あまたの星、宝冠のごとく (ハヤカワ文庫 SF テ 3-7)

  • 早川書房
3.46
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感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (591ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150120559

作品紹介・あらすじ

常にSFの最先端を独走してきた著者による晩年の円熟した作品を中心とした短篇10本。

感想・レビュー・書評

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  • 「アングリ降臨」「悪魔、天国へいく」「肉」「すべてこの世も天国も」「ヤンキー・ドゥードゥル」「いっしょに生きよう」「昨夜も今夜も、また明日の夜も」「もどれ、過去へもどれ」「地球は蛇のごとくあらたに」「死のさなかにも生きてあり」の10篇収録。1988年刊行。

    この中で良かったのは「すべてこの世も天国も」「いっしょに生きよう」「もどれ、過去へもどれ」かな。「地球は蛇のごとくあらたに」もユニークなストーリーだったな。

    「アングリ降臨」
    地球を訪問したタコ型の異性人アングリは、実在する様々な神々を同行させていた。地球を去る際、アングリは希望する百万の地球人を同行させることにした。

    「悪魔、天国へいく」
    神が死んだ。魔王サタン(ルシフェル)は、天国へ赴き、天国を丸々譲り受ける交渉に成功した。

    「肉」
    妊娠中絶が違法化された。乳幼児を手放すため養子縁組ミセンターに並ぶシングルマザーたち。乳幼児たちを待ち受ける運命は…。

    「すべてこの世も天国も」
    小国エコロジア=ベラの若き女王アモレッタは、強大な隣国ブルビオ=アシダの王子アドレスコと恋に落ちた。小国の将来を憂いたエコロジア=ベラ顧問団は小国の将来を憂いたが、アモレッタは結婚の意志を変えない。そこで顧問団は一計を案じた。

    「ヤンキー・ドゥードゥル」
    傷病兵を治療する病院に収容されたドナルド・スティルスは、重度の薬物中毒にかかっていた。その薬物は、人を殺人兵器へと変えるため戦場で常用されているものだった。

    「いっしょに生きよう」
    ある惑星に調査にやってきたケヴィンらは、テレパシーを操る植物と遭遇する。その植物には、未知の高等生物が共生していて…。

    「昨夜も今夜も、また明日の夜も」
    道行く女を騙してはアンナのもとへ連れ帰るミスタ・チックの目的は?

    「もどれ、過去へもどれ」
    自己中な美人学生ダイアンは、55年後の未来へタイムトリップして、4週間だけ未来の自分と入れ替わることにした。75歳になった未来のダイアンは、毛嫌いしていたニキビ面の不細工男ドンと仲むつまじい結婚生活を送っており、そこに至る悲惨な過去を知らされるる…悲劇!

    「地球は蛇のごとくあらたに」
    地球=〈彼〉を理想の恋人と思い詰めた美少女Pは、莫大な遺産が転がり込むと地球の環境を守る活動に投資を始める。やがて〈彼〉の気配を感じ、導かれるように北極へとたどり着いたPは人類最後の人となる。人類滅亡譚。

    「死のさなかにも生きてあり」
    何の不満も無いがすっかり生きる気力を失ったエイモリーは自殺し、死者の国を彷徨う。

  • 贅沢品になった肉のおぞましい供給源が暗示される「肉」とか、自然が美しい国のお姫様と公害が蔓延する工業国の王子様との恋愛を皮肉に描いた「すべてこの世も天国も」とか、薬物依存から抜け出せない帰還兵の狂気を描いた「ヤンキー・ドゥードゥル」とか、擬似的な時間旅行の結果、冴えない同級生が最愛の夫になることを知ったにもかかわらず、その同級生を射殺した挙げ句、悲惨な最期を遂げる女性を描いた「もどれ、過去へもどれ」とかを読むと、唯一牧歌的で幸せな話に見える「いっしょに生きよう」も、本当は何かあるのかと勘ぐりたくなる。
    収録作品:「アングリ降臨」(小野田和子訳)、「悪魔、天国へいく」(小野田和子訳)、「肉」(小野田和子訳)、「すべてこの世も天国も」(小野田和子訳)、「ヤンキー・ドゥードゥル」(小野田和子訳)、「いっしょに生きよう」(伊藤典夫役)、「昨夜も今夜も、また明日の夜も」(小野田和子訳)、「もどれ、過去へもどれ」(小野田和子訳)、「地球は蛇のごとくあらたに」(小野田和子訳)、「死のさなかにも生きてあり」(小野田和子訳)、「銃口の先に何がある?」(小谷真理による解説)

  • SFって正直難しいな〜と思ってしまうけどどれも面白かった。お気に入りを決めたい。

  • J•ティプトリーの宇宙人は相変わらず可愛らしく魅力的で、お話は少しブラック。
    いや、自殺する少し前の作品らしいからブラック度はだいぶ増している。
    それにしても各短篇のテーマは同じ人が書いたと思えないほどバラエティに富んでいて、宮部みゆきさんを思い出す

  • 綺羅星の物語。

  • 色々な意味でブラックだな~~~SFでもある。
    地球を一男性として肉欲込みで愛する女性の「地球は蛇のごとくあらたに」とか、発想が異次元すぎるでしょ

  • 2年ぶりのティプトリー作品は、装丁がこれまた印象的な「あまたの星、宝冠のごとく」。この作品、初訳にしてなんと2016年刊行。早川書房の創立70周年を記念する文庫企画「ハヤカワ文庫補完計画」の一環として発表されたようですが、没後30年を経過してなお読書を魅了し続けるティプトリーになんだか感動してしまったり。

    本書は中期から晩年にかけての10篇を収録。2年前に読んだ「故郷から10000光年」に比べると、やはりどれも読みやすい作品ばかり。あのついていくのが大変な作風にちょっぴりの懐かしさを覚えつつも、とりわけ以下4作品が印象に残りました。

    「ヤンキー・ドゥードゥル」
    薬漬けの帰還兵を描いた作品で、なんだか現実世界でも起こりえそうな物語。本書はわりと後味の悪い作品が多く収録されていますが、本書もそんな作品のひとつ。躊躇ない展開が魅力。

    「いっしょに生きよう」
    本作品は『SFマガジン700【海外篇】』に収録されており、今回は再読にあたりました。初読の際はそんなにヒットしなかったのですが、今回なかなか印象に残ったのは、後味の悪い作品が多いなかで唯一(?)救いのある作品だからでしょうか。地球からの異星調査隊が奇妙な共生生物と出会う心温まる物語です。

    「もどれ、過去へもどれ」
    本書で一番好きな作品。
    開発されたタイムマシーンは過去の自分と未来の自分を2週間だけ入れ替わらせることができる。いまや老いたドニーとダイアンは75歳の老夫婦。彼らは55年前、つまり当時20歳の自分と入れ替わることを決意。そして、20歳のドニーとダイアンは、彼らと入れ替わりに55年後の世界に到着する。驚愕の未来に当惑するふたりだが…
    最後までハラハラドキドキしながら読み進めましたが、まさかあんな展開になるだなんて…後味の悪さは本書で随一でしょう。それだけに深く心に刻まれた作品でした。

    「地球は蛇のごとくあらたに」
    地球を男性として愛する頭のおかしな女性が主人公。女性のバカらしい言動に苦笑いしつつ、これまたなんだか救われない作品なのですが、バカな女のあの結末はむしろ喜劇なのかもしれないと思ったり。

    さてさて、残るティプトリーの小説は、短篇集「老いたる霊長類の星への賛歌」と長編「輝くもの天より堕ち」のみ。読みたいけど、読み終えたくないという寂しい思いが胸中に。複雑な心境です。

  • 2017/11/4購入

  • 邦題がやたらと格好良いことで有名なティプトリーの短編集。SFもの、寓話もの、ディストピアもの、神話ものが詰め込まれており、かなりバランスが良いと思う。

    個人的に面白かったのは、自分自身が、過去~未来の自分自身と入れ替わることのできるタイムトラベルものの「もどれ、過去へ戻れ」と、地球を男性として愛し、一生を地球のために捧げる女性の話の「地球は蛇のごとくあらたに」。

    後者はティプトリーが別名義で書いた作品らしく、らしくない笑いの要素などが新鮮で楽しめる。

  • ティプトリーの短編集がいつの間に出てたんだ!と購入。
    なんでも作者の死の直前に書かれた最後の短編集だそうで、タイトルも素敵です。
    ティプトリーは女性ということを隠して創作活動をしていたそうですが、途中で女性ということはバレちゃたみたいですね。
    この短編集に入っている短編のいくつかは、女性の性欲を堂々と書いてたり、はたまたイかれた女も書いてるし、とにかく女性像がストレートというか辛辣でびっくりします…
    「もどれ、過去にもどれ」のヒロインなんて、アホなんですがなんだか気持ちわかります。
    ティプトリーの中では傑作集というわけではないですが、女性が書いた辛辣な女性像、という意味では興味深い内容だと思います。

  • SF。中短編集。
    「いっしょに生きよう」は『SFマガジン700海外篇』で既読のためスルー。
    SFっぽくない作品もいくつか。ガッツリSFのほうが好み。
    良かったのは、ファーストコンタクトもの「アングリ降臨」と、残酷なタイムトラベルもの「もどれ、過去へもどれ」。
    正直、「いっしょに生きよう」がベストで、それほど収穫は大きくなかった印象。
    ティプトリーファンの人なら、晩年の作品ということで価値があるかも。

  • 人間の業や生々しい現実を突きつけながら、時には冷たく、時には優しく、未来への絶望と希望を同時に感じせてくるSF短編集。特に「もどれ、過去へもどれ」と「いっしょに生きよう」が好き。

  • (後で書きます)

  • SF好きな方なら、ティプトリーについて今さら説明するまでもないと思います。
    そんなティプトリーの中でも、飛び抜けてストレートな作品が集められた短編集だと思います。ティプトリーの作品には様々な暗喩が込められていることが多いですが、この短編集に納められた作品はどれもこれも「言いたいことがすぐわかる」ある意味シンプルな、その分グサグサ来る鋭さを持っています。

    鴨的に印象に残ったのは、「ヤンキー・ドゥードゥル」「もどれ、過去へもどれ」「地球は蛇のごとくあらたに」の3編。
    特に「もどれ、過去へもどれ」「地球は蛇のごとくあらたに」はどちらも「痛い」女の話で、ここまで痛い女性像を描けるのはティプトリーならでは。どちらの話も、後味が悪いんですよねー。この後味の悪さを楽しめるようになったら、SF上級者の仲間入りかもヽ( ´ー`)ノ

  • 「アングリ降臨」に書かれた、宇宙人の驚くほどの無邪気さと不理解さ、それに熱狂する地球人の様子が、一番彼女っぽい作風だと思う。
    あとは…、残念ながら退屈。まどろっこしいというか、いつもの奔放さを失っているというか。全ての作品の結末が、なんだか小さく収縮してディストピア風味に終わっちゃってるのが悲しい。

    読み終わって、本の帯に、「ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの最後の短篇集!」って書いてあるのを見つけて、「ああそうだったんだ」と納得して、それから切なくなった。

  • 短編集。「いっしょに生きよう」は「たった一つのさえたやり方」とアイデアが近い。

  • 一度図書館で借りたが、時間が無く2/3程読んで返却
    他の本を借りに図書館に行った時、開架されていたので、続きを読むことが出来た。

  • 「肉」「いっしょに生きよう」「もどれ、過去にもどれ」辺りが好き。
    読後感を考えると「いっしょに生きよう」が一番好きかな。

  • 2016年2月刊。原著は、1988年に刊行された。10篇を収録。原題のCrown of Starsが「あまたの星、宝冠のごとく」となっているところが、素敵で良い。伊藤典夫さん訳の「いっしょに生きよう」が、最も楽しめた。小野田さん訳の「ヤンキー・ドゥードゥル」は、キツイ内容で心に残る。独自色の強い世界観が展開され、馴染むのは難しい。

  • 過去へ戻る話が一番胸に来た。
    ダイアン、一時の気の迷いで…

  • 想像していた以上に読むのが辛い作品が多かった。皮肉たっぷりのクールな作品ばかり。特に「肉」の、一見無関係のエピソードが、ラスト一つにつながった時に見える真相にぞっとさせられた。これを事前に想像できない自分は甘ちゃんなんだろうなあ。他の作品も、人の愚かさを容赦なく見せつけてくれていてしんどい。だから一番好きなのは「アングリ降臨」。こんな異星人に私も会ってみたいなあ。

  • ハヤカワ文庫補完計画の1冊。
    全部で70タイトル出るという補完計画も終盤に近付いたが、本書は初期からずっと待っていたうちの1冊でもある。
    読み応えのある短篇集で、シニカルな結末を迎えるものが多い。そして、そういうラストの方が、希望が持てるハッピーエンドよりも印象に残る。
    特に『ヤンキー・ドゥードゥル』と『もどれ、過去へもどれ』のラストシーンが凄い。

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