作品紹介・あらすじ

創刊時掲載の巨匠から現代SFの最先端まで、オール短篇集初収録作12篇で構成する傑作選

感想・レビュー・書評

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  • 読む前と読んだ後とでは、物の考え方、感じ方だけでなく、自分の今いる座標軸さえ変わってしまったことがわかる、そんなSF作品が好きだ。

    昔思い描いたようには、作家にも翻訳家にもなれなかった半生だとはいえ、名作揃いの本書を(図書館から借りて、ではなく)買って読めて、しかも感動でき、こんなサイバースペースに感想まで書き込めていることに、とりあえず満足している。

    SFという座標軸がくれた、私という点(存在)。

    PS.
    アーサーCクラークで始まる構成には作品を読む前から、泣ける。
    シェクリイの「危険の報酬」は何度も既読だがその度に世界がこの作品に近づいている、と感じる。
    ジョージ・R・R・マーティンは知らなかったが、美しく心に染みた。
    ホール・マン、未読。
    スターリングの「江戸の花」も、新江戸周辺にすむ身としては味わい深かった。
    グレッグ・イーガン「対称(シンメトリー)」。日本語なのに半分もわからず、わからないながらも良くわかった。これを英日訳した訳者には、最大限の敬意を贈ります。
    UKル・グゥィンの「孤独」を、文化人類学者の娘に生れ、自身も娘の母である作者の、「アカシアの種子に残された文章の書き手」「冬の王」「ゲド戦記」 を経由した現在の到達点なのだと、読んだ。制御された語による制御された文体が美しい。買うべき本だった。
    コニー・ウィリス未読。
    パオロ・バチガルビ、そうだろうと思う。「孤独」の最終行へと読後感はループする。
    テッド・チャン「息吹」。この世界観、この宇宙観こそ、私がSFに(無意識のうちに)求めているものなのだと、これを求めるように(SFマガジンに?ハヤカワ文庫に?)育てられて来たのだと実感する。この本を読む読者諸氏と、言葉と空気を共有できた幸せに(新たな涙ともに)感謝します。

  • 創刊700号記念アンソロジーというだけのことはあって、さすがの内容。SFマガジンに載ったもので、短篇集初収録となる作品が並んでいる。好みはあるだろうが、いずれ劣らぬ傑作揃いだ。

    何をおいても語りたいのは、テッド・チャンの「息吹」。これは創刊50周年記念特大号で読んだのだが、その時の感動は忘れられない。今回も真っ先に読んで、前と同じく、いやそれ以上に心うたれた。SFって本当に素晴らしい!とつくづく思う。並みの想像力がとても及ばないような異世界が目の前に差し出されて、それだけでもすごいのだが、圧巻はラストの数十行。冷静に淡々と綴られている言葉が、「真実」のオーラを放っている。なんだか厭世的な気分になったら(時々なる)、このページを思い出すことにしよう。

    好きだなあと思うのは、やっぱりル・グィン。「孤独」はハイニッシュシリーズに連なるものだ。研究者である母親に連れられて、異星にやってきた少女が、その星の人として成長していく。後退した文明と見なされているこの星の人々のありようが、不思議な魅力で迫ってくる。母や兄、元の世界の人たちと隔たっていく少女の姿が、切なくも凜として美しい。

    ジョージ・R・R・マーティンの「夜明けとともに霧は沈み」でも、遠い辺境の星が美しく描かれていて心に残る。特に目新しいテーマではないのに、読ませるんだなあ。

    ブルース・スターリングの「江戸の花」にはちょっとびっくり。すごくそれらしい(明治の初めの感じ)のは、訳のおかげ? ラストがぴたりと決まっている。イアン・マクドナルド「耳を澄まして」の静謐な世界も良かった。イーガンは例によって、よくわからないけど面白い。バチカルビは印象的なんだけど、やっぱり好きじゃないと再認識。

    とまあ、それぞれにあれこれ語りたくなる作品ばっかり。私はSFマガジンと同い年。ずっと続いてほしいです。

  • 積読状態だったSFマガジン700号記念アンソロジー。今は隔月刊になったけど、そのくらいで密度的にはちょうど良いのでは?とも思えます。
    創刊時から抽出された作品群は流石にどれも印象深いです。文体と雰囲気がどうも合わないと感じている作家や、何を書いているか理解出来ない作家さんの作品まで楽しめるから短編って素晴らしい。

  • 収録作の作家が超有名な方々ばかりなので、面白いかどうかは、あとはもう好みの問題では、と思う。さすがにハズレなし。

    特に印象に残った作品をいくつか。シェクリイ「危険の報酬」古い作品だが、面白かった!これが元ネタになっていそうな映画がいくつか頭に浮かぶ。マクドナルド「耳を澄まして」アンソロジー中、一番気に入った作品。長編で読みたかった。イーガン「対称」帯の記載通り、ガチハードSF。個人的にはこの手だと、もっとひねくれた変化球好み。短編だからかな。チャン「息吹」素晴らしい。

  • 自分の読解力に情けなさを感じる部分が何度か出くわしたものの、コニー・ウィリスの素敵さを知った。そして、テッド・チャンの天才感。

    ===

    アーサー・C・クラーク「遭難者」 ★★★☆☆
    • 太陽に生きる生物(ガス状の生き物らしい)が爆発によって太陽から飛ばされる。一方で、飛行機のレーダーで謎のガスの塊を見つける地球人の目線。

    ロバート・シェクリイ「危険の報酬」★★★★☆
    • 平凡な男、ジム・レイダーは報酬を得るために、危険な状況から脱出するというリアリティショーに出演する。

    ジョージ・R・R・マーティン「夜明けとともに霧は沈み」★★★★☆
    • 魑魅の栖(すだまのすみか)と呼ばれる惑星。魑魅(化け物のこと)の目撃情報や襲われた体験談はあれど、その存在自体に確証はまだない。この惑星にサンダーズはCastle in the Airを建てた。調査隊のデュボウスキーは魑魅の存在を(存在しないことを)確認しに、私はルポライターとしてその事実を記事にするために来た。
    • SF的な展開よりも、サンダーズの心情(切なさ)や人間関係を描くことに重きを置いた美しい文章。

    ラリー・ニーヴン「ホール・マン」 ★★★★☆
    • 古い翻訳小説にありがちな読みにくさがあるもあるものの、しっかり冒頭の伏線(ある日、火星が消滅することを知っている)を回収するオチは非常に良かった。

    ブルース・スターリング「江戸の花」★★★★☆
    • SF感弱めな展開。江戸の花(連日の火事)を起こしていたのは魔物だった、という話だけど、この魔物の正体は「電気」ということになるのかな。外国人作家とは思えないほどちゃんと日本の明治が描かれていたのは驚いた。

    ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア「ともに生きよう」★★★☆☆
    • 地球外生命体を探す地球人が訪れたある惑星にいる生命体。テレパシーで何かを伝えたり、脳内を探ったり、操ったりできる植物的な生き物の目線から始まるので、しばらく我慢が続くが、話が見えてくると気味の悪さん漂うスリリングな展開に。最後に人間とその生命体が強力的になるあたりはちょっと違和感。

    イアン・マクドナルド「耳を澄まして」★☆☆☆☆
    • あいにく意味がわかりませんでした。
    • 世界保健機関が少年を世界の果てにあるその島に連れてきた。ダニエルが眠ると、修道士は夢に耳を澄ませる。かつて町で疫病が流行し、少年は唯一の生存者だった。島で少年は自然の音の中から音楽を見つけてしまう。
    • 第三次産業革命でナノテクノロジー革命が起きた。初代ナノマシンのプロトタイプは世界中の人体に入り込んでいた。

    グレッグ・イーガン「対象」★★★☆☆
    • 初グレッグ・イーガン。ハードSFテイストな宇宙ものSF作品だが、字だけではなんとも脳内映像化が難しく、一体何が起きているのか頭が「???」状態になりかけたが、2回読んでなんとか話の筋が見えて来た、という感じ。
    • OMAF(軌道モノポール加速度施設)で実験を行っている際に何か設備の事故が起きた模様。科学ジャーナリストのマーティンは、軌道救急サービスの待機医師であるゾーイに同行し、ホテル・テレシコワからOMAFへ飛び立つ。先に到着していた修理班の3人は行方不明。OMAFでは四次元空間が発生していた。マーティンもうっかり四次元空間に入り込んでしまい、一時は行方不明になりかけるが、なんとか帰還に成功する・・・

    アーシュラ・K・ル・グィン「孤独」★★☆☆☆
    • 文化人類学者である母が、兄と私を連れて、ある惑星の調査のために実際にその惑星の住民とともにその文化の中で暮らす。設定は独創的だけど、物語の展開が知らんがなと。
    • P316 - 母は口を開きかけ、そしてまた閉じた。母はようやく、沈黙を選んだ人に話しかけてはいけないと言うことを学んだのである。

    コニー・ウィリス「ポータルズ・ノンストップ」★★★★★
    • 初コニー・ウィリス作品。美しくて、スローで、飽きない文章。それでいて、最後はしっかりサプライズもあり。
    • 仕事の都合で、ポータルズという何もない田舎に立ち寄った主人公カーター・ステュアート。たまたま参加したバスツアーにて、ジャック・ウィリアムスンというSF作家が住む町であることを知る。バスガイド、トーニャが案内をする。後に、実はそのバスツアーは未来から来ていたことを知る。(未来ではジャックは有名なSF作家になっている)

    パオロ・バチガルピ「小さき供物」★★★☆☆
    • 初バチガルピ。異常を持つ胎児が産まれないよう、薬物によってコントロールしているグロテスク度高めな短い短篇。

    テッド・チャン「息吹」★★★★★
    • 肺を空気で満たし、なくなると満杯になった肺と取り替える…という書き出しから、かなりパンクなSF設定でザワザワと興奮してくる。人間なのか機械なのか(機械仕掛けの人間という感じか)が暮らす世界観。オチとしては、この世のすべての動力は(エネルギーではなく)気圧差だと発見する。そもそも、SF設定の中で新たに何かを発見したところで、普通なら「知るか」なんだけど、なぜか一緒にすげえ発見だ!と思わせるのはそれだけ設定が緻密で、読者をのめり込ませるからだろう。

  • ルグィン目当てだったが…イーガンはまだ読めた

  • 全12篇からなるSFアンソロジー。
    個人的に良かったのは次の5篇。

    ジョージ・R・R・マーティン『夜明けとともに霧は沈み』
    イアン・マクドナルド『耳を澄まして』
    アーシュラ・K・ル・グィン『孤独』
    コニー・ウィリス『ポータルズ・ノンストップ』
    テッド・チャン『息吹』

  • テッド・チャン「息吹」

  • 「遭難者」久しぶりに読むクラーク、透明感のある描写は変わらず大好き。掌編といってもいいページ数に何ものとも知れない生き物の死をみとる物悲しさが詰まっている。「江戸の花」明治初期の科学技術による変化をSFにする、解説にあった“変化の文学”に納得。落語に関する本数冊読んだだけでも頻繁に名が挙がっていたこの明治初期の三遊亭円朝、私の中でのイメージはしばらくこの作品にもとづきそう。「ポータルズ・ノンストップ」も好き。SF小説好きの心をくすぐるエピソード盛り込んだ謎かけからお約束の結末へ繋げる展開が小気味好い。

    収録作品:アーサー・C・クラーク「遭難者」/ロバート・シェクリイ「危険の報酬」/ジョージ・R・R・マーティン「夜明けとともに霧は沈み」/ラリイ・ニーヴン「ホール・マン」/ブルース・スターリング「江戸の花」/ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア「いっしょに生きよう」/イアン・マクドナルド「耳を澄まして」/グレッグ・イーガン「対称」/アーシュラ・K・ル・グィン 「孤独」/コニー・ウィリス「ポータルズ・ノンストップ」/パオロ・バチガルピ「小さき供物」/テッド・チャン「息吹」

  • 個人的なベスト3は
    スターリング『江戸の花』
    ウィルス『ポータルズ・ノンストップ』
    チャン『息吹』

    スターリングのサイバー・パンク落語にはやられた。

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