彷徨える艦隊 旗艦ドーントレス (ハヤカワ文庫 SF キ 6-1)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150116866

作品紹介・あらすじ

救命ポッドの冷凍睡眠から目覚めたギアリー大佐は愕然とした。なんと救出されるまでに百年がたっていたのだ。しかも、わが身を犠牲にして味方を脱出させた軍神にまつりあげられている始末。そんな彼に与えられた任務は、敵の本拠星系に攻めこんだものの大敗し、満身創痍となった艦隊を、司令長官として無事に故郷へと連れ戻すことだった!周囲を埋め尽くす強大な敵艦隊を前に、はたして彼がとった驚くべき奇策とは…。

感想・レビュー・書評

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  • 未来に蘇ったジョン・ギアリー大佐を中心に展開する、ミリタリーSFの彷徨える艦隊シリーズ第1巻です。
    2つの星間人類文明であるアライアンスとシンディックは、終わりの見えない泥沼の戦争を続けています。
    危機的状況のアライアンス艦隊は古戦場で漂う救命ポッドを回収、それには100年前に死亡したと思われていた伝説の“ブラック・ジャック”ことジョン・ギアリーが人工冬眠状態で眠っていました。
    特進による大佐でしたが、英雄視されていたギアリー大佐はアライアンス艦隊士官の多くから崇拝されることになります。
    今まさにシンディックと不利な交渉を行おうとしているアライアンス旗艦ドーントレスで蘇ったギアリーは事の成り行きと不在だった年月に何があったのかの不安で一杯となり、やはり状況は悪化していくのです。
    希望は“ブラック・ジャック”以外に無く、本当は普通の人間であるジョン・ギアリーに託されることになりました。
    多くのジェネレーションギャップに悩まされることになりますが、しかし同時にそれが強みにもなるところに面白みがあります。
    図らずも艦隊司令官となったギアリー率いるアライアンス艦隊を待ち受ける未来とは…。
    2巻にも期待します。

  • 久々に、睡眠時間を削ってしまう面白い話に出会えました。
    壮大な話、シカケに溢れた世界設定、想像をかきたてられる描写、散りばめられた知恵、個性豊かなキャラクターとその掛け合い。著者も凄いけど、訳者もまた素晴らしい。

    これでSFでなかったら、万人にオススメできるんですが(笑

    著者ジャック・キャンベルはなんとアメリカ海軍士官OB。艦隊に関するプロが、今度は宇宙を舞台に艦隊を戦わせる。かと言ってマニアックな表現に囚われず、艦隊に乗り込んだ政治家=軍事の素人に対して説明する形で、しっかり解説。
    とは言え3次元空間で艦隊が動く戦闘シーンは読み飛ばしてると訳わかんなくなります。おかげで今2周目。

    ストーリーはこんな話。
    主人公は自分の指揮していた艦が敵に破壊され、救命ポッドで100年間も冷凍睡眠していた軍人。浦島太郎状態です。
    味方に運良く救出されたものの艦隊は敵の只中。いきなり司令官に呼び出され「敵と交渉してくるから留守頼むわ」と言われて艦隊司令官の権限を移譲される。
    敵と交渉しに行った司令官はアッサリ敵に殺されてしまい、主人公は満身創痍の艦隊を無事に故郷へ連れ戻す重責を背負わされる…。100年寝てたから知り合いはそりゃみんな死んでるし、現役の軍人たちの考えも変わっている。超アウェー戦ださぁどうする?

    インバスケット演習かよ!

    解説によると「危機的状況下での指揮権委譲」というテーマは海洋冒険小説の王道テーマのひとつらしい。
    指揮権を委譲されてからの主人公のふるまい、少しずつ味方の信頼を勝ち得ていく姿は企業のマネジメントに通じるトコもあって、いつの間にか主人公に理想の上司像を重ねてしまうこと請け合いです。

    特に主人公が一人悩むシーンが印象的。
    そしていたずらに強権をふりかざすのでなく、理屈や感情に訴えて人を上手く動かしていく。公然と非難を受けて怒りを感じても、それをあらわにするのではなく、冷静に相手の薄い論拠を指摘して合意を形成していく。
    そして積み重ねる勝利と、仲間からの信頼。
    「もしドラ」読むならこっち読んだ方が面白い。ためにもなる。たぶん!

    ”規則を調べれば必ず、自分のやりたいことを正当化する根拠がみつかる”という言葉を読んで、自分が今やっている、小難しい法律を紐解く仕事にもやり甲斐を見出せたし(笑

    睡眠時間が削られる以外の問題点は、まだこの話、完結していないということ。
    最新刊まで読み終わったら、3周目に入らないと耐えられそうにない!

  • 名作。
    ひたすら耐える主人公にリーダーの辛さを感じる。
    本作の敵の手応えなさすぎる。

  • 冒頭から、いきなり戦闘中のシーン。その中で冷凍睡眠から目覚めた大佐ギアリーは呆然とする。救出ポッドで冷凍冬眠にはいってから100年もたっていたのだ。挙句、完全降伏を迫られている艦隊の指揮を引き継ぐことになった。果たして故郷に帰れるのか!

    なんだか、その昔の「宇宙空母ギャラクティカ」を思い出させるような設定なのですが、作者が海軍に所属していた経験もあり、軍隊という組織の特徴を作中に織り込んでいて、非常に話を盛り上げます。100年もたっているから、なんとなく言葉は通じるけれども、話が通じないというSFならではの面白さがあるかと思えば、相対論的な物理法則による時差が状況をややこしくするという、帆船時代の戦争のようなギャップもあり、なかなか面白いです。

    あんまり、期待しないで読んだのですが、これは続きが楽しみです。
    どのようにリーダーシップをとっていくかで悩む100年前の男ギアリー大佐。ガンバルのだ!

  • 英雄として希望を寄せられる主人公が苦労しながらも活躍します。主人公の立場や苦悩にリアリティがあり、重厚感のあるSFでした!

  • 一世紀に渡りシンディックと戦ってきた同盟軍は大敗を喫した。今やその艦隊は足手まといになり、敵地で足止めを食らっている。同盟軍の唯一の希望は、一世紀に及ぶ冬眠で眠る伝説の提督、ブラック・ジャック・ギアリーに託された・・・というストーリーのミリタリーSFシリーズの第1弾です。

    本書の主人公、ブラック・ジャック・ギアリーが目を覚ますと、そこには総力戦によって引き裂かれた銀河が広がっていた。同盟軍は敵対勢力のシンディックとの果てしない戦いを繰り広げていましたが、罠にはめられ、同盟軍の指揮官は全員殺され、残された艦長たちはゆっくりと、失われた艦隊の指揮を執るべき地位にある唯一の男がギアリー名誉提督であることに気づきます。周囲からの英雄崇拝に愕然としながらも、ギアリーは自分の義務を果たすことに。作者ジャック・キャンベルには、敵地に取り残された船団が戦いに立ち向かうという物語の本書で、銀河系全体を横断する旅に私たちを連れて行ってくれます。

    プロットも、キャラクター設定も、シンプルでユーモアが光る作品でした。たとえば宇宙戦。もともと私はミリタリーSFをそんなには読まないのですが、たまには宇宙戦もいいですね。本書の宇宙戦は、複雑な戦術や艦隊の操縦を見事に描写しており、非常にサスペンスに満ちていて、スター・ウォーズで描かれたものよりも魅力的に思えました。ただこのシリーズの最大の弱点は、その設定です。単体で見ると、スターウォーズやデューン、ハイペリオンなどと比べると、どうしてみ見劣りしてしまう部分があります。2つの対立する派閥のどちらにも深みがなく、どの惑星も魅力的ではありません。とはいえ、このシリーズには可能性があり、キャンベルはそれをどんどん利用していくのですが、序盤のうちはこの設定ゆえに驚くほど面白くないのが難点です。

  • リーダーは、部下に対しての言動に気を遣うことは、この先何百年たとうが、変わりませんね。

  • 26:突然始まったな! というのがしょっぱなの感想。百年を経てコールドスリープから目覚めた主人公視点で進むため、世界観の説明が親切かつ丁寧で、そのあたりは混乱なく読めたのですが、「実はこんな兵器がありました」ネタが多く出てきそうなのが不安です……。面白いのは面白いのですけど、続きはどうしようかなあ?

  • シリーズ第一弾 可もなく不可もなし
    表紙   5点寺田 克也   月岡 小穂訳
    展開   5点2006年著作
    文章   5点
    内容 520点
    合計 535点

  • 地球人は二つの勢力に分かれ100年以上も戦争を続けている。100年前の戦闘で救命ポッドによって冬眠状態だった主人公は、味方艦隊に救われる。しかし、その時味方は敵艦隊に圧倒されていた。首脳陣が全員殺害され、主人公は艦隊を率いることになってしまう。彼には3隻のチームを指揮したことしかなく、100年前の戦いの特別昇進で大佐になっただけというのに…。ところが、彼はすでに伝説の英雄と見なされていた。彼は艦隊を率いて母星に帰還することを目指す。
    神格化した彼に全幅の信頼をよこす者にうんざりし、彼の指揮能力に疑問を持つ者の反発に会い、彼の艦長職務は一筋縄ではいかない。なおかつ、この100年で艦隊としての集団戦法は失われ、各自がてんでばらばらに攻撃するしかできなかった。
    館長としての負託に応え、皆をまとめて帰還することができるか?
    というのが、大体のあらすじ。艦は亜光速で飛行することができ、ワープ航法も手に入れているが、通信系だけは光速を越えられないという制約が話の展開を面白くさせている。
    そして、英雄と素の自分という主人公自身の葛藤と、彼に様々な目を向ける艦長たち。
    単なるスペースオペラではない、複雑な人間ドラマを展開する!

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