火星の人 (ハヤカワ文庫SF)

制作 : 小野田和子 
  • 早川書房
4.49
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本棚登録 : 1164
レビュー : 222
  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150119713

作品紹介・あらすじ

予期せぬ事故で不毛の星・火星に取り残された一人の宇宙飛行士。彼は救助船が到着するまで、残る物資、知識と技術を駆使して生き残れるのか!?

感想・レビュー・書評

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  • 有人火星探査で事故にあい、火星に一人取り残されてしまう。
    食料は?水は?空気は?あらゆる知識と技術を駆使して、あるときは農家、あるときは建設屋、あるときは運転手となって1年以上火星でサバイバルを続けるのです。

    震災で水が少なくなって、頭も洗えない状態が続いて3日目、かゆいし気持ち悪いし、心底嫌になったものですが、これが1年以上・・・こういうちょっとした不快感・ストレスがが積み重なって、ミスやパニックにつながってくるはずなのですが。訓練をつんだ宇宙飛行士といえども、ここまでいけるのかと思うほどユーモアたっぷりに生き延びていきます。

    恐怖を感じるのは正しい状態、でもパニックにつなげてはいけない。正に生き延びる条件はこれに尽きるなぁ。
    ディックだったら、発狂していく姿を描いていくんだろうなぁ、と思ってしまうのは最近PKDに侵されてきている証拠か・・・。

    映画化の話も進んでいるそうで楽しみ。本当に監督はリドリー・スコット?
    独特の青い光を火星でどのように使うのかも気になります。

  • ここ最近読んだ中で間違いなく一番面白いSF小説。この作品のおかげで会社に通えてたようなもの(主な読書時間が電車通勤の時間のみ→会社行きたくないけど電車の中で続きが読めるぞ!→会社行こう)。

    火星に一人取り残された男の生き残りを賭けた戦いーーというあらすじを聞き、悲愴感漂う重厚なSFは今の自分には荷が重いかもと思って読むのを躊躇していたのだけれど(物凄く分厚いし)、全く予想を裏切られた。か、軽い……!ギャグ盛り沢山!まるでTwitterやブログを読んでいるかのような主人公の語り。楽しい。

    宇宙の知識に乏しく、理科や算数数学が苦手な自分にも「これはリアルだ」と思わせるところがすごい。それは主人公含め問題解決に臨む人物たちの思考の道筋がよく見えるからだ。だから失敗した時もなぜ失敗したのかがよく分かる。こんなに火星を身近に感じたのは初めて。今後じゃがいもをレンジでチンするたびにこの「火星の人」を思い出すだろう。映画が楽しみ。

  • 面白かった!
    SFにも翻訳物にも向かない頭で、カタカナやアルファベットだらけの名前をなんとなくで覚えて、水素がどうした酸素がどうしたとかいう化学な話題もなんとなくで眺め、とにかくいろんな「?」が頭を飛び交っていくのを見てみぬふりして読み進めた。
    時間はかかったけど、じっくりちゃんと読みましたとは口が裂けても言えません。
    それでも、問題解決に向けて一つ一つ着実にクリアしていくのが気持ちよかった。
    主人公のマーク・ワトニーはとにかく冷静で、どんな不測の事態にも驚く程的確な処置を施していく。
    ただただ感動の一言です。
    物語の終わりまでそれは一貫していて、キレたり、投げ出したり、諦めたりしないんです。本当に。
    すごい忍耐力だなと思う。
    素晴らしい能力です。

    そして、不運な事故で離れ離れになってしまうワトニーの仲間も。
    『宇宙兄弟』を読んだ時も思ったけど、宇宙飛行士になる人達って本当に素晴らしい人格の持ち主です。
    私には何をどうしたって無理。
    物語の最後の場面を読んでいる時に、この人達は生きるために命をかけているんだなと感じた。
    私自身は長生きなんてしなくていいから穏やかに生きていたい、なんて言ってきたけれど、言い換えるとそれは、命をかけるのが怖いから生きられなくてもいいと言っていたのと同じだったんだ。
    それは心の弱さ以外の何でもないということに気付かされました。
    この物語の中の人達は生きるために命をかけられる強さを持った人達です。
    彼らの輝きにただただ感動しました。

  • 事故で火星に一人取り残された人のサバイバル。ハードSFであり、エンジニア小説であり、エンターテイメント。ものすごく面白かった。
    何と言っても、主人公の性格、語り口。明るさとユーモアと、時々覗かせる本気のバランス。現実を受け止めつつ、絶望しない。これはある意味で「ビジョナリーカンパニー」なんかの事業のサバイバルにも通じる条件。囚人のジレンマと着実な歩み、ってやつ。
    また、翻訳が素晴らしい。ここに使われているのは、今の言葉だ、と思った。
    最後に、エンジニアとして感動したのが、砂嵐の場面。仮説を立て、データでこれを実証して、実行の判断をする、それを可能にする技術を選ぶ。素晴らしいです。この人はきっと優秀なエンジニアに違いない。

  • 3度目の有人火星探査は、その6日目に発生した猛烈な火星砂嵐によりミッションを中止せざるを得なくなる。退避の最中、不運にも折れたアンテナが主人公マーク・ワトニーを襲う。砂嵐の中に姿を消したワトニー、脈拍ゼロを告げる生命信号。苦渋の決断で火星を去るクルー一行であったが…なんと、ワトニーは生きていた。
    本書は、奇跡的に一命を取り留めたワトニーが荒漠たる赤の惑星で、地球への生還に向けて生き延びる姿を描いた傑作ハードSFです。

    おおんもろい!!
    面白い理由を事細かに記してしまうと、反って面白くなくなってしまいそうですが、魅力は大きく2つ。
    1つは、水、酸素、食料、その他もろもろの問題に対して、徹頭徹尾、科学的なアプローチを行っていること。これが、本書がハードSFと評される所以でしょうが、こんなにも読みやすいハードSFは中々ないだろうなぁ(といっても、その科学的な描写はほぼ理解できてません…)。物語は後半、ワトニーが砂塵風に直面するところ、「さすがにここは運頼りだよなぁ」と思っていたら、太陽光パネルの発電量により砂塵風の輪郭を測定する方法で問題を退ける姿をみて、「すっすげぇ」と思ったのは自分だけではないはず。「複雑きわまる問題と解決のひとつひとつを検討しているうちに、そうでなかったら気がつかなかった些細なディティールが、マークの解決しなければならない重大な問題になった。」とは、解説で引用される著者の言葉ですが、よくここまで思いつくもんだ…

    魅力の2つ目は、ユーモアたっぷりなワトニーの造形。ぶっちゃけ、このユーモアのおかげで最後まで楽しめて読み進められたものです。
    「いやもう、すこぶる順調!生きのびられる可能性が出てきたぞ」→次頁「最悪だ。もう死ぬ!」
    「アイイイイイー!」
    「委員会の連中全員に、おまえらの母親は娼婦だと伝えてください。」
    「なにゆえディスコ!?」
    うーん、すばらしい。20世紀FOXが映画化するみたいですが、頼むからこのユーモアさは削らないでおくれよ。

    ワトニーの魅力をもうひとつ。ワトニーは幾度も「こりゃダメだ」な状況にぶち当たるわけですが、きまって次のようなフレーズを発します。
    「状況はきのうほど絶望的ではないような気がしてきた」
    「事態は見た目ほどひどくはなさそうだ」
    「解決できそうな気がする」
    これは、わが身を振り返ってみて、ちょっと考えさせられるぞ。こういうフレーズは、解決に向けて頭をフルに搾らないと出てこないだろうなぁ。これから意識していこう。

    ところで、2012年8月に火星探査機キュリオシティが火星に到着し、アメリカのオバマ大統領が2030年代半ばまでに火星の有人探査を表明するなど、なんだか火星に対して拓けた話題が垣間見られる昨今なだけに、(本書のような事故は決して起こってほしくはありませんが)火星をテーマにした本が注目されるのは嬉しいことですね。

  • これほどジャガイモの栽培ばかりしているSF小説がかつてあっただろか。

    火星探査ミッション中に災害に巻こまれ、幸か不幸か生存してたった一人、火星に取り残された主人公。
    助けもこないし、水も食料もおまけに酸素までもそんなにない。
    確実に人が来るであろう次の火星ミッションは4年後。
    彼はその日まで生き延びることはできるのか?

    手に汗握る宇宙サバイバルが描かれているます(主人公のキャラと文章はユルいけど)
    こりゃもう一巻の終わり、といった中で、限られた資源を最大限生かして、生存の道を探ります。
    先述のジャガイモ栽培に始まり、酸素の確保、水の生産etc
    一見、「趣味の園芸」っぽいストーリーが続きますが、それ以外はいたってハードSF。
    特に、地球との通信手段を確保するために彼がとる行動は、現代の宇宙ファンにとっても拍手喝采です。

    物語が進むにつれ、主人公だけでなくNASAのスタッフの奮闘も強調されます。
    「限りある資源を最大限生かす」がサバイバルものの醍醐味ですが、主人公だけでなくNASAスタッフまでも、ありとあらゆるものをいたるところからかき集めて彼の救出に取り組む姿が、映画「アポロ13」を超えるスケールで繰り広げられます。

    新しい星でうまくやっていけるかな。
    遠い空の向こう、君は何を思うの。
    たぶんできはずって思わなきゃしょうがない。

    どこかのワンルームのディスコみたいになっちゃいましたが、チャレンジ精神とあきらめない心に感動する、宇宙ファンのための作品です。
    マッドデイモンって誰?って人にも、かなりおすすめ!

  • 火星有人飛行の飛行士は6人。火星到着後6日で1行はすさまじい嵐に見舞われ、撤退を余儀なくされた。マーク・ワトニーはその一員だったが、宇宙船への避難の際のトラブルで1人火星に残されてしまう。
    火星に残されたたった一人。地球との通信手段はその時点でなし。ただし火星で暮らす設備は今のところ残っている。

    その状況からのサバイバルである。
    最初から最後までほぼ止まること無く読み終えられること請け合いの傑作SFと思う。
    当初、火星での暮らしぶりが順調なので、あれ、こんな早くに予定通り進んで残り持つのかなと思ったが、やはりトラブルはつきもの。
    ワトニーは自らの専門である植物学まで駆使しながら解決していく。

    初歩的な科学の知識と、諦めない心が大切なことを実感させられる。

    読んでよかった。

  • これは面白い!宇宙開発SFとして、サバイバルものとして、傑作だと思う。どっちも好きなジャンルとは言えない私も、これには文句なし。着地点が見えているミッション遂行型のお話を、これほど楽しんで読んだことがあっただろうか、うーん、記憶にないなあ。

    この分厚さからして、主人公ワトニーには次から次へと困難がふりかかるのだろうな、サスペンスのためのサスペンスなんじゃないかなという予想は、前半当たりで、後半はまったくの外れ。火星にたった一人取り残されたワトニーが直面する難題には、実にリアリティがある。

    とは言っても、この小説の一つのキモである、科学的・技術的な部分は、ハード・ソフトともに、私にはよくわからなかった。しかーし!それなのに抜群に面白いのだ、これが。実際非常に正確な内容らしいが、自らの知識や技術を駆使して、なんとかなるはずだと目の前の問題を一つ一つ解決していく姿は、それだけで感動的だ。数字や計算も結構登場するけれど、それが何と言うか、とても「オタク的」(良い意味でだよ)で、楽しくなったりして。

    まったく、状況は絶望的なのに、読んでいてつらい気持ちにならない所が、本書の最大の美点ではないだろうか。ワトニーは、死と隣り合わせの日々の中、おそらく誰にも読んでもらえないログに、また、NASAとの交信成功後全世界に中継されるやりとりの中に、おバカなギャグを盛り込んじゃう。こんな強くて、明るくて、優秀な人、いないよねえ。でも、いいじゃないか、SFなんだから。

    火星上での奮闘と並行して、NASAの動きも語られる。あら、組織での駆け引きとかがワトニーの運命に影響するという、イヤーなパターンかなあと思ったらば、これも外れ。腹黒い奴は登場せず、何と某国までが救出に協力するんである。いやもう、清々しい。あり得ないけど、いいじゃないか(以下同文)。

    しかしまあ、つくづくアメリカ人って「究極の状況で個人が頑張る」ストーリーが好きだなあと思う。これが受けるのは当然だろう。映画化も必然(誰がワトニーをするのか?ということと、ジャガイモの有機栽培をきちんと映像化するのか?という点が気になる)。とにかく、じめじめしないオタク的エンターテインメントの快作だ。

  •  火星探査中の事故のためたった一人で、火星に取り残されてしまったワトニー。限られた物資の中、ワトニーは知恵を絞り火星でのサバイバルを開始する。

     ハードSFなので専門的な話が出てくるものも、小説全体を通じて面白かったです!

     火星でのサバイバルでどんな問題が出てくるかというと、機器や通信の話はもちろんですが、食料や水も大事な問題です。ワトニーは水素と酸素を電気分解して水を作ったり、ジャガイモの栽培に挑戦したりします。

     ジャガイモの栽培の肥料に自分の排泄物を利用し、肥料を作ったりと、宇宙で生活する上での問題も、そしてその解決方もあくまで現実的です。こうしたリアリティあふれるサバイバル方法が読んでいて面白いです。

     そしてワトニーの語り口も魅力的。絶望的な状況に陥りながらも、その語り口はユーモアが溢れています。こうして読んでいると、火星生活もそんな悪くないんじゃないか、と思わされるほど(笑)。

     そして終盤は、食料が無くなるまでに火星から脱出するため火星を横断することになります。もちろんその横断も一筋縄ではいかなくて、砂塵に飲み込まれそうになったり、火星の崖から転落したりと、危機の連続です。

     こうした広大な宇宙を前に、人間は無力なのか。火星の厳しい環境は、人間に対しそう問いかけているように思います。そしてワトニーは意識的にか、無意識的にかは分かりませんが、自らの知恵と行動力、そしてユーモアで、その問いに”NO”を突きつけます。人間の強さが宇宙でのサバイバルを通して描かれるのです。

     そして、ワトニーの最後のログは、人間個人の話だけでなく、人類全てが持つある力を肯定してくれています。ハードSFでも描かれるのは技術の凄さではなく、人の強さと優しさなのです。だからこそ、自分はこの小説を想像以上に楽しめたのだと思います。

     この小説が映画化した『オデッセイ』も間もなく公開されるみたいで、久しぶりに映画館に行こうかな、と思いました。宇宙SFは小説で物語や技術を、映画では壮大な宇宙を映像で楽しめるということに最近気づき始め、宇宙の小説も、そして映画も気になり始めている今日このごろです。

    第46回星雲賞〈海外長編部門〉


    以下、引用です。小説の最後のページのひとつ前、p573より。





     ぼくを生かすためにかかったコストは何億ドルにもなるはずだ。ばかな植物科学者ひとりを救うために、なんでそこまで?
     うん、オーケイ。ぼくはその答えを知っている。一部はぼくが象徴しているもののためだろう。――進歩、科学、そしてぼくらが何世紀も前から描いてきた惑星宇宙の未来。だが、ほんとうのところは、人間はだれでも互いに助け合うのが基本であり、本能だからだと思う。そうは思えないときもあるかもしれないが、それが真実なのだ。
     ハイカーが山で遭難したら、捜索隊が組織される。列車事故が起きたら、献血する人の行列ができる。地震で都市が崩壊したら、世界中の人が緊急救援物資を送る。これは深く人間性に根ざした行為だから、どの文化圏でも例外なくおなじことが起こる。たしかになにがあろうと気にもかけない大ばか野郎もいるが、そんなやつより、ちゃんと気にかける人間のほうが圧倒的に多い。だからこそ、何十億もの人がぼくの味方をしてくれたのだ。
     めっちゃクールだろ?

  • 死んだと思われ、1人火星に取り残された宇宙飛行士が限られた物資と、自分が持つ知識・技術を総動員して生き残る努力をしていく。
    科学的表現が長々続くとちょっとすっ飛ばしましたが、ものすごーく面白かった!
    何より主人公のキャラクターがとても魅力的。
    「みてみて!おっぱいーー(・Y・)」は衝撃的な名言だわ。
    無事地球に帰還するところまで読みたかったなあ。

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