火星年代記〈新版〉 (ハヤカワ文庫SF)

  • 早川書房 (2010年7月9日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (402ページ) / ISBN・EAN: 9784150117641

みんなの感想まとめ

異星への移住と人間の心情を描いた短編小説集で、地球から火星へ向かう探検隊の物語が年代ごとに織りなされます。地球人が火星に移住し、時が経つにつれて彼らの生活や心の変化が描かれ、植民地時代の影を感じさせる...

感想・レビュー・書評

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  • 『地球からの三度にわたる探検隊はひとりも戻らなかった。火星人が彼らなりのやり方でもてなしたからだ。』(内容紹介もカッコいいです)
    それでも押し寄せる地球人と地球の常識の埒外にある火星人の物語を年代ごとに短編でつないだお話し。
    難解なSFに疲れた時にこの叙情的なSFは心にしみます。
    ラストの火星人はどこにいるのか?のやり取りも皮肉が効いてて良いです(´▽`)

  • レイ・ブラッドベリで最初に手に取ったのが「とうに夜半を過ぎて」で、それはうまく良さを掴みきれず挫折してしまったのですがこれは面白く読めました。
    著者はこの作品がSFと言われるのは疑問だと序文で書いているとおり、火星を舞台にした哲学的なファンタジーと言われるとこの小説の雰囲気にしっくりくる。
    でもこの幻想的で詩的な中に人間のリアリティがしっかりとある。宇宙旅行が自由になり人間たちは火星へそれぞれ色々な目的で旅行や移住するようになる。その結果、火星の元からあった文明はすべて破壊され、さらに地球では核戦争が起こり火星も地球をも壊してしまうという人間の悲しい罪深さが描かれている。
    この小説の核となる7章目の「月は今でも明るいが」はとてもメッセージ性が強く心に残る話だった。
    話の中で火星人が、「なぜ生きるのか」という疑問について“考えても答えが得られず、忘れることにした。動物は生に疑問を持ったりしない。生きている理由が生そのものであり、生そのものが答えである。”とあって、私の中で何か腑に落ちた感じがする。

    小説の中で、 夏、夜、月、シェリー酒という単語がとても多く出てくる。著者の好きなものなんだろうな

    「パパはね、地球人の倫理や、常識や、良い政治や、平和や、責任というものを探していたんだよ」
    「それ、みんな地球にあったの?」
    「いや、見つからなかった。もう、地球には、そんなものはなくなってしまったんだ。たぶん、二度と、地球には現れないだろうよ。あるなんて思っていたのが、馬鹿げていたのかもしれないな」

    ブラッドベリの小説を何作か読んで思ったのは詩的な表現が多すぎてストーリーの輪郭がぼやけていること。恐らく原文では意味が二重にかかっていたり韻を踏んでいそうなところが多々あり、翻訳がかかると良さが活かしきれていないんじゃないかと思う。全ての翻訳小説にはそのデメリットがあると思うが、ブラッドベリの場合は特にそんな風に感じる。
    それを味わいと受け取れるか、分かりにくくて読みづらいと受け取るか。私自身何作かは読みづらくて挫折したものもあるけどこの作品はまた読み返したいと思える比較的初心者にも親しみやすい作品だと思う。

  • 各種SF小説オールタイムベストに必ず上がってくる必読書。
    「年代記」と銘打っているものの、火星に関わる歴史的変遷が教科書のように淡々と書き記されている、みたいな先入観は大きな間違いでした。
    各話の中心になっているのは政治家でも歴史的な英雄でもなく、市井の人々。彼らの個人的体験を積み重ねていく中で人類による火星への移住のドタバタとその顛末を浮き彫りにしていきます。
    2026年においては、ちょっと検索すれば火星の地上映像に触れることができ、われわれはもはやそこに火星人の作った古代の都市や運河がない現実を知っているけれど、その差異を補って余りある豊かな想像力と詩的イメージに溢れた作品だといっても過言ではないと思います。
    「長の年月」が良かった。第四次探検隊のメンバーが家族とともに火星に取り残され20年の月日を生き延びた末、かつての隊長と再会するのだけれども…。誰もいなくなった火星の寂寥感と、そこに取り残された人間の孤独が涙を誘いました。
    これはまた再読しなくてはいけない小説で、そう思える作品というのは実際そう多くはありません。

  • 1950年作品
    代表作
    13つの短編と短い詩的な散文形式

    何年にも渡る火星の様子を描いている
    大筋は、地球人が火星へ行く
    何かがあり地球人は帰還しない
    何年か後に地球人が火星へ移住する
    この辺りは植民地時代を彷彿させている
    さらに何年後、ある家族が火星で生活をスタートさせる

    こんな感じで基本楽しいのだが、発想が飛躍しすぎて、よくわからなく結構疲れた
    最後は結論はなくふわっとしていた
    ブラッドベリあるあるの終わり方

    まえがきを読むと、ブラッドベリの懸念していることが反映されているそうだ
    モラルの問題や科学技術は人類を絶滅させ、惑星を破壊してしまうという考えだ
    現代でも同様に感じる

    地球の温暖化をゆるやかにできるのだろうか?
    火星に移住する施設が、果たして作れるのだろうか?
    地球人の課題だ

  • 火星への移住を試み、実際に移住し、最終的に手放すまでの時代を生きた人達の心情に寄り添ったオムニバスストーリー。なんですが、本作の火星は呼吸もでき、地球からの物資持ち込みも容易な設定なので(設定というよりは当時はそういう場所として想像されていたんだと思いますが)、当時の欧米から見た、地球上にある未開の地との交流といった体で読んだ方が楽しめるかもしれません。

    どれも詩的な表現に富んだ素晴らしい短編ばかりでしたが、中でもお気に入りは「第二のアッシャー邸」「火星の人」「長の年月」の3編。特に「火星の人」は居なくなった人を求める人間の心情を繊細に描きながら、ラストの「かんぬきをかけた」という言葉で締める表現があまりに綺麗で、そのやるせなさに心が震えました。

  • 「とやかくいわないでください。知りたいとは思いませんから」って、この本の冒頭の作者自身のけっこう長い“まえがき”。

    自分的には“童話的SF”または“SF的童話”なんだけど。

    確かに、グリムもアンデルセンも擬人化してるんだから、火星を地球化したからといって“サイエンス・フィクション”であるかどうかが議論されることは、ナンセンスだよねって、思うし。

    それにしても、長めも短め(たった1ページのもある)もごちゃごちゃなんだけど、なんとなく時系列であることがわかり、且つ、つながっているんだなぁって、感じる。
    前半の火星人とのやりとりも良いけど、特に、この短編集のなかではやや長めの「月は今でも明るいが」と「長の年月」、ラストの「100万年ピクニック」で、しっかりとメッセージもあって、やっぱり「ブラッドベリ的」に面白かった。

    満足です。

  • 物語は2030年1月からはじまる。あらましを序盤、中盤、終盤にわけるなら、序盤はおもに火星人の視点での叙述となる。地球人の訪問と火星人の抵抗。中盤から視点は地球人に移り、ついに彼らの入植が完了する。そして終盤はふたたび火星人の、かつては地球人だった火星人の視点に戻る。およそ27年にわたる赤い星の記録である。

    序盤に関して、とかく2031年4月の叙述は、著者のもつ主要なテーマでもあるようだ。未来と過去の交代、奇妙なノスタルジア、動いているのに止まった時間。悲壮感と一種のエクスタシーに満ちた詩のように。

    中盤以降、頁をめくる指の動きが早まる。先へ次へ!きっかけは2033年2月の叙述である。地球からの移住者たちがまるでいなごの大群のように火星におしよせる。このあたりから、登場人物は増え火星はにわかに賑やかになる。しかしそれに反比例して、なにやら虚無感が強まる。新しく次々に生まれ出でる入植者の町、しかし傍にはつねに火星人の町、もはや誰も息をしない死んだ町がある。それはまるで、新たな町の行く末を予言するかのように。文明とはなんだろうか。人間の行いとはなんだろうか。それはどんな価値があるだろうか。どんな意味があるだろうか。そう問うかのように。ここで著者の端書きにある「エジプトのどこかに火星」が思い出される。彼の着想にある光景とはまさに、この膨張する虚無感ではなかろうか。新たにできては消える生きた現在と、圧倒的な現実感をもって佇む死んだ過去。
    途中の「第二のアッシャー邸」は、全体の流れのなかではすこし趣が異なるが、ポーのファンとしてはなかなか楽しめる。

    最終局面のはじまりは、2036年11月の叙述、「地球を見守る人たち」である。地球では戦争が勃発する。母なる地球が燃えるのをみた移住者たちの耳に「帰リキタレ」と電報がこだまする。そして12月の叙述、「沈黙の町」で予言は完遂する。個人的にはこの1話がもっとも印象深い。誰もいない町に突如鳴り響く黒電話ーここでもノスタルジアが物語をより高次の芸術に昇華する。

    そして最後の叙述、2057年10月。地球の戦火から命辛々逃れてきた家族が、新たな神話をつくる。かれらはアダムとイヴであり、アブラハムとサラであるだろう。地球人ではなく火星人の。著者は『火星年代記』という神話を編んだ。未来の入り口は過去とつながった。

    はじめから読んでも楽しめるが、気になる1話から頁を進めても本作のもつ魅力は褪せないだろう。SFだけれど叙事詩のような、壮大な物語であった。

  • レイ・ブラッドベリ(1920~2012年)は、米イリノイ州生まれ、高校卒業後に新聞の販売をしていたときに書いた作品(共作)でプロ作家となったが、1950年の『火星年代記』で名声を得、1953年に代表作『華氏451度』を発表した。作品にはファンタジックな雰囲気の短編集が多く、幻想作家として不動の地位を築いた。
    『火星年代記』は、米国のSF関連雑誌「ウィアード・テイルズ」等に発表された短編群に、書き下ろし作品を加えた、26の独立した短編を連ねて一つの長編とした作品である。年代記の題名の通り、1950年出版のものは、個々の短編に1999年1月から2026年10月までの年月が付され、その順の構成になっていたが、1997年に発表された改訂版では、前書きを新たに書き下ろし、いくつかの短編を入れ替えた上で、全ての短編を31年遅らせて2030年1月から2057年10月の年月が付されている。
    大まかなストーリーは以下である。
    火星には既に火星人が文明を築いており、地球から派遣された当初の調査隊は全滅させられてしまうが、第4次調査隊が到着したときには、火星人は地球人が持ち込んだ感染症で絶滅していた。その後、地球人は続々と移住していくが、彼らは過去の火星人の文明には全く関心を示さず、地球・アメリカと同じ街を作り、同じ生活を送った。一方、地球では核戦争が勃発し、それを火星から眺めていた人々は、大半が地球に戻り、ほんの一部が火星に残ったが、地球は滅亡し、火星に残った人々も消滅する。そうした中で、僅か二つの家族だけが地球を脱出することに成功し、誰もいなくなった火星で、新たな火星人としての一歩を踏み出す。
    私は最近まで、いわゆるSF(&ファンタジー)はほとんど読まなかったが(ディストピア小説でもある『華氏451度』は随分前に読んだ)、最近、有名な作品はひと通り触れておこうと思い立ち、『星を継ぐもの』、『渚にて』、『火星の人』、『あなたの人生の物語』等を読み、本書もその流れで手に取った。
    それらを次々に読んでみてわかるのは(今さらだが)、一口にSFと言っても様々な作風があることだが、本書は、科学的根拠を重視するハードSFとは一線を画す、メッセージ性が強い寓話的な作品である。
    ストーリー全体を、地球を旧世界(ヨーロッパのような)に、火星を新世界(アメリカのような)に置き換えて読めば、人類(主として西洋人)の歴史と現状を強烈に風刺しており、更に、我々の未来に強い警鐘を鳴らしていることは明らかなのだ。
    本書が書かれたのは第二次世界大戦直後で、それから既に70年以上が過ぎている。しかし、今読んでも古さは感じられないのだが、それは、裏を返せば、70年を経てなお人間も社会も文明も大きくは変わっておらず、本書のメッセージが引き続き有効だということなのだ。我々は滅亡・消滅を免れることができるのか(或いは、我々が「新たな火星人」になることができるのか)、今一度考えるきっかけにしたい作品と思う。
    (2024年6月了)

  • 好みは別れるかも 読み応えはじわじわと、好きな人は好きでしょう
    ドタバタアクションSFでは無いのであしからず
    4に近い3!

  • 追悼ブラッドベリ第2弾。

    夏の朝の匂いをかぐと読みたくなるのが「たんぽぽのお酒」ですが、この夏は本書を新訳版で読み返すことに。

    50年代の作品ですが、今なお失われないその輝きに脱帽です。SFではないですねこれは。幻想小説としかいいようのない味わい。見知らぬ土地を見知らぬままでほおって置けず、これまでの景色と同じにしてしまう人間の浅はかさを描いているかと思えば、「第二のアッシャー亭」のようなホラーへの愛着を示すパロディーもあります。

    でも、全体を通じて感じられるのは、滅んでしまったもの、失われたのも、滅びゆくもの、失われてゆくものへの眼差し。郷愁を誘うというより、もう少し冷たく残酷な感じが強く、胸が苦しくなります。

    火星人とすれ違う「夜の邂逅」がやっぱり印象的ですが、「長の年月」も今回は心に残りました。歳とともに響く部分が違ってきますね。

  • ・あらすじ
    2030年代の火星に地球から探検隊がやってくる。
    地球からの移住者、火星人たちの文明と滅亡が書かれた火星が舞台の短編オムニバス小説。

    ・感想
    海外SF小説が好きなYouTuberさんがレイブラッドベリを紹介した動画をみて興味を惹かれ購入。
    超超有名なディストピア小説「華氏451度」はずっと読んでみたいと思いつつ未読なんだけど、この作品から読んでみようと思い手に取った。

    あまり事前情報を仕入れずに読み始めたので「詩的な文章」という私がもっとも苦手とする表現が多く、抽象的というか想像力が必要な作品で序盤は雰囲気を掴むのにちょっと手こずってしまった。
    でも「第3探検隊」からの「月は今でも明るいが」が良すぎて、そこからはブラッドベリの魅力を堪能しながら読むことができた。

    特に「月は今でも明るいが」がよかったなーー。
    「生きるとは」「なぜ生きているのか」という思春期に誰しもが持つ純粋で普遍的、根源的な哲学的な問いと火星人たちの結論。
    科学と宗教と芸術の哲学が生活にどのように染み渡っているか〜的な解釈が好きだった。
    物質至上主義の地球人と、執着や即物的な欲望から肉体を捨て去ることで脱却し精神世界に全振りすることで解き放たれた火星人の対比。
    先住民族の文明・文化を壊し開拓する人間の傲慢さも描かれてるけど、そういう性質は何年経っても変わらないものなんだな。

    のちに第3探検隊の面子が出て来た時と彼らの行く末も退廃的で好き。
    最後の短編「百万年ピクニック」が綺麗にこの作品を締めくくってて良かった。

  •  火星を舞台にした短編をオムニバス調に書き上げた連作。

     不思議さという点では『夜の邂逅』が印象的。言葉ではうまく書き表せないのですが、幻想的で登場人物の言葉にもあるのですが、不思議な夢を見たような感覚もありました。

    『火の玉』も幻想性では負けていません。話は宗教のあるアメリカ的な感じだったのですが、それでもどこかいいなあ、と思ってしまう短編でした。

    『沈黙の街』はこの作品群の中ではユーモアあふれる語り口でいい意味で浮いていて印象的でした。

    『百万年のピクニック』は状況こそ絶望的であるものの、登場人物たちに悲壮感は感じず、希望の感じられる短編でした。

     幕間的にはさまれる1~2ページほどの章がいくつもあるのですが、その文章がどれも詩的なイメージに満ち溢れていて、文章に酔ってしまうような感じを受けました。ブラッドベリの文章はいい、ということは知っていたのですが、ようやくその意味が分かった気がします。各短編それぞれ幻想色があふれていて素晴らしいのですが、それが一つの年代記としてまとめられているところがまた「火星」という場所の不思議なイメージを増幅させてくれているような気がします。

    作中でも火星に地球人が住む時代まで描かれるのですが、その一方で火星の本当の姿というものは書かれていないような印象を受けました。

     今後現実社会でも宇宙開発が進んで、火星を含む宇宙に人が住む時代が来ても、この本がある限り僕は宇宙の惑星に対し、神秘的なイメージを持ち続けるのだろうな、と思います。

  • いろいろ寄り道しながらも、ここ最近でいちばん夢中になれた本。
    ラストが
    ラストが!
    なーるーほーどー!
    手法としてはもう在り来りなのかもしれないけど、怖〜。

    最初は、謎系のSF感がとても面白くて読ませます。星新一さんみたいに。

    なかなか火星から地球に帰ってこない地球人。だのに、翌月も、また夏にも、地球人たちは火星目指してやって来て…
    メンタルを損なわれそうなファンタジーが少しずつ短編として連なっていく。

    途中私には難解になったり、すごく腑におちたり、バイロン卿の詩が現れたり。。

    神父たちが、火星には新しい罪があるのではないかと、ロケットにのっていってしまうという…シュールで詩的な画が浮かぶ、2033年11月「火の玉」は、急に面白くて、なんなんだろう??
    解説を読むと、新版でいくつか短編が差し替えられたりしているそうなので、あとで納得できたけれど。

    2036年の、「第2のアッシャー邸」も怖くて面白かった。アッシャー邸を作ったのは、スタンダール氏、
    地球人の政治が本を焼き、「むかしむかし は、二度とこんなことは起こらない になってしまった!」と地球の社会学社たち、有名な人物たちを第2のアッシャー邸に招待して…

    狂った地球人のせいで、火星人もだんだん絶滅していく。。

    時々訳が分からなくなると、「たんぽぽのお酒」を開いて自分を励ましながら、
    怖く、面白く、読み耽りました。
    地球は、核戦争により自滅する!

    SFって、本当に予言に満ちているんですね。

  • 西暦2029年夏、地球に最も近い二つの月をもつ惑星・火星探検に向けて、新天地の夢を託したアメリカ合衆国のロケットが地球を飛び立ちますが・・・。鬼才【レイ・ブラットベリ】のオムニバス形式による26の挿話で構成された『火星年代記』は、痛烈な文明批判を芳醇な文学の香りで包み込んだ壮大なSF作品です。とどまることのない人間の野望と征服欲、途絶えることのない戦争、破壊と創造を繰り返す文明の歴史を〝地球〟と〝火星〟を舞台に展開されるエピソ-ドは、哀しいまでに人間の愚かしさを感じさせる作品です。

  • 1999年から31年後にされたそう。2030年からたった27年で地球も火星も滅んでしまう悲しい物語。

  • 中盤中だるみして読み進めるのに苦労しましたが、前半、後半は急展開に一気に読み進めました。 中でも火の玉、優しく雨ぞ降りしき が好きです。
    SFではなくSF要素のあるファンタジー叙事詩というか連作叙事詩という感じです。時系列にしてたった30年弱……個人的にはある星を支配する種族が入れ替わるには非常に短く感じました。なんとなく物悲しい、それでいて人の営みを傍観しているような、盛者必衰、諸行無常といった言葉がぴたりとあてはまるような、そんな感じがしました。

  • ブラッドベリーを知ったのは、萩尾望都さんのマンガだった。以来というか、つまり高校から大学の時分、次々にブラッドベリーの短編を読み耽り、詩的で美しい文章に魅了されたのだった。

    さて、本書。火星を舞台に様々な物語が展開する。時に心のなかで一番防御の弱いところをしっかり掴んで、甘酸っぱくて、残酷な話を聞かせる。もしかしたら、ブラッドベリーってワルイ人なのかも?
    その他、純粋な信仰の姿を描いた話、ポーのような異常でグロテスクな話などなど…。

    昔、神父と鞄屋の3ページの会話に泣きそうになったが、30数年振りの再読は結構冷静。なにしろ読み返す必要もないぐらい良く覚えている。それでもジーンと感じてしまう処は多かった。

    昔、ユリイカのブラッドベリー特集で、火星とは新世界アメリカの比喩とあって驚きつつ、納得した。そんなことも何度も頭に去来した。実際、技術的占有権があるからと判ったような判らない理屈でアメリカしか出てこない。そのアメリカも何故か、ニューヨークやLAじゃなく、ブラドベリの馴染みの田舎ばかり。それに気付いて読むと感想もかなり変わってくる。

    SFとは云い難いが、そんなこと拘らず、読み耽って戴きたい。

  • 2024年12月26日、メルカリでいいねしてたのが値下げされた通知がきて。たぶん手塚治虫とかイーロン・マスクとかに影響したSFを調べた時にサイトに書いてあったんだと思う。

  • ブラッドベリ初読みでした〜。

    地球から火星への植民という、作品全体を貫くひとつの設定。それを繰り広げられるSF連作短編集。
    いちおうSFだけれど、人間模様や風景の描き方がかなり幻想的で詩的で叙情的。幻想小説といった方がしっくり来る。

    火星人も出てくるのだけれど、そのイメージが序盤と終盤ではけっこう違う。後半では火星人は、エルフや何か人外の架空生物のよう。
    年代を追うごとに火星や地球人を取り巻く状況が変化してゆくので、続きが気になりつい読んじゃう。

    【ネタバレあり】
    全体の大きな破滅の中にも一縷の希望があるという終わり方が『華氏451度』を彷彿とさせる。といっても、原作は未読で映画だけ観て抱いた印象なので、積んである原作も読みたい!

    時代とともに改変されたとのことなので、旧版もいつか読みたい(別宅にある)。元は1999年から始まる設定だったらしい。時代が作品を追い越してしまうというのはSF作品の宿命だよなあと思う。どれくらい先を「未来」と考えるか、だね。

    途中で聖職者が出てくるのが、いかにもアメリカSFという印象。SFは私は原作を読んだ数より映像作品を観た数の方が多いんだけど、必ず神父さんや牧師さんが出てきて、未知の現象への彼らの解釈を拠り所にする人々が描かれるよね。日本に置き換えてみると坊さんとか神主さん的存在なんだよなと思うと不思議な気がしちゃうよね。

    噂に違わぬ詩的で叙情的な世界観でした〜。もっと読みたい!!次はやっぱり『華氏451度』かなあ

  • 地球の人間が火星を訪れ、人間のための世界を作り、去っていく経過を描いた連作短編集。そしてブラッドベリやっぱりすごい、登場人物は皆生き生きと動き回り、情景がくっきり浮かんでくる語り口。時にファンタジー、時にホラー、時にコメディ。滑稽であったり、無常感を纏っていたり、とにかく生々しく感情の色々な部分を揺さぶってくる短編の数々。
    特に良かったのは穏やかな夏の夜を楽しむ火星人たちが人間の到来を知らずの間に知覚してしまう『夏の夜』、火星に到着した探検隊の夜を描く『月は今でも明るいが』、大焚書であらゆる本が焼かれた地球を抜け出してきた男が、火星にポーの作品に出てくる陰鬱な館をこしらえる『第二のアッシャー邸』、老夫婦のもとに地球で死んだはずの息子が現れる『火星の人』。あと傑作集に収録されていた『優しく雨ぞ降りしきる』もやっぱり好きでした。でも実際のところ、全編良かったです。良かった。

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著者プロフィール

1920年、アメリカ、イリノイ州生まれ。少年時代から魔術や芝居、コミックの世界に夢中になる。のちに、SFや幻想的手法をつかった短篇を次々に発表し、世界中の読者を魅了する。米国ナショナルブックアウォード(2000年)ほか多くの栄誉ある文芸賞を受賞。2012年他界。主な作品に『火星年代記』『華氏451度』『たんぽぽのお酒』『何かが道をやってくる』など。

「2015年 『たんぽぽのお酒 戯曲版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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