刺青の男〔新装版〕 (ハヤカワ文庫SF)

制作 : Ray Bradbury  小笠原 豊樹 
  • 早川書房
4.12
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本棚登録 : 211
レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (434ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150118976

作品紹介・あらすじ

男が全身に彫った刺青は、夜になると動きだして18の物語を演じはじめた。短篇集新装版

感想・レビュー・書評

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  • ブラッドベリは火星や金星やその他宇宙の様々な場所を作品の舞台に選ぶのだが、結局のところ彼が描くのは地球人、すなわち我々人類だ。彼の作品は一種の思考実験のようなもので、人間のある一面を描写するために最適な条件を作り出しているのだ。それが、ここでは宇宙というわけである。

    この短篇集のなかでも『万華鏡』は、道具立ての妙が特に光っている。ロケットから宇宙空間にばらばらに投げ出された男たちという特異な状況。この理想化された条件こそ、まさに思考実験の真骨頂だ。想像力は自由であり、小説家はどんな設定でも創造することができる。
    物語に幕が下りたとき、読者はきっと自らの生と死のことを思うことだろう。そして、目の前にした舞台装置がどんなに優れていたかに気づくだろう。ないた。

    解説にあるように『感受性をはぐくむ者と、はぐくまぬ者とのたたかい、想像力を尊重するものと、尊重せぬものとの葛藤――つまりは、芸術と非芸術との闘争』というのがブラッドベリの小説のひとつの大きな主題となっている。(なお、このテーマが最も顕著に現れているのが『華氏451度』だろう。そこでは本を愛する人間と本を燃やす人間の相克が描かれた。)
    この主題は本書でも健在で、『亡命者たち』や『コンクリート・ミキサー』といった物語にはとりわけ色濃く感じられる。強く印象に残ったのは、そのどちらにおいても芸術は敗れ去るという点だ。実際的で無味乾燥な世界の前に、あるいは低俗で堕落した世界の前に。

    実のところ、こうした感覚は現代の私たちにとっても決して縁遠いものではないのではないかと思う。電車に乗り合わせた人々がほぼ全員スマートフォンに釘付けになっている、この世界では。

    地球人がとうに失ってしまった感受性、想像力、そして芸術は、今も火星に生きている。ブラッドベリのこうした空想は幾分感傷的に過ぎるが、それでも彼を信じたくなる夜もあったりする。

  • キリスト教的な作品が多い印象で、そういうのが記憶に残る。

  • ☆4か5で迷ったが☆4に。
    ブラッドベリは『火星年代記』〜『刺青の男』〜『華氏451度』とつながっていて、やはり大体似たような内容。『火星年代記』にあった『第二のアッシャー邸』とほぼ同じテーマの『亡命者たち』という作品なんかも入ってる。

    序盤は大して面白くないなと思いつつ読んでたけど、中盤以降からすごく面白くなってきた。『その男』『長雨』『ロケット・マン』『火の玉』『今夜限り世界が』『亡命者たち』『日付のない夜と朝』『コンクリート・ミキサー』『ゼロ・アワー』……そして最後の『ロケット』はとても良い話だったので、思わず涙腺が緩んだ。

    『コンクリート・ミキサー』なんかはとても好きな話。これと『亡命者たち』を足して二で割ると、『華氏451度』になると思う。
    『今夜限り世界が』『日付のない夜と朝』『ゼロ・アワー』、最高。
    ただ、全体的に毎回オチが弱いのが若干残念だった。

    数多くの人がブラッドベリに影響を受けてると思うけど、日本だと手塚治虫、藤子不二雄、星新一なんかが好きな方には、すっと入りやすいと思う。
    コレクターズの加藤ひさしも、ダニエルキイスやブラッドベリに影響受けてるけど、『ロケット・マン』も元ネタのひとつなのかなと。

  • 幻想的で抒情的なSF。この中の一つ「ゼロ・アワー」を原案に昨年アメリカでドラマが製作されました。シリーズ化には至れなかったものの中々の良作だったので原作に手を出したわけですが、ゼロ・アワーは期待したほどではなかったかなと。むしろこの短い話でよく13話もドラマ作れたなとドラマの方に感心。「今夜限り世界が」「ロケット」「万華鏡」の3つが特によかった。半世紀以上も前の作品なのにみずみずしい。「珠玉の」という言葉がぴったりの短編集でした。

  • 身体㊥に刺青の入った男。
    あるときであった、老婆にも若い娘にも見える人に入れてもらった。昼間はただの刺青だけど、夜になると、動くんです・・・。
    身体㊥の刺青が物語を語る。そして・・・
    男の右肩に描かれている刺青の物語を観ると・・・

    観るなよ

    と 言われると見たくなる。それが心理というもので・・・

  • 「火星年代記」の次に読む、ブラッドベリの作品・・・。果たして今度はどんな物語が待ち受けているのだろうか・・・→またしても火星ものじゃねーか!!というのが率直な感想。でも、こちらは「地球から観た火星」の話が描けるから少し収録話の毛並みに違いが出せるかな。
    「形勢逆転」はこの世に戦争や差別が残る限り、色あせることがない名作、1000年残るな。
    藤子不二雄の絵柄で脳内再生される話が多かった。
    非常に読みやすい。

  • 2014/04/01/Tue.〜04/27/Sun.

    「万華鏡」に出会えて良かった。泣いた。
    『サイボーグ009』のラスト、ジェットの有名なセリフ「ジョー!きみはどこにおちたい?」とその後に続くシーンは、このお話が元ネタだそうで。

    「今夜限り世界が」も好き。

    「長雨」は、『ウは宇宙船のウ』(大西尹明 訳/創元SF文庫)にもあったね。雨の描写とラストが印象的。
    「ロケット・マン」は、同じく『ウは宇宙船のウ』の「宇宙船乗組員」と同じお話(久々に読んでも泣けた…)。
    「亡命者たち」は「亡命した人々」。
    「ロケット」は「宇宙船」。
    訳者が違うと、文章から受けるイメージも変わる(細かい部分でだけど)もんだなー。

    読み終えた後、ゾ〜ッとする話は色々あったけど、中でも「コンクリート・ミキサー」は静かにジワジワと怖い。

    先述の「ロケット」に登場するフィーオレロ・ボドーニさん。
    なんて素敵なお父さんでしょう!
    いつか、彼も彼の家族も自由に宇宙を旅することのできる未来を願わずにいられません。

    十八の短編を挟んだ、プロローグとエピローグもピリリと効いてます。

  • 古さを感じさせないSF。
    いくつかは未来を予見した内容もあった。

  • 一日に一話ずつちょっとずつ読んでいきました。
    読後に、独特の尾を引く感じは、何なんでしょうかね。いうなれば、それはブラッドベリの豊穣な想像力に触発されて、物語が終わった後もその続きをあたまで追っている感じ。それだけのパワーが18編のそれぞれの作品に宿っています。なんて、贅沢なんだ。

    宇宙への進出が可能性に溢れた時代。それは想像力の挑戦であり、無限の源泉でもあったように思えます。
    宇宙への進出が現実のものとなり、一歩ずつ前へ進んでいる現在。だからこそ、逆に、その可能性は区画整理され、宇宙進出の限界を無意識に理解しているように思えます。それだけに、そんな現在だからこそ、本書のような想像力に満ち満ちた作品は却って貴重な存在なのかもしれません。

  • 今となっては懐かしいSFかもしれない。
    発表された時にはSFだったかもしれないけど,今だと単なるお話?

    2013/06/29図書館から借用;06/30から読み始め;途中他の本を読んだので,07/08で読了

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著者プロフィール

1920年、アメリカ、イリノイ州生まれ。少年時代から魔術や芝居、コミックの世界に夢中になる。のちに、SFや幻想的手法をつかった短篇を次々に発表し、世界中の読者を魅了する。米国ナショナルブックアウォード(2000年)ほか多くの栄誉ある文芸賞を受賞。2012年他界。主な作品に『火星年代記』『華氏451度』『たんぽぽのお酒』『何かが道をやってくる』など。

「2015年 『たんぽぽのお酒 戯曲版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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