虎よ、虎よ! (ハヤカワ文庫 SF ヘ 1-2)

制作 : 寺田克也  中田 耕治 
  • 早川書房
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レビュー : 139
  • Amazon.co.jp ・本 (446ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150116347

感想・レビュー・書評

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  • 豪華絢爛SF復讐活劇。アニメ「巌窟王」の原作モデル(原作としたかったけれども、許可が取れなかったので、この作品が描かれるヒントとなったデュマの方を原作とした、と言うのは周知の事実)と言うことで、読んでみました。
    まず精神感応力がテレポーテーションの原理となり、誰でも自由に空間移動ができるようになった未来、と言う説明から始まり、テレキネシス、そして精神感応による最終兵器、と言うギミックを散りばめ、かつ、キャラクター造詣も、女性男性みんな一筋縄ではいかない魅力。オリヴィエはさしずめエデ姫のヴィジュアルで、ヤン・ヨーヴィル大尉は、銀英伝の同名の軍師を思わず思い浮かべました。この作品の方が、銀英伝よりは先に作られていますが。
    すんごい読ませるなぁー、と思いながら、ラストは復讐の代償とキリスト的贖罪と言うか原罪へ帰結していって、クライマックスは派手です。これくらい派手に持っていく力量すごい。
    解説を読んだら、この小説を書く前に、「スーパーマン」や「キャプテン・マーベル」と言ったアメリカンコミックのシナリオを書いていたということで、そりゃあ、視覚的に魅せてくれるはずだ、と納得しました。
    特に第2部で、大金を手に入れた後の、贅を尽くしたサーカス団でひと騒動するシーンは、ユーモアと夢に満ち満ちていて楽しかった。長い話だけれども、序盤から終盤まで、七色に変化する読み応えたっぷりの銀河絵巻。
    50年前に書かれたとは思えない、色褪せない傑作を、どうぞ思い思いのノイタミナヴィジュアルで読んでほしい作品。
    面白かった!!

  • トニックウォーター味の空気に、軽快なハンマー音が見える! 思わず出来損ないのオマージュもどき短編を書いてしまったくらい、衝撃を受けた作品。読めばきっと貴方も酩酊します。現実からずっと遠くへ瞬間移動(ジョウント)したい貴方へ

  • SF的な要素とミステリー要素、そして作者からの根源的なメッセージを含んだ、紛れもない古典SF(というより古典海外文学)の名作だった。


    とある宇宙船にて記憶を失った状態で目覚めたガリヴァー・フォイル。救難信号を出したものの受理されることはなく、彼は復讐に燃えることになる。
    この導入部分のシンプルさが、まず良い。

    救難信号を無視したのは誰だったのか。その真相を探る行程はミステリー小説さながら。

    一方で、SF小説としても、もちろん大いに楽しめた。
    25世紀の宇宙では”ジョウント”と呼ばれるテレポートが一般的となっており、一般市民やホームレスでさえ、テレポートをすることが普通になっている。
    そしてテレポートのみならずテレパス能力や赤外線を観る能力なども登場するので、SFファンとしては心をくすぐられた。
    内衛生連合(地球、金星、水星など)と外衛星連合(木星、土星、及びそれらの衛星)が敵性関係にある、という更なるマクロ的な世界観も良い。

    あとは、細かい点だけど、何気ない社会的な描写も良かった。
    例えば、富裕層の間ではジョウントが”ダサい”とされ、自動車のような旧来の移動手段が富の象徴となっている、等。
    テレポート社会のリアルさを強固にしているという点で、非常に良かった。

    そして何より、ガリーが"時空間ジョウント"を発現させるシーンはSF史に残る名場面だった。

    終盤には「人間とは、社会とはどうあるべきか」というメッセージが投げかけられる。単なる空想物語で終わらないのも、この作品が長く読み継がれるポイントの1つなのかもしれない。

    ただ、女性があまりにヒステリックに描かれていて、そこは少し時代を感じてしまった。

  • バイオレンスSFの最高傑作。サイボーグ009の加速装置の元ねた。大友克洋「AKIRA」にもその残像をみる。SFのアイデアてんこもり。「分解された男」から発展したアバンギャルドな活字構成にもクラクラ。

  • キングの短編『ジョウント』を読んで再読したいなーと思ったが、物置だの納戸を探すまでもなく積読の中に新判があったのであったw

  • 表紙のカッコよさに惹かれ衝動買い。しかし予想外の強烈な読書体験だった。
    テレポーテーション(ジョウント)、テレパシー(共感覚)、加速装置、感情の昂ぶりにより浮き出る虎の刺青。その後のSF作品の定番となった能力や設定がいくつも盛り込まれている。そのアイディアの豊富さ、そして読者を置き去りにしかねないほどの疾走感と馬力は凄まじい。
    作品を「味わう」よりも「感じる」タイプの小説。
    一つずつ文章を読み込んだり、内容を考察するのではなく作品のテンポに合わせガンガン読み進めた方が遥かに面白い。
    さらに場面を頭の中でイメージするとより一層楽しめる。
    決して万人受けする作品ではない。まったく合わない人もいればハマる人にはとことんハマる。
    それでも発表から60年以上の時間を経て尚そのエネルギーとスピード感がまったく色褪せないという意味では間違いなく古典的名作と言えるだろう。

  •  アルフレッド・ベスターの『虎よ、虎よ!』はもはや半世紀前の作品で、文庫版が出た頃に読んだのだろうから、30年ぶりくらいの再読なのだが、読む側の年齢差から来る印象の違いもさることながら、まったく時代を越えたインパクトがあることを痛感した。当時、ショッキングに感じたところはそれほどでもなく、多義的な結末は現在の方が楽しめた。

     正直、マンガ的である。これは褒め言葉ととっていただいても、貶し文句ととっていただいても構わない。実に『ゴーレム100』とそのあたりは一貫している。コミックスの原作を務めたキャリアが生きているのかもしれないが、それが発表当時は斬新で、今はいささか陳腐、というわけでもなく、時代的な制約を飛び越えてしまっている。ジョウントなる名称で呼ばれるテレポテーションが超能力ではなく、普通の能力として訓練によって習得可能となった社会などという設定にしてからが、実にマンガ的。

     お話のほうは『モンテ・クリスト伯』に想を得た復讐譚。宇宙で難破したガリー・フォイルは宇宙船ヴォーガに見捨てられ、復讐を誓い、惨めな生き物であることを辞める。知力と財力をつけ、「虎」と化すのである。
     「虎よ、虎よ!」とはブレイクの詩の引用だが、万人が超能力者というこの話の中でさらに普通の超能力者を越えるのが「虎」であり、どこかニーチェを思わせる物言いだ。
     それとともに顔に彫り込まれた入れ墨を消したはずが、怒りとともに虎のように浮き出ることも虎の謂いである。石ノ森章太郎のマンガ版『仮面ライダー』はこれに影響を受けている。
     他方、われわれ日本人としては「虎」の謂いに、どこかで「山月記」が反響してくるのも感ずる。
     そして「虎」と化したガリー・フォイルは他の「虎」たち、すなわち、この世界の有力者たちとまみえるのだ。

     しかし、このお話の肝要は野獣のガリーが人間になることである。そのあたりの教養小説的な真面目さが、マンガ的荒唐無稽さを緩和して、ある迫力を生み出しているのだが、ベスターの本質は実はそこではない、と今回思った。彼の本質は雑多さ(猥雑と悪趣味といってもいい)であり、脈絡をいささか逸脱しながら、あちらこちらへとジョウントしてしまうことなのだ。

  • 有名な復讐譚だと思っていたけど、「瞬間移動が可能になった世界の制約」という設定がとにかく面白かった。そしてラストにただただ感動。

  • 素晴らしいアイデアの積み込みに積み込みが重ねられた素晴らしい作品でした!!

  • おれたちのすることはいつも当然なんだよ、ただ、ときどきしてはいけないことをしてしまうんだ。

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