航路 上 (ハヤカワ文庫SF)

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  • 早川書房 (2013年8月9日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (656ページ) / ISBN・EAN: 9784150119140

作品紹介・あらすじ

臨死体験を科学的に検証するため、認知心理学者のジョアンナは、自ら実験台に上るが!?

感想・レビュー・書評

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  • ※上下巻を読了した感想

    ウィリス作品を読んでいてすごいと思うのは、まずページ数がとても多いのに基本的に中盤を超えるくらいまでは話が大きく動くことはなく、では序盤は読んでいて退屈なのか?というと明確にノーであるところ。

    本作では臨死体験を引き起こす要因や働きを解明するための研究プロジェクトに取り組む主人公たちが適切な被験者を見つけられなかったり、人の話を聞かない登場人物(ウィリス作品には毎回この手の人たちが出てくるが、実体験に基づいているのだろうか?)の対応に苦労したりしている間に上巻が終わってしまうが、キャラクター設定がすんなり受け入れられるものとなっているだけでなく、登場人物たちがする映画談義やなぜかポケットからたくさん食べ物が出てくる描写などクスリとしてしまう描写が時折挟まり、ほどよく息抜きしながら読み進めることができる。

    下巻に入ってもしばらくは似た展開が続くが、第2章の終わりから一気に物語が展開し、クライマックスへと一気に加速していく。もうどんでん返しもないだろうと思っていると、さらに「えっそうなるの!?」だったり「これからどうするの!?」となる展開をはさみつつ最終的にはきれいに着地するので感心してしまう。ウィリス作品を読みなれていると、オーソドックスな展開はしないだろうということを織り込み済みで読み進めるのだが、それでも毎回驚かされるのが楽しい。とにかくページ数が多いが読み始めさえすれば引き込まれることうけあいなので、SFになじみがない人や、ウィリス作品は気になるがシリーズものは敷居が高いと思っている人などにもおすすめできる。このような作品を書く人をもっと知りたいのだが、誰があげられるだろうか?

  • (上下巻を読んだ感想です)
    若き認知心理学者のジョアンナは、マーシー総合病院で臨死体験者の対面聞き取り調査を行い、臨死体験の科学的仕組みを解明しようと試みる。だが、死後の世界を信奉するノンフィクション作家のマンドレイクもまた臨死体験者への取材を行っており、彼女の調査の妨げになっていた。そんな折、神経内科医のリチャードから彼が立ち上げる新規プロジェクトへの協力を求められる。そのプロジェクトは、擬似的な臨死体験を発生させ、その状態の脳の動きを観察するというもの。リチャードへの協力を決めたジョアンナであったが、プロジェクトの遂行には不適合な被験者が多く、深刻な被験者不足に悩まされる。プロジェクト遂行のため、被験者となることを申し出たジョアンナが擬似臨死体験でたどり着いた場所とは…

    上下巻約1300頁の長編小説は、米国SF界の女王こと、コニー・ウィリスによる臨死体験をテーマにしたローカス賞受賞の大傑作です。全3部構成。

    これまでに読んだウィリスの長編は、「ドゥームズデイ・ブック」と「犬は勘定に入れません」の2作品。ウィリスの長編作品で特徴的なことは、まず話がぜんぜん進展しないこと、その冗長さを補うキャラクターの魅力(特にひとの話を聞かない登場人物のウザさといったら!)、そして終盤に怒涛の展開をみせ、一気にクライマックスまで突き上げる豪腕ぶりといったところでしょうか。そんな特徴もあり、先述2作品はどちらも大満足であるとともに、読後も強く印象に残った作品でした。

    …が、本書はそれら2作品を凌駕する感動を与えてくれることに。
    先述の特徴は本書でも顕在。ジョアンナが擬似臨死体験でたどり着いた場所をつきとめるまでが描かれる第1部では、やっぱり話が思うように進展しません。マンドレイクにミセス・ダヴェンポート、ウォジャコフスキーといったひとの話を聞かない登場人物や逆にまったく話さないミスター・セイジ(被験者にも関わらず!)にいらいらしつつ、ジョアンナとリチャードの研究に関心を寄せることに。
    臨死体験の科学的仕組み、すなわち臨死体験の意義解明に奮闘する第2部でも同じような展開で進みますが、ここでミステリー小説顔負けの大どんでん返しが…
    正直、この展開はまったく予想していなかったなぁ…「え?」ってなりながら、頁をめくるめくる。そのまま第2部終了。完全な喪失感を味わい、そこから抜け出せないまま第3部突入。第3部幕間の紹介文「さて、このあともう一幕ありますが、どんな話になるかはみなさんもうお察しのことでしょう」には、「わかるかよ…」と嘆く始末。まだ全体の2/3の段階でクライマックスをもってくるウィリスですが、米国SF界の女王は最後の最後まで読者を揺さぶることに長けているようです。2度目のクライマックスはもう涙なしには読み進められません。あのにくい演出にはやられました。最後の一幕は解釈に悩みますが、希望の残る終わり方だと信じたいところ。

    とまあ、とにかく終盤からの展開が凄まじい作品でした。ただ凄まじいだけでなく、それまでに張り巡らされたちっちゃな伏線や設定を丁寧に結末に結びつける器量には驚くばかりです。特に、臨死体験の意義をジョアンナやリチャードによる研究活動や病院での医療行為そのもので例えたりする件には「うまいなぁ」と感嘆。

    理不尽な登場人物に笑ったり、大きな喪失感で胸がいっぱいになったり、読んで良かったと充足感に満たされたり、でもちょっぴり寂しさがつのったりと、いろんな感想で一言で表現できない本書ですが、読後のこの言い尽くせない余韻は暫く続くことでしょう。
    素晴らしい作品でした。

  • いつも通り最高に楽しめるんだけど、展開のエンジンがかかるまでの日常の積み重ねがけっこう辛かったりする。あと何回ミスター・マンドレイクに会えばいいのか、とか。毎回行っちゃだめと引き留めるメイジーとか。その分、それまでの経験が、マジかそうなるのかっていう具合にスパークして、楽しいです。

  • 確かに650ページ超の(それも上巻だけで)は長い。
    けど、深く知りたいと思いのめりこむ人たちと、
    自分が信じたい(他人に刷り込まれた)ことに
    飛びつく人たちとの対比や、病院内と病院外、
    わかりやすいキャラ設定(ティッシュとか)
    リズムも彩りも豊かで読むのは苦にならない。
    何より、各章の冒頭にある最期の言葉のように
    謎多く、ドタバタしながらも、しっとりと
    落ち着き、詩的なムードが根底を支配している気がして
    どんな結末を迎えるのか楽しみ。

  • コニーウィリスの傑作。
    臨死体験がテーマという風変わりさだけど、
    登場人物たちがとても魅力的で、読みながらわくわくする!
    後半でジョアンナの体験が何に基づくものが何か探る過程が
    ミステリーのようで、おもしろくて読むのをやめられない。



  • 臨死体験を考えると抽象的な不確かさが浮かぶ。然し、それらを賢明に文字で描き突き詰める筆致は圧巻だった。後半、漆黒の闇に読み手もはまり、音なのか光なのか人なのかと脳が研ぎ澄まされ、現象は何度も何度も繰り返し夢中で追いかける。
    ⭐︎ ローカス賞受賞作品

  • めっちゃ面白いから早く続き読みたすぎる

  • 分厚い上に話の進展が遅いのですが、それでも上巻はまずまず楽しく読めました。作者が上手いのか、訳者が上手いのか、たぶん両方なのでしょう。古典的なSFが大好きな私にとっては、描かれている風景があまりにも現代の日常という感じで、いつSFになるんだろうと思っているうちに上巻が終わってしまいました。下巻の展開に期待しています。

  • 220517*読了
    SNSでとある編集者さんが内容は詳しく話せないけれど、おもしろかったと紹介してらっしゃった小説。
    ずっと積読の中でも読みたい上位に入っていて、やっと読むことができました。

    マーシージェネラル(総合病院)で臨死体験について調査をする、ジョアンナとリチャード(と、ミスターマンドレイク)。
    人為的に臨死体験を発生させて、そこで何を見たかの聞き取り調査を行なっている2人。
    被験者が足りず、ジョアンナが臨死体験を行うことになり…。
    というのがあらすじにも書いてある内容。
    ここまでがなかなか長く、おもしろいんだけど、被験者や患者さん、同僚とのやりとりの毎日が繰り返されていて、早く何か驚く展開が起きないもんか…と思いながら、読み進めていました。

    臨死体験でジョアンナが見た光景とは…。
    そして、その光景の意味を調べるジョアンナ。
    リチャードとの関係はどうなる?
    光景に何か隠されているの?
    と、疑問は尽きない。

    臨死体験というテーマそのものが興味深く、早く続きが読みたい!という気持ちで読んできました。
    きっとこの小説は後半から、ぐっとおもしろくなるに違いない。そう思っています。

  • 自分初のコニー・ウィリス。各所で圧倒的な評価を得ているので手を出してみた。しかしこれ……いつ面白くなるの?文章自体は読みやすく、登場人物も効果的に配置されているのはわかるが、いかんせん長い。ドッタンバッタンのコメディチックな展開が多くて物語がなかなか進まず、ようやく核心にせまるのか?というところで「思い出せそうで思い出せない」だけで延々と引っ張る。何度も中断してしまい、上巻だけで読み切るのに数ヶ月かかってしまった。しかし「臨死体験SF」というテーマは興味深く、結末は気になる。下巻に期待。

  • 大風呂敷をたためるのか?

     宇宙からのメッセージがヒトラー演説だったなんて衝撃のスタートから一気にたたみこむ映画コンタクトのような上巻。

     ぶっとい文庫なのに、コロナ巣篭りの休日午後があっという間だ。

     わかりやすくハイテンポだから、とても楽しく読める。問題はここまで拡げた物語を破綻なく終わらせることができるんだろうかってこと。それは明日のお楽しみかな。

  • コニー・ウィリス!

  • トヨザキ社長オススメ、翻訳・大森ってことで入手。ただ、”航路”って言葉を、自分で勝手に”宇宙航路”と拡大解釈してて、それはSFのイメージに基づくものでもあるんだけど、で、『だとすると、こんな長編を読みきるのはしんどいかも…』って思ってた。でも蓋を開けてみると、舞台は親和性の高い病院で、内容も臨死体験に関したものと、思ってたのと大違い。安心して読み勧めることが出来た次第。SFの中では寧ろ読みやすい部類。上巻だけでかなりのボリューム感だけど、それをあまり感じさせられないくらい、リーダビリティも高い。キャラの魅力とか、秀逸な訳文とか、色んなおかげの賜物だけど。続きも楽しみ。

  • 臨死体験を研究する医者のジョアンナ。
    音、トンネル、光、天使、人生回顧、帰還命令など臨死体験者は(宗教観や先入観、聞く人による誘導もあるが)共通した内容を体験することが多い。
    臨死体験とは生命においてどんな機能があるのか。
    しかし、人工的に臨死体験を引き起こす研究プロジェクトはうまく行かず、ついにジョアンナは自分を被験者にする。
    そしてトンネルと光の先にあったものは... とにかく前半が長くて辛いことで有名(主観です)なコニー・ウィリス。
    しかしこれまでの作品は後半からの加速感が病みつきになるものばかりだった。

    今回はどうなんだろうか?
    今のところ、長くて辛いままだぞ?

  • 面白いけど、長かった。。下巻もあると思うと少しぐったりする。ジョアンナがちょっと考え事をしたり、メイジーに捕まっていたりする間に留守電やポケベルの件数がどんどん増えていることに他人事ながら心配になってくる。 この人の私生活(ディッシュナイト以外)が全く描かれないのも興味ぶかい。

  • 臨死体験がテーマのSF。認知心理学者のジョアンナは、神経内科医のリチャードに誘われて臨死体験の研究プロジェクトに着手する。人工的に臨死体験をひきおこし、その謎を科学的に証明しようとするが、被験者不足でジョアンナは自らプロジェクトの被験者となり、ほかの人の臨死体験や自らの体験から、すこしずつ臨死体験の謎を解明していく。

    上下巻でそれぞれ650ページずつくらいの大長編。上巻の前半くらいまでは、なかなか話もすすまず医学研究の小難しい話が多かったり、話をやめない登場人物ばかりでほんとうにこの物語自体が「引き延ばしの天才」。でも、ジョアンナが「潜り」はじめてからは、一歩一歩着実に真相に近づいていき、どんどん先が気になってくる。臨死体験の謎が、予想もしてないようなことにつながっていき、展開がよめない。ジョアンナが真相にたどりつきそうでなかなかたどりつかない様子が、舞台の病院が改装工事や通行止めばかりだったり、登場人物たちが留守電やポケベルの行き違いなどでなかなか連絡がとれなかったりする描写と重なり、いろんな意味でこちらももどかしい。下巻に入るともう一気に読めてしまう。

    続きは下巻のレビューで。

  • 久しぶりに再々読

    詳しくは下巻にて!

  • 認知心理学者のジョアンナは神経内科医リチャードに共同研究をもちかけられ、二人は臨死体験を科学的に究明するプロジェクトに着手するのだけど、上巻だけで600ページを超えるボリュームな上、第一部の展開はゆるやかなのでちょっと長いなあって感じていました。ジョアンナ自身が被験者となり臨死体験の実験をするあたりから面白さに加速がついて、先が気になる展開に。迷路のような病院内部だとか、災害マニアの入院患者の少女、いつも閉まっているカフェテリア、アルツハイマー病の教師など、冗長に感じた部分が下巻で活きることを願い下巻へ。

  • とても長い。時たま、こんなに長い必要はあるのだろうか。アウトラインだけで考えると、もっとコンパクトになるはず…と思いつつ、読めてしまうという不思議。あら、上巻でほぼ解明された?!と思いつつも、下巻も同じような厚さ。ここからどう展開されていくのかを楽しみに読み進めようと思う。

  • (リリース:佳奈子さん)

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