破壊された男 (ハヤカワ文庫SF)

  • 早川書房 (2017年1月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784150121112

作品紹介・あらすじ

エスパーが実権を握るディストピアを舞台に、サイバーパンクの先駆けとも言えるスピード感溢れる攻防戦が描かれる。第一回ヒューゴー賞受賞作

みんなの感想まとめ

エスパーが人の心を覗き見られるディストピアで繰り広げられる、スリリングな攻防戦が魅力の作品です。主人公ベン・ライクは、ライバル企業の社長を殺害するために巧妙な計画を立て、警察のエスパーであるパウエルに...

感想・レビュー・書評

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  • 初ベスター。…いやいや、テレパスと通常の会話文がごっちゃになってて、どう読めばいいかわからない箇所が多々あるんだけど…。訳すとき(筒井康隆さんの「七瀬」シリーズなどを参考に)もっとなんとかならなかったの??
    ・・と、途中までは思ってたんだけど…。これは凄いものを読んだ!!さすが第一回ヒューゴー賞受賞作だ。
    なんて言えば伝わるんだろうか——
    もともと「なんかカッコイイ!」と思ってたんだけど、読み終えた今表紙の素晴らしさが際立つ。

  • エスパーが人の頭の中を覗き見られるので、殺人事件が70年以上も発生していない時代の物語。モナーク産業の社長であるベン・ライクは会社を守り成長するためライバル企業の社長であるドコートニーを殺害する。もちろんエスパーにばれないように綿密な計画を立ててだ。一方でニューヨーク市警心理捜査局総監のパウエルは自身のエスパーとしての能力を活用しながら、ライクを追い詰めようとする。逃げるライクに追うパウエル。「顔のない男」に苦しめられるライク。そして驚きの真相が結末にくる。最後までスリル満点で楽しめました。

  • 鴨同様SF好きな師匠曰く「『分解された男』の方がしっくり来るよね」(-。-)ぼそっ
    はい、創元SF文庫で、沼沢洽治氏の翻訳による「分解された男」が刊行されています。鴨もこちらを先に読みました。そのせいなのか、例の歌はやっぱり「もっと引っ張る、曰くテンソル」の方がしっくり来ますヽ( ´ー`)ノ ←わかる人にはわかる。 改めて全編を読んでみて、原題である「The Demolished Man」の訳は、「破壊」よりも「分解」の方がより適切なのかな、という印象はあります。再構築が可能である、という意味において。

    でもですね、全体を通しての完成度は、さすがの伊藤典夫訳です。
    ワイドスクリーン・バロックの代名詞とも言えるアルフレッド・ベスターの第一長編にして第一回ヒューゴー賞受賞作を、クライム・ノベルとしての本質を失うこと無く適度に猥雑に、かつ端正にまとめあげる手腕は「素晴らしい」の一言。創元版ではやたらとヤクザ臭い台詞回しだったパウエルが、それなりに警察官らしい口調になっているのがしっくり来ます。でも、犯人役のベン・ライクが伊藤訳でもやっぱり頭悪そうに感じてしまうのは、原文がそうだからなんでしょうねぇ。この点は創元版でもハヤカワ版でも同じ印象。

    日本人SF者たるもの、翻訳文学の制約はどうしても意識せざるを得ないところです。
    同じ作品を違う翻訳者で読んでみるという体験は、翻訳文学を愛する者として損は無いと思いますので、未読の方はぜひ両方読んでみてください。違った面白さが楽しめますよ!

  •  かつて『破壊された男』を読みたくても絶版で『分解された男』しかなかったので仕方がなく後者を読んだのだが、それでもやはり人々はベスターの『破壊された男』について語る。「分解」じゃ、何だか溶剤に浸けられて溶けていくみたいだ。そういう話ではない。破壊/分解に当たる原語はデモリッシュで、デストロイのような無目的な破壊ではなく、建物を壊すなどの計画的な破壊の際に使う言葉だという。とすると「解体」が相応しいということになるのだが、本作でデモリッシュされるのは身体ではなくて、精神のほうなので、「解体」ではなく「解心」なのだ……
     1965年のハヤカワSFシリーズ以来、およそ半世紀ぶりに復刊を果たした「破壊」は伊藤典夫の長編初翻訳だった。

     犯罪の撲滅は皆の願いだ。ではどうするか。監視するのである。江戸時代だったら、五人組。住民同士監視させ合い密告させ合うのは全体主義社会の常套手段であった。いまはまさに監視カメラ社会。ソウヤーの『ホミニッド』はネアンデルタール人が進化した平行世界を描いたが、ここでは各自が腕に装着する全方位カメラのようなものですべてを記録していることで犯罪を抑止していた。
     ベスターの描く24世紀は、エスパー(といっても本作ではほぼテレパスのことである)が相当数に存在して、その能力を使って仕事している社会。テレパシーによる監視社会である。計画殺人は久しく不可能になっていたが、モナーク産業の社長ベン・ライクはライヴァル会社の社長ドコートニイ殺害を計画する。その計画をテレパスに見破られないための様々な方策はある。周到に計画された殺人事件。想定外の出来事はあるも、ともかく目的は遂げ、明白な証拠も残していない。
     かたやエスパーにもその能力によって一級から三級まであり、本作のもうひとりの主人公、ニューヨーク市警心理捜査局総監リンカーン・パウエルは一級エスパーの捜査官。パウエルは漏れてくるテレパシーでライクが犯人であることに気づく。だが、自白が証拠にならないのと同様、テレパシーで知りましたでは法廷で戦えない。物的証拠を得なければならないのである。そうなってくるとテレパシーといえども、名探偵の勘とほぼ同等。

     破壊された男というタイトルだが、破壊された男はまだ出てこない。ライクが計画殺人という前代未聞の犯罪で逮捕されたとき、ライクは破壊されるのだ。
     ミステリとしては倒叙ものだが、実は謎がある。毎夜、ライクの悪夢の中に登場する「顔のない男」とは誰か。それはドコートニイだという解釈が最初に示され、ライクは破壊される危険を冒してドコートニイを殺害する。しかし実は殺人の動機はよくわからない。ホワイダニットになっているのだ、この作品は。
     原書は1953年刊だが、見事に古びていない。というか、ようやく時代が追いついたというべきかも知れない。実業家にして宇宙をすべて支配したいという野望を持つ男ベン・ライク。パウエルに追い詰められるライクに感情移入しつつも、私は終始、頭の中でドナルド・トランプをベン・ライク役として演じさせながら読まざるを得なかった。

  • アルフレッド・ベスターの特徴とも言える生命力に溢れる主人公ベン・ライクの暴れっぷりが面白かった。
    どんどん人を巻き込んでいき、アングラにも躊躇なく首を突っ込み、人を利用しまくり、金をばらまき…と目的に向かってやりたい放題である。
    宿敵となる警察官で一級エスパーのパウエルにさえ一目置かれる有能でイケメンでモテモテのチート性能なベン・ライクだがエスパー能力はなく父親との確執で復讐に燃えるという真っ直ぐな純粋さもあって、ベスターの描く主人公は本当に魅力的だと感じた。
    内容としては、SF要素もしっかりあるがミステリー要素も強い。
    エスパーに心を読まれる犯罪ができない監視社会でどうやって殺人するか?という部分からどうやってベン・ライクを起訴するか?といった部分までテンポよく描かれていて疾走感がある。
    終わり方も希望があって好きだった。
    全体を通して古典SFらしい雰囲気もあって個人的に好みだったし、エスパー能力についての想像力、表現力はユニーク且つ見事だなと思った。

  • 中盤からベン・ライク側の描写が少なくなったのは残念。彼の一挙手一投足がこの物語のエネルギーだと思う。それでも中盤までの展開は読みごたえ十分で、少々古臭い未来社会の描写に目をつむれば、現代の読者にも通じる作品ではないだろうか。パリントン・J・ベイリーが好きな方にはおすすめ。

  • ハヤカワSF文庫なんですけど、これミステリーですね。
    古典の復刊だったみたいで、訳者の違いのこととか他の方の考察を見ているのが興味深かったです。
    文章と内容は如何にもハヤカワSFな感じで、でもわかりにくくはないんですけど、なんか最後まで入り込めなかった。なんでだろ?

  • 創元SF文庫からも別訳で出ていますが、ハヤカワ文庫のは表紙が気に入ってます。

  • 1953年の第1回ヒューゴー賞受賞作。テレパシー能力を持つエスパーの監視により計画殺人が不可能になった社会。70年ぶりの殺人事件に犯人と刑事がエスパーたちを駆使して対決する。
    基本的にSF設定のミステリーという感じだが、一口にそういう説明ですませられないものがある。人名に@とか&を使っちゃうセンス、原文のレイアウトどうなってんだって思う遊び心を感じる文章の配置、そして徐々に高まっていくテンションと疾走感、これらがベスター独特の世界を作っているからだ。若干の読みづらさもあり好みが分かれる作家だとは思うが、自分は、壮大なラストに<跳躍>するのが好き。

  •  読みにくい。一読した際の感想はコレ。そもそもエスパーが存在するという世界観が分かりにくい。エスパーがどういった能力を持っていて、世界でどのような地位にいるのかという説明がない。
     さらに、ベン・ライク、モナーク産業、カースン・ブリーン、ドコートニィといった固有名詞がどんどん出てくる。一気にいろいろな情報が出てきて、それが何かよく分からず、頭に保留しながら読み進めなければならないという、読者に負担をかけるタイプの本である。
     もちろん、説明めいた文章が出てくるのは小説としてはマイナスの面もあると思う。とはいっても、小説として描きながら、もう少し情報の出し方を工夫することもできるはず。翻訳モノという点も考慮しなければならないが、それでも読みにくい。
     話のスジとしては、ベン・ライクというモナーク産業の社長が、ライバル会社ドコートニィ・カクテルの社長、クレイ・ドコートニィを殺害するというもの。無理やり分類すれば倒叙モノになるのだろうか。ベン・ライクが、ドコートニィを殺害するための工作を行い、実際に殺害。そこからは、パウエルというニューヨーク市警心理捜査局総監が捜査の指揮を執り、パウエル対ベン・ライクという形で、探偵対犯人の対決が描かれる。
     読みにくいポイントの一つかもしれないが、この世界を二分するほどの大企業の社長が、実行犯としてこんなに軽々しく行動するか?という点がある。どうにも、ベン・ライクという人物が社長らしくないのである。作中では魅力的な人物と登場人物から言われているが、さっぱり魅力的ではない。
     ミステリとしては、ゲル状のものに水を入れ、拳銃で撃つというトリックが出てくる。弾丸が見つからないというトリック。しかし、あまり意味がない。
     殺害現場のマリア・ボーモンド邸で「サーディン」というパーティーゲームが行われるように工作をし、実際にそのゲームがされ、その最中に犯行を行うのだが、これもチープ。そもそも、ベン・ライクがどうして稀覯本の工作をうまくできたのかも分からないし、この本を送ったのがベン・ライクであることを隠していないので、この点からも疑われる。
     そもそも、頭の中を透視することができるエスパーがいる世界で、不可能とされている殺人を実行するという点がキモとなる部分なのに、殺人があっさりできすぎるのも問題。一級エスパーであるオーガスタス・テイトを利用するという発想はまだしも、「頭から離れない歌を聞いておく」というのは……。その程度で犯罪ができるなら、いくらでも犯罪がありそうなものだ。
     では完全に駄作かというと、そういうわけでもない。さすが、第1回ヒューゴー賞を取った古典ということもあり、頑張って読めばそれなりに面白い。特に、登場人物の使い方が上手い。
     モザイク多重起訴コンピューターの「長老モーゼ」とか、宇宙空間の遊園地であるスペースランドなど、それっぽい設定で読者を飽きさせないようにしているのも分かる。
     最大の問題は、古典ゆえの古さかもしれない。事件の鍵を握るバーバラ・ドコートニィをめぐる捜査、ベン・ライクの良心である「顔のない男」の存在など、どこかで読んだことがあるような設定が多い。これが古典なので、元ネタなのかもしれないが、古典は後で読まれるとそういった点で損をする。よくあるネタの作品のように感じてしまう。
     総合的に見ると、読みにくい古典。世の中には、シャーロック・ホームズもののように読みやすい古典もあるので、そういった点では減点。ただし、古典らしい良さもあるにはある。そんな感じ
    ● メモ
    ☆1
     顔のない男の悪夢を見て、主人公ベン・ライク(モナーク産業の社長)は目を覚ます。お抱えのエスパーの医師の診察を受ける。ライクは、自分が悪夢を見る原因は、ライバル会社の社長ドコートニィにあると考える。ライクはドコートニィに合併を提案する。回答は「承諾」だったが、ライクはこの回答を「拒否」だととらえ、ドコートニィを殺害することを決意する。
    ☆2
     ライクはドコートニィ殺害のために、一級エスパーのオーガスタス・テイトを仲間に引き入れる。
     テイトは、ニューヨーク市警心理捜査局総監であるリンカーン・パウエル宅で行われるエスパーのパーティに参加する。ここでテイトは、ドコートニィの滞在先について、その主治医であるサミュエル・@キンズから情報を得る。このパーティでは、パウエルの恋人ノイス・メアリ、エラリィ・ウェスト(モナーク産業の娯楽部長)等も参加しており、テイトのせいでギルドを追放されたジェリィ・チャーチも、パーティには参加していないが登場している。
    ☆3
     ライクによる犯罪の準備。テイトから、ドコートニィがいつもどおりマリア・ボーモンド邸に泊まると聞いたライクは、まずシェリダン・プレイスにあるセンチュリー・オーディオ・ブックストアで『パーティをしましょう』という稀覯本を購入し、マリア・ボーモンドにプレゼントとして贈る。そして、水曜日のパーティへの招待を受ける。
     それからライクはモナーク産業の科学区を訪れ、視覚ノックアウト・カプセルを一つかすめ取る。さらに、心理ソング株式会社に立ち寄り、ダフィ・ワイ&で曲の依頼をする。そして、頭に残る曲を聴くことに成功する。これが、殺人についての考えをエスパーに透視されないための作戦となる。
     次にライクは銃を買うために、質屋をしているジェリィ・チャーチのもとを訪れ、銃を購入する。
    ☆4
     マリア・ボーモンド邸。ライクとテイトがドコートニィ殺害のためにパーティに訪れる。チャーヴィルの息子(パウエルのパーティにも参加していた)がいるというアクシデントがあるが、貸しを作る形でパーティから追い払う。ライクが送った本にあった「サーディン」というパーティーゲームが始まり、ライクはドコートニィ殺害を実行しようとする。
    ☆5
     犯行の決行。ライクはドコートニィを殺害する。殺害の場面で、ドコートニィはライクからの合併の提案を承諾していると告げ、「我々は敵ではない」と語るが、ライクは聞き入れない。ライクは弾丸を使わないというトリックを用いてドコートニィを殺害する。このとき、犯行現場にはドコートニィの娘がいた。この娘は犯行に使われた拳銃を持って逃げ出す。ライクはテイトを連れ、娘を探しに行こうとするが、死体が発見され、現場にとどまらざるを得なくなる。
    ☆6
     パウエルによる捜査開始。テイトは、二級エスパーで弁護士の1/4メンを呼ぶ。パウエルは、テイトがドコートニィの娘が裸で逃走していたことを知っていたことから、テイトを疑う。
     パウエルはテイトとの対決を宣言する。「これからは敵か」「敵だ」
    ☆7
     捜査開始。「モザイク多重起訴コンピューター」である長老モーゼに、事実と証拠を突きつけ、起訴可能という判断を得ることが目的となる。ニューヨーク市警本部長のクラッブはテイトを恐れている。パウエルは「のろま」と「きれもの」作戦を実行し、証人等にのろまをあてがい、のろまを追っ払って油断しているところを狙う。のろまに全般的な捜査をさせ、バーバラ・ドコートニィだけはきれものに探させる。
    ☆8
     テイトとパウエルによるバーバラ・ドコートニィの争奪戦。テイトはキノ・ウィザードという賭博の元締めに依頼し、パウエルは秘密諜報網を利用する。
     のろまときれもの達の捜査はいずれもライクとテイトにより封じられる。
     この章の最後で、スニム・アジをきっかけとして、ライクはチャーチから、パウエルはフレッド・ディールから、バーバラの居場所を聞く。
    ☆9
     チューカ・フラッドの虹の館におけるバーバラ・ドコートニィ争奪戦。チューカ・フラッドもエスパーだった。パウエルはこの争奪戦に勝利し、バーバラ・ドコートニィを確保する。争奪戦にはキノ・ウィザードもいた。パウエルはベーシック神経ショックでキノとその妻を倒し、バーバラを手に入れる。ライクは銃でパウエルたちを撃つことができるタイミングがあった。パウエルはそのことを分かっており、撃てばベーシック神経ショックでライクを倒そうとしていたが、ライクは撃たなかった。
    ☆10
     パウエルはバーバラを確保する。バーバラは既経験感療法を受ける。バーバラを透視してパウエルは、ドコートニィが死にたがっていたことを知る。パウエルはドコートニィの症状を知るために金星に行き、主治医であるサム・@キンズに会う。
     パウエルは@キンズに会い、ドコートニィは自殺していなかったという話を聞き、テイトがライクに協力していることを確信する。
     パウエルは地球に戻り、ジョーダン博士から、自分がモナーク産業のために開発したロードプシン・イオン化剤の説明を聞き出す。さらにチャーチを罠にかけ、テイトに銃を売らなかったかと問い詰める。
    ☆11
     パウエルはチャーチとテイトを脅す。テイトは陥落し、ライクと組んでいたことを認める。チャーチも最終的には陥落し、パウエルにすべてを話す。
     パウエルによるバーバラの透視。メアリは、パウエルがバーバラを愛していると語る。
    ☆12
     スペースランドという宇宙空間の遊園地で、パウエルがライクとモナーク産業の暗号課主任ハソップを追う。このスペースランドでキノ・ウィザードが死ぬ。ライクは、事件の動機の手がかりになるハソップを殺害しようとするが、保護区域という混じりけなしの自然がある地域で、パウエルはハソップを助ける。
    ☆13
     謎解き。モザイク多重起訴コンピューター「長老モーゼ」の前で、ドコートニィ殺害事件の分析を行う。
     ライクは、「サーディン」というパーティーゲームが行われた機会を利用してドコートニィ殺害を実行した。「サーディン」というゲームが載っている本をマリア・ボーモンドに贈ったのはライク。その本ではっきりと読めるのは「サーディン」だけだった。
     ボディガードを気絶させた方法。これはロードプシン・イオン化剤を利用した。ジョーダンという男がライクの私設警官隊のためにこれを開発した。
     殺人の方法。これはゲルのカプセルに水を満たし、拳銃で撃った。
     動機について、「ドコートニィが合併の提案を拒否した」という仮説を入力したところ、長老モーゼが出した起訴成功率は97.0097%。しかし、暗号解読の結果は「合併承諾」という回答だった。ライクには動機がないことになる。
    ☆14
     ライクはブービートラップで三度、死にそうになる。そして、エラリィ・ウェストとブリーンの二人が、ライクとの契約がギルドから禁じられたと語る。ライクは、ブービートラップを仕掛けた犯人をチューカ・フラッドだと考え、ウェスト・サイド要塞に行く。チューカは犯人ではなかった。
     ライクは、ブービートラップの犯人がパウエルだと考え、パウエルをドコートニィ殺害に使った銃でおびき寄せようとする。しかしこの作戦はパウエルに見破られる。
     パウエルは、ライクからブービートラップを仕掛けられた話を聞き、ライクをのぞいて事件の真相に気付く。長老モーゼは正しかった。ライクのドコートニィ殺害の動機は激情。バーバラのシャム双生児のイメージ、ドコートニィの罪の意識、ライクがチューカの家でパウエルたちを殺せなかった理由。パウエルはライクに対し、「ブービートラップを仕掛けたのは顔のない男だ」と語る。
    ☆15
     ライクは、二級エスパーのゲイレン・チャーヴィルに会い、彼に市警本部長クラッブを透視させる。その結果、動機がないとされたライクは、自分が無実になったことを知る。
     パウエルは緊急特別集会を開き、ライクを破壊することの承認を得る。
     バーバラは治療を終え、成長を遂げる。
    ☆16
     ライクの世界から星がなくなり、ドコートニィ・カクテルがなくなり、火星がなくなり、太陽がなくなり、パウエルも存在しなくなり、空間がなくなり、すべてが終わる。そして、破壊。
    ☆17
     真相。ドコートニィはベン・ライクの父親だった。ライクの超自我=良心は、ベン・ライクを許さなかった。それが「顔のない男」。ライクの悪夢のイメージだった。「顔のない男」は、ライクとドコートニィの真の関係を示す象徴だった。
     パウエルは、集団カセクシス法を使い、この世界で自分だけが現実であるという幻覚をライクに見させ、破壊した。
     パウエルはバーバラと愛し合い、破壊されたベン・ライクを見る。ベン・ライクはキングストン病院で治療を受け、1年も経てば生まれ変わるという。
    ● 分かりにくい点
    説明不足。ジョーナスって誰?
    最初に世界観の説明がない。
    20頁以降の人事課長のセリフで、エスパーが三段階に分かれて存在し、重要なポジションにいることが説明されるが、これも分かりにくい。
    「金ぴかの死体」が、マリア・ボーモンドという人物の異名として描かれているが、なぜそう呼ばれているかの説明などがなく、分かりにくい。
    「うそつきエイブ」という観念。パウエルの中のユーモアセンスで、彼の反応を誇張させるものの名称らしいが、「嘘つきの本能」と言われても、分かりにくい。
    パウエルのパーティで、参加者ではない人物として唐突にジェリィ・チャーチが登場するが、この人物がなぜギルドを追放されたのかなど、説明不足で分かりにくい。
    ● 伏線
    ライクからドコートニィに暗号で合併が提案される。その回答は、暗号によれば「承諾」だったが、ライクはこれを「拒否」ととらえてしまう。この誤解がすべての動機となるという構図がある。
    ● 登場人物リスト(固有名詞・役割の統一と誤記訂正)
    名前 説明
    ベン・ライク 主人公。モナーク産業の社長。ドコートニィを殺害する。
    ジョーナス ライクの執事。登場が少なく説明が不十分。
    カースン・ブリーン エスパーの医学士。ライクのお抱え医師。
    ドコートニィ・カクテル モナーク産業のライバル会社。社長はクレイ・ドコートニィ。
    クレイ・ドコートニィ ドコートニィ・カクテルの社長。テイトによって殺害される。ベン・ライクの実父でもある。
    ハソップ ライクから依頼された暗号文をドコートニィに送る暗号課主任。後に命を狙われる。
    エラリィ・ウェスト モナーク産業の娯楽部長。ライクの側近の一人。
    ジェリィ・チャーチ 過去にライクに加担して悪事を働き、エスパーギルドを追放されたエスパー。質屋を経営しており、ライクに銃を売る。
    オーガスタス・テイト 一級エスパー。高額所得者だが、エスパーギルドに所得の95%を納めていることに不満を持ち、「愛国エスパー連盟」というギルド内の最右翼団体に所属。ライクと手を組む。
    ジョーダン 生理学者。モナーク産業のために、視覚ノックアウト剤やロードプシン・イオン化剤を開発した。
    リンカーン・パウエル ニューヨーク市警心理捜査局総監。一級エスパー。物語の探偵役。
    メアリ・ノイス パウエルの恋人。二級エスパー。パーティに参加。
    $スン・ベック パウエルと一緒に捜査をする警視。二級エスパー。名前の表記は不明瞭だが本文通り。
    1/4メン(ワン・クォーター・メン) 弁護士。二級エスパー。テイトの依頼で登場。
    バーバラ・ドコートニィ クレイ・ドコートニィの娘。殺害現場に居合わせて逃走。事件の鍵を握る人物。
    デ・サンティス 鑑識。捜査に関与。
    ウィンケン、ブリンケン、ノッド パウエルのエスパー秘書の三人組。記憶術の天才。
    長老モーゼ モザイク多重起訴コンピューター。事実と証拠を入力して起訴可能性を算出する。
    クラッブ ニューヨーク市警本部長。パウエルの上司。テイトを恐れている。
    キノ・ウィザード 賭博の元締め。テイト側の協力者。後にスペースランドで死亡。
    フレッド・ディール 火星為替銀行フロアの警備主任。三級エスパー。
    スニム・アジ チューカの経営する下宿に住む人物。情報源の一人。
    チューカ・フラッド バーバラ・ドコートニィを保護した女性。エスパーでもある。
    ジームズ博士 キングストン病院の医師。バーバラを診察する。

  • ヒトの進化の先には、深層心理を読むエスパーの能力があった。そんな創造性豊かな設定から、完全犯罪を読み解く。今までにない、SF。

  • テレパシー能力を持った人間から見える世界を、小説という媒体を活かして上手く表現したSFの名作。相手の考えていることが一瞬で読み取れるエスパー故の苦悩など思わず納得させられてしまう描写が多く、作者の想像力の豊かさが推し量れる。

    ただし設定がめちゃくちゃ面白いだけに、オチが若干尻すぼみに感じられてしまった…。

  • 破壊されちゃうんでしょ?ってタイトルでネタバレかと思いきや!「安心してください!ちゃんと履いてますよ!」な展開に。面白かったです。

  • 話自体が装置で
    登場人物が傀儡のように感じて
    全然入り込めず、最終数ページで断念

  • SF。ミステリ。サスペンス。
    癖の強い文章は、なかなか馴染めなかったが、疾走感があり、主人公ベン・ライクのキャラクターには良くマッチしている。
    ストーリー自体は、シンプルなサスペンスのように思えるが、散りばめられたSFのガジェットが魅力的。
    インパクトの強い作品だと思う。

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