- Amazon.co.jp ・本 (526ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150118358
作品紹介・あらすじ
ふたつの都市国家"ベジェル"と"ウル・コーマ"は、欧州において地理的にほぼ同じ位置を占めるモザイク状に組み合わさった特殊な領土を有していた。ベジェル警察のティアドール・ボルル警部補は、二国間で起こった不可解な殺人事件を追ううちに、封印された歴史に足を踏み入れていく…。ディック‐カフカ的異世界を構築し、ヒューゴー賞、世界幻想文学大賞をはじめ、SF/ファンタジイ主要各賞を独占した驚愕の小説。
感想・レビュー・書評
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SF/ファンタジーの各賞を独占した話題作。
「このミステリーがすごい!2013年版」でも7位になっていたので、読みました。
二つの都市国家ベジェルとウル・コーマは欧州のほぼ同じ地域にある。
クロスハッチというモザイク状に交錯している部分もあり、かってのベルリンのように壁があるわけではない。
目の前で何が起きていても、国境の外は見ないことになっていて、境界侵犯は犯罪なのだ。
<ブリーチ>という行為とみなされると、どこからともなく<ブリーチ>が現れ、違反者を連れ去ってしまう。
ベジェルの空き地で、女性の死体が発見される。
ベジェル警察のティアドール・ボルル警部補は、二国間にまたがる不可解な事情に気づき始める。
最初は事件を<ブリーチ>に任せるしかないと考えるが、被害者マハリアがアメリカ人とわかり、両親もやってくる。
この二つの国に来る観光客もいるが、入国前には念入りな講義を受けさせられる。この国で生まれれば8歳になる頃には身についていることを覚えなければ、見物も出来ないのだ。
マハリアがウル・コーマの考古学発掘現場にいた学生とわかり、ボルルはウル・コーマに赴く。
許可を得て、コピュラ・ホールという巨大な建物にある公式のルートを通れば、境界侵犯にはならないのだ。
ウル・コーマの上級刑事ダットと捜査に当たることに。
マハリアは、二つの都市の間に第3の都市オルツィニーがあるという伝説を追っていたらしい。
警告の電話は誰から来たのか?
二国を統一しようという統一派(ユニフ)の暴動が起き‥?!
最初のほうは、ミステリにはよくある出だし。
最後のほうは、アクション物でぐいぐい進みます。
でも一番の読みどころは、入り組んだ国境を見ないふりをして過ごすという架空の設定を念入りに描いたユニークさと酩酊感。
歴史改変じゃなくて現実改変みたいな。
時は2010年頃で、ハリー・ポーターもあればヒップホップもある、ジャパニーズコミックもあるという。
キャラもそこそこ立っているんだけど、感情移入はしやすくないので、その辺が盛り上がるのだったら☆5つなんだけど。
ヒューゴー賞、世界幻想文学大賞、ローカス賞、クラーク賞、英国SF協会賞を総なめ。
これまでの作品も評価が高く、ローカス賞とクラーク賞は3度目だそう。
著者は1972年生まれ。ケンブリッジで社会人類学の修士課程で学んだ後に国際関係論で博士号。
チャイナという不思議な名前は中欧系なのかと思ったら英国人で、坊主頭に片耳ピアスのパンク系ファッション。
作品中の統一派と同じようなタイプらしい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
うーむ、読みずらかったぁ。
世界観は好きだけれど、今ひとつ物語の中に入りきれなかった。 -
共存する二つの都市で起こった殺人事件。
ベジェルのボルル警部補は捜査のために、普段は見ない、聞かないに徹しているウル・コーマに行くことになるのだが…。
まず設定ありき。
あれこれ想像して、ここはどうなっているのだろうか?こういうケースはどうするのだろうか。と、それだけで世界に引きずりこまれてしまう。
その分、独特な用語と共に難解ではあるのだけれど、読み進めて行くうちに霧が晴れていくかのように二つの都市が形を現す快感。
そこへもってきて、ミステリ&ハードボイルド(私は得意ではないけれど)の味付けが全面的になされていて、ミステリ読みにも優しい構成。(ラストシーンの格好良さときたらもう!)
いやいや、普通に面白かった。
機会があれば他の作品も読んでみたい。 -
うーん、なんでしょうか。舞台装置とか設定とかそこそこ面白いのですが、訳のせいなのか読みにくい。二つの都市に住む住民の不条理や歴史修正主義の愚かさとか、色んなものを内包してるのかもしれないが読みにくく、エンタメとして楽しめない。
無駄に長い気もするし、犯罪の動機が全く弱く感じる。久しぶりのSFだったが、そろそろついてくのがきつい、 -
読むのが疲れるが、味わい深いスルメのような作
表紙 7点岩郷 重力 日暮 雅通訳
展開 7点2009年著作
文章 7点
内容 815点
合計 836点 -
何だこれはSFなのか?
物理的に重なり合った都市国家??でも異次元で重なり合うとか、パラレルワールドとかSF的な設定はありません。見えているのに見ないようにするぅ???もう想像力の限界です。
日常的には目には写ってはいるけれど見えていないものは多いもので、意識して視ることが重要なんてことは言われますが、意識して見えていないようにするのは、かなり難しいです(歩きながらやってみた)。しかも、国という境界を識別して。隣の建物を見ないとか、倒れている人を障害物として認識するとか・・・眩暈がしてしまいます。ミエヴィル恐るべし。
でも、何故そんな境界を引いているのか?と考えると、もちろん歴史的背景はあるのでしょうが、かえってややこしいのでは?などと、見えないことにまでしている「境界」というものを考えてしまいました。作者は寓話は嫌いだそうですが、読むほうとしてはなんか考えてしまいます。
なんだか今回は「?」が多い感想だったな。 -
ふたつの都市国家ベジェルとウル・コーマは、物理的に一部の領土を共有しつつ、別の国家として存在している。地理的には二国の一部は重複していて、実際には両国の人々が入り混じって生活をしている。一方で、人々が国境を侵すことは許されない。つまり、そこでは「国境」が心理的に運用されているのだ。
ベジェルにいる人間は、たとえそこがウル・コーマの一部でもある“クロスハッチ”された地区であったとしても、ウル・コーマ側に存在するものを見てはいけない、触れてはいけない。ベジェルにいるのであれば、ウル・コーマ側で起こる出来事は見えないし、音も聞こえない。もちろん、すべてを見ないことは不可能だ。しかし、見ていないようふるまうことを、都市と都市に暮らす人々は訓練されている。ウル・コーマ側に存在すると判断した物事が迫ってきた場合、人々はそれを“見ずに”自然と避ける。
国境を侵すことは<ブリーチ>行為として、<ブリーチ>なる謎めいた組織により取り締まられる。<ブリーチ>がだれなのか、普段はどこにいるのか、<ブリーチ>につかまった人々がどうなるのか、これらは謎に包まれている。
主人公のボルルは、ベジェル警察過激犯罪課の刑事。ベジェルで発見された女性の死体を巡る事件を捜査している。ボルルは捜査の過程でこれがふたつの都市の国境をまたいだ事件であることに行き当たる。ボルルは、これは<ブリーチ>が扱うべき案件であると主張し、いったんは手を引こうとするが、結局は自身が深く関与していくこととなる。
話は刑事もののミステリーであり、刑事ものとしては、ボルルのキャラクターがそれほど立っているわけでもなく、普通な印象。しかし、ふたつの都市の込み入った関係や、その間で暗躍する<ブリーチ>という謎めいた組織というSF的な道具が登場することにより、全体のミステリー感やサスペンス感がアップしている。非常に効果的だ。
クロスハッチ、ブリーチ、という用語が最初から読者を突き放した感じで使われるため、何を言わんとしているのかが分かるまで、我慢して読み進める必要がある。読み進めるに従って、世界観が徐々に理解できてくることにも喜びがあるため、序盤で投げ捨てるのは少しもったいない。その点ではSF慣れしてるほうが良いだろう。わからなくても、とにかく我慢して読み続けることさえできる人にはお勧めできる。 -
コンセプトは面白いけど、賞を取った理由は分からなかった。
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複雑に絡み合った二つの都市の物語。そこで起こった殺人事件を端に発したより大きな事件とドンデン返し。基本ミステリーではあるが、二つの都市の関係性ゆえに物語を複雑にしている。その複雑性に解決の糸口があったりミスリードされたり、主人公も読者も振り回されて行く。最後は予定調和ではあるが見事にまとめられている。
ただし、"非常に"読みにくい本である。シーン転回が分かりにくいのが一つ。例えば、回想でのセリフと現実のセリフが同列に書かれていて、何度か読み返して理解できた。もう一つは<ブリーチ>という表現、英語で読む人はその意味がわかった上で読み進められるが、日本語では<ブリーチ>だけ書かれても、何らかの意味がある言葉かただの記号かが分からない。これらに関しては、訳者・編者の方にはもう少し読みやすくする工夫ができたのではないかと感じられた。 -
ふたつの都市国家ペジェルとウル・コーマ。隣同士の国。ただややこしいのが、ふたつの都市国家が同じ場所に共存している点。一方の都市の住人は他方の都市の住人を見ることは禁じられており、触れることはもってのほかで、これらはブリーチと呼ばれる犯罪行為に当たる。ただ見ようと思えば見えてしまうのがややこしい。また正規のルートで出国・入国は問題ない。このようなややこしい都市で殺人事件が起こる。ペジェルの警察、ボルルは殺人事件を調査していくという流れ。SF小説かと思っていたら、警察小説。設定をきちんと理解できたか心配だが、わりと後半楽しく読めた。
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