華氏451度〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫 SF フ 16-7)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150119553

作品紹介・あらすじ

SFの抒情詩人が豊かな感性と叡智をこめて現代文明を痛烈に諷刺! 名作待望の新訳版華氏

感想・レビュー・書評

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  • ブラッドベリは10代の頃心酔してたが本書はSF過ぎると思って?未読のままだったので夏休み課題図書風に読んでみる。その頃なら純粋に感動したかも。今読むと描かれている世界が今の日本の状況に似ていて別の意味で怖かった。見えてない焚書ありうるかも。

  • ディストピア小説の古典的名著といえば、まず名前が挙がるのがジョージ・オーウェルの『一九八四年』、オルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界』だが、それらの小説に勝るとも劣らないのが1953年に上梓された、SF作家レイ・ブラッドベリの描いた焚書をテーマとした本書『華氏451度』である。

    この『華氏451度』とは紙が燃え上がる温度のことで、摂氏でいえば約232度の高温のことである。

    本書で描かれるのは、本の所持が禁じられた未来社会。

    主人公のモンターグは、本を発見したらそれを昇火器で昇火することを生業とする昇火士(ファイアマン)である。

    本を焼却することになんの疑問を持っていなかったモンターグであったが、本を守ろうとして彼が一緒に焼却し、殺してしまった女性の姿を見て、本には命をかけるほどの価値があるということに気がつき、焚書社会に反抗していく姿が描かれていく。

    ここに描かれている社会は、もちろん架空の社会であるが、深読みしてみると非常に現代社会と状況が似通っている部分が多い。

    本書に出てくる多くの人が夢中になっているのは「ラウンジ壁(スクリーン)』と呼ばれるテレビに似たような機械で、これは自宅内に設置されており、見るものに対していろいろな情報や映像を提供し、さらには簡易な会話なども楽しめる。

    人々は、本を読むことを禁じられ、常にこの「ラウンジ壁」を見ながら自ら考えることを放棄し、「ラウンジ壁」からの情報を鵜呑みにし、それに依存してしまっている状況にある。

    この本を読んでいて、ふと思ってしまった。
    この「ラウンジ壁」は、今の社会でいえばまさしくテレビであり、さらに言えばテレビよりもインタラクティブな機能をもっている「スクリーン」、つまりまさにスマートフォンのことになるのではないだろうか?

    現代の人々は電車の中でも、食事中でも、いつでもどこでも手の中にある光る板を眺めている。恋人とのデート中でさえ、相手の顔を見ているよりもスマホを見ている時間の方が長いのではないだろうか。

    約15年前、あのiPhoneが登場するまでは、人々のその手の中にあったのは新聞であり、文庫本であり、漫画雑誌であったのだが、その光景は今や一変してしまった。

    「すべてのスマホが悪だ」などということを言うつもりは毛頭ないが、皆が多かれ少なかれ「スマホ中毒」状況にあるのは間違いないだろう。
    この状況は、ある意味においては、本書で描かれている世界よりも「異常な世界」なのかもしれない。

    話を戻すが、現代社会はもちろん焚書社会ではないし、本を読むことも所持することも当然自由なのであるが、ここに驚くべき調査結果がある。

    若干古いデータで申し訳ないが、文化庁が平成30年に16歳以上の男女3590人に調査した
      「1か月に大体何冊くらい本を読むか」という問いに対して
      「読まない」と答えた割合が47.3%、
      「1、2冊」と答えた割合が37.6%
    なのである。
    つまり、約85%の人たちは「月に2冊以下」しか本を読んでいない状況である。
    このような数字を見ると、今の私たちはあえて自ら「焚書社会」を作り上げ、そして「スマホ社会」に移行していると言っても過言ではないだろう。

    本書に描かれた社会と現代社会が直面している状況はまさに紙一重といっても良いのかもしれない。

    このレビューを読んでいる人は、誰もが毎月それなりの冊数の本を読んでいる奇特な人たち(笑)だろうが、もしこの本を読んだとしたらそれぞれ思うところがあると思うので、未読の方はぜひ手に取ってもらいたい。
    本書は、焚書社会を通じて破滅へ突き進んでいく社会を描いたディストピア小説の傑作である。

  • 【感想】
    傑作たるSFは、その設定がいかに浮世離れしていようとも、どこかしらで現代社会との接点を持ち、読み手に警句を与えるような内容になっている、と私は思っています。

    本書は1953年に書かれた古典SF小説ですが、まさにその「傑作の条件」に当てはまっています。

    例えば、ベイティー隊長の言葉。
    「そして大衆の心をつかめばつかむほど、中身は単純化された」
    「むかし本を気に入った人びとは、数は少ないながら、ここ、そこ、どこにでもいた。みんなが違っていてもよかった。世の中は広々としていた。ところが、やがて世の中は、詮索する目、ぶつかりあう肘、ののしりあう口で込み合ってきた。人口は二倍、三倍、四倍に増えた。映画や、ラジオ、雑誌、本は、練り粉で作ったプディングみたいな大味なレベルにまで落ちた。わかるか?」

    隊長の言葉は、現代社会における「情報」の扱われ方を的確に言い当てているのではないかと思います。人口が増え、情報の供給量が増大すると、スピードがぐんと上がり、咀嚼し終わらないうちに口に入るようになってきた。すると、情報のうち複雑で飲み込むのに時間がかかるものは遺棄され、大味のものしか残らなくなった。これはまさに、「大衆の心をつかめばつかむほど、中身は単純化された」事例だと言えるでしょう。

    思えば、本書に出てくるテクノロジーは現代社会を鏡に映しているようです。ラウンジ壁はスマホ。巻貝はワイヤレスイヤホン。時速100マイルで疾走するカブトムシは、さながら刹那的な欲望を高速で発散させるためのSNSと言えるかもしれません。歩くときも寝るときもスマートフォンに没頭し、情報の洪水に身を晒す私たちは、ミルドレッドと同じ穴のムジナです。そんな私たちが本や新聞を「時代遅れの古いメディア」と言ってはねのけている今、まさに、フィクションが足元にまで迫っているのかもしれません。

    ――平和がいちばんなんだ、モンターグ。国民には記憶力コンテストでもあてがっておけばいい。ポップスの歌詞だの、州都の名前だの、アイオワの去年のトウモロコシ収穫量だのをどれだけ覚えているか、競わせておけばいいんだ。不燃性のデータをめいっぱい詰めこんでやれ、もう満腹だと感じるまで「事実」をぎっしり詰めこんでやれ。ただし国民が、自分はなんと輝かしい情報収集能力を持っていることか、と感じるような事実を詰めこむんだ。そうしておけば、みんな、自分の頭で考えているような気になる。動かなくても動いているような感覚が得られる。それでみんなしあわせになれる。

    ――さあ、これでなぜ書物が憎まれ、恐れられるのか、おわかりになったかな?書物は命の顔の毛穴をさらけだす。気楽な連中は、毛穴もなくつるんとした、無表情の、蠟でつくった月のような顔しか見たがらない。われわれは、花がたっぷりの雨と黒土によって育つのではなく、花が花を養分として生きようとする時代に生きておるのだよ。

  • SF初心者の私ですが、読み始めるならということで、ディストピア小説の古典的名著である本作を手に取りました。
    慣れない翻訳小説ということもあり、読了までに時間を要しましたが、間違いなく読んでよかったと思える一冊でした。

    舞台となるのは本が忌むべき禁制品とされる世界。
    多くの人々はラウンジ壁(スクリーン)の映像と、巻貝(小型ラジオ)から入ってくる情報だけに耳を傾け、自分で考えることを放棄してしまっています。
    そんな社会で書物を焼き尽くす職『昇火士(ファイアマン)』として働く主人公・モンターグは、好奇心の塊のような少女・クラリスや、本と共に命を散らした老婆に影響を受け、次第に禁忌とされる書物に惹かれていきます。
    いつしか昇火士として働きながらも、隠れて本を集めるようになっていくモンターグですが、彼の嫁であるミルドレッドはそれを昇火士へと密告し……。

    読み終えて、本を読める幸せを噛みしめるとともに、メディア漬けになっている現代社会への強烈なアンチテーゼになっていると感じました。
    作中でミルドレッドをはじめとする多くの大人たちは、モンターグをして十代の少女であるクラリスよりも知性で劣ると表現されています。多くの人物が空疎な情報の海に溺れ、大切な記憶すら思い出せなくなってしまった社会。幸せなように見えて緩やかに滅んでいくだけの社会です。
    そんな焚書社会に抗おうとするモンターグの目線で彼女らを見ると、まるでドラッグにでも浸かっているかのように思えますが、これはスマホが無くては生きてはいけない現代人となんら変わりないどころか、依存度は本作の舞台よりも深刻かもしれないと、あらためて考えさせられました。

    話の大筋からは脱線しますが、『消化』を連想させる『昇火』という架空の言葉も面白い。もともと『火を消す仕事』だったのが、時代を経て『火で消す仕事』になったという背景も非常に興味をそそられました。
    グレンジャー氏の祖父の言葉、『目には不思議なもの、びっくりするようなものを詰め込め。十秒後には死んでしまうつもりで生きろ。世界を見ろ。世界は、工場でつくった夢、金を出して買う夢よりずっと幻想的だぞ。……』というフレーズにはじんとくるものがありました。

  • すごい本だ。
    もしも、政府が国民から知識を奪い思考能力を奪い国のために争いへと駆り立てようとしようとするときには、真っ先に焼かれるような。

    「本はなにもいってないぞ!人に教えられるようなことなんかひとつもない。信じられることなんかひとつもない。小説なんざ、しょせんこの世に存在しない人間の話だ、想像のなかだけの絵空事だ。ノンフィクションはもっとひどいぞ。どこぞの教授が別の教授をばか呼ばわりしたり、どこぞの哲学者が別の哲学者に向かってわめきちらしたり。どれもこれも、駆けずりまわって星の光を消し、太陽の輝きを失わせるものばかりだ。

    お前は迷子になるだけだ。」


    本の存在の許されない世界で、主人公のモンターグは昇火士として本を燃やし続ける。しかし、ある少女との出会い、通報を受けて駆け付けた一軒の家、そしてそこに住む老婆とのやりとりから、自分の行動に疑問を持ち始める。

    政府の政策により、本は燃やされ、子どもは幼いうちからひったくられるように学校へ、家族で語らうためのポーチは取り壊され、国民にはひたすらに娯楽が提供され続ける。国民は従順に娯楽を消費し続け、子どもがいなくてせいせいすると喜び、本が燃えるのを見て楽しみ盛り上がる。憂鬱や悩みは排除されるべきものと忌み嫌われ、それを見ないようにするために更に娯楽を消費する。

    読んでいてぞっとした。これが約70年も前に書かれたお話。このディストピアは確実に近づいているんじゃないか…売れなくなっていく書籍、つぶれていく本屋。こわい。

    昇火士の隊長であるベイティーは、本に対してなにかを抱きだしたモンターグを諭すためにこう言う。

    「いろいろなことに、なぜ、どうしてと疑問を持ってばかりいると、しまいにはひどく不幸なことになる。」
    「哲学だの社会学だの、物事を関連付けて考えるような、つかみどころのないものは与えてはならない。そんなものを齧ったら、待っているのは憂鬱だ。」
    「お前は迷子になるぞ。」

    以前新聞記事で、「ネガティブ・ケイパビリティ」という言葉を専門家の方が説いていた。「生半可な知識や意味付けを用いて、未解決な問題に拙速に帳尻を合わせない。中ぶらりんの状態を持ちこたえる力」だという。即事的に答えを求めない、自分の中で解答を保留し、その居心地の悪さと同居する、それに耐えうる力。最近の人はそれを我慢できない、待てない傾向にあるらしい。集中力が短くなっているというのもどこかで見かけた。(一説には金魚よりも短いとか?!)情報が短時間で飛び交い、短い言葉や動画に娯楽性を見出して、短時間にたくさんの刺激を受けることができるようになったからかな。それって、まさにこの物語の中の国民と同じだ。

    「フィルムもスピードアップだ、モンターグ、速く。カチリ、映像、見ろ、目、いまだ、ひょい、ここだ、あそこだ、急げ、ゆっくり、上、下、中、外、なぜ、どうした、だれ、なに、どこ、ん?ああ!ズドン!ピシャ!ドサッ!ビン、ボン、バーン!要約、概要、短縮、抄録、省略だ。政治だって?新聞記事には短い見出しの下に文章がたった二つ!(略)」

    今まさにこの物事への反射スピード、思考速度、結果を出す速さはこれに近づいていないか。いいね、黙れ、RT、消えろ、すき、ばか、!、?

    このスピード感、そしてこのスピードで物事を結論付けようとするこわさは深刻だ。世の中には正解がひとつに決まっていないことの方が圧倒的に多いだろうし、理想のゴールはあっても、いろいろな要因が絡み合ってして、解決できないことだって山ほどある。だから解決を急ぐとこは難しいし、一面的に正解を決めつけてかかることは誰かの不幸の上に成り立っていることが往々にしてある。しかし今、それを待てなくなってはいないか。自分も含めて。新聞記事は、こう続く。「(分かりたいという欲求の)言いなりにならないのが、知性。分からないという状況に耐え、悩むことは本来、価値がある知的な能力なので、恥じることではないのです。」


    思考は人に疑問をもたせる。本を読めば読むほど、知りたいことは増え、知識は深まり、更に疑問は増えていく。知れば知るほど世の中には円満解決やゴールへの近道などないのだと思い知らされて苦しくなる。ときには迷子になりそうになる。考えることを止め、娯楽に押し流され、思考停止の言いなりになってしまえば、悩むこととは無縁なんだろう。ただ、一度本を読み、自分で考える苦しみと知る喜びを知ってしまえば、もう本を読まなかった頃へ、何も考えずにいた頃へは戻れない。モンターグが無意味に笑わなくなったように。クラリスがもう二度と学校へはいかないように。希望にや使命感に満ち溢れているわけではない。けれど、歩みを止めないのだと、祈りにも似た気持ちで歩き続けることを選んでしまう、どうしても。モンターグの出会った年寄りたちのように。

    老人のひとり、グリンジャーが静かに語る、不死鳥の話。
    「われわれも似たようなもので、おなじことを何度も何度もくりかえしているが、われわれにはひとつ、不死鳥が持ち得えなかった美点がある。われわれは、自分がいまどんな愚行を演じたか知っているという点だ。われわれは過去一千年のあいだにどんな愚行を重ねてきたか知っているのだから、それをつねに心に留めておけば、いつかは火葬用の積み薪をつくって、そのなかに飛びこむなどという行為を止めることができるはずだ。愚行を記録している人間をもう少し集めるとしよう。全世代、そろえたいな。」

    本を読むことのありがたさと尊さを感じられる本のお話。それでも、本を読みます。

  • 読み出して直ぐ、背表紙にある通り抒情的な文章だと感じる。
    読み慣れていない私は、SFでこういうのも有りなんだな~と新鮮に思った。

    昇火士(ファイアマン)のモンターグは、ある夜クラリスという17歳の不思議な少女に出会う。
    「あたな幸福?」
    別れ際にそう問われたモンターグは、「おれは幸福じゃない」と本当の心境に気付く。

    そこから次第に自身の周辺の人々や、社会の在り方に疑問を持ち始め、行動に起こしていくモンターグ。
    小さき者が社会に抗った先に待ち受けるものとは…。


    長編ではないし、文章自体は読みやすいのかもしれない。
    けれど、個人的には"主語は誰(何)?"とか"もう少し説明を加えたト書きが欲しい"とか、思うところが沢山あって読みづらかった。
    結果、入り込めなくてページをこなすだけの読書になってしまった。
    (翻訳の仕方のせい?)
    う~ん。。。ストーリー展開は楽しいのにな。
    やっぱり翻訳本はなかなか馴染めないなぁ。

    • 土瓶さん
      この人の短編集。
      何故か読み切れずに三分の一ほど読んで放置してます。一年以上。
      この人の短編集。
      何故か読み切れずに三分の一ほど読んで放置してます。一年以上。
      2024/01/13
    • 傍らに珈琲を。さん
      ああ分かりますぅぅ!
      私も放り投げそうになりましたもん。
      そうか、訳ではなくて、この人だからダメだったのかな。
      実はここに100分de名著の...
      ああ分かりますぅぅ!
      私も放り投げそうになりましたもん。
      そうか、訳ではなくて、この人だからダメだったのかな。
      実はここに100分de名著の華氏451度もソラリスも未読で積んでます。
      2024/01/13
  • ディストピアばかり読んでいる最近。ディストピア週間だ。
    今更ながら『華氏451度』を読みました。

    確実にこの状況に近づいているぞ、現代。
    これが1953年に書かれていたのか。恐ろしい。。。
    奇しくも「2022年」というワードと、それに続く恐ろしい予言めいた言葉。ちょっとドキッとした。

    モンターグがドキドキしながら本を読む場面とか、自分の家に火を放つ(放たなければならない)場面は圧巻。後者はきつかったな。

    「さあ、これでなぜ書物が憎まれ、恐れられるのか、おわかりになったかな?書物は、命の顔の毛穴をさらけだす。気楽な連中は、毛穴もなくつるんとした、無表情の、蠟でつくった月のような顔しか見たがらない。われわれは、花がたっぷりの雨と黒土によって育つのではなく、花が花を養分として生きようとする時代に生きておるのだよ」

    この表現良いなと思った。
    気楽な人間たちは、雨と黒土(思考や、それに必要な材料)には興味はなくて、出来上がった綺麗なもの(花)しか必要としていないということかな・・・

    わたしは子どもたちとかかわる仕事をしているのですが、本当に今の子たちって考えることをしたがらない!とにかく早く答えを知りたがる!
    ここは自分で調べて考えてほしいんだけどな、って思って提示しても飽きちゃうんだ、彼らは。(ごめんね、例外の子もいるのは知ってるんだけど・・・)
    曲のイントロがなくなっている現象とか、SNSをパッと開けば欲しい情報がすぐに手に入ることとか、何でも繋がる気がする。もう少し立ち止まる時間が必要だと思うんだよなあ


    「本を一語一語、口伝えで子どもたちに伝えていくんだ。そして子どもたちも待ちつづけながら、ほかの人間に伝えていく。もちろん、そんなやり方では失われてしまうものも多いだろう。しかし、聞く耳を持たぬ相手に聞かせることはできないんだ。そういう連中も、いずれは、なにが起きたのか、なぜ世界は足元で爆発してしまったのか疑問に思って、考えを変える時が来る」

    終盤の、この口承について触れているところも印象に残った。
    知識は頭につめて、口で伝えて残す。‶時代はまわる″ということか。
    グレンジャーさんかっこいい。。。

    「ひとつ絶対に忘れてはならないことがある。お前は重要ではない、お前は何者でもない、という思いだ。いつか、われわれが携えている荷物が誰かの助けになる日が来るかもしれない。しかしだ、ずっと昔、本を手に持っていた時代でさえ、われわれは本から得たものをまともに利用してはいなかった」

    み、耳が痛い・・・がんばります。

    ※‶昇火″って、めちゃめちゃ良い訳だと思う・・・‶消火″は火を消す。‶昇火″は火が昇る。漢字の面白いところ。


    「あれだけのことをするからには、本にはなにかがある、ぼくらが想像もつかないようなものがあるにちがいないんだ」

    • りまのさん
      らむさん、おはようございます。
      ブラッドベリは、とても好きな作家なのですが、短編集ばかり読んでいて、『華氏451度』は、ちゃんと読んだことが...
      らむさん、おはようございます。
      ブラッドベリは、とても好きな作家なのですが、短編集ばかり読んでいて、『華氏451度』は、ちゃんと読んだことがありませんでした。らむさんの、熱く 素晴らしいレビューを読んで、この本を、ちゃんと読んでみようと思いました。たぶん、実家の本箱に、埋もれていると、思います。探すのが、大変なので、図書館で、借りようと思います。読むの、遅くなると、思いますが…。らむさん、素晴らしいレビューを、ありがとうございました!
      2022/04/02
    • らむさん
      りまのさん、おはようございます。
      コメントありがとうございます(^^)
      ブラッドベリの短編集、わたしも読んでみようと思います!
      海外作品は普...
      りまのさん、おはようございます。
      コメントありがとうございます(^^)
      ブラッドベリの短編集、わたしも読んでみようと思います!
      海外作品は普段あまり読まないので、ちゃんと読みきれるか不安だったのですが、いまこの時代にこの作品に出会えて良かったと思いました。
      りまのさんのレビューが楽しみです(^^)
      2022/04/02
    • りまのさん
      らむさん
      お返事、ありがとうございます♡
      私の、レビューは、あてにしないでくださいね。
      (*˘︶˘*).。.:*♡
      らむさん
      お返事、ありがとうございます♡
      私の、レビューは、あてにしないでくださいね。
      (*˘︶˘*).。.:*♡
      2022/04/02
  • 文庫本の裏表紙に書かれている本書の紹介は下記の通りだ。

    【引用】
    華氏451度-この温度で書物の紙は引火し、そして燃える。451と刻印されたヘルメットをかぶり、昇火器の炎で隠匿されていた書物を焼き尽くす男たち。モンターグも自らの仕事に誇りを持つ、そうした昇火士(ファイアマン)のひとりだった。だがある晩、風変わりな少女とであってから、彼の人生は劇的に変わってゆく・・・本が忌むべき禁制品となった未来を舞台に、SF界きっての抒情詩人が現代文明を鋭く風刺した不朽の名作、新訳で登場!
    【引用終わり】

    この紹介文から予想していた本書のイメージと実際に読んでみての感想は大きく異なっていた。
    上記の紹介文を読んで、この物語は「1984」みたいな話だと勝手に思い込んでいたが、そこは予想とは大きく異なっていた。本が禁制品となっている時代の背景などは、確かに物語の中で語られているが、それが中心的なテーマではない。もちろん色々な読み方はあるが、紹介文で書かれているような「現代文明を鋭く風刺」したものとしては私は読まなかった。むしろ、特に後半はシンプルなアクション小説的な風合いを楽しんだ。人間にとっての本の大事さも描かれているので、物語は「焚書」である必要はあったのであるが、それも物語の最後の部分で描かれており、全編を通してのテーマではない。
    それともうひとつ、これも、読む人によって異なるであろうが、私は物語の最初の2/3はかなり退屈しながら読んでいた。残りの1/3は逆にすごく面白く、一気に読んだ。この後半の部分がアクション小説風であると感じながら読んでいた部分である。感覚的には、前半2点、後半5点(以上)という感じであった。

  • 考えなさい|有明抄|佐賀新聞LiVE
    https://www.saga-s.co.jp/articles/-/631888bukurogu

    華氏451度〔新訳版〕 | 種類,ハヤカワ文庫SF | ハヤカワ・オンライン
    https://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/11955.html

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      りまのさん
      猫が読んだのは古い翻訳。今は手元に無くて、、、ブラッドベリの本で昔から残っているのは「たんぽぽのお酒」と「とうに夜半を過ぎて」落...
      りまのさん
      猫が読んだのは古い翻訳。今は手元に無くて、、、ブラッドベリの本で昔から残っているのは「たんぽぽのお酒」と「とうに夜半を過ぎて」落田洋子のイラスト。「何かが道をやってくる」司修のイラスト。「十月はたそがれの国」ジョー・マグナイニ のイラストくらいだけ、、、
      2021/02/12
    • りまのさん
      イラストの人名は、覚えてないけど、全部実家にあるはず。
      ブラッドベリ、大好きだ〜い!
      イラストの人名は、覚えてないけど、全部実家にあるはず。
      ブラッドベリ、大好きだ〜い!
      2021/02/12
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      りまのさん
      良いなぁ〜
      猫も文庫は結構持っていたけど、今は先に述べた通り。。。
      りまのさん
      良いなぁ〜
      猫も文庫は結構持っていたけど、今は先に述べた通り。。。
      2021/02/13
  • 今年はディストピア小説をさんざ読んできたので、本著を読まずには年を越せない気がしたので、締めくくりとして読んでみました。この状況下で厄落としの意味も込めつつ(笑
    読了して感じたのは、ディストピア小説の中では最も希望を感じることができる作品だということです。中盤以降の疾走感はなかなかで、映像化されたらさぞかし美しいだろうなという光景も。最後に読んで良かった。。

    さて本著、「本を焼く」という仕事、昇火士(英語だと消防士と同じファイアマン)に就いている主人公。ある晩に風変わりな少女と出会ったことで人生が変わって…というのがあらすじです。
    本を焼くのは何故かと言うと、「色んな意見があって矛盾してると混乱するし、誰かを傷つけるような表現がある本は要らない」ということを皆が望んだからだ、というロジックだそうで。
    ここらへんで、何となく「1984年」とは違うんだなぁという印象を受け、これって、本著の刊行が1953年だったというのも大きく影響しているのでは、という推論が浮かんできました。
    反共マッカーシズムの中ではあったにせよ、ドイツや日本に勝利したアメリカの中のムードはそれなりに明るかったはずで、ある種民主主義的だし、政府そのものをそこまでおどろおどろしく描く必要もなかったのではないかと。
    ※もちろん、上記が本著で語られた「タテマエ」であって、本著内の政体が民主主義的だと言うつもりは一切ないのですが。

    細かいツッコミはあれど、読後感も素敵で、勇気が湧いてくるような一冊でした!
    翻訳も、解説を読むに従来のものよりは格段に優れたもののようで、新訳で読めて大変有難いと感じました。

    ということで、以下細かいツッコミです(笑
    ・本文中に出てくる「カブト虫」って、VWビートルで良いんですよね?
    ・本はダメなのにヘロインはOKなのか…

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著者プロフィール

1920年、アメリカ、イリノイ州生まれ。少年時代から魔術や芝居、コミックの世界に夢中になる。のちに、SFや幻想的手法をつかった短篇を次々に発表し、世界中の読者を魅了する。米国ナショナルブックアウォード(2000年)ほか多くの栄誉ある文芸賞を受賞。2012年他界。主な作品に『火星年代記』『華氏451度』『たんぽぽのお酒』『何かが道をやってくる』など。

「2015年 『たんぽぽのお酒 戯曲版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

レイ・ブラッドベリの作品

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