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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150117764

作品紹介・あらすじ

男はいつもと違う色の天井の下で目覚めた。ここはウィネトカか?それとも…。人生を飛び飛びに生きる男女の奇妙な愛を描いた、SF史上に残る恋愛時間SFの表題作。ヒューゴー賞/ネビュラ賞/星雲賞の三冠を獲得した、テッド・チャンのアラビアン・ナイトとハードSFを融合させた書籍初収録作、時間に囚われた究極の愛の形を描いたプリーストの名作ほか、永遠の叙情を残す傑作全13篇を収めた時間SFのショウケース。

感想・レビュー・書評

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  • 時間SFだけを集めた短編集。"SFマガジン創刊50周年記念"という事で、1940年代から2000年代まで、様々なパターンの作品がバランスよく選出されている。

    何と言っても白眉は、巻頭を飾るテッド•チャン作「商人と錬金術師の門」。アラビアンナイト風の語り口で摩訶不思議なタイムマシンを描いた傑作です!
    過去への旅を描く限り、タイムパラドックスは避けようが無いとは思います。しかし、この作品では"並行世界"に陥る事なく、主人公が過去を変えることは出来ないけれども、"より深く理解する姿"を見せてくれます。この一作だけでも読む価値があり、お薦めです!

  • SFというジャンルは印象に残るタイトルが多くある印象で、特にこのアンソロジーに収録されている『去りにし日々の光』、『ここがウィネトカなら、きみはジュディ』の二編はいつか読みたいと思っていた。前者は登場する夫妻の冷え切っていた関係がどのように変化していくのだろうかと想像したくなる終わり方で、スローガラスというガジェットが登場する著者の他の作品も読みたくなった。後者はジュディがヒロインではないということと、ウィネトカは響きからてっきり造語だとずっと思っていたが、シカゴの一都市であるということが意外だった。

    一冊で二度おいしいと思っていたが、上記の二作以外にも『商人と錬金術師の門』、『いまひとたびの』、『12:01 PM』など様々な時間ネタで楽しむことができた。スタージョンはこれまで読んでいなかったので、これを機に手を出してみようかと思う。

    『時の鳥』では行き先の時代に溶け込むために、睡眠学習で古代エジプトの知識を詰め込む描写があった。大好きなオックスフォード大学史学部シリーズにも似た装置が登場するが、物語の中で最も実現してほしいと思うもののひとつだと思うのは私だけだろうか?

  • 確かに私たちには「時間SF」に心惹かれる遺伝子がある。

    「時をかける少女」の切ない想い
    「戦国自衛隊」の覚悟
    「ドラえもん」の夢

    「スターウォーズ」のようなスペースオペラもいいけど、やっぱりタイムトラベルものなどはSFと意識せずにすんなり読んでしまう。
    いつも時間に追われた現代人の心には、「時間』というものに対する「恐れ」と「望み」が同居していて「あるかも……」って感じやすいのかも。

    そんな「時間SFアンソロジー」

    今回はどれも個性溢れて面白かったが、中でも「限りなき夏 An Infinite Sumer」は名作だ。

  • 時間ものSF作品集。「時の娘」に比べると、ロマンスよりSFそのものの要素が強く、感動的だったり笑ったり謎だったりと読後感もさまざまでした。
    各作品の着想もすごいと思うけれど、ページ数の限られる短編で、その作品の設定(同じ日を何万年も繰り返すとか、時と共に舞台も移動していくとか)を明解に、味気なく感じることなく読み手に理解させる、その描き方に感激しました。設定を理解することが作品そのものになっている場合もあるし、先に設定を明らかにした上でその条件のもとに起こる出来事を楽しむ場合もあるし。
    しかし単なる恋愛ものは心から共感できるものが少なく、SF要素だけだと感動するまで理解できず、でもその二つが重なるとなんでこんなに熱を込めて読めるのか。悲恋で終わることが多いから…ではないと自分の嗜好を信じたいです。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「でもその二つが重なると」
      何となく判るなぁ、、、
      このアンソロジーではチャンの「商人と錬金術師の門」が無茶苦茶好きです。。。
      「でもその二つが重なると」
      何となく判るなぁ、、、
      このアンソロジーではチャンの「商人と錬金術師の門」が無茶苦茶好きです。。。
      2014/04/01
  • 大森望編、傑作時間SFアンソロジーの本書は、以下13編を収録。アンソロジー系は初読。多くの作家を楽しめるのは有り難し。なんとも豪華な振る舞いですな。

    ・商人と錬金術師の門 テッド・チャン
    ・限りなき夏 クリストファー・プリースト
    ・彼らの生涯の最愛の時 イアン・ワトスン&ロベルト・クアリア
    ・去りにし日々の光 ボブ・ショウ
    ・時の鳥 ジョージ・アレック・エフィンジャー
    ・世界の終りを見にいったとき ロバート・シルヴァーバーグ
    ・昨日は月曜日だった シオドア・スタージョン
    ・旅人の憩い デイヴィッド・I・マッスン
    ・いまひとたびの H・ビーム・パイパー
    ・12:01PM リチャード・A・ルポフ
    ・しばし天の祝福より遠ざかり…… ソムトウ・スチャリトクル
    ・夕方、はやく イアン・ワトスン
    ・ここがウィネトカなら、きみはジュディ F・M・バズビイ

    まず特筆すべきは、いまや飛ぶ鳥を落とす勢いのテッド・チャン(とはいえ寡作だが…)の邦訳書初収録『商人と錬金術師の門(ヒューゴー賞、ネビュラ賞、星雲賞受賞)』だろう。
    内容は、弩ストレートなロマンス。しかし物語の巧みな運び方と慈愛に満ちた締め方は、ありきたりな物語とは一線を画しており、王道作品の素晴らしさを改めて感じられる傑作でした。

    「時間SFは日本人に好まれるサブジャンルなのである。」との大森望の見解のとおり、僕もまた時間SFが大好きです。
    しかし振り返ってみると、これもまた大森望が「時間SFにはロマンスがよく似合う」と解説するように、記憶に残る時間SFものは(小説に限らず)、ロマンスを主題におく作品が多かった。
    そんななか本書では、もちろん時間ロマンスを含み、奇想篇、時間ループ篇の3つのパートにわかれており、一風変わった作品に多く出会うことができた。
    とりわけ奇想篇における『世界の終りを見にいったとき』と『昨日は月曜日だった』は、フレドリック・ブラウンの破天荒なショートショートのように、奇想天外な内容で、バカSFという褒め言葉がよく似合う。
    また、『旅人の憩い』では、場所によって流れる時間が異なる世界が舞台。同様の設定では、小林泰三が見事なラブ・ロマンスに仕立てあげているが、この作品では一変して、終盤で示唆される容赦のない真実が印象的。

    その他、お気に入りは『去りにし日々の光』と表題作。
    前者では、光が通り抜けるのに時間がかかるため、過ぎ去った日々の光景をその向こうに見ることができる”スローガラス”なるものが登場。この物語での時間SF要素はそれだけで、これ自身はロマンスに何の影響も及ぼしません。しかし、このアイテムがきっかけで倦怠期の夫婦の心に僅かな揺れを引き起こすことになり、その様相が、とても味があって記憶に留まります。
    表題作は、本書のトリを飾るだけあって、時間SFの良い部分が詰まっています。読んでよかった、時間SFってやっぱり素晴らしいジャンルだなぁと思える名著です。

    最初に記したけど、アンソロジーっていいですなぁ。とりあえずこのシリーズ(SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)に手をつけてみようか…!

  • 再読だったけど「商人と錬金術師の門」と「旅人の憩い」はやはりすごい、傑作。いつの間にかアンソロジー読んでもほぼ読んだことある作家さんだらけになってきた

  • 時間旅行を「千夜一夜物語」風に描いた「商人と錬金術師の門」は、テッド・チャンの評判が高いわけだと感心した。これ以外で面白かったのは、編者があとがきで「未来が(文字どおり)つくられている現場の舞台裏を描く」「バカSF」と紹介しているシオドア・スタージョンの「昨日は月曜日だった」と、同じく編者があとがきで「北から南へ向かうにつれて時間の流れる速度が遅くなる世界を超高密度な文体で描く」と紹介しているが、実は逆ではなかろうかと思ったデイヴィッド・I・マッスンの「旅人の憩い」と、何百年もの歴史が毎日反復される世界を描いたイアン・ワトスンの「夕方、はやく」と、主人公だけが記憶を保ったまま同じ1時間が何度も繰り返されるリチャード・A・ルポフの「12:01PM」の4作。クリストファー・プリーストの「限りなき夏」は、扉裏の解題によれば著者みずから「ロマンティックな小説」と語っていたらしいが、読んでも悲しいだけだった。イアン・ワトスンとロベルト・クアリアの「彼らの生涯の最愛の時」は、お互いに腹上死する話と言ってはあんまりか。ボブ・ショウの「去りにし日々の光」の扉裏の解題で、スロー・ガラスを扱った短篇をまとめた連作集としてサンリオSF文庫の「去りにし日々、今ひとたびの幻」が紹介されていて、ほかに読むすべはないのかと残念に思った。それにしても、時間の経過とは恐ろしい。「去りにし日々、今ひとたびの幻」は今も手元にあるくらい気に入っているのに、ここ何年も読んでいなかったので、「去りにし日々の光」の結末が最後まで読んでも思い出せなかった。ジョージ・アレックス・エフィンジャーの「時の鳥」(「SFマガジン」1987年5月号)も、「昨日は月曜日だった」(同1984年7月号)も、ソムトウ・スチャリトクルの「しばし天の祝福より遠ざかり……」(同1983年9月号)も、F・M・バズビイの表題作(同1982年2月号)も、雑誌掲載時に読んだはずだし、スチャリトクルとバズビイに至っては、伊藤典夫・浅倉久志編「タイム・トラベラー―時間SFコレクション」(新潮文庫)でも読んだはずなのに、すっかり忘れていた。表題作の題名に聞き覚えがあるのは、そういうわけだったのか。

  • 大森望の編により「時間ロマンス篇」「奇想篇」「時間ループ篇」加えてエピローグとして1篇が収められた全13篇の時間SF短篇集。テッド・チャンの「商人と錬金術師の門」が国内で初めて書籍化された1冊でもある。(現在はテッド・チャン『息吹』にも収録されている)

    地理的な条件によって時間の流れの速さがかわってしまう世界を描いた「旅人の憩い」(マッスン)。人類の文明、その黎明から現代までが、たったの1日でリプレイされ、しかもそれが毎日繰り返されるという「夕方、はやく」(ワトスン)。ランダムにカットバックされた人生を生きる人間の悲哀と挑戦を描いた表題作「ここがウィネトカなら、きみはジュディ」(バズビイ)など、突飛な発想と、それを物語に仕立てる論理の冴えが面白い短篇が並ぶ。

    「商人と錬金術師の門」の余韻はいつ読んでも美しく沁み、「昨日は月曜日だった」(スタージョン)については、ふざけた設定ながら台詞回しが格好良く、にやりとさせられた。
    各篇の質が高く、またバリエーションにも富む豪華な一冊。

  • 1編ずつ何日もかけて読んだので、タイトル見てもあらすじが思い出せないのがあるのですが、ちらと本文を数行読めばすぐにどんな話だったか思い出せる、密度の濃いアンソロジー。

    表題作はジュディがヒロインではないことにびっくりしました。
    ジュディに逢いたいという話だと(勝手に)思ってたので。

    読んだことある作品は0。
    読んだことある作家はテッド・チャンだけ。
    名前知ってるだけもシオドア・スタージョンだけ。
    という手を出すのはかなりのチャレンジだったのですが楽しめました。
    しかし作家名を覚えられそうにはない……

    装画 / 瀬戸 羽方
    装幀 / 岩郷 重力+WONDER WORKZ。

  • 時間SF短編が13も!スキップ・ターン・リセット・と考え付く限りのあらゆるパターンで盛りだくさん。光が通るのに時間がかかるガラス(10年もの有りマス)は面白い発想、ターンも1時間から700万年までと幅広い。「時の娘」のようにロマンスに拘ってはいないが、ロマンス物がやっぱりいい。「タイムトラベラー」をNHKで浅野真弓主演で放送していた頃から【時間SFにちょっとロマンス】が大好きなんです。短編だからしょうがないけど感情移入する前に終わってしまうのが残念、「ここがウィネトカなら~」は題名が素敵、エンディングも綺麗、言うことなしです。

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