独裁者の城塞 新しい太陽の書 4 (ハヤカワ文庫SF)

  • 早川書房 (2008年7月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (480ページ) / ISBN・EAN: 9784150116729

感想・レビュー・書評

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  • 情報量が多いとか、構成が複雑とか、文体のクセが強いとか言った理由とは違うかたちで難解な小説だった。読み終わったいま現在しっかりと理解したとは言い難い、煙に巻かれたような、完全にしてやられたような不思議な感覚に陥っている。
    この小説が超遠未来を舞台にしていることは始めから了解していたが、背景となるロボットとの戦争や異星人が介入しての調停については巻を追ってようやく”ぼんやりと”見えてくる程度だった。というかセヴェリアンがなぜ色々無茶をしても許されるのかということや、繋がりはあるのにそれが持つ意味がなかなか伝わってこない個々の話や、名剣を一介の拷問者に与える理由など、挙げ出すと枚挙にいとまが無いほどこの小説は描写の説明不足感が強い。しかし何故このような書き方を作者が(さらに言えばセヴェリアンが)していたかということは、4巻において「独裁者」なる存在が登場し、かつていた数々の独裁者の記憶を主人公が受け継ぐことである程度説明が果たされた。ように思う(自信なし)。
    新たな独裁者となったセヴェリアンは新しい太陽を未来において作り出すことを宣言し、これまで歩んできた道のりを振り返り始める――それが本書『新しい太陽の書』のことだったんだよ!!というオチというか大ネタはわかった。つかみ所のないふわふわとした表現や、セヴェリアンの動向と所業が”許されていた”理由、記憶の中でセクラがまるで生きているかのように語りかけてくるわけ。それは玉座に座る者の回想であったからなのだろう。
    このため本書は主人公による隠蔽や自己欺瞞および事実の脚色もあるはずで、その上で権力を持つべき運命にある者の道程がときにファンタジックに、ときにリアリティをもって、あるいは文学的に表現されるため難解もいいところである。主人公の行動原理があいまい、というか分別が無いと感じていたのは彼の中に(中心の人格はセヴェリアンであるものの)何百人もの”独裁者”の記憶が入った状態だからというのもおそらくはあるのだろう。
    斯様にどこまで信頼して読むべきかがわかりづらく、語り方の散文詩的な表現もあいまってほとんど再読が前提で書かれていると言っても過言ではない状態だ。
    うーん、こうして自分の中で咀嚼するために感想を書いていても理解の及んでいない箇所がたくさんあるので、この感想もまたキレが悪いものになっている気がする。

    見方を変えてみよう。主人公は「完全記憶」という能力を持っており、すべてを記憶している。しかし彼の語ることがらは彼によって適当に脚色、あるいは省略されており、その語り口は本書を神話的なものにしている。あらゆる人物がセヴェリアンの中に存在し、彼はいつどのような状況においても過去にいた誰かの記憶を知ることが出来るようになったのだ。それはある意味「本」の在り方に似ていると思う。誰かの物語を閲覧し、自分のなかで読み解き、自分自身もまた誰かに旅の出来事を伝えるため物語を綴る。それはまさしく本の、小説の在り方と言えるのではないだろうか。セヴェリアンは旅を通して一冊の本となったのだ。彼と彼らについて知りたければ、もう一度「拷問者の影」から読み返せばいい。そうすればいつでも会うことができる。再び旅に出ることが出来る。一度目とは違った側面を見つけることももしかしたら可能かもしれない。そんな「本」と「読者」の在り方についてファンタジーとして、SFとして描こうとしたのが新しい太陽の書だったとも言えるのではないだろうか。

  • 期待以上に謎が回収されてかなり気分よく本を閉じれるかと思いきや、最後の数ページで「読めてませんでしたね? 最初から読み直してください」と言われた気持ちに。セヴェリアン、読んでもらいたくて書いたんならどうしてこういう書き方するの? と脱力してしまった。次にこの4冊をゆっくり読み直せるのはいつになるのか。読もうかどうしようか迷っている学生さんは、とりあえず時間があるうちに読んでおきましょう。

    この読み直しはビデオゲームでいえば「裏面」であるようだし、プレイできればそれはとても楽しいと思う。その一方で、小説というよりアドベンチャーゲームを読んだような気持にもなった。好きになれるキャラクターがいればもうちょっとはまれたかも。

  • 無人島にもっていくならこの4巻だろうな・・・頭の中は?だらけだ。セヴェリアンが旅したのは未来であり、過去である。城塞を追放されたときからそれは判っていたみたいだ。鉤爪って結局なんなのか?独裁者(多くの人が取り込まれているがセヴェリアンやセクラはどの位置にいるのだろ?)イナイア老は何人の独裁者に仕えてきたのだろう?この話の中でどのくらいの時が流れたのだろう?面白いとは言えないけど、最後まで読んだのは自慢していいだろ??と思う。それにしても疲れた。記憶が残っているうちに読んだ方が良いのだろうけど、体力なし。

  • なんか、気がついたら終わってた感じ。あれ?終わりなん?みたいな。面白かったのだけど、何が面白かったのかがサッパリ分からん、みたいな感じ。なんとも不思議な読後感だった。4巻まで読了したら感想書こうと思ってたのだけど、ちょっとまだ書けそうにない。解説に従って再読してみようと思う。ちょっと時間をおいてから。

  • 『新しい太陽の書』第4巻。
    ハイ・ファンタジーの世界が一回転してSF世界になる様は圧巻の一言。そしてまた1巻の冒頭に戻りたくなる仕掛けは、E・R・エディスンの『ウロボロス』を思い出した(本作の方がずっと凝ってはいるが)。
    テクストで構築された迷宮をまだ彷徨っているような気がする……。

  • この本を読んだ感じは『失われた時を求めて』を読んだ時の感じと似ています。
    つまり、自己愛に満ち溢れた目立ちたがり屋の支離滅裂な自伝を延々と長い文章で読まされている感じ。そして、わかりにくければ何度も読めと文中でも解説でも書かれていること。

    不完全な部分が多いので、何度読んでも新しい発見と新しい疑問(整合性が見いだせない疑問)が生じてくるのでしょう。
    手を出しちゃったからここまで読んだけど、本当に苦痛な本でした。
    時空のねじれを理由にすれば、とりあえず説明が付くってのもファンタジーだから許されるのかなぁ?

  • まずはシリーズ通して読み終えたことに満足感を覚える。
    次に、これは再読しないことには本当の意味で読み終えたことにはならないのだと気付く。そんな物語。一読してから、改めて1巻を再読するとまた別の物語が見えてくるのだろう。
    ひとまずはセヴェリアンがいかにして“独裁者”の地位についたのかは分かったのですっきりした。なるべくしてなったのだろう、と腑に落ちた気分。

  • 最初の頃の伏線もきちんと回収されていて、素直に感激。緑人の再登場も嬉しい。しかし内容自体は分かった様な分からない様な、面白かったんだけど、今イチ咀嚼しきれてない感じ。大森氏の解説にあるあらすじのように書いてくれれば大変分かり易いのだけど、やっぱりそれじゃあ味がないんだろうなあ。
    しかし再読すれば新たな発見もあるかもしれなく、それはそれで楽しみではある。

  • 2008/12/17購入

  • シリーズ完結編。

    総合して、話が難しくて分からないところがいっぱい。
    3,4巻の方がおもしろかったけれど、とにかく難しい。
    セヴェリアンの女性遍歴物語。という説明が一番納得かもしれない。。。

  • 新しい装丁になって買いなおしてからこっち、なかなか読書スピードがついていってないけど、8月22日には新章が刊行されるどうで…。
    カバーの力って怖い。

    新章のタイトルは「新しい太陽のウールス」。

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著者プロフィール

1931年、アメリカ・ニューヨーク生まれ。兵役に従事後、ヒューストン大学の機械工学科を卒業。1972年から「Plant Engineering」誌の編集に携わり、1984年にフルタイムの作家業に専心するまで勤務。1965年、短篇「The Dead Man」でデビュー。以後、「デス博士の島その他の物語」(1970)「アメリカの七夜」(1978)などの傑作中短篇を次々と発表、70年代最重要・最高のSF作家として活躍する。その華麗な文体、完璧に構築され尽くした物語構成は定評がある。80年代に入り〈新しい太陽の書〉シリーズ(全5部作)を発表、80年代において最も重要なSFファンタジイと賞される。現在まで20冊を越える長篇・10冊以上の短篇集を刊行している。

「2015年 『ウィザードⅡ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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