紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)

  • 早川書房
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本棚登録 : 2498
感想 : 225
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150121211

作品紹介・あらすじ

第一短篇集である単行本『紙の動物園』から、母と息子の絆を描いて史上初のSF賞3冠に輝いた表題作など、7篇を収録した短篇集

感想・レビュー・書評

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  • 中国で生まれ少年期にアメリカに移住し育った著者。その生い立ちと経験が深く濃く反映されている気がした。それぞれの短篇、設定は面白かったが、なぜかいま一歩作品の世界に入り込めず…。

  • 表題作の印象的なタイトルから気になっていた作品だったが、期待以上だった。とても短いページ数の作品ばかりなのに、長編小説を読んだような心持ちになり、素晴らしい短編小説というのはこういうものなのだと再確認することができた。

    「紙の動物園」では、切ない読後感とともに、紙でできた動物たちを通した親の子供への限りない愛情を感じた。取り返しがつかなくなってから後悔しても時間は戻らないのだから、今のうちに親孝行したいと強く思わされた。

    SFとして読んだときにいちばんいいと思ったのが「結縄」で、タイトルに関わるSF的なネタにとどまることなくもう一ひねり加えてあって、物語にさらに深みを持たせているところに作者の高い技量を見て取ることができた。

    いずれも短編傑作集の名前に恥じない素晴らしい作品群だったと思う。作者の他の作品や中国SFと言われたとき名前を聞かないことのない「三体」にも手を出したくなった。

  • 折り紙の動物に魂を込めた母親の気持ちに気づいた息子を描く表題作ほか。

    ここ10年で注目されるSFの旗手、ケン・リュウによる短編集です。話題となっていた「紙の動物園」は気になっていたけど読むのは初めて。うっかり読んであっさり泣かされてしまいました。SFというよりもとても抒情的な作品で、心の柔らかいところをぎゅっとされるようなお話でした。
    ほかにも移民問題を題材にした「月へ」や、かつてのアカ狩りを描いた「文字占い師」などは社会(アメリカ)の闇にも光を当てる、アジア人ルーツならではかもしれない見方で社会を描いたりと、野心的な作品も多く、また、AIやプログラミングの視点から人格や思考を読み解いたりと、SFらしいSFでも楽しませてくれました。
    全体的にはとても心に訴えかける作品が多く、短編集ながら印象強い一冊になっていました。これは名作だ。
    短編集シリーズとして「もののあはれ」もセットで出ているのでこちらも読まねばなりませんね。

  • SFかと思い購入したが中国の歴史と結びつく辛い話が多くて読み進めるのが大変だった。『文字占い師』は悲しく虚しい結末に一番心を揺さぶられた。

  •  文化的背景を元にした葛藤を題材に扱った作品とSFが収められた短編集。
     収められている7編の小説のうち、「紙の動物園」「月へ」「太平洋横断海底トンネル小史」「文字占い師」はSF要素があるものの文化的背景による葛藤が主題となっているように感じた。残りの「結縄」「心智五行」「愛のアルゴリズム」ではSFがメインなようだった。「愛のアルゴリズム」以外の作品では中華的な文化が話の大筋に組み込まれそれによる葛藤も描かれるが、「愛のアルゴリズム」だけは語弊があるかもしれないが、ある意味この短編集の中で一番読みやすさのある作品なように感じた。
     「紙の動物園」は母の愛を描いた作品だった。話の筋だけをなぞると、母と仲違いしたまま母を亡くしてしまった息子が母の残した手紙を読んで母の想いを知るという一見するとよくあるような話だが、欧米的なloveではなくアジア的な愛を描いていたり、癌の痛みや老虎のメタファーなど細かい要素が随所に散りばめられているのがよかった。
     「月へ」は月に手を伸ばした親子の話だった。間に挿入される例え話と主人公の過去が秀逸で、正しいこととは何かを問われる話だった。
     「結縄」と「心智五行」は温故知新が主題となっているが、昔のものもそのままでいいのかという疑問が提示されていた。
     「愛のアルゴリズム」は人は情報とシステムしかないのではないかということを投げかけるSFで、面白かったが他の作品と比べてらしさは感じなかった。
     「太平洋横断海底トンネル小史」と「文字占い師」は他の作品とは一線を画すように感じた。あまりこのレビューの陳腐な言葉で表現したくないが、人の温かさが秘密を守りにくくする話だった。特に「文字占い師」ではこの世界の真理を知っていた人がその真理によって排除されていくむごさが筆舌に尽くしたかった。
     全体を通し、民族、文化、感情といった割り切れないものに目を向けた小説だったと思う。すごいものを読んだという読後感が強く残った。

  •  実によくできている作品ばかりなのに、飽きちゃうのはなぜなんでしょうね。マア、ぼくだけなのかもしれませんが、どうも、そのあたりがこの作家の「秘密」かもしれませんね(笑)。

  • SFっぽくない表紙の雰囲気に惹かれてのジャケ買いだったのですが、予想以上に自分好みの短編集でした。

    7編の短編はいずれも、中国で生まれ少年時代にアメリカに移住した著者の文化的背景が感じられる作品です。
    SFというよりはファンタジー要素が強い感じでした。
    強い印象を残す表題作や「文字占い師」もよかったですが、個人的には「結縄」がとても印象的でした。
    アジアの奥地の村に伝わる結縄文字と最先端の医療研究がつながる過程に静かな興奮を覚えます。
    その一方で、村長と若き白人研究者とのあいだに育つのではないか、いや育ってほしいと期待していた友情がしおれていく結末の、怒りにも似た寂しさ。
    やり場のない切なさに、しゅんとしてしまいます。

    また、「心智五行」は短い中に映画のようなエンターテイメント性がつまっていてわくわくしました。
    主人公の最後の一言が心にくい。

    本書は単行本を2冊に分冊刊行したうちの1冊とのこと。
    もう1冊もぜひ読まねば。

  • 紙の動物園が1番わかりやすいが、その他の短編も悪くない。けどそれ私は中国風味をやや苦手としており、今後の付き合い方は考えたい。

  • 理系理系していてるネタ料理SFで、こういうの読みたいよねうんうん、と好感。ニューディール政策でアメリカ国内を振興するのではなく、太平洋トンネルを建設していたらという話が、まるっきりフィクションなのにおもしろかった。

  • 『髪の動物園』と『もののあはれ』を一気に読んだ。久しぶりに本を読んで泣いた。どちらもいくつかの言語を行き来する物語。よく出来ている、上手い!

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