)

     (また、「あなたが懐疑にとらわれえいるからといって、世界に停止を要求なさってはいけません」という台詞は以前に読んだ佐々木中さんの「切りとれ、あの祈る手を」で著者が罵倒していた「文学は終わりだ」「世界は終わりだ」と終末論を吐く馬鹿ものに対する答にもなっていると思う。もちろん佐々木中さんは著書の中でもその答えを出しているけれども)


    ***

     これを聞いたフォイルはジョウントして様々な場所で「パイア」をばらまく

     そして、「プレスタインたちに全てを話せ」と言う

     「民衆を子ども扱いするのはよせ」と言う

     「そうすれば彼らは子どもの様にふるまうのをやめるだろう」と言う

     プレスタインたちがそれを拒否すると自ら民衆に呼び掛ける

     「諸君はブタだ」と「諸君は天才を持っているのに阿呆なことしか考えない」と


     (この最後のやり取りは東日本大震災での政府の対応とその後の我々一般人の反応にそのままあてはまらないだろうか)

     (政府は民衆を子どもの様に細心の注意を払って甘やかし(搾取し)、民衆は文句を言いながらも多くの人は行動を起こさない。天才になろうとしないのだ)
     
     
     宇宙ジョウンティングを繰り返したフォイルは超越者となり最後の最後、彼がどうなったのかは本書を読んで確かめて欲しい

     社会を考える上でも役立つし、エンターテイメントとしても最高に面白い一冊

     SF作家の想像力は本当に素晴らしいのだ!!

  • 最後まで飽きない展開だった。主人公の復讐心が半端でないのも面白かった。買ってから一年も積んでいた状態だったので勿体無い事をした。

  • 自分を捨てた事実に対する復讐。

    映画観てるみたいな爽快感。
    映像化したらすげーかっこよさそうだ☆

  • モンテ・クリスト伯に出会ってから、
    復讐譚には目がないわけだが、これはただの復讐譚ではない。

    SFだからとかそういうことではなく、
    もっと大きく根源的な物語。
    2度、3度と心臓を掴まれるような思いをしながら
    文字通り「一気に」読み終わった。
    真相に出会って、救われなさにもがいて、
    その後たどり着いた境地。

    こんな本に出会うから本読みはやめられない!!!

  •  途方もない過酷な場所を生き延びた男の、暗い情熱に満ちた復讐譚……から話は始まるのだけれど、終盤、苦しみの果てにフォイルが獲得した人間性に、激しく心を揺さぶられました。少々厚いのと、序盤がややとっつきにくいのが難点かな。冒頭の引用は、すごく引き込みが強いんだけど、そこから話が動き出すまでの何十ページかが、ちょっとわかりにくかったかなという印象。

     で、その冒頭の引用が、たまらない美文。ウィリアム・ブレイクの詩の独自訳です。ちょっと引用。
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      虎よ! 虎よ! ぬばたまの
      夜の森に燦爛と燃え
      そもいかなる不死の手 はたは眼の
      作りしや、汝がゆゆしき均整を
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     読んでてくらっくらきました。脳ミソに刻み込まれる感じ。これは訳の勝利という気がする。小説の面白さを問うときに、文章が美しいかどうかは最優先事項ではないと思っているけれど、それでもやっぱり、美文に出会うとすごくときめくなあ。

     読むにつれて物語に引き込まれていく力強さがありました。印象深い一冊。

  • スピード感があって、どんどん読めます。
    劇画調で映像も浮かんできます。
    いまだに傑作!!

  • すべてを悟ったフォイルが言う「民衆を子どもあつかいするのはよせ。そうすれば、彼らは子供のようにふるまうのをやめるだろう」

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