- Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150116392
感想・レビュー・書評
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ファンタジー。SF?
男性が極端に少ない世界観はSFっぽいが、訳者あとがきにもある通り、科学的な説明は一切なし。
個人的には、中世ヨーロッパを舞台にしたファンタジーとして読んだ。
ジェンダー論を考えることもできる内容。
とはいえ、基本的にはライトノベルチックな娯楽作品という印象が強い。
個性的なキャラクターが多く、ストーリー展開も派手で、終始楽しく読めた。
エナミカツミさんがイラスト担当の表紙も、日本のアニメが好きという著者に合っていて良い感じ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
古書購入
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設定の割には読めたが、女流作家の詰めの甘さがおしい
表紙 4点エナミカツミ 赤尾 秀子訳
展開 5点2005年著作
文章 5点
内容 630点
合計 644点 -
男性の出生率が全体の5%に満たない世界。男子は女性に支配され、家と家の絆のため売買婚される。
農場の少年ジェリンはその美貌を王女に見初められるが…
あっハイ、シンデレラ系大好きです。男女逆転ものも大好きです。虐げられる側に回っても男性は男性なりのワガママいうし、女性も雄々しいだけじゃなく女性としてずるい面や自己中心的な部分もあるし。違う価値観を楽しみたいときにでも。 -
男が圧倒的に少なくて女ばっかりの世界。それを「すばらしい!」と感じるか「地獄だ!」と感じるかは人それぞれだろう。僕は女性が苦手なのでどっちかっていうと後者なんだけど、これを喜べる人は単純に羨ましいと思う。ただ、男が極端に少ない世界では男に希少価値というものが生まれて割と重宝されるものらしい。それはそれで興味はある。
『ようこそ女たちの王国へ』はそんな世界の物語。ライトノベル風の表紙とタイトルで勘違いされがちだけど、結構ちゃんとした小説である。アメリカの女性作家ウェン・スペンサーによる2005年発表の小説“A Brother's Price”の邦訳だ。
男性の人口が全体の5パーセント以下の世界。そこでは政治から家庭に至るまで女性が大きな権限を有している。主人公ジェリンは30人に及ぶウィスラー家のきょうだいの一員だ。もちろんきょうだいの大半は姉妹たちで、そんな大所帯を統べるのはエルデスト(長姉)である。やがて成人を迎えるジェリンはどこかの家の姉妹たち(20~30人)と結婚するか売りに出される予定だ。
ある日家の近くで何者かに襲われ重傷を負った女を救助したところ、それが国を統治する王家の一員、つまり王女様の一人だったことからジェリンは王室を巻き込んだ思わぬ冒険をすることに。
舞台は恐らく異世界。中世ヨーロッパ風のような西部開拓時代風のような、そこらへん詳しくないんでちょっとよくわからないが、何となくそんな雰囲気の時代である。
もしかしたら僕らが暮らすこの世界の、違う時代の物語なのかも知れないけど、なぜ男が極端に少ないのかという理由が作中では一切明らかにされていないのでそれは不明だ。ウィルスによる感染症とか遺伝子の変異とか理由をつければSF的に高く評価されたかも知れないが、そうではないのでSF界からは否定的な書評も多かったらしい。
それなら開き直ってファンタジーとして読んでしまえばそれはそれで面白いのだけど(実際ハヤカワ文庫FTから刊行されてもおかしくないと思う)、しかし「男が極端に少ない世界の仕組みはどうなるのか」という想像上の実験だと捉えてみると、凡百のファンタジーとひとまとめにしてしまうのは何とも惜しいのだ。
男女比に大きな差がある世界とは前述の通り、男に希少価値が生まれ、女が男を資産として取引の材料にする世界である。原題を直訳すると『男の価値』ってなもんである。男女比が政治や社会だけでなく経済の仕組みさえ変えてしまうのだ。大切な財産であるため男は幼少から箱入りで育てられ、危険な事には近づかないように躾けられている。よって軍も女性の職業とされている。
そんな世界での主人公の冒険譚は、アクションの迫力だけでなく奇想天外な驚きを読者に与えてくれる。特に、重要なんだけどどうしても避けられがちな性的事柄もキチンと描写されているのは興味深い。例えば主人公がベッドでのテクニックを父親から伝授されてたりね。もちろんハードな描写などないのでそこらへんは期待するだけ無駄ですが。
ここで絶妙だなあと思う設定が、この世界では恐ろしい性病が蔓延しているという事。そのため、女達は男なら誰でもいいという訳ではなく、純潔性に男の価値を見出している。何しろ一人の男を数十人の姉妹が同時に夫として共有する世界である。病気なんか持たれていたらひとたまりもない訳で。そんな設定のお陰で、セックスに関わる事も正面から描きつつポルノチックになってしまう事を回避している。
そんでもって物語はやっぱりラブロマンスが絡んできて何やらハーレクインチックになってしまう。少女マンガ要素も若干強めなのでそういうのが苦手な人はダメかも。主人公が美貌だけで王女たちに気に入られる展開とかね。なんか胸の奥がザワザワします。
そうはいっても、繰り返しになるが単なる異世界ファンタジーとして片づけるのはちょっと惜しい意欲的な作品である。表紙イラストと邦題でだいぶ損しているような気がするが、どうやら作者は割と楽しんでいる様子。はてなキーワードによると、邦訳版ではタイトルが“Welcome to the Women's Kingdom”になっているという事を作者自身のブログでファンから教えられ、逆に喜んでいたそうだ(訳者はどんな気持なんだろうか)。表紙についても本人がアニメの大ファンだそうで、アニメっぽいイラストを気に入っているとか。わからんもんだなあ。
でも確かに米アマゾンなんかで英語版の本書の表紙を見てみると、ヒロイックファンタジー風の予想外な表紙になっていて、こんな小説でさえハリウッド的マッチョイズムの思考回路でイラストをつけるとこうなってしまうのかと逆に衝撃だった。知らんけど。
後半、エルデストの「男前」な活躍には痺れます。第3回センス・オブ・ジェンダー賞海外部門大賞受賞作。 -
ラノベ風の表紙につられて買った。よくあるハーレムモノをSF作家がつじつま合わせて書くとこうなるっていう本。男女比1:20の超女性社会で男はモノとして扱われる!?
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男子が極端に生まれにくいその世界では男は財産として扱われる。結婚前は屈強な姉妹に守られながら美しさを磨き、結婚後は家事をしつつ何人もの妻の相手を強いられ……。これだけ聞いたらその筋の人は「それなんてエロゲ?」と言ってくれること間違いないでしょうが正にその通り! 僕も読みながら10回くらいはその台詞を呟きました(笑。但し主人公の男の「屈強な姉妹」ってのは本当に筋金入りで、密偵として厳しい訓練を受けた上である王子を誘拐し、軍功をあげてから結婚し騎士になったという、なんというか変なリアリティもありつつ逞しい一族(ある西部劇の家族をモデルにしたそうな)。お話はみなさんが期待する(笑、結婚後ではなく、結婚にいたるまでの冒険や政略をメインにしているのでなんというか普通にハラハラドキドキできます。表紙は綺麗ですがやはりラノベ絵でタイトルもこの通りなんで、余所からみたらやっぱりエロゲですが。続編が無いというのが本当にもったいないほど設定もしっかりしているので、その辺りにまけずにお試しあれ。
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男が種馬扱い。
男がいない世界はどんな風になるんだろうなー、っていうところから想像を広げたと思うが、最初から最後まで私の予想を一歩も超えていなくて残念。いなくなった王女なんて、これが関係してくるんだろうなーって想像していたらその通りだったんで吹いたw -
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男が資産となっている世界。
面白い。再読しそう。
意外に結構血なまぐさい、それとも女性はそうなのかも。
納屋のシーンはもっと濃厚でもいいのに。
作者が大の日本アニメファンとのことだけれど、
アニメ化されれば面白いのに。
あと、原題とかけ離れすぎてないか。 -
日本のオタクよりオタク臭いSF小説を書くことで有名なスペンサー女史の小説。
あらすじとしては、男の出生率が極端に低い(ゆえに男は一族の財産であり、人権もない)世界で、盗賊一族の長男ジェリンくんが、優しいお姐さんやお転婆な妹、貴族や王女様なんかとイチャイチャするお話。
どんだけエロゲーだよ!
まぁスペンサーさんの作品は毎回こんな感じなんで今更なんですけど、お約束な設定と流れに適度に眩暈を覚えつつ、生き生きとしたキャラクターににやにやするのが肝要と思います。
SFファンの間では、「男性出生率が低い根拠が作中で語られていない」ことが批判対象のようですが、個人的には実に瑣末。この作品の特筆すべきところは、その特異な世界観を書ききる生活臭だと思います。男が少ないという世界は単にハーレムになるという話ではなく、良い子種を巡って奪い合いが起こるということであり、優位であるはずの女性達にとっても、一族存亡の責任がのしかかるということです。女性の存在意義はいい男性(容姿だけではなく、血統や遺伝的健康性など)を見つけ、子を産み一族を存続させることに集約されます。一般庶民にとって男性は高価すぎて手に入らないので(家族に男児が生まれれば、トレードという形で他家の男性は手に入る)、若いうちにたくさんお金をためて、男娼館で良い遺伝子を買い、子を育てることが「庶民の幸せ」になります。そんな価値観は読者にとってはとてもシュールで、性ってなんだろうと考えざるを得なくなります。
主人公ジェリンくんも16になると売られるか交換されるかなんですが、ひょんなことから知り合った王女さまに見初められ、「女たちの王国」へお婿さんにいくことになります…あとは読んでみてください。個人的にはキャラも魅力的だし、話も面白いのでアニメ化とかすればみんな食いつくような気がするのですが、私自身アニメあんまり見ないのでよくわかりません。 -
約10人姉妹に夫一人という完全な一夫多妻制でありながら男性優位な社会でない設定に脱帽。確かに、男子の人口が減少すれば子種のために生まれた男子を大切にするのは当たり前だし、その価値をあげる為にお姫様のように囲ったり、もしくは誘拐したりするのは考えようによっては当たり前かもしれない。が、王も軍人も家長も何もかもが女性って言うのは思い付きもしなかった。一家を背負う長女を“エルデスト・(家名)”と呼ぶのはカッコいい。
そしてウィスラー家の長男ジェリンが美しすぎる。なんだかんだあった後に、最初に考えるのが「僕はもうきれいな体ではないかもしれないから離縁しなくてはならない」とかそういうことを思う世界設定が面白い。 -
「本の雑誌」の連載コラムにて池澤春菜さんが紹介されていて面白そうだったので読んでみました。
中身はちょいハーレクイン…なので読者を選ぶかもですが…
一夫多妻制、ただしいわゆる西洋近代的ジェンダーが逆転しているという設定。つまり、男子は希少なので貴重、家の財産扱いで、結婚は相手の姉妹みんなと夫婦になるんです。王家もしかり、てところがよしなが版『大奥』とは若干違いますがまあ設定は似てます。
池澤さんも上記のコラムで書かれてますが、やっぱりSFって現実では起こっていないことを思考実験するという側面があるんだよね。トンデモ設定と思いきや意外と本質が透けて見えたりするのが面白いんだと思います。 -
The Brother\'s Price by Wen Spencer:
ジェリン・ウェスラー
レンセラー王女
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薦められて読んだ一冊。
あらすじ読めば分かる通り、王道ファンタジーハーレム物です。女だらけのところに男は自分だけでウハウハ生活、的な。まあ、別に主人公しか男がいないわけではないんですけども。
内容としては、そのまま性別入れ替えれば女子向けハーレム物になるなぁといった感じ。王家に婿入りするための騒動とか、主人公が浚われて異性に助けられる、とか。結末も王道的な感じでした。
面白かったのは、あくまでも男は女(正確には女系家族)にとっての所有物だということですね。だから男は売られたり、盗まれたりするわけです。性別が逆だったらきっとどこかの団体に訴えられるような設定です。
あとは男がいない家は子孫が残せないから滅びるしかない、とか。そのために売春宿(クリブ)があるけど、不衛生で病気になる危険がある、とか。
思ってたよりしっかりそういう部分が書かれてました。ちょっと意外。
しかし、著者の趣味が顕著に出てる本でした。登場するヒロインが赤毛と黒髪しかいないとは。 -
これは小説版の『大奥(よしながバージョン)』?
20人に1人の割合でしか男が生まれない世界。
ここでは女が統治し、稼ぎ、戦争もする。男は子作り・子育て・家事全般をこなす。男子は家の財産であり、売買されるという。