もののあはれ (ケン・リュウ短篇傑作集2)

制作 : 伊藤 彰剛  古沢 嘉通 
  • 早川書房
4.06
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本棚登録 : 351
レビュー : 38
  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150121266

作品紹介・あらすじ

第一短篇集『紙の動物園』を二分冊した2冊目。ヒューゴー賞受賞作の表題作など、心揺さぶる全8篇を収録した短篇傑作集第二弾。

感想・レビュー・書評

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  • 「良い狩りを 」スチームパンクの中国版?Netflixで映像化されているそうなのでそちらも楽しみ。

  • ケン・リュウの短篇傑作集は「紙の動物園」と「もののあはれ」の全2巻計15篇を収録。どちらかというとファンタジー寄りな第1巻「紙の動物園」では、ヒューゴー賞/ネビュラ賞/世界幻想文学大賞の3冠(史上初!)に輝く表題作を収録。感傷的過ぎると思われる方もいるかもしれませんが、息子に対する母の愛はどうしても心を強く動かされるもので、何度読んでも泣いてしまう自信があります。
    さて、「紙の動物園」を読んでいて強く感じたのは、作者がアジア人であるということ。つまり、欧米中心の世界におけるアジアの立ち位置や東洋文化といった「アジアらしさ」をうまく物語の中に取り込んだ作品が目立ちます。表題作もそういった作品のひとつですが、個人的に傑作のひとつだと思う「結縄」は、アジアの立ち位置と東洋文化の両面を題材に、欧米人にうまい具合に利用されるアジア人を皮肉に描ききった作品で、「文字占い師」もそういった虐げられるアジア人を強く感じる作品でした。だからでしょうか、「紙の動物園」を読み終えて感じたのは、「おもしろいのだけど、なんだか後ろ向きの作風だなぁ」というもの。しかし、そんな思いも、第2巻「もののあはれ」を読んで考え直すことに。

    「もののあはれ」は、「紙の動物園」とは異なり、SF作品で構成されます。ヒューゴー賞受賞の表題作は、東洋版「たったひとつの冴えたやりかた」といってもいいかと。しかし、そこで描かれるヒーロー像は西洋のそれとは少し異なるもの。西洋と東洋をしっかり対比させて描かれるのです。「たったひとつの冴えたやりかた」の主人公コーティーは、まさに彼女個人がヒーローであるといっても過言ではないでしょう。しかし、本作の主人公である大翔は(作品中でもはっきりと明言されるとおり)ヒーローではありません。西洋と東洋のヒーロー像の違いを作品中ではチェスと碁を用いて表現していますが、「個々の石はヒーローではないけれど、ひとつにつどった石はヒーローにふさわしい」、これが本作で描かれるヒーロー像です。「紙の動物園」では自虐的ですらあったアジアらしさがここにきて素晴らしい魅力として表現されているのでした。
    本書では表題作に加え、不老不死を題材にした姉妹作「円弧」と「波」やテッド・チャンの「地獄とは神の不在なり」から着想を得た「1ビットのエラー」など、SF作品としても読み応えのある作品が続きます。そして、2巻通じて最も好きな作品となった「良い狩りを」をラストに迎える構成で、とにかくこの短篇集「もののあはれ」はとても満足できた1冊でした。
    1冊にまとめた方が良かったのでは…?という愚問はさて置き、ケン・リュウの今後の作品にも期待がもてる全2巻でした。

  • ケンリュウの短編集もう一冊。

    表題作の“もののあわれ”、
    生と死を超越していく“円弧”、“波”
    がツボすぎる。

    SFとしながらも、そこには人の普遍的な哀しさがある。

  • これが一番でかい話って思った

  • 同じくケンリュウの「紙の動物園」と比べると実験的な作品が多い印象を受けました。とくに良かったのは「もののあわれ」と「良い狩りを」。アジア的な文化とSFを混ぜ混むのが上手く、漫画にしても面白そうだと感じました。

  • 20190825 ようやく読み終わった。しばらくあけていたためケン・リュウの世界観に着いて行けなくてなったが、最後の話で、また読みたくなった。こちらの体力が戻ったら挑戦しようと思う。

  • ケン・リュウのSF傑作集の第二弾。ファンタジー寄りだった前作『紙の動物園』とは違い、本作はシンギュラリティをテーマにしたガチガチのSF短編集である。相変わらずリリシズムに溢れた短篇ばかりで、心を打つ作品群とはこういうもののことを言うのだろう。全編に渡って透き通った悲しみが付随しているが、読後の深い感動は折り紙つきである。

    表題作「もののあわれ」は傘の漢字の書き方から太陽帆を広げた宇宙船へのイメージの飛躍が素晴らしく、2001年宇宙の旅の放り投げた骨がロケットへと変わる光景を思い起こさせる。国境も人種もあやふやになった居住区の世界の中で、最後の日本人となった主人公の選択は自己犠牲的でありながら、悲壮感はまるでなく、穏やかな救済を感じさせる。やや感傷的なヒロイズムを感じさせるものの、まとまりの良い感動作であると思う。

    「潮汐」は感動の皮をかぶったバカSFで、月が極限まで迫り潮の満ち引きが洪水のようになっている世界で、住む塔ごと空へ打ち上げて脱出する物語である。ノアの箱船のような趣はあるものの、読後感は非常に軽く、水の影響を受けないナイフ形の家や潮流に浮かぶ塔など、イメージが相変わらず凄い。

    「選抜宇宙種族による本づくり習性」
    こういう形の短篇も書けるのかと舌を巻いてしまった。ケン・リュウのイマジネーションの本領発揮である。宇宙人に本というデバイスが伝わっているのにも驚きだが、宇宙人の形状や生態、本という記憶・記録保持の仕方が微妙に異なっているのが面白い。宇宙人の生態などを読むのが好きな人にはうってつけの短篇である。

    「どこかまったく別な場所でトナカイの大群が」
    肉体の枷から解き放たれて3次元の壁を越えた人間が物質世界への愛着を感じる一本である。このはるか先の未来世界像こそSFの楽しみであり、収録作の中では個人的にこれが一番のお気に入りである。ほぼ全ての制約がなくなった電子世界で電子存在となった人間の女の子が、三次元の壁を越えない古代人の母に連れられて物質世界を飛行する、ただそれだけの話なのだが、文明が滅んだ後の物質世界のアポカリプスな美しさや、人間という観測者を失っても永久に残り続ける美にただただ圧倒されてしまう。かつてそこで過ごした人類への憧憬に震えながらも、進化した人類に対しても共感できてしまう珠玉の作品である。また主人公のいる世界を去る決断をした母の理由も、人類が種として成長し続けるために、探究心を捨てずに未知の生命を探すために新たな惑星へ降り立つという、フロンティア・スピリット溢れるものなのである。再会と別れという物悲しい話ではあるのだが、悲しみの中にも希望があるのがケン・リュウらしい。

    「円弧」は不死となった女性の一生を追う作品で、死を克服した人間の精神の変化と心の在り方を丁寧に描いた短篇である。死を決意させたのは愛ではなく時間から自由になりたいという結論は、手垢のついた答えではあるものの、それがかえって一人の女性の決断としては真実味がある。たとえ不死でも人は凡庸で、凡庸であるからこそ逸脱することができない。常人の何倍もの幸せを得て、様々な体験をしたものの、たどり着くのは孤独であり、別れの数に絶えられるほど人は強くない。とても読みやすく、いい短篇だった。

    「波」は「円弧」と同じシンギュラリティ、不死をテーマにした短篇で姉妹作とも言える。前者が地球を舞台にした作品なら、後者は種の継続のために不死を取るか生命の連鎖を取るかの究極の二択を迫られる物語である。夫婦で別の決断をして、その後が枝分かれしていくのも面白いが、目的の惑星にたどり着いた瞬間に、自分より後に地球を飛び立った人類が機械化して先に到着していたという下りは中々に絶望的である。そこから機械人類へのアップロードに抗えず、最終的にエネルギー体へと変わるのは、人が神になる過程を見ているようで非常に面白い。全作品中、もっともスケールの大きな作品である。

    「1ビットのエラー」は天使を宿した恋人が死に、その事故の間際に神の顕現を見たプログラマーが変数を使ってエラーという形で神を理解しようとする短篇で、まずその着想に乾杯である。ささいな1ビットのエラーこそが現実と幻想を分けており、神の存在を人智の範囲まで引きずり下ろしつつ、それでいて神が神たる理由すら崩さないのには恐れ入ってしまった。

    「良い狩りを」はスチームパンク妖怪譚である。少年と妖狐の少女の間の、種族を越えた絆や、産業革命によって怪異がその効力を失っていく世界や差別される中国人など、追いやられたマイノリティの物語としても面白い。機械技術を学んだ少年が、最終的に妖狐の少女を機械化するというオチはビジュアル的にも素晴らしく、最後の「良い狩りを」という台詞の幕引きも素晴らしい。できれば短篇ではなく長編で読みたいと思わせる、そんな贅沢な一本である。

    総じてSF色が強く、初心者にもおすすめできるイマジネーション溢れた短編集である。これと前作の神の動物園で、完全にケン・リュウのファンになってしまった。次回作が待ち遠しい。

  • 第一短編集「紙の動物園」から8篇を収録。中国出身の著者ならではの欧米作家のSF作品とは異なる趣きの作品に新たな魅力がある。設定さえ違えば純文学的でもある。‬

  • SFの天才かと思う

  • ジャケ買いに近い。
    狐のイラストに納得。
    何が良かったかというと、なにが良かったかな。
    紙の動物園よりこちらの方がおもしろい。ファンタジー編とSF編に分けた訳者さんありがとう。

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